サンシャイン・クリーニング
監督:クリスティン・ジェフズ
脚本:ミーガン・ホリー
出演:エイミー・アダムス、エミリー・ブラント、ジェイソン・スペヴァックほか
「鶏口牛後」
「サンシャイン・クリーニング」です。女の子が自分探しをする内容なので、売り方によっては女の子がキャッキャキャッキャ飛びつきそうな映画なのですが、いまいちパッとしない感があります。それは何故なのか、果たしてCinemaXの評価やいかに。
このストーリーは、主人公のローズのキャリアと妹、ノラの幼い頃の体験がポイントです。学生時代は人気者だったのに、今はシングルマザーで周囲は健全な結婚生活を営んでいることに劣等感を抱くローズが始めた仕事は、自殺や殺人などの現場の清掃。ただしこの仕事自体は日本でも取り上げられるようになり、観光要素は薄れているのですが、ノラの幼い頃の体験に絡むことでストーリーに厚みが増してきます。
特に、ノラの幼い頃の体験は最初から説明せず、後半になってやっと分かります。見知らぬ人の自殺現場に残された女性の写真を何故、本人に届けようとするのか、それでいてどうしてすんなり渡せないのか、後半になってパズルが組みあがります。その決定的なシーンも、観客にはセリフなどで直接的に説明せず、自殺現場の光景とそこに清掃のために踏み込んだノラの表情で映像的に分からせるという高等な手段を用いています。
評価に移ります。
【基礎点】
一般の洋画(15点)
・15点
【技術点】
テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
姉妹が殺人あるいは自殺現場の清掃を通じて過去と離別しようとする話。
そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・6点
自分探しは人間の永遠のテーマだが、映画の題材としてストレートに扱うのは陳腐な時代になっている。
観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・3点
殺人や自殺現場を清掃する仕事があること。この仕事自体は日本でも割りと知られるようになっている。
観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
観光要素にもなっている仕事が、単なる金儲けの手段のようになっているのが残念。仕事自体はノラの幼い頃の体験を引き出すきっかけとして切り離せない部分だが、誰かが尻拭いを買って出なければ世の中は回らないということを表現すればもっと内容の濃い映画になっていたと思う。
主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・7点
シングルマザーで貧しい生活を余儀なくされているローズが、健全な結婚生活を営む友人を見返そうという気持ちにはカタルシスがあるが、単なる光景のように切り取っただけなので深みが足りないように思えた。
【芸術点】
印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・7点
隻腕の男、ウィンストン。周囲に馴染めないローズの子供の数少ない友人のような存在になっている。気軽に腕がないことに触れる子供の無邪気さも描かれ、きっとウィンストン自身も劣等感を跳ね除けて生活しているのだなと理解できるが、姉妹とその一家との絡みが中途半端で遊び半分で設定を加えたようになってしまったのが残念。
印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・8点
今は亡き姉妹の母親がチョイ役で出演した映画の1シーン(ペカンパイがお勧めです)。映画の後半、不意に再放送されていて姉妹は初めて観ることが出来るのだが、観客はこれまでのシーンの中で姉妹(特に妹、ノラ)の母親への想いが刷り込まれているため、映像の神々しく感じられた。
泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・3点
印象に残るシーンと同じく、「ペカンパイがお勧めです」のシーン。
笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・8点
ノラのちょっと外れた性格はあちこちに笑いを起こす。この映画は、ローズよりもノラが主役だともとれる。
怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・3点
健全な結婚生活を送る友人たちが、意図的でなくともローズに幸せを押し付けようとするのは、どこか怒りのようなものを感じた。
【減点項目】
・減点なし。
基礎点(5)+技術点(34)+芸術点(14)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(60)
「E」評価(60~69点)
姉妹の性格の差を追いかけて観れば、面白い映画といえます。小洒落た映画なので恵比寿ガーデンシネマやシネスイッチ銀座などで単館映画として上映されれば、自分探しが大好きな女の子がキャッキャキャッキャ飛びつく映画としてロングラン上映も叶ったかもしれませんが、この映画は、過去のそれらの単館映画に比べてクオリティが高いのが致命傷になっています。
「サンシャイン・クリーニング」のクオリティの高さは、米国の興行収入トップ10に何週か続けて入ったことでも証明されています。つまり、中途半端に面白く、メジャーになったことで日本でも小さな配給会社が買い付けるのではなく、メジャーの配給になってしまいました。単館映画の中には話題だけ一人歩きして内容がクソの映画も少なくない中で、「サンシャイン・クリーニング」が、中途半端にメジャーになったばかりに寿命が早く尽きてしまう(上映が終了する)ことになったのはあまりにも皮肉です。
鶏口牛後、例えば「アメリ」は鶏口、「サンシャイン・クリーニング」は牛後。映画の体を成しているのは圧倒的に後者なのですが…。



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