アバター
監督:ジェームズ・キャメロン
製作総指揮:コリン・ウィルソン、レータ・カログリディス
音楽:ジェームズ・ホーナー
脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:サム・ワーシントン(ジェイク・サリー)
ゾーイ・サルダナ(ネイティリ)
シガーニー・ウィーヴァー(グレース・オーガスティン)
スティーヴン・ラング(マイルズ・クオリッチ大佐)
「濃縮果汁還元」
アバター(Avatar)です。横綱・白鵬のような顔の青い巨人が登場する予告編を観た時、「ジェームズ・キャメロンは呪われているのか?」と思いました。「こんなの、映像にしちゃいかんだろう」と。ところが、月日が経つにつれ、少しづつストーリーが明らかになり、「これ、ひょっとして面白いかも」と気になりだしたところで早速観にいったアバター。CinemaXの評価やいかに。
「アバター」とは、一般的にはチャットサイトなどネット上のキャラクターを意味します。まだまだネット環境が脆弱で苦し紛れでようやくADSLが普及し始めた頃、ネット上の仮想チャット空間が多数生まれました。特にWCJでは奇妙なキャラクターが行き交い、これがアバターなのかという強烈な印象を抱きました。
「アバター」におけるアバターも基本的には同じです。未開の星の先住民のDNAと人間のDNAを結合したアバターを作成して、そこに人間の心をリンクさせて、その星に乗り込み先住民に溶け込もうとするストーリーです。未開の地を文明人が侵略しようとするエピソードが盛り込まれた映画は珍しくなく「ポカホンタス」「風の谷のナウシカ」などにも共通する部分といえるでしょう。
また、人間と別のものがリンクして動くというのは、過去のロボットアニメに多数存在しますし、来年公開の「サロゲート」も同様の方法でしょう。アバターを操縦する装置なんかは「エヴァンゲリオン」のエントリープラグそのものですし、要は良いとこ取りをしまくった映画といえます。
いいとこどりの映画といえば、「キャシャーン」とか「GOEMON」を思い出します。この2つの映画は、あちこちから面白そうな題材を集めて盛り込み過ぎたことで支離滅裂になった失敗例の代表と言えるのですが、「アバター」は逆に強烈に見応えのある映画に仕上がっています。それは、丁寧なストーリー展開もさることながら、SF映画としての要素を全て備えているからだと言えます。
過去、CinemaXではSF映画に必要な要素を述べたことがあります。①現在と繋がっている部分がある②今とは少し違う何かを体感させてくれる③その世界に行きたくなるということです。
私自身が、最初に「アバター」を毛嫌いした1つに「どうせ人間と異星人が戦争するだけの映画だろう」と短絡的に考えていたからでした。確かに本筋は人間と異星人の争いなのですが、後にアバターを操縦することで展開するということを知り、興味を憶えました。
「アバター」は、近未来の話で、遥か遠くの星での出来事なのですが、地球人の武器や道具は実現はしていないにせよ近未来にはあってもおかしくないものばかりです。そこが今とは違う何かという部分を体感させてくれるという部分にも共通します。人間の想像力には限りがないというのは、積み重ねられていく上では限りがないのかもしれませんが、いきなりぶっ飛んだものに対応するほど器は大きくありません。
アバターでは設定や武器、道具など「ああ、あるかもな」程度のアイデアが丁寧に積み重ねられています。それぞれの形状も理由があって、町のあちこちに天守閣が林立する「GOEMON」のような状況ではありません。空に浮かぶ山とか、どこかで見たぞというものも少なくはないのですが、設定に裏打ちされた良いとこ取りならかえって武器になり、強烈なアウトプットを行うことでこの映画はさらに見応えのあるものになっています。
さらに特筆すべきは、ストーリー構成の丁寧さです。「アバター」は前半の展開はかなり怠惰で眠気が襲うことも少なくないのですが、実は何気ないシーンも後のシーンへの伏線になっています。例えば爆撃機から落ちてしまう主人公が何故助かるのか、「エイワ」がどのように先住民を救うのか。一見偶然のようですが、実は前半に伏線がきっちりと張られています。
さらに、SF映画でよく考えれば説明がつかなかった「異星人が何故、英語を喋るのか」さえも説明しています。地球とは全く関係のない世界の話であるスターウォーズのキャラクターがどうして英語を話すのか、考えても説明の私用がないのですが、アバターではしっかりと説明しています。その理由も人類の過去の侵略の歴史を振り返れば至極自然なものでした。
評価に移ります。
【基礎点】
一般の洋画(15点)
・15点
「アバター」は多くがCGなのでアニメーションになるか通常の映画として扱われるかは微妙ですが、CinemaXでは洋画と評価しました(アカデミー賞ではアニメーションと判断するための比率が存在する)。
【技術点】
テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
アバターを利用して未開の星を侵略しようとする地球人の話。
そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・10点
人類の侵略の歴史に通じる。それは今なお存在する。
観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・10点
(3Dでは特に)未開の星を体感させてくれる。
観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・10点
3Dは目が疲れるので、3D併映では初めて2Dを鑑賞したが、この映画こそ3Dで鑑賞すべきと思った、失敗。
主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
地球人でありながら先住民と立ち上がろうとする。主人公にとっての敵と味方が入れ替わる要素を盛り込んでいることがこの映画をさらに面白くしている。
【芸術点】
印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
先住民の女性、ネイティリ。
印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
エンドロールで流れる曲が「I see you」を連呼しているように「I see you」がこの映画のテーマの1つになっている。ネイティリが何度か口にするセリフでもあるのだが、最初は「何言ってんの?」ぐらいにしか感じない言葉が、最後のシーンでは爆弾のようなインパクトを持つ。つくづく、この映画の緻密かつ効果的な構成には驚かされる。
泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・10点
前述の「I see you」のシーン。じわりと感動がこみ上げる。
笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・5点
西洋人特有のウィットな会話は必要以上に入れると逆効果になる。
怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・10点
「アバター」では地球人そのものが怒りの対象となる。同じ地球人である観客にも思い当たる部分があるからこそ、怒りは増幅されるようだ。森にブルドーザーが入ってくるシーンは、「THIS IS IT」でのマイケル・ジャクソンの遺作にも共通する部分でもあるように思う。
【減点項目】
・減点なし。
基礎点(15)+技術点(50)+芸術点(45)×1.5-減点=CinemaX指数(133)
「A」評価(120点以上)
見た目で大損している映画ですが、異星人が地球人とは異なる体をしているからこそ成り立つ映画ともいえます。3D映画には全く魅力を感じなかったのですが、この映画は例外です。
2009年12月23日/シネプレックス新座
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