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November 08, 2009

イングロリアス・バスターズ

監督:クエンティン・タランティーノ
製作総指揮:エリカ・スタインバーグ、ロイド・フィリップスほか
脚本:クエンティン・タランティーノ
出演;ブラッド・ピット、クリストフ・ヴァルツ、メラニー・ロランほか

「バカみたいな映画」

イングロリアス・バスターズです。監督はクエンティン・タランティーノ。実は初タランティーノだったりします。キル・ビルとか、キル・ビルとか、観ようかなと思いつつこれまで劇場まで足を運ぶに至らなかったところに防御本能のようなものを感じるのですが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

イングロリアス・バスターズは、いくつかのエピソードで構成されています。わざわざエピソードに分類することもないのですが、音楽の絡め方を含めて古臭い映画の雰囲気を漂わせています。そして、時代に逆行するような残虐なシーンのオンパレードも、古臭い要素の1つといえるのかもしれません。

舞台挨拶でタランティーノ監督曰く「血がドバドバ出る」と言っていた通り、ナチス兵をバットで殴り殺すわ、頭の皮は剥ぎまくるわ、額を切り刻むわで、かなりショッキングです。残虐なシーンだけでは、ホラー映画のようになってしまうのですが、困ったことにイングロリアス・バスターズは中途半端にまともな映画だったりします。

例えば、死の真逆に生が存在するというのは近代以降の小説家にもみられる手法で、映画でも北野武監督作品に顕著にみられます。つまり、死の要素があれば、同じ分だけ生がある。残虐の真逆には、愛があるというように、その間でどのように振り子を動かすかが、脚本家や監督の手腕の見せ所ということになります。

ところが、イングロリアス・バスターズの振り子は壊れているようで、ひたすら残虐なだけ。たまに持ち込むユーモアに殺意さえ抱いてしまいます。監督が「脚本はかなり書き込んだ」と言っている通り、エピソード1の登場人物のやりとりとか、無駄に時間をかけながら心理作戦のようなストーリーが展開します。シーンごとの人物のやりとりは面白く、見応えもあるのですが、残念ながらシーン止まり。全体のテイストにはなっていません。

全体のストーリーの展開はメチャクチャです。舞台はナチス占領下のフランス。当時の歴史や人物を織り交ぜているのですが、殆どが創作。どこかに誰もが知っている歴史上の事実や事件を絡めれば、リアリティが増してさらに面白くなったかもしれませんが、そんなことをやらないのがこの監督のポリシーなのかもしれません。もう、さっぱり分かりません。

シーンごとの登場人物のやりとりで感じたのですが、この人は監督としてアクション映画とかやらずに、じっくり人物を描くような映画の脚本家になったほうが活躍できるのかもしれません。メチャクチャなストーリーでも、B級映画としてこき下ろされる一方で何週か全米トップに位置するというのは、タランティーノ監督の脚本家としての腕が良いからなのでしょう。まあ、これからも監督を続けるのでしょうが。

格好つけて自分の才能によって意味不明の映画を撮るような監督よりも、タランティーノ監督のように吹っ切れておかしなものを作ってしまうほうが、潔い感じがします。世の中に面白くない映画、つまらない映画は数多いものの、バカみたいな映画は少なかったりします。そういう作品を生み出すということでは、この監督は貴重な存在なのかもしれません。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
連合軍の極秘部隊の男やユダヤ人の女がヒトラーを暗殺しようとする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・5点
集合体の中でのマインドコントロールの怖さは感じた。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・5点
ドイツ人の「3」の指の立て方はちょっと違う。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・5点
バカみたいな要素だが、小さなことが大事件になる展開は面白い。

主人公に貫通行動があるか(10点)
・10点
秘密部隊のメンバーたちは、ナチス兵をぶっ殺して頭の皮を剥ぐ。
もう一人の主人公、ユダヤ人の女はヒトラーを暗殺する強烈な動機がある。
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・8点
ユダヤ人の女、ショシャナ。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・9点
2人残ったナチス兵の1人を殺して頭の皮を剥ぐラストシーン。バカみたいなストーリーに毒されてしまったのか、最初のショッキングな印象が薄れ笑ってしまった。これも術中にハマっているのかもしれない。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
泣く要素は皆無。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・3点
クスクス笑いの多い映画。極秘部隊がイタリア人の振りをするのは、バカバカしくて、それでいて笑ってしまうので悔しくなる。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・2点
残虐なナチス兵でさえ、組織に動かされていることが分かるので人物に対する怒りは意外にも感じられない。観客にこういう印象を抱かせるのも脚本の手腕か。

【減点項目】

・減点ゼロ。
ただし、よく見かける画像(下部参照)は本編とはあまり関係ない。映像のバックに流れるデビッド・ボウイの「キャット・ピープル」を含め、このシーンは監督の趣味と見た。

基礎点(15)+技術点(33)+芸術点(22)×1.5(0)-減点=CinemaX指数(81)

「C」評価(80~99点)

舞台挨拶でのブラッド・ピットのフロンタレた態度でやや不快だったのですが、一方で横に通訳を付けず日本語で挨拶もしたジュリー・ドレフュスは印象的でした。彼女は今回、タランティーノ監督の脚本の当て書きで出演を受けたものの、チョイ役(ゲッペルスの愛人通訳)という微妙な立場。何故今回、来日したのかピンと来ないのですが、あれだけ日本語の発音が綺麗なのですから、お茶のCMなんかに出演出来そうです。濁音もばっちりですし。

監督も監督で、日本の風習とかも悪乗りで理解している感もあるのですが、日本に興味を寄せる表現の仕方としては、それはそれでいいのでしょう。

2009年11月4日:東京国際フォーラム
090930ibasterds

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一筋縄ではいかない映画ばかり創り続けている、クエンティン・タランティーノ Quentin Tarantino。 前作、デス・プルーフ in グラインドハウス Grindhouse では、場末の映画館の雰囲気を出すためにあえて「2本立て」+「実在しない映画の予告編4本」という通常考えつかない手法を使い、度肝を抜かれた。 残念ながら日本では、2本立てがバラバラにされ、別々に公開されるという信じがたい一方、実に日本的な事態ではあった。 (一応弁護すると、公開直後だけは「デス・プルーフ」 と「 グラインド... [Read More]

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