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January 18, 2010

かいじゅうたちのいるところ

監督:スパイク・ジョーンズ
製作総指揮:トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、ブルース・バーマン
原作:モーリス・センダック
音楽:カレン・O 、カーター・バーウェル
脚本:スパイク・ジョーンズ、デイヴ・エッガース
出演:マックス・レコーズ(マックス)、キャサリン・キーナー(ママ)、マーク・ラファロ(ママの恋人)、ローレン・アンブローズ(KW)、クリス・クーパー(ダグラス)

「KY」

今年観たかった映画の1つ、「かいじゅうたちのいるところ」です。スパイク・ジョーンズ監督。マルコヴィッチの穴で日本の映画ファンがこてんぱんに叩きのめされてはや10年、今度こそと思い観に行った人も少なくはないはず。他にもぬいぐるみマニア、原作のファン、ほのぼのした映画に飛びつくディズニー系ファンなどターゲットが多い映画といえます。

何よりも客引きとなるのが、加藤清史郎こども店長を日本語版の主人公の声優に当てたことです。客引きのため年齢設定や実演者との声質、骨格など全て無視で起用したような印象ですが、スパイク・ジョーンズ監督は「君で良かった」と言ったとかいないとか。これが何を意味するのか、果たしてCinemaXの評価やいかに。

さて、今回は店長の大活躍を祈りつつ字幕版を観ました。声優陣で固めた吹替版なら分かりますが、ド素人のタレントに声優初挑戦させるような吹き替えを観るつもりはさらさらありません。それだけしか選べないとか、切羽詰った状況では別ですが。

さて、本編なのですが、冒頭は主人公、マックスの1人ぼっち感が上手く描かれています。姉や母親にはうわべだけで相手をされ、遊び相手はぬいぐるみ。どこか懐かしいような感情に心惹かれた観客も多いはずです。ところが、姉の友人たちと嬉々として雪合戦をしながら、かまくら?を潰された時に突如、表情を変えて泣きはじめます。これを観て「?」と思った人も少なくないはず。これがこの映画初の「?」なのですが、これが序章。ここからずっと「?」は無限に増殖していきます。

マックスが家を出て、島に行くあたりは何となく理解出来ます。ところが問題なのが、このかいじゅうたち。マックスを王に仕立てますが、肝心のこれまでの王の話、そして何故、かいじゅうたちが仲違いしているのか、女の子のKWがどうして村?を飛び出したり、ふくろうみたいな2羽の鳥を友達と思っているのか、それを連れてきたら何故、かいじゅうの主役、ダグラスが怒ってしまうのか、さっぱり意味が分かりません。

冷静になるためにここで一旦、評価に移りましょう。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・5点
子供がかいじゅうのいる島に行く話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・0点

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・0点
何の変哲もない島で魅力がない。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・0点
とにかく流されるだけ流される。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
かいじゅうのヒロイン?KW。少女?ペギー葉山のように落ち着いていて不思議なキャラクター。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・3点
マックスとダグラスが打ち解けるシーン。鳴き声を真似しあったり一緒に暴れたりとちょっと楽しい。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
子供とかいじゅうの別れのシーンでも感情がびくともしない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
何故か笑えるシーンがほとんどない。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
かいじゅうたちは何かに怒っていても、理由が観客にはさっぱり分からない。

【減点項目】

筋違いのPRが行われている(-10点)
・-10点
ずばり、店長。

基礎点(15)+技術点(5)+芸術点(6)×1.5-減点(10)=CinemaX指数(19)

「F」(59点以下)

人間の感情は小さな揺らぎの繰り返しで、友人や恋人との関係もその揺らぎが大きくなればいざこざが起こりますし、仲直りすれば揺らぎは小さくなります。沈まぬ太陽の主役2人も小さな揺らぎから大きな対立に進行した好例です。かいじゅうたちは、ペンギンの群れのようにリーダーがいないようなので、小さな揺らぎで大きな対立になるのかなと最初は思いました。ただ、その勘繰りも無駄だったようです。内容そのものがないんです。

かいじゅうの島での出来事は、終始意味の分からないものでした。そもそも誰もこれまでの話をまともにしてくれないのですから。マックスも適当に島でやり過ごして、「僕が最後に出れば良かった」とか意味不明なことを言う始末。かいじゅうの風貌はどれも奇怪なのですが、こういう場合でも映画ではきちんと感情移入出来るとやがて可愛く思えてきます。例えばチャーリーとチョコレート工場のウンパ・ルンパとか。ところがこの映画では、眠気に耐えながらかいじゅうと子供の意味不明なやりとりを観ているだけなので、最初から最後までかいじゅうの見え方は変わりませんでした。

最悪なのは、マックスが島から離れるシーン。船に乗り島を離れるマックスを追って、マイケルがオイオイ泣きながら追いかけてくるのですが、ここで何か良い事を言うのかと思いきや「ワオーン」と遠吠えするだけ。一緒に遠吠えするのは2人の出会いのシーンでまあまあ印象的なのですが、その後も効果的に織り込まれていれば別ですが、何か取って付けたような感じです。マックスとダグラスの遠吠えで観客は頭の中に「?」が充満したまま劇場を出ることになります。健康にも良くありません。

かいじゅうたちのいるところは、子供とかいじゅうとの出会い、島での生活、そして別れまで、観客を鉄板で泣かせる要素が秘められている映画と言えます。ところが、それを悉く台無しにしています。島の行き帰りが割りとスムーズに説明出来ているので余計もったいなく思えてきます。原作がどうなっているかは分かりませんが、大ヒットしているならそれなりの秘密があるはず。料理を作って片っ端からドブに捨てるような作り方は実にもったいないといえます。

「子供なら分かるだろう」と判断する人がいるかもしれませんが、それは間違いです。大人が理解出来ない映画を子供が理解出来るはずがありません、一方で大人が子供目線でとバカにして作ったような映画も子供は見破って食いついては来ません。子供が作った映画なら別ですが、この映画はれっきとした大人たちが作ったもの。こども店長は客寄せにはなるでしょうが、少なくとも大人も子供も楽しめない映画のように思います。

同じように主人公が別世界(星)に渡り、現地のかいじゅう(人)との出会い、生活、別れを描き、最後の最後で主人公がとてつもなく重い一言「I see you」を吐いたアバターと見比べると、かいじゅうたちのいるところがどれだけもったいない映画か分かると思います。

2009年1月16日/ワーナーマイカルシネマズ板橋
22

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January 17, 2010

パブリック・エネミーズ

監督:マイケル・マン
製作総指揮:G・マック・ブラウン
音楽:エリオット・ゴールデンサール
脚本:ロナン・ベネット、アン・ビダーマン、マイケル・マン
出演:ジョニー・デップ(ジョン・デリンジャー)、クリスチャン・ベイル(メルヴィン・パーヴィス)、マリオン・コティヤール(ビリー・フレシェット)、ビリー・クラダップ(J・エドガー・フーバー)ほか

「中途半端」

パブリック・エネミーズです。奇怪なキャラクターばかりを演じているの印象が強いジョニー・デップですが、珍しくまともな人物設定で映画出演しました。直後にアリス・イン・ワンダーランド、 Dr.パルナサスの鏡とクセのある演技が続きますが、今回はジョニー・デップの格好良さばかりが目立つようなパブリック・エネミーズ、果たしてCinemaXの評価やいかに。

パブリック・エネミーズは実話を題材にしています。米国が青年期にあった頃、国内は犯罪や汚職にまみれていました。ストーリーは世界大恐慌の1930年代、この頃の混乱ぶりを扱った映画は、少し前ではチェンジリングを思い出します。あの映画も息子を失った母親が真実の究明を求めているのに、警察が名誉やプライドを盾に壁になってしまうというストーリーでした。

ジョニー・デップ扮する主人公、ジョン・デリンジャーは銀行強盗、つまり泥棒です。米国内では有名な人物かもしれませんが、日本には馴染みがありません。ただ金持ちだけから金を奪うというような、悪人なのに良い人という泥棒の設定は、多くの映画にも見られます。ゴッド・ファーザーのドン・コルレオーネも薬物だけには手を出しませんでしたし、ルパン三世も奪うのは財宝ばかり(しかも多くの財宝は奪った後に取りこぼしてしまったり)で人に手を出したケースは、せいぜいクラリスの心を奪った程度です。

少し前にGOEMONというひどい映画がありましたが、あの主人公の石川五右衛門や鼠小僧次郎吉なども同じ臭いがする悪人です。では、パブリック・エネミーズはどうか。タイトルを直訳すると「社会の敵」です。パブリック・エネミーズでは、金持ちから金を巻き上げるジョンを賞賛する市民の姿がほんの少し、描かれています。悪人賞賛は、芸人が幼い頃の万引き自慢で笑いをとるようなもので簡単に許すべきものではないのですが、この映画では重要な要素となるはずでした。それなのに中途半端に描くだけでやり過ごしてしまっています。

何よりも中途半端なのは、ジョンの恋愛です。ビリー・フレシェットという女性を見初めるのですが、それ以前にジョンには見捨てた女子供があちこちにいるような設定があるため、観客がどうしてビリーとの恋愛だけが真実だと思えるのでしょうか。ビリーもいずれジョン捨てられると思いつつ観続けたら、いつの間にか終わっていたというような感じでした。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・5点
大泥棒がとにかく泥棒を続ける話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・3点
愛は不変とこじつけれられなくもない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・1点
パブリック・エネミーズのように外面は良くても国内がグチャグチャだったころの米国を描いた映画は意外と多い。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・1点
ありふれた要素なのだから、もう一ひねりあると面白かった。チェンジリングでは、電話交換士がローラースケートを履いていたとか、ほんの少しの部分でも効果的なのに。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・1点
ジョンはずっと泥棒を繰り返すが、巻き込まれ感が少なく何となく泥棒を続けてしまうという感じ。だらしなくむざむざと恋人を失ってしまうあたりは、太宰治にも通じるか。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
ジョンの泥棒仲間とか、捜査官とか、脇役に味のある人物が登場するが、主人公の影が薄いのでは逆効果。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・0点
最初の脱獄作戦の時に撃たれてしまうジョンの師匠っぽい人がジョンに大きな影響を与えているっぽいが、彼の描写がほとんどないので、泥棒仲間でこの師匠のことを話題にされても観ている側はさっぱり分からない。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
ジョンの死に泣く人は多数いたが、もちろんその場しのぎの要素。恋人と引き裂かれた悲哀とか、観客がもうすぐ死ぬぞと予感してドキドキする要素などが全くない、紙芝居を見ているかのような展開だった。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
まるで銀行強盗を賞賛し、警察も徹底的に非難しない中途半端さが、本編中で感じる観客の怒りすら中途半端なものにしてしまっている。

【減点項目】

寝てしまった(-30点)
・-10点
画面も暗くて、退屈なストーリーだと眠気が襲う。

基礎点(15)+技術点(11)+芸術点(3)×1.5-減点(10)=CinemaX指数(21)

「F」評価(59点以下)

実話を題材にした映画は、その多くが実話に引きづられ、くだらないエピソードまで貧乏根性で盛り込みまくった結果、実話負けする傾向にあります。パブリック・エネミーズも例外ではないようです。無理に泥棒仲間との友情やビリーとの恋愛物語を盛り込みすぎたばかりに、ストーリーの根幹も崩壊しています。ただし、ジョニー・デップがこれでもかというぐらい格好良く撮られているので、ファンの方にとってはお宝映画になるのかもしれません。

パブリック・エネミーズの残念ぶりをみると、同じく悪いこと(ドイツ兵を殺しまくったり頭の皮を剥いだり)をする集団が主人公のイングロリアス・バスターズの滅茶苦茶ぶりが懐かしく、今となっては名作のように思えてくるのが不思議です。

2009年1月9日/シネプレックス新座
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