隣の家の少女
監督:グレゴリー・M・ウィルソン
製作総指揮:マリウス・カーデル、アルバート・ポーデル
原作:ジャック・ケッチャム
音楽:ライアン・ショア
出演:ブライス・オーファース、ダニエル・マンチ、ブランチ・ベイカーほか
「モニュメント」
隣の家の少女です。前売券をもらって一度劇場に足を運んだのですが、ついゾンビを観てしまいリベンジ。
「少女は、嬲られ続けた」という下品なキャッチフレーズの通り、観客の大半はおっさんという映画なのですが、色物どころか「気持ちが重要」という人間社会における不変のテーマが込められた映画でした。
1960年代に米国で実際に起きた事件がベースになっています。交通事故で両親を失った姉妹を引き取った親戚の母子たちがこの長女を難癖つけて陵辱の限りを尽くすというもの。元の事件も共犯者が子供達という点で衝撃的だったようですが、映画でもその惨さが描かれています。
特にルースという中年女性は圧巻でした。夫に捨てられて若い女に憎しみを持つ彼女は、モンスターマザーというべき存在で、引き取った姉妹を虐待。特に長女、メグをなじり最後は子供達の餌食にしてしまいます。ルースは精神的に壊れているのですが、ただ単に壊れているという説明ではなく、理論的に壊れているのでかえって不気味さが増しています。子供達に飲酒や喫煙させるのもその一旦でしょう。教育ママの体で子供達をしつける一方で、子供達に少女を強姦させるのは鬼畜以下です。
主人公は隣に住むデヴィッドという少年なのですが、自分なりに少女を救おうとして事件に巻き込まれていってしまいます。これがもどかしいのですが、小さな小さな子供の世界ではこれが限界なのでしょう。上手くいかなくても少女は品詞の状態で「気持ちが重要なのよ」と感謝の言葉を述べます。これが心に響きます。
評価に移ります。
【基礎点】
一般の洋画(15点)
・15点
【技術点】
テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
嬲られ続ける隣の少女を救おうと必死になる少年の物語。
そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・8点
愛は不変。
観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・6点
上手く説明出来ないが、時代背景のようなもの。
観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・6点
これは1960年代だったから明るみになった事件かもしれない。もっと昔には表沙汰にならず葬られた事件も少なくはないはず。例えば、チェンジリングも時代の流れと当事者の勇気と執念で偶然、解決したようなもの。
主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・7点
だらしない一面を持ちながら、自分なりに策を巡らせ、メグを救うデヴィッドの行動は一貫していた。
【芸術点】
印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・9点
嬲られる少女、メグ。妹思いの優しさと明るさを持つ反面、事故で両親を失った境遇とこの時代に生まれた運命に諦めを見せているようだった。
印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・9点
少女が「気持ちが重要なのよ」と言うシーン。実際にご覧下さい。
泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・8点
デヴィッドの助けでたった一度だけ、メグは逃げ出せるチャンスがあったのに、どうしてルース一家に捕まってしまったか、後に伝聞形で分かるエピソードだが、メグの優しさが観客に伝わってきているだけに、感涙ポイントが高かった。
笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・3点
理論的に壊れているルースの行動や言動は鬼畜を通り過ぎて滑稽とも言うべき感もあった。
怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・7点
ルースが子供たちにメグを強姦させるシーンに強い怒りを覚える。その後の行動はさらに衝撃的。
【減点項目】
筋違いのPRが行われている(-10点)
・-3点
エロ映画のように宣伝しないで欲しい。
基礎点(15)+技術点(35)+芸術点(36)×1.5-減点(3)=CinemaX指数(101)
「B」評価(100~119点)
原作本はもっと刺激が強いようですが、映画でも充分だと思いました。ラブリーボーンも同じような要素があると思うのですが、この映画を通じて、昔、米国の片田舎に心優しい少女がいたことを知り、甚振られて亡くなっていった事を知ることが重要なのだと思います。何も出来なくても悼むことは出来ます。表ざたにならず亡くなっていた人々も含めて。
この映画では、警察が実に無力な存在として描かれていますが、これは今も変わりません。今日また、母親の恋人に虐待され亡くなった2歳の男児のニュースが報じられました。本来は命がけで守ってくれるはずの親に虐待され、亡くなっていく子供達があとを絶たないことが無念でなりません。
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