2012
監督:ローランド・エメリッヒ
製作総指揮:ローランド・エメリッヒ、ウテ・エメリッヒ、マイケル・ウィマー
音楽:ハラルド・クローサー、トマス・ワンダー
脚本:ローランド・エメリッヒ、ハラルド・クローサー
出演:ジョン・キューザック、キウェテル・イジョフォー、アマンダ・ピート、オリヴァー・プラットほか
「メインディッシュだけがそこそこ美味い店」
2012です。リーマンショックによる世界的な経済危機の影響の余波なのか、今年はショボい映画が多かったような気がするのですが、呪縛が解けたようにここに来てようやく観たくなる映画が増えてきました。2012もその1つ。壮大なCGを駆使しどのような映画になるのか、果たしてCinemaXの評価やいかに。
この映画は、マヤ文明では2012年の冬至あたりで週末を迎えるということをヒントにノアの方舟を絡めて描かれています。予言や周期的な天変地異を扱った映画はSF映画として鉄板なのですが、1999年7月を過ぎても地球は滅びず、ハレー彗星が戻ってくるのも遥か先、地球温暖化は映画の題材として陳腐さが漂うようになっている昨今、このようなマイナーなエピソードを引っ張り出すのは、それだけ題材に困っていたということなのかもしれません。
その2012をいざ鑑賞してみると、前半はどうでもいいような展開です。どうして天変地異が起きるのか能書きを垂れ、脇役はおろか端役級の登場人物までエピソードを紹介するLOSTのようなだらだらぶり。中盤まで「こいつ、誰?」というような登場人物が平然とあらわれます。そもそも、天変地異の理由も劇中の科学者が驚いているばかりで観ている側にはピンと来ないものでした。
前半がこのようなだらだらぶりですから、予告編に多用されている迫力あるCGは中盤から。そのCGも主人公があまりにもタイミング良くピンチを切り抜けていくので緊迫感もクソもありません。何度も見せられれば観客だって学習します。「どうせギリギリで切り抜けるんでしょ?」という意識が働いているので、崩壊する街の中、崩れ落ちてくるビルや高架橋を避けながら疾走したり、地割れする滑走路から飛行機で逃げたり、火山弾を避けながら車を走らせたり、崩れ落ちるビルをかすめるように貨物機を飛ばしても緊迫感はゼロです。
2012年が少しだけ面白くなるのは、ノアの箱舟のような脱出船に乗り込んだ後です。観客はSF映画に対して「少し手の届かない程度の非日常体験」を期待しています。あまりにも日常とかけ離れると感情移入が出来ませんから、例えば2012年では脱出船のデザインや機能が大きなポイントになるわけです。逆に言えば、天変地異に見舞われる街や津波に呑まれる船の映像は、一昔前なら目新しさもあったでしょうが、CGが当たり前になった現在では、そこはあまりウリにはなりません。
ノアの箱舟と脱出するまでの顛末は、息を呑む緊迫感がありました。ハッチが閉じずに主人公が奮闘するシーンも、中盤で展開されたレール見え見えの展開で次から次へと災難を乗り越えるシーンよりは遥かに緊迫感に溢れていました。
一方で残念なのは、ストーリーに絡む登場人物がやたら多く、予定調和のように主人公に遠い脇役から殺されていくことです。まるでアルマゲドン。そして、家族愛、兄弟愛と米国大統領への妙な賛美。ろくな悪役も配さず奇麗事ばかりで組みあがった映画のどこに感動のツボがあるのでしょうか。
評価に移ります。
【基礎点】
一般の洋画(15点)
・15点
【技術点】
テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・3点
何となく天変地異を乗り越えようとする男の話。
そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・3点
地球滅亡モノはよほどの理由付けをしないと陳腐なものになってしまうことに留意する必要がある。
観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・3点
脱出船とその格納庫は壮観だったが、肝心の天変地異の理由は劇中の科学者が勝手に納得しているだけ。
観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・3点
主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・3点
主人公は家族を守っているようで、実はそうでもない。貨物機を元妻の恋人と富豪の手下に操縦させといて、自分は富豪と談笑し、家族を抱きしめて「大丈夫だ」と。あほか。
【芸術点】
印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
貨物機を操縦して死んだ富豪の手下、ギアに挟まれて死んだ主人公の元妻の恋人。脇役が主人公以上に味を出してしまうのは、ダメな脚本の典型。
印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・0点
脱出船にも乗らず、最後まで国民を気遣う米国大統領の美しい行動に反吐が出そうになった。
泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
米国大統領と娘の会話で周囲の鼻すすり音を確認。脇役のそのシーンだけの行動に涙させるのはダメな設定の典型。アルマゲドン方式。
笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
冗談をちょいちょい繰り出されると殺意すら抱く。
怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
大統領補佐官と富豪はもっと悪役に成り得たのに、中途半端に良い人にしてしまった。例えば通勤時間帯に電車が止まっただけでも人の心はささくれ立ってしまうのに、地球滅亡を前にほとんどパニックが起きないのが異常。何を描きたいのかが分からなかった。
【減点項目】
筋違いのPRが行われている(-10点)
・-3点
前半は少なくとも予告編のような緊迫感は描かれていない。
話に絡むキャラクターが多すぎる(-10点)
・-8点
殺す用に生かしているようなキャラクターが多すぎる。
無意味なシーンが多すぎる(-10点)
・-3点
話に絡む登場人物が多く、それぞれが家族愛をさらけ出すのでシーンがやたら膨らむ。とにかく性善説に立って作られたような蕁麻疹の出そうな映画。
基礎点(15)+技術点(15)+芸術点(3)×1.5-減点(14)=CinemaX指数(21)
「F」評価(59点以下)
2012は後半だけそこそこ面白いものの、そこに至るまでに観客は延々と待たされます。エンドロールも無駄に長くて曲もピンと来ない…皮肉にもこの映画を象徴しているかのようです。久々の巨大クソ洋画に出会い、別の意味で興奮しています。





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