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December 24, 2009

アバター

監督:ジェームズ・キャメロン
製作総指揮:コリン・ウィルソン、レータ・カログリディス
音楽:ジェームズ・ホーナー
脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:サム・ワーシントン(ジェイク・サリー)
ゾーイ・サルダナ(ネイティリ)
シガーニー・ウィーヴァー(グレース・オーガスティン)
スティーヴン・ラング(マイルズ・クオリッチ大佐)

「濃縮果汁還元」

アバター(Avatar)です。横綱・白鵬のような顔の青い巨人が登場する予告編を観た時、「ジェームズ・キャメロンは呪われているのか?」と思いました。「こんなの、映像にしちゃいかんだろう」と。ところが、月日が経つにつれ、少しづつストーリーが明らかになり、「これ、ひょっとして面白いかも」と気になりだしたところで早速観にいったアバター。CinemaXの評価やいかに。

「アバター」とは、一般的にはチャットサイトなどネット上のキャラクターを意味します。まだまだネット環境が脆弱で苦し紛れでようやくADSLが普及し始めた頃、ネット上の仮想チャット空間が多数生まれました。特にWCJでは奇妙なキャラクターが行き交い、これがアバターなのかという強烈な印象を抱きました。

「アバター」におけるアバターも基本的には同じです。未開の星の先住民のDNAと人間のDNAを結合したアバターを作成して、そこに人間の心をリンクさせて、その星に乗り込み先住民に溶け込もうとするストーリーです。未開の地を文明人が侵略しようとするエピソードが盛り込まれた映画は珍しくなく「ポカホンタス」「風の谷のナウシカ」などにも共通する部分といえるでしょう。

また、人間と別のものがリンクして動くというのは、過去のロボットアニメに多数存在しますし、来年公開の「サロゲート」も同様の方法でしょう。アバターを操縦する装置なんかは「エヴァンゲリオン」のエントリープラグそのものですし、要は良いとこ取りをしまくった映画といえます。

いいとこどりの映画といえば、「キャシャーン」とか「GOEMON」を思い出します。この2つの映画は、あちこちから面白そうな題材を集めて盛り込み過ぎたことで支離滅裂になった失敗例の代表と言えるのですが、「アバター」は逆に強烈に見応えのある映画に仕上がっています。それは、丁寧なストーリー展開もさることながら、SF映画としての要素を全て備えているからだと言えます。

過去、CinemaXではSF映画に必要な要素を述べたことがあります。①現在と繋がっている部分がある②今とは少し違う何かを体感させてくれる③その世界に行きたくなるということです。

私自身が、最初に「アバター」を毛嫌いした1つに「どうせ人間と異星人が戦争するだけの映画だろう」と短絡的に考えていたからでした。確かに本筋は人間と異星人の争いなのですが、後にアバターを操縦することで展開するということを知り、興味を憶えました。

「アバター」は、近未来の話で、遥か遠くの星での出来事なのですが、地球人の武器や道具は実現はしていないにせよ近未来にはあってもおかしくないものばかりです。そこが今とは違う何かという部分を体感させてくれるという部分にも共通します。人間の想像力には限りがないというのは、積み重ねられていく上では限りがないのかもしれませんが、いきなりぶっ飛んだものに対応するほど器は大きくありません。

アバターでは設定や武器、道具など「ああ、あるかもな」程度のアイデアが丁寧に積み重ねられています。それぞれの形状も理由があって、町のあちこちに天守閣が林立する「GOEMON」のような状況ではありません。空に浮かぶ山とか、どこかで見たぞというものも少なくはないのですが、設定に裏打ちされた良いとこ取りならかえって武器になり、強烈なアウトプットを行うことでこの映画はさらに見応えのあるものになっています。

さらに特筆すべきは、ストーリー構成の丁寧さです。「アバター」は前半の展開はかなり怠惰で眠気が襲うことも少なくないのですが、実は何気ないシーンも後のシーンへの伏線になっています。例えば爆撃機から落ちてしまう主人公が何故助かるのか、「エイワ」がどのように先住民を救うのか。一見偶然のようですが、実は前半に伏線がきっちりと張られています。

さらに、SF映画でよく考えれば説明がつかなかった「異星人が何故、英語を喋るのか」さえも説明しています。地球とは全く関係のない世界の話であるスターウォーズのキャラクターがどうして英語を話すのか、考えても説明の私用がないのですが、アバターではしっかりと説明しています。その理由も人類の過去の侵略の歴史を振り返れば至極自然なものでした。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点
「アバター」は多くがCGなのでアニメーションになるか通常の映画として扱われるかは微妙ですが、CinemaXでは洋画と評価しました(アカデミー賞ではアニメーションと判断するための比率が存在する)。

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
アバターを利用して未開の星を侵略しようとする地球人の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・10点
人類の侵略の歴史に通じる。それは今なお存在する。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・10点
(3Dでは特に)未開の星を体感させてくれる。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・10点
3Dは目が疲れるので、3D併映では初めて2Dを鑑賞したが、この映画こそ3Dで鑑賞すべきと思った、失敗。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
地球人でありながら先住民と立ち上がろうとする。主人公にとっての敵と味方が入れ替わる要素を盛り込んでいることがこの映画をさらに面白くしている。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
先住民の女性、ネイティリ。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
エンドロールで流れる曲が「I see you」を連呼しているように「I see you」がこの映画のテーマの1つになっている。ネイティリが何度か口にするセリフでもあるのだが、最初は「何言ってんの?」ぐらいにしか感じない言葉が、最後のシーンでは爆弾のようなインパクトを持つ。つくづく、この映画の緻密かつ効果的な構成には驚かされる。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・10点
前述の「I see you」のシーン。じわりと感動がこみ上げる。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・5点
西洋人特有のウィットな会話は必要以上に入れると逆効果になる。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・10点
「アバター」では地球人そのものが怒りの対象となる。同じ地球人である観客にも思い当たる部分があるからこそ、怒りは増幅されるようだ。森にブルドーザーが入ってくるシーンは、「THIS IS IT」でのマイケル・ジャクソンの遺作にも共通する部分でもあるように思う。

【減点項目】

・減点なし。

基礎点(15)+技術点(50)+芸術点(45)×1.5-減点=CinemaX指数(133)

「A」評価(120点以上)

見た目で大損している映画ですが、異星人が地球人とは異なる体をしているからこそ成り立つ映画ともいえます。3D映画には全く魅力を感じなかったのですが、この映画は例外です。
2009年12月23日/シネプレックス新座
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December 22, 2009

おとうと

監督:山田洋次
音楽:冨田勲
脚本:山田洋次、平松恵美子
出演:吉永小百合(高野吟子)
笑福亭鶴瓶(丹野鉄郎)
蒼井優(高野小春)
加瀬亮(長田亨)
小林稔侍(丹野庄平)

「寅抜き男はつらいよ」

「おとうと」です。山田洋次監督作品といえば、「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」などシリーズものに加えて時代劇や一昔前の現代劇のようなものを生み出してきました。今回は「おとうと」。ちょうど釣りバカ日誌がフィナーレを迎え、次のシリーズとなるのかと思いましたが…果たしてCinemaXの評価やいかに。

おとうとは、真面目な姉と破天荒な弟の物語です。映画ファンの方ならすぐにピンと来るかもしれませんが、破天荒な兄と真面目の妹の物語であった男はつらいよの設定をひっくり返しただけじゃないかと。正解です。男はつらいよの冒頭「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ」の通り、さんざん揉めた挙げ句、さくらはシリーズ第1作で博と結婚します。おとうとは、あらかじめ姉の吟子が結婚して、未亡人となり娘と暮らしているだけのこと。つまり、男はつらいよシリーズに当てはめれば、冒頭からシリーズ終盤の状況にあるわけです。

おとうとでも、弟の鉄郎が病床に臥している際に姉の吟子に「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ」のような言葉を吐くシーンがあります。基本設定は同じわけです。ところが、男はつらいよのように感動はしません(周りの席のおばちゃんは号泣していましたが)。それは何故か。劇中に兄妹愛を説明するシーンの積み重ねがないのです。

冒頭は、吟子がいかにして未亡人となったかを娘、小春が延々と説明します。その次が小春の最初の結婚式。ストーリー構成における結婚式というものは、親戚縁者を一気に説明出来るという効果もありますが、見た目が派手なので手詰まりの時に苦し紛れに入れる方法もあります。おとうとは前者だと思うのですが、このシーンがやたら長い。鶴瓶の演技に見入ってしまうので飽きはしませんが、後の展開が心配になるほど長いです。おまけに、弟の挙動を誰も止めようとしないところに疑問を感じます。作り手が時間稼ぎをしているのではないかと。

冒頭から大きく時間が割かれて、物語がスタートします。タイトルはおとうとですが、実はこの映画の面白みは母と娘のやりとりにあります。脚本家が2人なのでどちらが主力になっているかは分かりませんが、この2人の女性のやりとりが実に自然で面白いのですが、鉄郎が絡むと取ってつけたようにテンポが狂ってしまう。男はつらいよでも寅さんが話を混乱させることによる面白さを描いているのですが、鉄郎が絡むシーンは質が違います。このキャラクター抜きでも話が成立するのではないかと思えるぐらい、違和感を感じました。

その鉄郎も咳をして、後のシーンで病魔に襲われるという分かりやすい展開。最後は、みんなに看取られて分かりやすい別れ。弟を思う姉の姿を描いているのですが、そこに至る積み重ねがないのが、この映画のウィークポイントと言えるでしょう。結婚式に時間を割かずに、若い頃の姉弟を描くとか、もっともっと表現方法はあったはずです。人が死ねば悲しいもの。周りの観客には号泣している方もおられましたが、そのシーンだけのことです。これまでの積み重ねがないだけに姉の気持ちがこちらには伝わって来ず、感動もクソもありませんでした。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の邦画(20点)
・20点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
弟を思う姉の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・10点
不変のテーマ。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・5点
亨が説明する「大工のウソ」は興味深かった。ストーリーの本筋には全く関係ないのだが、小春の再婚のちょっとしたきっかけになっている。この映画はこういう小ネタがあちこちに効果的にちりばめられている。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・5点
終盤に登場する民間ホスピスは、一昔前ならもっと大きな観光要素に成り得たはず。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
愚かなまでに弟をかばう姉。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
娘、小春。設定もさることながら、蒼井優の演技力には驚かされる。視線1つ、声だけでも気持ちが伝わってくる女優は若手では極めて貴重ではないかと感じた。テレビドラマで安売りせず、映画にこだわって欲しい。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・3点
意外とない。自転車屋と歯医者の関係は箸休めのようで楽しい。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
極悪人が出ない、姉と弟が決定的な仲違いをしないせいか、泣けない。弟が亡くなるシーンではあちこちですすり泣く声が聞こえたが、ここでは評価外。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・5点
姉、吟子がクソ真面目すぎる故に時折おかしなことを言うのは面白い。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
極悪人が出ないので当然、0点。

【減点項目】

・減点ゼロ
ちなみに前売券やポスターで鶴瓶が落語をしているかのような写真はあるが、結婚式でへべれけになって王将を歌っているシーンのもの。落語とは全く関係ないので騙されないように。

基礎点(20)+技術点(40)+芸術点(18)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(87)

「C」評価(80~99点)

山田洋次監督作品特有の底力はあるのでだらだら観ていても飽きない映画なのですが、感動のツボが皆無なのが残念でした。弟が死んでしまったのでシリーズには成り得ないのですが、吉永小百合と蒼井優の共演はまた観てみたいと思いました。

2009年12月21日/よみうりホール(試写)
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December 21, 2009

カールじいさんの空飛ぶ家

監督 ピート・ドクター
製作総指揮 ジョン・ラセター 、アンドリュー・スタントン 原作 -
音楽 マイケル・ジアッキノ 脚本 ボブ・ピーターソン 、ピート・ドクター
エドワード・アズナー(カール・フレドリクセン)
ジョーダン・ナガイ(ラッセル)
ボブ・ピーターソン(ダグ/アルファ)
クリストファー・プラマー(チャールズ・ムンツ)

「アイスエイジ4」

カールじいさんの空飛ぶ家です。楽天の野村前監督夫妻を担ぎ出してPRしていましたが、吹替版は下手くそな芸能人を起用せずちゃんとした声優を揃えていました。これだけでも2割増しのポイントを与えたいぐらいです。大規模なロードショーを行った映画で吹替版に下手くそな芸能人を揃えないというのは、最近では異例中の異例とだと思うのですが、これも不況の余波なのか、映画ファンにとっては字幕版の公開が極端に少ない映画なので嬉しい限りです。果たしてCinemaXの評価やいかに。

カールじいさん…の原題は「UP」です。この映画は、全米公開からしばらくはトップをひた走ると言う好調な興行成績を残しています。日本の興行成績は全く当てにならないのですが、全米の興行成績だと裾野が広く数週間上位に居座った映画はそれなりに面白い映画が多いような気がします。カールじいさん…もその1つ。公開から遥か前、日本に紹介された当時は、ガキとじいさんの旅物語のような下りでしたが、公開が近づくに連れてじいさんの過去がクローズアップされてきています。

本編をご覧になると分かるのですが、この映画の基本構造は「アイス・エイジ」に似ています。そこにじいさんのエピソードとガキのエピソードをくっつけたような感じです。冒頭のじいさんのエピソードは、それはそれで1つの物語になっているのですが、少々恩着せがましくテレビ番組の感動秘話を押し付けられているような感じです。

ガキもガキで、不遇な人生を送っているのですが、結果的にどうなるかは観客に丸見えです。冒険団の表彰式?と最後に1つだけ残ったバッチのスペースに何が入るのかも多くの観客が予想出来て、実際にその通りになって終わります。極悪人は1人も出ず、誰もが安心して観られるディズニー映画の王道を行く作品と言えるでしょう。決してハズレではありませんが、印象が薄く歴史に埋もれていくタイプの映画だとは思いますが。

【基礎点】

アニメーション(ジブリ以外)(5点)
・5点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
カールじいさんが亡き妻のために幻の滝に向かう話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・10点
愛は不変のもの。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・3点
犬を翻訳機で喋らせると面白い。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・3点
犬はクライマックスの要素となるため魅力的ではあった。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
幻の滝に向かおうとする自分の気持ちと犬や鳥、ガキを思いやる気持ちとの葛藤が面白い。頑固な性格は後に醸成されたものであることは冒頭部分で巧みに描かれている。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・7点
登場人物が極めて少ない冒険モノには理想的な映画。ここもアイス・エイジに共通する。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・7点
あざとい部分もあるが、冒頭のじいさんのエピソードは印象的なシーンが多い。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・3点
同じく泣けるシーンは冒頭部分に集中する。ただしこの部分は本筋ではない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・5点
犬がコミカルに描かれている。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・2点
真の意味での悪人は出ない。落下する冒険家や犬も川に落ちたり風船やパラシュートを背負っていたりと死ぬことはないのがディズニー流。

【減点項目】

筋違いのPRが行われている(-10点)
・-3点
野村夫妻を起用しているように、日本でのPRは冒頭部分にフォーカスし過ぎ。夫婦愛の物語と思って劇場を訪れる観客も少なくないはずで、これでは騙しているも同じ。

基礎点(5)+技術点(36)+芸術点(24)×1.5-減点(-3)=CinemaX指数(74)

「D」評価(70~79点)

PRの仕方にやや問題があると思われるものの、下手くそな芸能人を起用せずプロの声優陣を揃えたのは極めて好印象。この流れを是非続けて欲しい。吹替版では各所に日本語版としてのカスタマイズがなされて子供でも楽しめるはず。ただし、3Dはひどく疲れる。追加料金を徴収出来るので積極的になるのは理解出来るが、もう少し2Dの上映を増やすなど観客に選択の自由を与えて欲しい。

2009年12月20日/ワーナーマイカルシネマズ板橋
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December 19, 2009

沈まぬ太陽

監督:若松節朗
製作総指揮:角川歴彦
原作:山崎豊子
音楽:住友紀人
脚本:西岡琢也
出演:渡辺謙(恩地元)
三浦友和(行天四郎)
松雪泰子(三井美樹)
鈴木京香(恩地りつ子)
石坂浩二(国見正之)
香川照之(八木和夫)
木村多江(鈴木夏子)

「よくがんばりました」

沈まぬ太陽です。この作品と出会ったのは単行本発刊直後の1999年。映画、ドラマを含め山崎豊子作品にまともに触れた最初の作品が、沈まぬ太陽でした。当時は、工場で働いており、昼休みに読書をする習慣がありました。読んだのは、いくつかの森村誠一作品と、藍より青く、そして沈まぬ太陽でした。面白い本に出会うと、かみ締めるようにゆっくりと読みたくなるものですが、沈まぬ太陽がまさにそれでした。

沈まぬ太陽は、実は10月上旬の試写会で一度観るチャンスがあったのですが、F1日本GPと重なったため断念しました。2ヶ月越しの鑑賞が実現したことになるのですが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

沈まぬ太陽が何故、映画化されなかったか。それは、作品の成立が10年ちょっと前と比較的新しい作品であること、明らかに親方日の丸のあの航空会社を刺激する内容であったことなど大人の事情が絡んでいるのですが、何よりも航空業界と御巣鷹山のあの事故を扱ったことで、スケールが日本映画の限界を超えるほど膨大になってしまうという点にあるでしょう。ANAの全面協力を得られたハッピーフライトでさえも、実機での撮影はわずか2日程度でした。

さて、本編は冒頭から意味不明なカットバックが続きます。主人公、恩地元のケニアでのハンティング、御巣鷹山の事故、恩地元率いる労働組合の団体交渉、観客は大いに混乱すると思われますが、膨大な作品を一本の映画に収めるための苦肉の策といえるでしょう。原作では、恩地が何となく労働組合に回され、委員長となり団体交渉を成功させるものの、報復人事で海外をたらいまわしになり、その後に取ってつけたように御巣鷹山の事故が舞い込みます。そして、会長室編に続くわけです。

テレビ局が金儲けのためにわざわざ分割して映画を作るのとは本気度が違うのですが、10分のインターバルについては、単に話題づくりのように思えてきます。休憩があるのはありがたいのですが、ここでリズムが中断してしまうというデメリットもあるように思えてくるからです。

実話を元にした映画のほとんどは、実話負けしてしまって駄作になりがちなのですが、沈まぬ太陽はモチーフにしただけで基本はフィクションです。それでも、御巣鷹山の事故ではメモ帳に書き残した一家の主のエピソードなど、実際の日航機墜落事故において、誰もが強烈に印象に残るエピソードが盛り込まれています。123便、大阪行き、そこに乗り込むスチュワーデスや乗客がどのような運命を辿るか、あの時代を生きた観客には予想出来るわけです。

司馬遼太郎の作品がウケるのも、実話をもとにしながら、創作を盛り込んでいるからです。歴史上のチェックポイントを通過しながら、途中のエピソードは蛇行して、思う存分司馬遼太郎の作り話が盛り込まれる。日本人の坂本龍馬観の多くは、司馬遼太郎が作り出したといっても過言ではなく、1つの真実に100の嘘を混ぜることの効果が存分に感じられます。沈まぬ太陽も同様です。

沈まぬ太陽の肝は、恩地元と仰天四郎との関係です。それとなく労働組合に回され、委員長と副委員長としてともに戦い、やがて反目し合い、その一方でどこかで相手を思いやる。人間の感情のゆらぎが巧みに描かれています。御巣鷹山の事故や事故処理、利権にまみれる政治家や官僚の腐り具合も見ものなのですが、主役2人の対立になると映画の内容がぐっと濃くなることが分かるはずです。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の邦画(20点)
・20点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
左遷されようとも家族に疎まれようとも自分の信念を貫く男の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・8点
人間の生き方の1つとして、永久不変のテーマでもある。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・8点
航空会社の覇権争いや利権に群がる政治家や官僚の腐り具合が生々しく興味深い。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・8点
人間の醜さも成長期にある日本では許されたことが分かる。。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
絶対に会社を辞めず、愚かなほど信念を通す。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
仰天四郎と八木和夫。香川照之の器用さを改めて感じるとともに、不器用で2枚目と3枚目の中間でもがいていた三浦友和に新境地を与える配役だったのかもしれないと思った。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・2点
意外とない。強いて言えば、報復人事でお客様係として椅子に座らされるだけの八木和夫のシーン。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・2点
御巣鷹山のエピソードは別として、泣ける部分は少なかった。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
政界、官界と悪いやつらばかりなのは別の意味で面白い。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・3点
利権に群がり変わりそうで変わらない構造は、旧自民党政権を象徴しているようで興味深い。官僚も同様。今回の件に関して、あの航空会社が客が減ると対策を講じようとしているようだが、まずは変わりそうで変われなかった体質が今の経営危機を産んているのだということを省みるべき。観客が映画の内容とこの航空会社に対するイメージとを100%直結すると考えているのなら、これほど愚かなことはない。

【減点項目】
・減点なし。

基礎点(20)+技術点(42)+芸術点(19)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(91)

「C」評価(80~99点)

番宣まみれで観客を欺くテレビ局の絡んだチャラい映画と違い、逆風を覚悟しながら孤立無援で作られた映画。CGのショボさがちょっとだけ気になるものの、東宝が本丸の映画として立て、実力派キャストを揃えた今年一番頑張った邦画として評価したい。

2009年12月18日/TOHOシネマズみゆき座
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December 04, 2009

よなよなペンギン

監督:りんたろう
原作:りんたろう、林すみこ
音楽:本多俊之
脚本:金春智子
声の出演:森迫永依、田中麗奈、太田光、田中裕二、永井一郎ほか

「大人だまし」

よなよなペンギンです。ちびっこ多数の試写会。冒頭、監督の紹介があったのですが、「鉄腕アトム」「銀河鉄道999」「幻魔対戦」のりんたろう監督です。ちびっこたち口あんぐり。古過ぎます。「アトム?」と反応していたちびっこもいましたが、遥か45年前に公開された劇場版鉄腕アトムのことです。有名な監督の割に劇場版銀河鉄道999ぐらいしかパッとしない印象がある監督が送る、この「冬最大の心温まるストーリー」と紹介されるよなよなペンギン、果たしてCinemaXの評価やいかに。

よなよなペンギンは、日仏合作のフルCG映画です。邦画のCGアニメとして考えると、画質は格段にグレードが高いのですが、日本人にはない色使いやデザインがどうも馴染めなかったりします。絵は綺麗でも奥行きがない。これは致命傷です。おまけに全体的に暗い。数年前、スパイダーマンの実写版が公開されてヒットしましたが、見せ場は何といっても糸一本で摩天楼を飛び回るシーンです。アメコミ実写化ブームに乗って、同じ頃にデアデビルも実写化されましたが、こちらは真っ暗。夜しか行動しない主人公なので仕方ありませんが、もう少し何とかなったはずです。

よなよなペンギンは、ジブリっぽい主人公が、ジブリっぽく知らないところに行って、童話にありがちなちょっと悪い子に出会って、プロメシュームみたいな敵をやっつけるという、目新しさゼロのストーリーで展開します。面白いのは、童話にありがちなちょっと悪い子、ザミーが堕天使だったということ。ここは少しだけ話に引き込まれるのですが、上野樹里(ファンの方ごめんなさい)のようなイライラ感が漂う主人公にかき消されてしまいます。

収穫は、田中麗奈の器用さに加えて、太田光はいろんなことが出来るんだなということぐらい。主人公の父親役の高橋ジョージなんか最悪で、深夜番組で人形寸劇を披露する三村マサカズでいいんじゃないかと思えるほどでした。不景気なのか声優としてタレントを大量に送り込み、学芸会みたいなアニメを作るのはもうやめて欲しいです。素人声優の大量投入で全体のレベルがダウンしていることが、名声優、永井一郎の存在が際立っていたことでも証明されています。

評価に移ります。

【基礎点】

アニメーション(ジブリ以外)(5点)
・5点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・2点
ペンギンになって空を飛ぶ。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・3点
死別した親を思う子供の心は不変のものだが、家族とか、友情とか、ストーリーがたいしたことない割りに観客に押し付けすぎる。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・1点
日仏合作とはいえ日本はこんな画質の良いCGが作れるんだと思った程度。厳密にいえば観光要素ではないかも。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・1点

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・2点
父親に会いたいという部分だけ。堕天使を助けたり、プロメシュームみたいなのを倒したり、それ以外の行動は行き当たりばったり。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・0点
いない。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・0点
ない。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
主人公が父親に飛ぶのを助けてくれるシーンは、泣けるようで泣けない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・1点
堕天使の過去は面白い。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
どこだか分からない話なのに、宝船を出すのは腹が立った。キャシャーンはいつの時代か分からないのに、半年後とか無意味な時系列が突然、飛び出したのに似ている。

【減点項目】

・減点なし。
まだPRを見たことはないが、この冬一番の心温まるストーリーというのは著しく疑問。

基礎点(5点)+技術点(9点)+芸術点(1点)×1.5-減点(0点)=CinemaX指数(16点)

「F」評価(59点以下)

よなよなペンギンは一見、子供たちが喜びそうな映画なので、大人たちも安心して連れて行くでしょうが、これこそ大人だまし。大人も理解できない映画を子供たちが理解出来るはずもありませんし、家族や友情をテーマにすれば観客が感動すると思うのは大間違い。ストーリーが追いついていませんし、CGの質は高いものの日常とはちょっと違う体験が出来るアミューズメントパークような迫力もありません。それでいて、親子だ、友情だと言って感動を押し付けようとするのですから、子供たちも大人のあざとさを見抜いて劇場でぐずることでしょう。ぐずらなければ、ストーリーそっちのけで画質は高いCGアニメに興味を示しているのでしょうから、芸術家に向けた教育方針に変更することをお勧めします。

2009年11月29日/文京シビックホール
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