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June 02, 2010

オーケストラ!

監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
音楽:アルマン・アマール
脚本:ラデュ・ミヘイレアニュ、アラン=ミシェル・ブラン、マシュー・ロビンス
出演:アレクセイ・グシュコフ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアンほか

「イデオロギー」

オーケストラ!を観てきました。人生で最も長くやっていたのは吹奏楽なので、音楽を題材にした映画は割と好きです。

オーケストラ!は、予告編では音楽を満喫出来る映画のような印象を受けますが、実は微妙に観客の期待を逸らす内容になっています。

シャッターアイランドの期待はがっかりな方に逸れましたが、オーケストラ!は趣が異なるという良い意味での逸れ方。

この映画の肝は「ソ連」です。多くの、というか大作曲家の大半を生み出したのもロシア(帝国)やソ連ですし、いまソ連のイデオロギーを引っ張り出したらどうなるかという落差を巧みに引き出しています。

つまり、ソ連とロシア(連邦)あるいは社会主義と社会主義崩壊後の境目を扱った映画なわけです。

個人的には時代や地域、物事の境目にこそカタルシスが存在すると考えているので、この映画の素材は鉄板といえます。昔は支持率100%、今はサクラをかき集めてやっと成立する共産党集会あたりも見物です。

オーケストラ!は構成や特に伏線の張り方は粗っぽくてクソ映画になりかねない感じなのですが、何せ素材が鉄板なので何をやっても許されるわけです。

楽団など大人数を扱う映画は群像劇になりがちで、結局時間が足りなくて薄っぺらになってしまうのですが、この映画は指揮者とソリストに絞り込んでいるのでストーリーは比較的濃厚でした。

ここから少しネタばれです。

この映画のもう一つの肝は「親子」なのですが、確かに親子は親子でも観客の思い込みを良い意味で裏切っています。

実の親子ならわざとらしい涙に囲まれた映画に終わっていたのですが「みんなの子」ということで、そこにソ連のイデオロギーが加わって生き生きとした涙を誘う映画に仕上がっています。

鑑賞後はさわやかで、主人公のマリーを演じたメラニー・ロランも良くも悪くもバカみたいな映画、イングロリアス・バスターズとは違った魅力がありました。もし歌が達者なら、彼女の主演でオペラ座の怪人を観てみたいものです。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
ソ連時代に解雇されたオーケストラのメンバーが「なりすまし」で海外でのコンサートを成功させる話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・7点
辛い時こそ物事をやり抜く「気持ち」が必要。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・8点
ソ連時代に民衆を虐げた様々な弾圧。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・8点
革命的なイデオロギーの変化は、それを経験していない日本人には奇異な現象で観光要素になりやすいといえる。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
主人公をはじめメンバーたちの再び大舞台で演奏したいという欲望と、ある理由でマリーを助けたいという動機の二重構造が成立している。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・8点
マリーのマネージャ的存在のギレーヌ。彼女はマリーの身の回りの世話までするので、実母ではないかと思った方も多いはずですが、真相やいかに。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・7点
久々の大舞台で音程もメチャクチャな楽団が心が一つになることでガラッと変わるシーン。これは指揮者のカリスマ性などであり得なくはないが、ボロボロだったチューニングまで治るのは現実的ではないと感じた。まあ、これは映画なので。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・6点
マリーが「みんなの子」だと分かる部分。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・6点
マリーが、見た目や楽器がみすぼらしくても腕が良いことが分かり態度を改めるあたりは、水戸黄門にも似た爽快感がある。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・3点
ソ連時代の弾圧などやり場のない怒りもあるが、一時代前の話のせいか怒りのツボ自体は小さい。

【減点項目】
・減点なし
オーケストラや吹奏楽団を扱う映画は話に絡むキャラクターが多すぎて話が薄っぺらくなるという欠点があるが、オーケストラ!は例外。この部分で加点したいぐらい素晴らしい設定。

基礎点(25)+技術点(41)+芸術点×1.5(30)−減点(0)=CinemaX指数(111)

「B」評価(100〜119点)

シネスイッチ銀座には珍しく、イメージだけで誤魔化されないまともな映画です。

2010年5月21日/シネスイッチ銀座
Le_concert

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Posted by: appropriate swimming pool | August 01, 2014 at 06:05 AM

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