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July 09, 2009

コネクテッド

監督;ベニー・チャン
製作総指揮:アルバート・リー
音楽:ニコラ・エレラ
脚本:アラン・ユエン、ベニー・チャン
出演;ルイス・クー(アボン)、バービー・スー(グレイス・チャン)、ニック・チョン(ファイ刑事)、リウ・イエ(誘拐犯)

「プロの綱渡り」

ハリウッド映画「セルラー」を香港でリメイクした作品です。「セルラー」を観たことはありませんし、香港映画に強い思い入れもありません。頭がからっぽのまま観た久々の香港映画、しかも香港映画初の「ハリウッド映画のリメイク」というおまけまでついて、果たしてCinemaXの評価やいかに。

「コネクテッド」は、本家の「セルラー」からも連想出来る通り、電話を「繋ぐ」ことを意味しているようです。ある事件に巻き込まれて密室に閉じ込められたヒロイン、グレイスが、ぶっ壊されてしまった電話を修理して通じたのが主人公、アボンの携帯電話だったというところから物語は始まります。ストーリーそのものは他のブログなどで詳しく書く人もいるでしょうからそちらを見ていただくとして、とにかくアクションが見応えがあり、小さい頃観た香港映画のスピード感を髣髴とさせる、まさにジェットコースタームービーでした。

物語は3本の筋で展開します。携帯電話を介したアボンとグレイスのストーリーにアボンと家族のエピソード、左遷されて冷や飯食いになっているファン刑事のエピソード。ところがこの3つのストーリーは、鼎立ではありません。携帯電話を介した本筋があって、その他のエピソードはエッセンス程度。その結果、1本のストーリーで綱渡りをしながらアクションシーンを重ねるという、不安定な状態が最後まで続きます。この設定は誰かに追いかけられるという類のPVにありがちなもので、映画に導入するとご都合主義ばかりが目立って観客の感情移入を阻害することが少なくありません。

ところが、「コネクテッド」は、絶妙なバランスで次から次へとアクションが繰り返されます。そして、その多くが実写。ハリウッドなら簡単にCGに頼ってしまいそうな映像も、とにかく実写にこだわっているようです。この爽快感は、北朝鮮の怪獣映画「プルガサリ」を観た時に似たものがあります。ハリウッド映画はもちろん日本ではウルトラマンでさえCGに頼るような状況の中で「プルガサリ」はセット。紫禁城の模型がプルガサリに襲われて土煙を上げながらぶっ壊れていく映像は圧巻でした。

「コネクテッド」のストーリーは、二転三転していきます。登場人物の1人が「この世の中で、正義を見つけるのは難しい」と言ったように、勧善懲悪ではないストーリーになっています。「セルラー」のストーリーや設定がどれだけ反映されているのかは分かりませんが(いずれ本家も観てみようと思います)、最後まで観客を飽きさせないストーリー展開とアクションは見物です。日本では韓流映画やドラマが根付いてしまいましたが、香港映画はまだまだ捨てたものじゃないなと思いました。

ただ1つ、気になったのは、主人公のアボンの家族の設定です。最後は救出されてヒロイン、グレイスと良い雰囲気になる(ハリウッド映画なら恋愛関係に発展しているはず)のですが、そこにアボンの妻子が現れてエンディングを迎えます。お色気シーンに全く頼らない硬派な設定は評価出来るのですが、この2つの設定が重なってしまうことで感動の上塗りのようになってしまいました。もう少し工夫すれば観客の涙を誘うことが出来る印象的なエンディングになっていたのかもしれません。

評価に移ります。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・9点
見知らぬ2人が切ると二度と繋がらない電話を介して危機を脱する話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・7点
IT社会で映像が溢れるようになった今、音声だけで伝えられること、伝えられないことの「壁」を上手くストーリーに絡めたことは意味があるかもしれない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・1点
舞台は香港。設定などもこれと言って興味を惹くものは少なく観光要素には乏しい。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点
目新しさはない。面白く観ると絶対に後悔しない映画だが、劇場に足を運んでもらうまでが問題。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・8点
普通の生活をしていた人間が事件の深みにはまっていく王道の設定だが、主人公のアボンの性格をエピソードを通じて丁寧に描いているので、観客も一緒に巻き込まれていくことが出来る。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・5点
主人公のアボン。周囲の登場人物をよくよく考えてみると、かなり無理のある設定が目立つことに気付くが、立ち止まらず突っ走る映画なので、観ている間は気付かないのかもしれない。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・6点
主人公の運転する車が缶詰満載のトラックに突っ込んでしまうシーン。片付けるの大変だろうなあと思ったと同時に、このシーンの前後を含め香港映画のテイストが凝縮された部分でもあると感じた。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・3点
相手を見失ったのに追いかけ続ける主人公にヒロインが電話の向こうで「ありがとう」と言うシーン。それでも強がる主人公に少々じんわり来る。お涙頂戴風のエンディングは逆に泣けない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
アクションシーンは随所に笑いが散りばめられているが、ストーリーの流れとは関係ないので評価外。ただし、おまけのように笑いを付け足してくれるのは、作り手は苦労するだろうが、観ている側は嬉しい。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
一連の事件の焦点(ビデオカメラの映像)が抽象的なので、どうしてそれを追いかけるのかは頭では理解出来ても感情移入の材料にはなりにくかった。人は何人か殺されているが、実は観客が憎しみを抱くような悪人はいなかったように思う。

【減点項目】
・減点なし。

基礎点(25)+技術点(25)+芸術点(14)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(71)

「D」評価(70~79点)

評価は思ったより低くなりましたが、フラッと劇場に立ち寄ったり、DVDをふと借りて観ても絶対に後悔はしない映画です。キャストでも設定でもストーリーでも何でもいいのですが、劇場に足を運ばせる「何か」がないのが「コネクテッド」の最大の弱点といえるでしょう。興行収入はそんなに伸びないと思いますが、じんわりと口コミで育っていくような作品になることだと思います。

2009年7月8日/ブロードメディア・スタジオ試写室
166180

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Tracked on August 01, 2009 at 05:13 PM

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