いけちゃんとぼく
監督:大岡俊彦
原作:西原理恵子
音楽:川嶋可能
脚本:大岡俊彦
出演または声の出演:蒼井優、深澤嵐、ともさかりえ、萩原聖人、モト冬樹、蓮佛美沙子ほか
「裏ドラ」
西原理恵子原作「いけちゃんとぼく」です。原作は読んだことがないのですが、週刊SPA!にたまに掲載される彼女の漫画などからストレートな話ではないのは雰囲気で感じていました。前の座席には2人の小さな子供とその母親が座っていました。西原理恵子ファンの母親なのか、いけちゃんのほのぼのさに惹かれて子供もろとも面白いかもと飛びついただけなのか、面白くないと子供がぐずりはじめた訳は?果たしてCinemaXの評価やいかに。
「いけちゃんとぼく」は、最後に強烈なネタバレがある映画です。このネタバレが実に切なくて、この映画に対する評価そのものになっています。ただし「千の風になって」に便乗したように「象の背中」を世に送り出したり、「着信アリ」を何度もしつこく作ってジャパニーズホラーブームの甘い汁を残り一滴まで吸い尽くした秋元康とは全く異なり、西原理恵子さんは大人の恋愛と子供の視点とを組み合わせることで、これまでにないタッチのストーリーを生み出しました。「いけちゃんとぼく」は、大人向けの話なのです。
「いけちゃん」の正体は最後に分かるのですが、主人公の小学生の話し相手になってもピンチの時には助けてくれません。のび太にとってのドラえもんではないのです。ドラえもんは、ピンチになるとすぐに手助けしてしまうのでのび太が成長しないと揶揄されます。これは故・藤本弘(藤子・F・不二雄)氏には本意ではないでしょう。本来は空想的なひみつ道具を通じて、子供たちに夢を与えるという設定が、当人が亡くなりストーリーがシステム化されたこと、あるいはひみつ道具の先進性に世の中が追いついてきてしまったことなどが挙げられるでしょう。
周りの評価で歪曲されたのは最近、生誕100周年でやたら盛り上がっている太宰治も同じです。作品はともかく生き方まで神格化されていることに大きな疑問を感じます。自殺未遂を繰り返して最後は自殺未遂をしそこなって死んだともとれるからです。この過程で何人も道連れに殺していることを踏まえると、決して生き方まで賞賛する訳にはいかないことが分かります…話が逸れました。
ちなみに、ドラえもんが未来の世界に帰ってしまった単行本6巻~7巻には、のび太が成長したと強く印象付けられるシーンがあります。ドラえもんがいなくてもジャイアンに勝たなければならないと、ボロボロになりながらジャイアンを倒す(というより逃げられる)シーンです。「さようならドラえもん」「かえってきたドラえもん」の2話は、心に残る秀逸な作品と評価されることが多いのですが、この話があるからこそ、ドラえもんの存在がのび太の成長を阻害するという、作者の本意ではない論点を生み出す結果になってしまったのではないのでしょうか。
評価に移ります。
【基礎点】
一般の邦画(20点)
・20点
いけちゃんはCGだが、れっきとした実写の邦画。
【技術点】
テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
いけちゃんが、最愛の人の過去を探りに来る話。
そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・10点
ストーリーの根底には恋愛に年齢は関係ないという要素があるので、奥が深い。
観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
風景や題材としての観光要素は少ない。懐かしい田舎の風景程度。西原理恵子作品の映画化というのは一種の観光要素か。
観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
見た目での観光要素は少ないが、誰しもが少年時代に抱いた気持ちは描かれている。
主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・8点
泣かない。暴力に屈しない。
【芸術点】
印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
いけちゃん。蒼井優の声がびっくりするぐらいハマっている。
印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
いけちゃんが正体をばらすシーン。
泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・10点
決して唐突ではなく、これまでいろんなシーンでタネを撒いてあるだけに、ストーリーとして泣ける。
笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・10点
登場人物の性格に裏付けられた行動、人物の表と裏など、割と脇役に近い人物まできちんと描かれている。
怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
悪の要素がない。主人公が喧嘩をしていた仲間と最後は大団円になってしまうところはやや鼻にかかるが、流れは自然で違和感はない。
【減点項目】
・原点なし。
基礎点(20)+技術点(32)+芸術点(40)×1.5-減点=CinemaX指数(112)
「B」評価(100~119点)
間違いなく泣ける映画なのですが、劇場に足を運ぶまでの魅力に乏しいのが残念です。口コミで評判になる映画にはなるでしょう。
恐らく、クラスメートをいじめまくっていた相当なガキ大将でもない限り、この主人公の子供に感情移入出来ることでしょう。ちなみに私は幼い頃、ベッドの下に人々?がいて、夜な夜なからかいに出てくるのが嫌でたまらなかったという経験があります。何度も洗濯機や浴槽に落ちて死に掛けたという主人公の子供と似たような経験があったので、最初から感情移入が出来ました。この主人公が見ていた光景は、プールの底や台風の大波が押し寄せる海水浴場の砂底から見たものと同じです。
そういう親近感のようなものを抜きにしても、泣ける映画です。出来れば劇場で、近くで上映されていなければDVD化されるのを待ってもご覧になることをお勧めします。



Comments
観たんですね!観たんですかあああ!!
西原画伯ファンのわたしとしては・・嫉妬です(-ε-)
だって、こっちの映画館(盛岡すら)上映してないんですよっ!どういうことでしょう?くっそ~。
いっつも辛口評価のゆーさんが・・・絶賛(?)されてるとは、よっぽど素敵な映画なんでしょう。
DVD化されるまで我慢します。
レビューありがとうございましたヽ(´▽`)/
Posted by: よっち | July 15, 2009 at 10:31 PM
いけちゃんの顔が時々西原チックになるのが笑えますよ。西原さん原作の映画化が続く様子。楽しみですね。
Posted by: yu-worldmaster | July 29, 2009 at 06:31 PM