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August 28, 2009

13日の金曜日

最近の試写会には、劇場公開を前にした試写だけでなく、DVD発売を記念してという風変わりなものもありますが、今回行ってきたのはブルーレイディスク発売記念イベント『13日の金曜日新・旧対決!超豪華13金マニアによる副音声試写会』です。単なる試写会ではなく、コメンテーターが最前列であれこれ薀蓄を垂れながら、映画を観るという世界初(?)の試みです。果たしてCinemaXやいか…といいたいところですが、CinemaXではリバイバル上映を含む劇場公開の映画を対象にしているので、今回は前例にならって番外編ということでご紹介します。

「副音声」を発信するコメンテーターは、清水崇、山口雄大、石原まこちん、須田剛一、ジャンクハンター吉田の各氏。彼らが最前列に座り、13日の金曜日(以下、13金)の全シリーズにわたる薀蓄が語られるわけですが、実はシリーズに出演予定で話が途中まで進んでいたとか、瞬間的に監督としてのオファーが来ていたとか、コメンテーターの方々がきっとこの日まで温めてきたのであろう爆弾発言も飛び出しました。

肝心の本編は、2009年にリメイクされた13金を上映、13分の休憩を挟んで1980年のオリジナル版を上映するという強行スケジュールでした。マニアの方にとっては、劇場の大画面でオリジナルの13金を観る最後のチャンスかもしれないということで満席になるかと思いきや…5分の1も埋まっていない程度。オークションの出品状況(違反です!)をみても人気があるとは思えない落札水準…ということで、13金ファンの方にはたまらないが、一般には浸透しないという相当マニアックなイベントだったといえるでしょう。

シリーズ通じて13金を観たのは初めてなので、「副音声」付きで観るのは不安だったのですが、内容があまりにもマニアックすぎて全くついていけず、逆に映画に集中出来てしまいました。リメイク版は若者のノリの軽さとシリーズとしての存在感を示したい意気込みが感じられるのですが、一方でさまざまな制約があるためか、殺戮シーンは何となく歯切れが悪いように感じられました。それでも女性が桟橋の下で息を潜め、殺されていくシーンは圧巻です。

オリジナル版は、後にホラー映画の金字塔を打ち立てただけあって、見ごたえがありました。低予算で作られたオリジナル版は、リメイク版に比べて照明やセットなど貧相な感じがするのですが、逆にそれがスリリングな雰囲気を助長しているようでした。加えて、オリジナル版は音楽を絡めて恐怖心を煽る手法が巧みにとられているうえに、当時の観客は犯人がジェイソンだとは知らないまま次々と登場人物が殺されていくので、かなりの迫力だったことと思います。

また、「副音声」ではペギー葉山に似ていると連発していたジェイソンの母親の微妙な強さも印象的でしたが、主人公がやっとのことで生き延びて朝を迎えた後の展開は、初めて小説で「リング」を読んだ後の恐怖心に似たようなものを感じました。「らせん」や「リング2」などリング以降のシリーズはどれも微妙ですが、ある種の時代を作り、その後もシリーズ化されていくようなホラー映画の源流は、出来合いの演出だけで恐怖心を煽るものではないのだなということが分かりました。

2009年版
監督マーカス・ニスペル
製作総指揮:ブライアン・ウィッテン、ウォルター・ハマダ、ガイ・ストーデル
音楽;スティーヴ・ジャブロンスキー
脚本:ダミアン・シャノン、マーク・スウィフト
出演:ジャレッド・パダレッキ、ダニエル・パナベイカー、アマンダ・リゲッティほか

1980年版
監督:ショーン・S・カニンガム
製作総指揮:アルヴィン・ゲイラー
音楽:ハリー・マンフレディーニ
脚本:ヴィクター・ミラー
出演:ベッツィ・パルマー、エイドリアン・キング、ハリー・クロスビー、ケヴィン・ベーコンほか

せっかくなので採点してみましょう。必ずしもリメイク版はオリジナル版をそのままリメイクしたものではないので①リメイク版(2009年版)②オリジナル版(1980年版)に分けて評価します。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
①15点
②15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
①7点…キャンプに来た人々が次々と謎の男、ジェイソンに襲われる話。
②9点…キャンプに来た人々が、何者かに次々と襲われていく話。

恐怖心は犯人が分からない②のほうが勝る。例えば、貞子の存在を知らないまま展開を見守らなければならないリングと、ネタばれして恐怖心を煽るだけのその後のシリーズのような違いがある。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
①3点
②3点

①②とも、キャンプ場によそ者が来て荒らすなと警告するという動機がある。一方で現実世界では動機のはっきりしない事件も多く、まさに事実は小説より奇なり。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
①0点
②2点

キャンプに訪れた若い男女が何者かに殺されていくという設定は、今では使い古された展開だが、オリジナル版の当時は目新しかったのではないか。コメンテーター曰く「13金は、ホラー映画の地位を上げた初めての映画」とも。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
①0点
②2点
キャンプがどれほどの娯楽だったかは分からないが、オリジナル版の当時は、若い男女が連れ立ってキャンプに行くという設定だけで魅力的だったはず。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
①3点…ジェイソンに囚われた妹を探し出し、救出する。
②1点…逃げる。時に戦う。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
①4点…桟橋の下で殺される若い女性。この部分の殺され方はオリジナルより衝撃的。
②6点…何といってもジェイソンの母親。これで若い男を殺したのかと思えるほど動きが…。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
①5点…前述の若い女性が桟橋の下で殺されるシーン。
②6点…ケビン・ベーコンがベッドの上で殺されるシーン、そして、誰もが驚く最後の湖上のシーン。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
①0点
②0点
主要人物の多くが恋人や兄妹がいるのだが、オリジナル版よりリメイク版の方が相手を思う情のようなものが薄れている感じがして興味深い。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
①2点
③4点
リメイク版は、別荘の持ち主の息子であり潔癖で高飛車な男が登場するが、観客に「こいつ、ひどい死に方をすればいい」という気持ちを抱かせるような描写をしているのが巧み。ところが殺され方は拍子抜け。これは直接的な笑いではない、ホラーならではの笑いの要素なのかもしれない。
オリジナル版は、何といってもジェイソンの母親。恐ろしく動きが鈍く、ヒロインとの白兵戦?は、これで何人もの男女を殺したの?と突っ込みどころ満載で笑える。ただし、これには裏があるわけで…。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
①0点
②0点

【減点項目】

①0点
②0点

①基礎点(15)+技術点(13)+芸術点(11)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(45)

②基礎点(15)+技術点(17)+芸術点(16)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(56)

①②とも「F」評価(59点以下)。

ホラー映画は、CinemaXでは評価が低くなりがちです。リメイク版は、銀座シネパトス風味の映画なのですが、オリジナル版はやはりこれから歴史が始まるのだなという重厚さのようなものを感じました。

2009年8月21日/シネマート六本木
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August 26, 2009

ナイトミュージアム2

監督:ショーン・レヴィ
製作総指揮:トーマス・M・ハメル、ジョシュ・マクラグレン、マーク・ラドクリフ
音楽:アラン・シルヴェストリ
脚本:ロバート・ベン・ガラント、トーマス・レノン
出演:ベン・スティラー、エイミー・アダムス、ロビン・ウィリアムズ、オーウェン・ウィルソンほか

「二度目のトイレ」

ナイトミュージアム」の続編です。前作は博物館で夜中に展示物が動き出したらどうなる?という発想の元に無理やりストーリーを肉付けした感じなのですが、これが意外に面白く、これまでにない映画として楽しめましたが、続編は、ちょっとかしこまりすぎたのかなあという印象でした。

今回は舞台をニューヨーク自然史博物館からスミソニアン博物館に移すのですが、その経緯(ニューヨーク自然史博物館が経営難でスミソニアンへの移転を余儀なくされる)とエンディング(匿名のお金持ちが「展示物をそのままに」という条件で寄付をする)のため、主人公のラリーがビジネスで成功しているという設定がなされました。前作は家庭問題などラリーの抱える問題から警備員の仕事を余儀なくされ、動き回る展示物に遭遇するという、ほとんどが博物館の中の出来事でした。

ところが今回は、ラリーは外に飛び出し、展示物もスミソニアン博物館に移して、そこの展示物も交えてドタバタを繰り返すのですが、ストーリーの広がりは全く感じられませんでした。とってつけたような主人公の設定、やたら拾いスミソニアン博物館の地価倉庫を探すためにインターネットを利用するというお手軽さ、そもそもスミソニアン博物館のドタバタの大半が倉庫でという致命的な抜けの弱さなどご都合主義が目立ちすぎました。

さて、評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
博物館で夜な夜な展示物が動き回る話。今回は舞台をスミソニアン博物館に移す。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・2点
夢はある。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・5点
続編とはいえど石版の魔力で博物館の展示物が夜な夜な動き回るというアイデアにはやはり魅力がある。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・5点
同上。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・1点
展示物を守ろうとする姿勢は一貫しているが、弱い。あとは仕事に対する姿勢といい、ヒロインに対する態度といい、ブレブレ。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・5点
前回のヒロインはネイティブアメリカンの女性だったが、今回は1932年に初の大西洋単独横断飛行を果たしたアメリヤ・イヤハート。あまり魅力は感じられないが、ラリーとの別れ際、ラリーが生まれ変わりのような女性に出会った時のときめきなど描き方を工夫すれば感涙ポイントになったはず。アメリヤは人類初の大西洋単独横断飛行を果たしたリンドバーグに隠れた存在だが、アメリカには冒険や宇宙開発において世界初あるいは2番目の人がゴロゴロいるので扱ってみるのは面白い。アメリヤは「方向オンチなの」というセリフを繰り返すが、恐らく後に世界一周飛行の途中で行方不明になり、今なお安否不明の状況を説明しているのかもしれない。このエピソードも、アメリヤそのものも日本人に馴染みがないのは致命傷かもしれない。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・3点
ラリーとアメリヤとの別れ。雑に扱わなければ感涙ポイントになったはず。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・1点
同上。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
仕草やセリフで笑えるものはあったが、ストーリーの積み重ねで笑わせる要素は少ない。サルとラリーがいがみ合うなど前作から引き継いでいる設定もあるが、観客は恐らくそれほど思い入れて観ていた訳ではないので、空振りの感も。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
敵役のスミソニアンのファラオにも理由があり、新の悪人ではない。お子様も安心。

【減点項目】

・減点なし。

基礎点(15)+技術点(23)+芸術点(11)×1.5(0)-減点=CinemaX指数(55)

「F」評価(59点以下)

テーマは面白いので、それを無理矢理ストーリーに仕立てると面白いのは言うまでもないのですが、既に観客が映画の手の内が分かっている中で、続編も同じような手法を用いると斬新さが欠けてしまいがちです。果敢に挑戦した心意気は評価しますが、新たな展開が始まるなどストーリーやシーンに抜けを設定しないと怠惰な映画になってしまうのでしょう。ハリーポッターのようにストーリーが続いている映画は別ですが、ナイトミュージアム2は続編映画の難しさを感じた映画でもあります。

2009年8月17日/シネプレックス新座
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August 25, 2009

ディズニーネイチャー/フラミンゴに隠された地球の秘密

監督:マシュー・エバーハード
日本語版ナレーション:宮崎あおい

「無味無臭」

ディズニーネイチャーというカテゴリの映画らしいです。手っ取り早く言えばNHKのドキュメンタリーのような映画。果たして劇場で観る意味があるのかないのか、CinemaXの評価やいかに。

日本では良くも悪くも「ディズニー映画=安心して子供に観せられる映画」という意識が根付いているので「フラミンゴ…」ももちろん、子供が見ても何の害もありません。ただし、高い受信料で製作されているだけあって、NHKのクオリティの高いドキュメンタリーには足元にも及ばない雰囲気がします。それは何故なのか、考えてみます。

①現在との接点がない。
「フラミンゴ…」は、アフリカ・タンザニア北部のナトロン湖周辺に生息するフラミンゴの一生を追った映画なので、我々がおおよそ日常生活で出会うことのない風景が目白押しです。その一方で環境破壊によるフラミンゴの減少も暗に訴えていますが…ずっと湖とフラミンゴの映像ばかりなので今ひとつ伝わってくるものがありません。

②粘り強く撮影した感がない。
ちょっと行ってパッと撮影したような雰囲気が漂います。NHKの場合はあざとく「これだけ苦労しました」と言わんばかりにクルーの撮影風景などを挟み込むことも少なくはないのですが、それだけのクオリティの高い映像を見せてくれますが、「フラミンゴ…」は何故かそのような雰囲気が感じられません。

③ストーリーが不鮮明。
ドキュメンタリーといえどもシナリオは存在し、演出(ヤラセとは違う)がないとただ漠然と撮影した風景を見せられたのでは、単なる環境ビデオのようになってしまいます。「フラミンゴ…」は、「あの雛」が主人公なのですが、鑑札があるはずもなく、成長の過程で「あの雛」と紹介されてもどの雛なのか分からなかったりします。中途半端な演出が、鑑賞にあたっての壁になっているような感じです。

評価に移ります。

解説: アメリカのウォルト・ディズニーによる環境や自然にスポットを当てた新レーベル“ディズニーネイチャー”の第1作目となるドキュメンタリー。アフリカ・タンザニア北部のナトロン湖に毎年雨季になると飛来する、150万羽にもおよぶフラミンゴの生態に迫る。この奇跡の鳥たちを描いた物語のナレーションを務めるのは、テレビドラマ「篤姫」で今や国民的女優に成長した宮崎あおい。フラミンゴの親たちが子を敵から守り、必死に生き抜く姿に感動する。
シネマトゥデイ(外部リンク)

あらすじ: 雨季になると、タンザニア北部のナトロン湖は150万羽ものフラミンゴの群れによって真っ赤に染まる。乾期中は湖の水は干上がり、雨期には潤うものの湖水は毒性が強く、そこでは生き物はほとんど生命を育むことができない。だが、フラミンゴたちは毎年“死の湖”と呼ばれる場所で子を産み育て、やがてまたさっそうと飛び立って行くのだった。

【基礎点】

動物や子供を扱った映画(10点)
・10点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・9点
ナトロン湖に生息するフラミンゴの一生を追う。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・6点
環境問題に訴えるという点では、今の時代にマッチしているが、意外とメッセージ性が弱い。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・8点
塩分濃度が高く生物を寄せ付けない真っ赤な湖で生まれ育つフラミンゴ。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・8点
一見、優雅なフラミンゴがどれだけ苦労して生きているのかという点は、興味深いものがある。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・1点
生きるために必死に走るフラミンゴの行動は、貫通行動というより本能。「あの雛」と無理矢理主人公を仕立て上げる必要はないのかもしれない。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
人物ではないが、フラミンゴの雛を食い散らすアフリカハゲコウ。残酷な部分もシーンに収めたのは評価出来るが「ディズニー=安心」と過信している父兄には刺激的過ぎるかもしれない。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・4点
前述のシーン。これより前は退屈で度々寝入ってしまったが、フラミンゴがアフリカハゲコウに襲われて以降は、大移動など見ごたえのあるシーンが多くなる。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・1点
道半ばで死んでしまうフラミンゴの無念な思いは映像を通して伝わってくる。ちなみに、赤い湖に浮かぶ老いたフラミンゴの死体はヤラセじゃないかと思うぐらい絵画的。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
オオフラミンゴとコフラミンゴの雛が交じり合い、小学生の全校生徒が走りまくるように大移動する風景はやや滑稽。話によると、大フラミンゴと小フラミンゴが何千羽も終結してコロニーを作っていることが多いとのこと。同じ生活空間の中でどうして中フラミンゴが発生しないのかが不思議。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
とにかく雛の数が多すぎるので、ちょっとぐらい他の鳥や動物に食べられても食物連鎖だから仕方ないと思ってしまうのは、製作者の意図するところではないのではないか。ありのままを伝えたいのなら別だが、40年もの寿命の間につがいで2羽残せば充分と言うほどの低い生存率が映像を通して全く伝わってこなかったのは残念。

【減点項目】

寝てしまった(-30点)
・-30点
前半は抑揚のない大自然の映像と宮崎あおいさんのナレーションで睡魔に耐えるのに必死。

基礎点(10)+技術点(32)+芸術点(8)×1.5-減点(30)=CinemaX指数(24)

「F」評価(59点以下)

試写会場では、本編が短い(79分)をカバーするためか、専門家の大学教授によるトークショーが行われましたが、フラミンゴの生態がよく分かっていないのを物語るように、この先生は分からないことは分からないと正直に言うので、かえって好感がもてました。驚くべきは20人足らずの観客の中に実際にアフリカに行ってフラミンゴを見たという人が数人いたこと。動物園でも定番ですし、世界の王の打法に冠しているだけあって、日本ではメジャー級の知名度を誇る鳥といえるのかもしれませんね。

2009年8月18日/ウォルト・ディズニー試写室
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August 24, 2009

南極料理人

監督:沖田修一
原作:西村淳
音楽:阿部義晴
脚本:沖田修一
出演:堺雅人、生瀬勝久、きたろう、高良健吾、豊原功補、西田尚美ほか

「微妙な料理人」

「南極料理人」です。主演の堺雅人さん人気か、南極への憧れか、上映劇場が少ない割に毎回、超満員の映画です。劇場内が中高年の男女で埋め尽くされる「剱岳 点の記」の人気も凄まじいものがありましたが、南極料理人は上映劇場が少ないとはいえ、鑑賞したテアトル新宿では立ち見も発生。まるで身体を押し合いながら日活映画を観ていた往年の勢いを感じます。

昨年の「おくりびと」人気といい、これから劇場公開が予定されている「沈まぬ太陽」といい、味のある邦画が増えるのは日本の映画業界にとって好ましいことです。ここはひとつ、監督や出演者の話題性ばかりが先行するばかりでストーリーは思いつきで作ったようなクソ映画が撲滅されることを祈ってやみません。

南極観測隊といえば、思いつく映画は南極物語程度。あとは、紅白歌合戦の時の応援電報。今はFAXやテレビ電話に変わり風情がなくなった感もありますが、南極に昭和基地があって日本人がいるということは、恐らく日本人なら誰もが知っているほど知名度の高い題材です。ただし、テレビのドキュメンタリーで扱われるのは極地の過酷な天候や研究に奔走する隊員の姿ばかり。南極料理人のように食を扱ったものはほとんどありません。

ということで、強烈な「観光要素」を有する南極料理人なのですが…美味しい部分を切り落として脂身だけになったような映画でした。評価に移ります。

【基礎点】

一般の邦画(20点)
・20点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・2点
南極観測隊の面々がドタバタする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・2点
室内ロケが主体なので「抜け」がない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・4点
南極観測隊には調理担当という人がいて、料理に試行錯誤していること。観光要素は強いが、隊員たちのドタバタに埋もれてしまい映画での取り扱われ方が弱い。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・4点
多くの人々が興味を持つ未知なるもの(南極)と身近なもの(食)を扱っているというのは観光要素として鉄板。ただし、前述の通り隊員たちのドタバタに終始してしまい観光要素が薄れてしまった。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・5点
観測隊員に料理を提供する。原作には、この料理を南極で作るにはとか、南極であの料理のようなものを再現するにはどうするかとか、試行錯誤する部分がかなり描かれていたのだが、映画化にあたって描かれたのはピーナッツとラーメン程度。ただしかんすいを合成してラーメンを作るのは興味深かった。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
・隊員の中で最も若い男「兄やん」。彼女を残し南極に来てしまい、すれ違いに悩む。登場人物全体の中で変化があったのはこのキャラクターぐらい。ストーリーの引き立て役にもなり得たはずの主人公の妻子の描き方も無味無臭で味気なかった。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・0点
たとえ網走で撮影しても南極の壮大さはもっともっと描けたはず。隊員が箱の中に入ってドタバタするだけでは臨場感がない。最大の欠点は、肝心なシーンの締めをフェードアウトで有耶無耶にしてしまう点。例えば、国際電話は金がかかる(本編では1分740円と表示)ので、砂時計をひっくりかえすのだが、兄やんが東京の彼女に電話する最初のシーンでもフェードアウトしてしまう。1分で受話器を置かなければならない動揺とか、切なさとかをきちんと描いていれば、後の2人のすれちがいが浮き彫りに出来たはず。肉の美味い部分を次々とカットしていっているようなもの。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・1点
兄やんのエピソードは泣けるようでも前述の通り積み重ねが雑すぎて泣けない。主人公の妻子が登場するシーン(主人公の娘が匿名で観測隊員たちと話し、父親とも話す)は、それまでの積み重ねが曖昧で多少ジーンとするだけ。娘の描写はリアリティがあるといわれれば、あるかもしれない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・1点
ショートコントを集めたような映画なので、笑える部分は多い。ただし積み重ねで笑わせる部分は極めて少なかった。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
この映画に悪人は出てこない。

【減点項目】

寝てしまった(-30点)
・-30点
前半のドタバタがあまりにも退屈すぎて寝てしまった。

基礎点(12)+技術点(25)+芸術点(5)×1.5-減点(30)=CinemaX指数(15)

「F」評価(59点以下)

原作の「面白南極料理人」を少しだけ読んだのですが、この小説の肝は、主人公が日本にいる間にどんな食材を南極に持っていこうとあれこれ考えていく部分が興味深かったりします。例えば、卵をどうやって持っていくのかとか、気圧が低く沸点が下がる中でどんな料理が可能なのかとか、人々の興味を引きそうなテーマをもっと引き出せたはずです。CinemaXでは原作を読んでいないものとして評価するのでこの部分は加味されていないのですが、残念でなりません。

また、原作には日本での訓練やドームふじの位置、昭和基地の人とのやりとり、交替のときにどうしてヘリコプターを使うのかとか、料理以外に興味深いものが描かれています。制作費の問題もあるかもしれませんが、映画化にあたり反映されたのは官民ごちゃまぜになっている隊員の構成やトイレが大小に分かれていたり、浄化が不完全な風呂の水を飲むと死んでしまう可能性があるという点。しかもさらっと触れているだけでした。

南極観測隊の人たちって南極観測船だけで移動するわけじゃないんだとか、昭和基地以外にも基地があるんだとか、観客が「へー」と思いそうな部分もちょこっと食いついただけで切り捨てです。しかも隊員が日本に戻ってくる時は隊員や家族の気持ちを描くことが出来るシーンのはずなのに、隊員の感情も切り捨て、空港での出会いのシーンはコントのようなエピソードをちょこっと挟んだだけでフェードアウトしてしまい、残尿感が残るような締めになってしまいました。それでいてエンディングは隊員たちが夏の砂浜でビーチバレー。同窓会気分で挟み込んだのでしょうが、シーンできちんと締めていない映画なので、頭の中が混乱してしまいました。

「おくりびと」は、納棺夫という観光要素だけが強烈な短い原作を映画監督などが上手く肉付けして映画化したケースといえますが、南極料理人は逆に映画化にあたり重要で美味しい部分を切り捨ててしまっています。シーンそれぞれは俳優たちに独特の間があって一見、楽しいような感じのする映画のですが、中身はからっぽになってしまっているのが残念でなりません。

2009年8月22日/テアトル新宿
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August 06, 2009

レスラー

監督:ダーレン・アロノフスキー
製作総指揮:ヴァンサン・マルヴァル、アニエス・メントレ、ジェニファー・ロス
音楽:クリント・マンセル
脚本:ロバート・シーゲル
出演:ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッドほか

「課長仕事」

間もなく上映が終了する「レスラー」です。ミッキー・ロークに思い入れがある人は枯れ具合がショックなのかもしれませんが、私にはそんな先入観はありません。有名人やYahoo!のレビューで絶賛されればされるほど斜に構えてしまう今日この頃、果たしてCinemaXの評価やいかに。

「レスラー」は、良く出来た映画です。主人公のランディの家族を振り返らないプロレス人生、それを悔い、娘と再会し、関係が修復できそうなところでタイミング悪く(良く?)失敗する。でも…決め手がないんです。

レスラーが筋書きのある格闘技だということは誰もが認めるところですが、この作品の中では「ああやって、こうやって、ここで決めるから」と対戦相手が和気藹々と相談をしてリングに上がります。「ホッチキスを使うと痛みは僅かで血がドバッと流れて大げさに見える」と相談して、レスラーたちは迷うことなくリングでその演出を実行します。

そんな感じで前半はプロレスのシーンが続きます。勝ち負けは大体決まっていて、控え室に戻ると対戦相手をはじめ血だらけのレスラーが笑顔で迎える…このギャップは凄いです。前半が嘘っぽく見えないところは、ミッキー・ロークをはじめキャストが本当に身体を張っているからだと言えるでしょう。

主人公のランディは、もう少し枯れたレスラーの役かと思いきや、年齢から来る衰えは隠せないものの今でも人気のあるレスラーという設定でした。この辺りの設定は、「ロッキー・ザ・ファイナル」のようにどう考えても出演者(シルヴェスター・スタローン)の体力に難があるだろうと感じるのですが、少なくともミッキー・ロークの若い頃を知っている人は別として、いま現在の俳優として見れば、演技力といい体力といい、全く違和感を感じないのが不思議です。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・15点
病に倒れたレスラーが、リングで生き続けようとする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・8点
当たり前の世界が残酷だと感じる人もいるという視点は面白い。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・7点
プロレス会場の控え室でのレスラーたちの和気藹々とした雰囲気は見物。この設定が丁寧に描かれているからこそこの映画の存在価値が増したと言ってもいい。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・8点
同上。前半は痛いシーンが多いが、時間軸を入れ替えたり、シーンを細かくカットしたりと変化球を織り交ぜながら丁寧に仕上げていて面白い。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・7点
病に倒れた主人公は、長く裏切り続けた娘に頼ったり、ストリッパーに恋したり、仕事に熱中したりと迷走しているように見えるが、実はプロレスを捨てきれないという気持ちをベースに行動しているので支離滅裂な展開にはなっていない。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・4点
ストリッパーのキャシディ。若くない設定なので、例えば若いダンサーを前にして敗北感が漂えばもっと面白くなっていたであろうキャラクターだが、雑に扱ってしまっているのが残念。特にエンディングのグチャグチャな切り方は雑すぎて残念だった。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・7点
俗世で娘に勘当?されたり痛い目に遭った主人公は、病を押してリングに上がることを決意する。直前でキャシディの引き止られた時に「俺にとっては現実の世界が辛い」吐くシーン。リングに上がれば痛い思いをするのに、現実の世界の方が痛いというのは世間の一般的な認識と逆になっていて面白い。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・2点
泣ける映画と言われているが、そのような要素は少ないように思えた。娘との再会、和解、別離は感涙ポイントともとれるが、人工的に展開しすぎて感情移入出来なかった。「あーあ感」が漂うシーンとして仕組まれているはずなのに、全く「あーあ」と思わないのは、展開が突拍子過ぎるからだと思われる。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・4点
前述の通り、控え室で和気藹々と流れを相談して、その通りにリングで血だらけになるのは不思議と笑える。例えば、対戦相手がホッチキスの話をし始めて「痛いぞ、痛いぞ」と構えていると、主人公と対戦相手の2人とも針をあちこちに刺して流血。控え室に戻って怪我を心配しながらも笑顔でハイタッチ…この落差は凄い。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
この映画は悪人が出ない。特に主人公の良い人ぶりが際立っている。「レスラー」は中途半端な終わり方で致命的なダメージを受けていると言えるが、悪人が出ないところも物足りなさを感じる要素となっているのかもしれない。

【減点項目】

・原点なし。

基礎点(15)+技術点(45)+芸術点(17)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(86)

「C」評価(80~99点)

映画として必要な設定やストーリー展開は、上手いこと仕組んである作品なのですが、前半のプロレスシーンに時間を割きすぎたのか、人間ドラマの部分に継ぎはぎが見えてしまっていること、何よりもこんな終わり方はないだろう?と言いたくなるほどの雑なエンディングが気になりました。せめてこの部分だけでもくどくない程度に引っ張れば、名作になったはずです。もったいない。

2009年8月3日/TOHOシネマズシャンテ
The757947

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