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July 21, 2009

サマーウォーズ

監督:細田守
音楽:松本晃彦
脚本:奥寺佐渡子
声の出演:神木隆之介、桜庭ななみ、谷村美月、永井一郎、富司純子ほか

「既視感」

「サマーウォーズ」です。「時をかける少女」を観逃して3年、作品の内容や細田守監督についての情報が全くないままに試写会に行ったのですが、会場周辺は長蛇の列。東京厚生年金会館という大箱で立ち見まで発生しました。果たしてこの人気は何なのか?エンドロールでも観客はほとんど席を立たず、場内が明るくなるとにこやかにスタンディングオベーション。鳴り響く拍手にどこか新興宗教的な雰囲気を感じてしまう「サマーウォーズ」ですが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

不景気や多チャンネル化により広告収入が激減したテレビ局では、「そうだ、映画で稼ごう!」という傾向が強まっているようです。「ROOKIES-卒業-」のゴリ押しロングランはもちろん、最近では「ごくせん THE MOVIE」のようにテレビでやれるようなものをわざわざ劇場公開したり、「アマルフィ 女神の報酬」は、「パティオ」のようにバブリーで時代錯誤な雰囲気を漂わせるなどクオリティは必ずしも一定ではありませんが、テレビという公共の電波を使用して見境なくPRしているのが特長です。例えばテレホンショッキングでは一時期、改編期になるとテレビドラマの番組宣伝のために縁もゆかりもない芸能人を数珠繋ぎにするという状況が続きました。さすがに視聴者から批判が集中したのか、このような傾向は暫く見られなくなっていましたが、さすがにもうそんな悠長なことを言ってられないのでしょう。

「サマーウォーズ」も映画で稼ごうという臭いがします。長らくジブリとタッグを組んで来た日テレですが、宮崎駿監督は昔のように作品を量産出来るわけでもなく、周囲が担ぎ上げたジュニアは「ゲド戦記」で沈没したため、新たな金蔓が必要になってくるわけです。そこで目をつけたのが細田監督。筒井康隆の「時をかける少女」という強烈な原作をエンジンに使った前作で助走を始め、次第にオリジナル作品を発表しながら、ポストジブリ、つまり第2の黄金期を目指すという流れなのでしょう。

宮崎氏と細田氏は、アニメーターから演出へと実績を積み重ねてきたという共通点があるようですし、それぞれが演出を担当すると抜群に面白くなるという傾向にもあるようです。ただし細田氏には「風の谷のナウシカ」のような強烈なインパクトのある作品はありません。もちろん当時と今では時代背景も映画業界をとりまく環境も違います。事実上のオリジナル一発目でナウシカのような作品を送り出すことこそが異常だったのかもしれませんが、細田氏には次回あるいは次々回の作品で結果を出していくことが重要なのかもしれません。

「サマーウォーズ」は、良く出来た作品でした。特にのんびりとした夏の田舎の風景とネット上の仮想空間のスピード感の対比は見物で、後に続く人々にさまざまな影響を与えることになるでしょう。インターネットは映画の題材としては一見、機動力に溢れる万能薬のように見えますが、スピード感を映像で表現するのは極めて難しく、雑に扱うと登場人物がちまちまパソコンに向かうだけでストーリーが展開するだけの陳腐な設定に陥りかねません。

ネット上の仮想空間を表現する映像は、実際に映画をご覧頂ければ分かりますが「ありえない」ものです。ただし、不思議とウソっぽく感じないのは、我々の予想を遥かに超えるクオリティだからといえるでしょう。見た目だけでなく内容のともなったクオリティなので、「あるかも」と思ってしまうのかもしれません。人々の想像を超えたクオリティを生み出すためには、作り手が天才であるか、そうでなければ血の滲む努力が必要です。「超える」と「外れる」は違います。仮想空間のCGはド派手ですが、同じド派手でも人間が生活することを微塵にも考えず天守閣を並べただけの「GOEMON」とは全く異なります。

CG自体は、ルイ・ヴィトンや六本木ヒルズなど芸術家の村上隆氏がばら撒いたアニメーションを彷彿とさせますが、それもそのはず監督は細田氏でした。「サマーウォーズ」は、ちょいちょい笑いを込めています。この監督、コントもいけるのではないかと思うぐらい。それと、秀逸なのは高校野球の長野県予選とのモンタージュ。緊張感のあるシーンだけを並べたのでは観客は飽きてしまいます。そこで野球の試合を絡めるわけです。全く違ったことをしているのにリンクしているのが笑えます。他にも暗いストーリーなのに明るいシーンを織り交ぜたりと巧みに対位法を駆使しています。

評価に移ります。

【基礎点】

アニメーション(ジブリ以外)(5点)
・5点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
田舎に帰った高校生が世界を守るために戦う話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・10点
インターネットは世界中に繋がっているということを分かりやすく説明している。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
目新しい要素はないが、田舎の夏という雰囲気は良く出ていた。よく考えたらリアルの世界はほとんど家の周辺だけで展開していたという職人芸のような渋い設定。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
細田監督のアニメーションは、田舎と夏が合うようだ。もっと山や川の風景を見てみたい。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
主人公、小磯健二は数字好きが高じて世界を守るはめに。数字が好きという性格が毒にも薬にもなる設定は面白い。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・0点
印象に残る人物はいないが、やたら多い登場人物を上手く回している。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・0点
シーン、キャラクターデザインなど既視感を抱くものが多かった。特にキャラクターは「ジブリ?」と勘違いするか、そうでなくても今様の画風を脱していないためどうしても既視感が残った。これを脱皮しなければ、日テレが目論むポストジブリにはなれない。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・4点
大おばあちゃんが死ぬシーンは、それ以前のシーンも厚みがなくその場限りなので泣いてはだめ。むしろ終盤でドイツの子供のアバターがちょこんと登場するシーンの方がジーンと来る。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・10点
高校野球の試合に絡めた巧みなモンタージュは笑える。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
敵はいるが、憎しみをぶつけられるような存在ではないので評価が出来ない。大山鳴動して鼠一匹のような内容で悪人がいないのはどこか物足りないが、壮大なストーリーを犠牲者を(ほとんど)出さずに描いたのはある意味、凄いと思う。

【減点項目】

・減点なし。

基礎点(5)+技術点(34)+芸術点(14)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(60)
「E」評価(60~69点)

細田監督にとっては「既視感」が大きな壁になりそうです。諸手を挙げて「ジブリ全て良し」と賞賛するようなファンが増えるのは考え物ですが、「細田監督の映画だから観よう」と思わせるファンを固定していくことが必要です。「サマーウォーズ」は、インターネット上の仮想空間における「スピード感」を初めて表現出来た映画と言えるのかもしれません。例えば「(ハル)」は、今は廃れたパソコン通信を題材として活用した映画として評価されています。大して面白くもない映画なのですが、離れた場所に住む主人公同士を繋ぐというパソコン通信の特徴を巧みに取り入れているので、これ以降にパソコン通信を扱った映画は「(ハル)みたいな映画」と評価されてしまうわけです(電子メールを題材にすれば、「ユー・ガット・メール」のような映画という評価になります)。

「サマーウォーズ」は、一時期の指標となるような映画といえるでしょう。ただし劇場に足を運んだり、DVD化後にわざわざ借りるような観客を惹き付ける誘引力があまり感じられないのが残念です。もちろんファンの方々は別として。細田監督の今後の作品に期待します。

2009年7月20日/東京厚生年金会館
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Comments

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