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April 07, 2010

息もできない

監督:ヤン・イクチュン
音楽:ジ・インヴィジブル・フィッシュ
脚本:ヤン・イクチュン
出演:ヤン・イクチュン、キム・コッピ、イ・ファン、チョン・マンシク、ユン・スンフン、キム・ヒスほか

「骨太」

予告編からして暴力の匂い漂う「息もできない」ですが、その名の通りところどころで息が出来なくなりそうな映画です。下手をすれば息をするのも忘れてしまうような映画。数分に一度、ああ呼吸してるなと自覚するような映画。それが決まって深呼吸だったりします。

近年、イケメン俳優出演の薄っぺらい韓流映画が増えたように思いますが、やはり面白いのはアクションとか暴力シーンを巧みに含んだ映画です。主役はどの映画も男臭く、イケメンとは程遠いのが特徴ですが、これが逆に映画の魅力を増します。

「息もできない」は暴力と主人公たちの不遇さが肝となる映画なのですが、韓流スターの綺麗どころがシチュエーションで追い詰められるのと違い、生身の人間が動いているようでずっしりと重いのが特徴です。敵対する国と国境を接していることや徴兵制度なども日本映画にはない緊張感を持たせるエッセンスになっているのかもしれません。

評価に移ります。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・6点
家族の愛に飢えているチンピラ、サンフンと女子高生、ヨニの純愛。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・6点
家族愛は不変のもの。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
一昔前の日本のようにどこか懐かしい感じのする街並みは観光要素か。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
上記の通り。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
父を憎み、異母姉を死んだ実姉に重ねるように救おうとするサンフンと、同様に家族の問題を抱え、周りに頼られて苦しくても自らは沈黙を守るヨニ。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
サンフンとヨニ。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
本編の後半に漢江でサンフンがヨニに膝枕を求めるシーン。セリフはほとんどないが、この映画の全てを象徴するようなシーン。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・10点
漢江のシーン。ここまでは伏線など人工的な細工が全く見えない不思議な映画。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・8点
異母姉の息子、サンフンとヒョンインのやりとりは笑える。特にサンフンのおしつけ親切は面白い。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・7点
主役2人が抱える家族問題の背景にはベトナム戦争とか悪化する国内情勢がある。それだけにやるせない怒りというものは感じる。映画における怒りの要素は、どうにもならないものを対象とすると味わい深くなる。構成は難しいが。

【減点項目】

・減点なし。

基礎点(25点)+技術点(26)+芸術点(45)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(119)

「B」評価(100~119点)

A評価に限りなく近い映画ですが、残念ながら単館映画で限られた場所でしか観ることが出来ません。暴力シーン満載なのでヘタレのシネコンが取り扱うことはないでしょうが、これだけの出来ですから、口コミで劇場が拡大するのは時間の問題でしょう。

前述のとおり、中盤までは伏線が全く見えず、ごく自然にストーリーが流れます。それでいて支離滅裂ではなく、着実に話が盛り上がり、漢江のシーンで集大成を迎えます。自然に、静かに、それでいてこれだけ盛り上がるシーンは、ニュー・シネマ・パラダイスのラストシーンぐらいじゃないでしょうか。

後半は盛り上がりすぎた展開の落としどころを探るように展開がやや陳腐になっていくのですが、それでもこれだけの大きな山を作ったのですから、着地点も高いといえます。冒頭シーン一発で主人公、サンフンの性格を表すさまはL.A.コンフィデンシャルを彷彿とさせますし、エンディングはまさに家族ゲーム。名作に不可欠の「あーあ感」が滲み出ています。

韓流スターを据えただけの薄っぺらい映画はいりませんが、こういった骨のある映画は大歓迎です。一方で邦画は相変わらずテレビでのPRが行われ、挙げ句の果てに前編と後編に分ける始末。もちろん金儲けのためでしょうが、2時間でも3時間でも一本としてまとめられないのは、作り手の手腕として大きな問題だと考えることも出来るのですが。

みっともないことはやめてもらいたいです。

2010年4月2日/シネマライズ
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