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July 30, 2009

サンシャイン・クリーニング

監督:クリスティン・ジェフズ
脚本:ミーガン・ホリー
出演:エイミー・アダムス、エミリー・ブラント、ジェイソン・スペヴァックほか

「鶏口牛後」

「サンシャイン・クリーニング」です。女の子が自分探しをする内容なので、売り方によっては女の子がキャッキャキャッキャ飛びつきそうな映画なのですが、いまいちパッとしない感があります。それは何故なのか、果たしてCinemaXの評価やいかに。

このストーリーは、主人公のローズのキャリアと妹、ノラの幼い頃の体験がポイントです。学生時代は人気者だったのに、今はシングルマザーで周囲は健全な結婚生活を営んでいることに劣等感を抱くローズが始めた仕事は、自殺や殺人などの現場の清掃。ただしこの仕事自体は日本でも取り上げられるようになり、観光要素は薄れているのですが、ノラの幼い頃の体験に絡むことでストーリーに厚みが増してきます。

特に、ノラの幼い頃の体験は最初から説明せず、後半になってやっと分かります。見知らぬ人の自殺現場に残された女性の写真を何故、本人に届けようとするのか、それでいてどうしてすんなり渡せないのか、後半になってパズルが組みあがります。その決定的なシーンも、観客にはセリフなどで直接的に説明せず、自殺現場の光景とそこに清掃のために踏み込んだノラの表情で映像的に分からせるという高等な手段を用いています。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
姉妹が殺人あるいは自殺現場の清掃を通じて過去と離別しようとする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・6点
自分探しは人間の永遠のテーマだが、映画の題材としてストレートに扱うのは陳腐な時代になっている。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・3点
殺人や自殺現場を清掃する仕事があること。この仕事自体は日本でも割りと知られるようになっている。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
観光要素にもなっている仕事が、単なる金儲けの手段のようになっているのが残念。仕事自体はノラの幼い頃の体験を引き出すきっかけとして切り離せない部分だが、誰かが尻拭いを買って出なければ世の中は回らないということを表現すればもっと内容の濃い映画になっていたと思う。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・7点
シングルマザーで貧しい生活を余儀なくされているローズが、健全な結婚生活を営む友人を見返そうという気持ちにはカタルシスがあるが、単なる光景のように切り取っただけなので深みが足りないように思えた。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・7点
隻腕の男、ウィンストン。周囲に馴染めないローズの子供の数少ない友人のような存在になっている。気軽に腕がないことに触れる子供の無邪気さも描かれ、きっとウィンストン自身も劣等感を跳ね除けて生活しているのだなと理解できるが、姉妹とその一家との絡みが中途半端で遊び半分で設定を加えたようになってしまったのが残念。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・8点
今は亡き姉妹の母親がチョイ役で出演した映画の1シーン(ペカンパイがお勧めです)。映画の後半、不意に再放送されていて姉妹は初めて観ることが出来るのだが、観客はこれまでのシーンの中で姉妹(特に妹、ノラ)の母親への想いが刷り込まれているため、映像の神々しく感じられた。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・3点
印象に残るシーンと同じく、「ペカンパイがお勧めです」のシーン。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・8点
ノラのちょっと外れた性格はあちこちに笑いを起こす。この映画は、ローズよりもノラが主役だともとれる。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・3点
健全な結婚生活を送る友人たちが、意図的でなくともローズに幸せを押し付けようとするのは、どこか怒りのようなものを感じた。

【減点項目】

・減点なし。

基礎点(5)+技術点(34)+芸術点(14)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(60)

「E」評価(60~69点)

姉妹の性格の差を追いかけて観れば、面白い映画といえます。小洒落た映画なので恵比寿ガーデンシネマやシネスイッチ銀座などで単館映画として上映されれば、自分探しが大好きな女の子がキャッキャキャッキャ飛びつく映画としてロングラン上映も叶ったかもしれませんが、この映画は、過去のそれらの単館映画に比べてクオリティが高いのが致命傷になっています。

「サンシャイン・クリーニング」のクオリティの高さは、米国の興行収入トップ10に何週か続けて入ったことでも証明されています。つまり、中途半端に面白く、メジャーになったことで日本でも小さな配給会社が買い付けるのではなく、メジャーの配給になってしまいました。単館映画の中には話題だけ一人歩きして内容がクソの映画も少なくない中で、「サンシャイン・クリーニング」が、中途半端にメジャーになったばかりに寿命が早く尽きてしまう(上映が終了する)ことになったのはあまりにも皮肉です。

鶏口牛後、例えば「アメリ」は鶏口、「サンシャイン・クリーニング」は牛後。映画の体を成しているのは圧倒的に後者なのですが…。

2009年7月21日/TOHOシネマズシャンテ
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July 25, 2009

ボルト

監督:バイロン・ハワード、クリス・ウィリアムズ
製作総指揮:ジョン・ラセター
音楽:ジョン・パウエル
脚本:ダン・フォーゲルマン、クリス・ウィリアムズ
声の出演:ジョン・トラヴォルタ、マイリー・サイラス、スージー・エスマン、マーク・ウォルトンほか
日本語吹替:佐々木蔵之介、江角マキコ、天野ひろゆきほか

「消化不良」

ボルトです。映画業界にとって特別料金が稼げて美味しい3D映画第2弾。犬と猫とハムスターが駆け回るコメディ。今回はディズニーという上げ底に加えて動物と子供は間違いない(ヒットする)と言われる中で果たしてCinemaXの評価やいかに。

ボルトは、自分が物語の中で演じているスーパー犬?のまま、日常生活を生きています。犬版「」といった感じです。序盤はボルトのスーパーぶりが紹介されるのですが、ここだけを引っ張って映画にすればいいんじゃないかと思えるぐらい面白いです。このような劇中劇は、作品の中の人々が感動していることにすれば説明出来るので雑になりやすいのですが、リアルの観客をも惹き付けます。この部分が雑だったら「ボルト」の映画としての存在価値はなかったとも思えるほどです。

物語の中で飼い主を演じている女の子と離れ離れになったボルトは、「女の子は自分のことを心配している」と信じて猫とハムスターとともに女の子を捜します。ボルトは途中、自分の能力が物語の中だけだったと知り、女の子は本当に自分のことを思っているのかどうかも悩みます。このあたりの描き方は面白いと思いました。女の子はずっとボルトのことを想っているのですが、この女の子の気持ちは、最後まで隠しておくと見ごたえが出たのかもしれません。

後半、ボルトは女の子と再会します。リアルでも女の子を救い、猫とハムスターと一緒に暮らすようになるのですが、この大団円の終わり方がこの映画の大欠点です。最近のハリウッドCGは子供に迎合しようと目線を下げたのかもしれませんが、志村けんが「子供だと思ってバカにしてコントをやると、子供たちは絶対に笑ってくれない」と言っているように、子供は難しい設定でもきちんと理解するはずですし、今分からなくても成長するにつれて「あの話はそういう意味だったのか」と知ることで二度美味しい映画になるはずです。このチャンスを自ら逃しているように思えてなりません。

具体的には、ボルトは猫とハムスターとの生活か、女の子との生活かを選ぶ必要がありました。猫とハムスターとの出会いがあり、少しづつ融和するという積み重ねがあったわけですから、主人公を選ぶことにより猫とハムスターと別れざるをえないという設定にすれば、泣けたはずです。後に一緒に住もうとも、少なくとも猫とハムスターとの別れのシーンは必要です。ところが実際には、ちょこちょこっと別れただけですぐに合流、大団円に終わってしまいました。垂れ流しの味気ないストーリー展開が、全ての感動の芽を摘んでしまうように思えました。

評価に移ります。

【基礎点】

アニメーション(ジブリ以外)(5点)
・5点
アニメーション+動物の超上げ底なので本当は0点にしたいぐらい。

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
犬が、自分のことを想ってくれているかどうか分からないまま別れた主人公を探す話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・6点
信じて努力すれば必ず報われるということは多くの人を勇気付けるはず。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
劇中とリアルを分離せず犬を買うと、こういう犬になっちゃうかもなという「ああ、そうかも」感は若干ある。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点
ただし、劇中劇の部分は秀逸。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
主人公を探し続ける。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
猫のミトンズは、人間社会に詳しいところを見せ続け、実は捨てられたということを話す。ちなみにいつの間にかボルトのことが好きになり、ハムスターと3人で空き地で暮らし続けようと準備をして、得意げに話すシーンは健気で泣ける。このシーンは「印象に残るシーンはあったか」「泣けたか」にも共通。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
「印象に残る人物はいたか」に共通。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・5点
「印象に残る人物はいたか」に共通。ここから先、ボルトと猫、ハムスターが別れていれば、そのシーンが最も泣けたシーンとなったはず。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・3点
鳩の仕草やセリフは笑えるが、それ以上にあちこちのシーンでキーになっているところで評価。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
本格的な悪者が出ない。例えば主人公の母親を悪人にしてもストーリーは壊れず、見ごたえのあるシーンが作れたのではないか。母親=悪人というのは教育上良くないと考えるのかもしれないが。

【減点項目】

・減点なし。

基礎点(5)+技術点(26)+芸術点(29)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(75)

「D」評価(70~79点)

プレミア試写会は、同じ会場の中なのに一番観やすい中央の座席に座る芸能人などの招待者、サイドや前に座る下々の者に分かれるので、現在の封建制度を現しているようで妙な感じがします。

2009年7月23日/TOHOシネマズ日劇
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July 24, 2009

モンスターVSエイリアン

監督:ロブ・レターマン、コンラッド・ヴァーノン
音楽:ヘンリー・ジャックマン
脚本:ロブ・レターマン、マイア・フォーブス、ウォーリー・ウォロダースキーほか
声の出演:リース・ウィザースプーン、セス・ローゲン、キーファー・サザーランドほか
日本語吹替:ベッキー、日村勇紀(バナナマン)ほか

「3D疑問」

「モンスターVSエイリアン」略してモンエリ。遅れてやってきた「ハリーポッター」に戦いを挑んでしまったためか、いまいち存在感が薄いような気もします。3D映画時代に向けた先陣という感じで日本にやってきたモンエリ、果たしてCinemaXの評価やいかに。

SF映画がヒットするか否かは、現実世界との接点にかかっています。宇宙人が攻めてくるのなら、理由は何なのかをきちんと説明しないと、映画としての魅力は著しく損なわれます。ちなみに「未知との遭遇」や「E.T」では何故、宇宙人が地球に来たのかは説明されていませんし、「スターウォーズ」は別世界の話ですが、これらの映画がヒットしたのは、映像に誰も観たことがないほどのインパクトがあったからであり、特例中の特例といえます。

例えば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は現在との接点があります。周りの人が近寄るなといった博士のもとに少年が行ってしまったことで物語がスタートします。時空を超えるために高速移動が必要なら改造車でやろうとするのは「ああ、あるかも」と観客の感情移入を促すことが出来ます。「機動戦士ガンダム」は未来の話ですが、地球を中心とした現在と同じような世界が舞台です。人々の感情を惹きつけたのは、生々しいほどの生き様を演じる主人公をはじめとするキャラクターたちと、ミノフスキー粒子により白兵戦を余儀なくされるという「ああ、あるかも」という設定でモビルスーツが戦っているなど、地に足のついた設定にあります。当時は異質のロボットアニメと受け取られ視聴率は散々でしたが。

ところがモンエリには現実世界との接点に乏しく、舞台こそ現在の地球であり、いつもエイリアンに攻められるアメリカですが、エイリアンが何のために地球にやってきたのか、何が原因でスーザンは巨大化してしまったのか、地球を奪いにやってきたというだけでは、魅力のかけらもありません。モンスターを秘密裏に保護していたというのは「ああ、あるかも」と思いますが、一方で使い古されたものでもあります。映画は長い歴史がありますが、アイデアが出尽くしたということもないはずです。どこかに「おや?」と思わせる部分があると、楽しいキャラクターが揃っているのですからモンエリの魅力は増すはずです。

評価に移ります。

【基礎点】

アニメーション(ジブリ以外)(5点)
・5点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・3点
モンスターたちが地球を守る。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・0点
現在との接点がないので魅力を感じなかった。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・0点
ない。「マーズアタック」を思わせる火星人や半魚人のデザインは、日本人は馴染めないと思う。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点
ない。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・4点
地球を守り、男を捨てて、モンスターと生きていこうと決意する。最近のハリウッドCGはこういう大団円のようなストーリーが目立つ。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
ムシザウルス。モ○ラを連想させるモンスターだが案の定、成虫になったのは笑えた。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・2点
巨大化したスーザンが結婚相手に会いに行き拒絶されるシーン。「そんな男、捨てちゃえ」と観客は思う。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
泣けるシーンはなかったが、ひたむきに戦うスーザンには感動の芽は少しだけあった。例えば巨大化したばかりに悩むシーンがあれば、再び巨大化することを決意する時に感動が生まれたと思う。この辺の描き方が弱いのが残念だった。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・1点
ラストシーン、スーザンが結婚相手を捨てるシーン。爽快感が少しだけあった。人物の掘りが浅いのも最近のハリウッドCGの特徴か。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
本格的な悪人が出ないので怒りの芽がない。これも最近のハリウッドCGの特徴か。大人のストーリーでも子供は理解出来る。目線を下げるのと、子供をバカにするのは違う。

【減点項目】

・減点なし。
ただし、退屈な時間は結構ある。

基礎点(5)+技術点(7)+芸術点(6)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(21)

「F」評価(59点以下)

3D映画の肝はアクションにあるはずですが、モンエリは今ひとつでした。これから積極的に導入しようとする3Dの入門編のような映画なのに、恐らく3Dの魅力を最も引き出せるはずのアクションシーンが陳腐です。普段メガネを掛けない人間にとっては、3Dメガネ自体が気を散らす原因にもなっていますから、より魅力ある映画が求められるようになるでしょう。3D上映は今後も恐らく特別料金(前売り券の場合も差額を支払う)を続けるでしょうから、金づるとして確立するのなら、もっと面白い映画を提供してみたいものです。そうなると3D映画として上映を控えている「ボルト」「クリスマス・キャロル」の出来が非常に気になるところです。

ちなみに今回は日本語吹替を鑑賞しました。俳優はともかくタレントには声優などやらせるべきではないと思うのですが、最初はセリフ棒読みで心配したベッキーの声優ぶりは、意外と素直に受け入れられました。下手くそだと映画に集中出来ませんから。

2009年7月18日/ワーナーマイカルシネマズ板橋
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July 23, 2009

剱岳 点の記

原作:新田次郎
脚本:木村大作、菊池淳夫、宮村敏正
音楽:池辺晋一郎
出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、宮崎あおい、夏八木勲、役所広司ほか

「玉蜀黍」

「剱岳 点の記」です。中高年比率がやたら高い映画で、平日休日問わず午後の回などは、中高年の男女がゾロゾロ劇場に入る新宿コマ状態です。テレビでも出来そうな映画ばかりが目立つ邦画の中で、実は日本人は硬派な映画を待ち望んでいるのではないかと思える今日この頃、果たしてCinemaXの評価やいかに。

「剱岳 点の記」は、日本地図を完成させるために最後に残った三角点を設置するという話です。原作は新田次郎。誰もが一度は見たことがある三角点に等級があること、それを設置した人、日時や経緯まで詳細に記す点の記というものが存在することなど観光要素に満ちた映画です。それなのに…作りが雑な印象を受けました。いや、作り方そのものは丁寧です。

監督は名カメラマンと評される木村大作氏。そのせいか昭和40年代全盛だったカメラワークやシーンの繋ぎを随所で確認することが出来ます。例えばシーンの途中でズームをしたり、ストップモーションでゆっくりと次のシーンを重ねたり。古き良き日本映画の雰囲気を感じることが出来ます。さすがは東映。アニメと特撮の影で密かに古臭い映画を作り続けているだけのことはあります。

今どき「順撮り」(ストーリーの時系列に沿って撮影)を行うのも驚きです。映画はシーンごとに分けて、時系列に関係なくまとめ撮りをすれば労力は少なくてすみます。ところが、役者はいきなりラストシーンを演じるのと、順撮りでクランクアップに合わせてラストシーンを撮影する場合では役に対する思い入れが著しく異なるはずです。順撮りはリアルな演技を期待出来る方法なのですが、恐ろしく手間が掛かります。一方、順撮りを行わないと「ナルニア国物語」のように、第二次成長期の子供を起用したために、キャストの1人が短期間でやたら背が伸びすぎて困ったというようなこともあります。

「剱岳 点の記」の順撮りは、通常の順撮りではありません。舞台は山。つまり、主人公たちが剱岳を攻める方法を考えるための下見のシーンから撮影して、翌年、本番の撮影をします。しかも剱岳山頂のシーンは、実際に役者やスタッフを登らせて撮影しています。剱岳は日本一登ることが困難といわれる山ですし、明治40年に主人公の柴崎芳太郎がやっとのことで杭だけ立て、その後平成16年まで本格的な三角点が設置出来なかったほどの険しい山です。木村監督はキャストの集め方から上から目線で厳しい印象が残りますが、撮影に対する情熱は「映画バカ」の一言に尽きるのかもしれません。

ところが、リアルさばかり追及していると、観客に伝わりにくい部分が発生します。地図で解説すれば分かりやすいのに、登場人物のセリフや行動で展開するので地理関係がなかなかとらえられません。一方で人物設定が雑で、特に松田龍平演じる生田信の人物設定はぶれすぎて、ストーリーをぶち壊しにしています。他にもあまり意味のないシーンが挟まれるためにテンポが悪くなり、せっかくのいい素材(観光要素)を抱えた映画なのに、時間が経ちすぎてどんどん腐っていくような印象です。良くも悪くも木村監督の思うがままに作られた映画といえます。

評価に移ります。


【基礎点】

一般の邦画(20点)
・20点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
明治時代、日本地図を完成させるために剱岳山頂に三角点を設置しようとする男の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・8点
宇宙、海底、高山と人類が到達しつくしたと思われる時代の中で、こうした挑戦を扱った映画は魅力がある。特に剱岳山頂に正式な三角点が設置されたのはつい5年前だったというのは驚き。また、メンツだけで人を動かす陸軍参謀本部の横暴さは、現代の企業社会に通じるものがあるかもしれない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・10点
境目にカタルシスがあると仮定すると、剱岳は人間が足を踏み入れてはならない境目のエリアといえる。智頭を見たり、実際に足を運べば、立山連峰は何も目的がない人間が立ち入ってはならない場所だと言うことが分かるはず。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・10点
身近なものの延長線上にあるのが観光要素。誰もが見たことがある三角点にそのようなエピソードがあるというのは驚き。そしてまた、やっとのことで剱岳に登頂したら、遥か1000年前に装備も何もない修験者が登っていた痕跡があったというオチも秀逸。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
実直に物事に取り組む主人公、柴崎芳太郎の行動は一貫していた。修験者の痕跡を隠せばいいものを正直に話したために剱岳初登頂という栄光を逃し、歴史の中に消えた生き方も面白い。ただし題材を見つけ小説にした新田次郎の手腕であり、映画に上手く反映されたかは疑問が残る。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・8点
香川照之演じる測量隊案内人、宇治長次郎。霊峰として立ち入ってはいけない剱岳の登頂を手伝うという板ばさみにあう立場が面白い。ただし原作にあるか分からないが、親子の和解まで描いたのは、かえって映画を陳腐にさせてしまった感がある。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・4点
登頂シーンのいくつか。順撮りで実際にその場で撮影したとあって迫力がある。映像的価値があるのではないかと思う。大画面の劇場のスクリーンで味わうべき。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
これも原作にあるかは分からないが、長次郎の親子の和解、柴崎の夫婦愛、生田の家族愛など中途半端に心情を織り交ぜてしまったことで映画のテンポが落ちてしまった。例えば「新幹線大爆破」は前半は緊迫感に満ち溢れているものの、後半は犯人の心情ばかりを追いかけてぶち壊しになったように、これは古き良き日本映画のクセなのかもしれない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・8点
前人未踏のはずなのに先人(1000年前の修験者)がいて栄光がフイになり、歴史上なかったことのようになってしまったことは、皮肉にも似た悲しい笑いを秘めている。
ちなみに評価とは関係ないが、最後のシーンで測量隊の観測時にタイミング良く山岳隊が登頂するのはまるでコント。双方が手旗信号で合図をし合うのもコント。このシーンが原作にあるかは分からないが、せっかくのリアリティがぶち壊し。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
敵はいるが、憎しみをぶつけられるような存在ではないので評価が出来ない。大山鳴動して鼠一匹のような内容で悪人がいないのはどこか物足りないが、壮大なストーリーを犠牲者を(ほとんど)出さずに描いたのはある意味、凄いと思う。

【減点項目】

・減点なし。
人物の心情を追いかけるシーンが重なる時間帯は睡魔に襲われた。

基礎点(20)+技術点(48)+芸術点(20)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(98)
「C」評価(80~99点)

映像は珠玉、ストーリーは凡庸。ただ題材の観光要素に魅力が溢れているので、全体的には面白い映画といえます。玉蜀黍(とうもろこし)は、熟成させて食べる肉と違い、とれたてが一番美味しく、収穫の瞬間から劣化が始まるそうです。「剱岳 点の記」はまさに玉蜀黍で、心情を描こうとか余計なことをしたばかりに鮮度が落ちてしまった感があります。挑戦するということ自体、カタルシスがあるのですから、徹底的に描けば心情など自ずと描けてくるはずです。映像が秀逸なだけにもったいない映画といえます。

2009年7月20日/新宿バルト9
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July 21, 2009

サマーウォーズ

監督:細田守
音楽:松本晃彦
脚本:奥寺佐渡子
声の出演:神木隆之介、桜庭ななみ、谷村美月、永井一郎、富司純子ほか

「既視感」

「サマーウォーズ」です。「時をかける少女」を観逃して3年、作品の内容や細田守監督についての情報が全くないままに試写会に行ったのですが、会場周辺は長蛇の列。東京厚生年金会館という大箱で立ち見まで発生しました。果たしてこの人気は何なのか?エンドロールでも観客はほとんど席を立たず、場内が明るくなるとにこやかにスタンディングオベーション。鳴り響く拍手にどこか新興宗教的な雰囲気を感じてしまう「サマーウォーズ」ですが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

不景気や多チャンネル化により広告収入が激減したテレビ局では、「そうだ、映画で稼ごう!」という傾向が強まっているようです。「ROOKIES-卒業-」のゴリ押しロングランはもちろん、最近では「ごくせん THE MOVIE」のようにテレビでやれるようなものをわざわざ劇場公開したり、「アマルフィ 女神の報酬」は、「パティオ」のようにバブリーで時代錯誤な雰囲気を漂わせるなどクオリティは必ずしも一定ではありませんが、テレビという公共の電波を使用して見境なくPRしているのが特長です。例えばテレホンショッキングでは一時期、改編期になるとテレビドラマの番組宣伝のために縁もゆかりもない芸能人を数珠繋ぎにするという状況が続きました。さすがに視聴者から批判が集中したのか、このような傾向は暫く見られなくなっていましたが、さすがにもうそんな悠長なことを言ってられないのでしょう。

「サマーウォーズ」も映画で稼ごうという臭いがします。長らくジブリとタッグを組んで来た日テレですが、宮崎駿監督は昔のように作品を量産出来るわけでもなく、周囲が担ぎ上げたジュニアは「ゲド戦記」で沈没したため、新たな金蔓が必要になってくるわけです。そこで目をつけたのが細田監督。筒井康隆の「時をかける少女」という強烈な原作をエンジンに使った前作で助走を始め、次第にオリジナル作品を発表しながら、ポストジブリ、つまり第2の黄金期を目指すという流れなのでしょう。

宮崎氏と細田氏は、アニメーターから演出へと実績を積み重ねてきたという共通点があるようですし、それぞれが演出を担当すると抜群に面白くなるという傾向にもあるようです。ただし細田氏には「風の谷のナウシカ」のような強烈なインパクトのある作品はありません。もちろん当時と今では時代背景も映画業界をとりまく環境も違います。事実上のオリジナル一発目でナウシカのような作品を送り出すことこそが異常だったのかもしれませんが、細田氏には次回あるいは次々回の作品で結果を出していくことが重要なのかもしれません。

「サマーウォーズ」は、良く出来た作品でした。特にのんびりとした夏の田舎の風景とネット上の仮想空間のスピード感の対比は見物で、後に続く人々にさまざまな影響を与えることになるでしょう。インターネットは映画の題材としては一見、機動力に溢れる万能薬のように見えますが、スピード感を映像で表現するのは極めて難しく、雑に扱うと登場人物がちまちまパソコンに向かうだけでストーリーが展開するだけの陳腐な設定に陥りかねません。

ネット上の仮想空間を表現する映像は、実際に映画をご覧頂ければ分かりますが「ありえない」ものです。ただし、不思議とウソっぽく感じないのは、我々の予想を遥かに超えるクオリティだからといえるでしょう。見た目だけでなく内容のともなったクオリティなので、「あるかも」と思ってしまうのかもしれません。人々の想像を超えたクオリティを生み出すためには、作り手が天才であるか、そうでなければ血の滲む努力が必要です。「超える」と「外れる」は違います。仮想空間のCGはド派手ですが、同じド派手でも人間が生活することを微塵にも考えず天守閣を並べただけの「GOEMON」とは全く異なります。

CG自体は、ルイ・ヴィトンや六本木ヒルズなど芸術家の村上隆氏がばら撒いたアニメーションを彷彿とさせますが、それもそのはず監督は細田氏でした。「サマーウォーズ」は、ちょいちょい笑いを込めています。この監督、コントもいけるのではないかと思うぐらい。それと、秀逸なのは高校野球の長野県予選とのモンタージュ。緊張感のあるシーンだけを並べたのでは観客は飽きてしまいます。そこで野球の試合を絡めるわけです。全く違ったことをしているのにリンクしているのが笑えます。他にも暗いストーリーなのに明るいシーンを織り交ぜたりと巧みに対位法を駆使しています。

評価に移ります。

【基礎点】

アニメーション(ジブリ以外)(5点)
・5点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
田舎に帰った高校生が世界を守るために戦う話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・10点
インターネットは世界中に繋がっているということを分かりやすく説明している。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
目新しい要素はないが、田舎の夏という雰囲気は良く出ていた。よく考えたらリアルの世界はほとんど家の周辺だけで展開していたという職人芸のような渋い設定。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
細田監督のアニメーションは、田舎と夏が合うようだ。もっと山や川の風景を見てみたい。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
主人公、小磯健二は数字好きが高じて世界を守るはめに。数字が好きという性格が毒にも薬にもなる設定は面白い。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・0点
印象に残る人物はいないが、やたら多い登場人物を上手く回している。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・0点
シーン、キャラクターデザインなど既視感を抱くものが多かった。特にキャラクターは「ジブリ?」と勘違いするか、そうでなくても今様の画風を脱していないためどうしても既視感が残った。これを脱皮しなければ、日テレが目論むポストジブリにはなれない。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・4点
大おばあちゃんが死ぬシーンは、それ以前のシーンも厚みがなくその場限りなので泣いてはだめ。むしろ終盤でドイツの子供のアバターがちょこんと登場するシーンの方がジーンと来る。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・10点
高校野球の試合に絡めた巧みなモンタージュは笑える。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
敵はいるが、憎しみをぶつけられるような存在ではないので評価が出来ない。大山鳴動して鼠一匹のような内容で悪人がいないのはどこか物足りないが、壮大なストーリーを犠牲者を(ほとんど)出さずに描いたのはある意味、凄いと思う。

【減点項目】

・減点なし。

基礎点(5)+技術点(34)+芸術点(14)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(60)
「E」評価(60~69点)

細田監督にとっては「既視感」が大きな壁になりそうです。諸手を挙げて「ジブリ全て良し」と賞賛するようなファンが増えるのは考え物ですが、「細田監督の映画だから観よう」と思わせるファンを固定していくことが必要です。「サマーウォーズ」は、インターネット上の仮想空間における「スピード感」を初めて表現出来た映画と言えるのかもしれません。例えば「(ハル)」は、今は廃れたパソコン通信を題材として活用した映画として評価されています。大して面白くもない映画なのですが、離れた場所に住む主人公同士を繋ぐというパソコン通信の特徴を巧みに取り入れているので、これ以降にパソコン通信を扱った映画は「(ハル)みたいな映画」と評価されてしまうわけです(電子メールを題材にすれば、「ユー・ガット・メール」のような映画という評価になります)。

「サマーウォーズ」は、一時期の指標となるような映画といえるでしょう。ただし劇場に足を運んだり、DVD化後にわざわざ借りるような観客を惹き付ける誘引力があまり感じられないのが残念です。もちろんファンの方々は別として。細田監督の今後の作品に期待します。

2009年7月20日/東京厚生年金会館
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July 09, 2009

コネクテッド

監督;ベニー・チャン
製作総指揮:アルバート・リー
音楽:ニコラ・エレラ
脚本:アラン・ユエン、ベニー・チャン
出演;ルイス・クー(アボン)、バービー・スー(グレイス・チャン)、ニック・チョン(ファイ刑事)、リウ・イエ(誘拐犯)

「プロの綱渡り」

ハリウッド映画「セルラー」を香港でリメイクした作品です。「セルラー」を観たことはありませんし、香港映画に強い思い入れもありません。頭がからっぽのまま観た久々の香港映画、しかも香港映画初の「ハリウッド映画のリメイク」というおまけまでついて、果たしてCinemaXの評価やいかに。

「コネクテッド」は、本家の「セルラー」からも連想出来る通り、電話を「繋ぐ」ことを意味しているようです。ある事件に巻き込まれて密室に閉じ込められたヒロイン、グレイスが、ぶっ壊されてしまった電話を修理して通じたのが主人公、アボンの携帯電話だったというところから物語は始まります。ストーリーそのものは他のブログなどで詳しく書く人もいるでしょうからそちらを見ていただくとして、とにかくアクションが見応えがあり、小さい頃観た香港映画のスピード感を髣髴とさせる、まさにジェットコースタームービーでした。

物語は3本の筋で展開します。携帯電話を介したアボンとグレイスのストーリーにアボンと家族のエピソード、左遷されて冷や飯食いになっているファン刑事のエピソード。ところがこの3つのストーリーは、鼎立ではありません。携帯電話を介した本筋があって、その他のエピソードはエッセンス程度。その結果、1本のストーリーで綱渡りをしながらアクションシーンを重ねるという、不安定な状態が最後まで続きます。この設定は誰かに追いかけられるという類のPVにありがちなもので、映画に導入するとご都合主義ばかりが目立って観客の感情移入を阻害することが少なくありません。

ところが、「コネクテッド」は、絶妙なバランスで次から次へとアクションが繰り返されます。そして、その多くが実写。ハリウッドなら簡単にCGに頼ってしまいそうな映像も、とにかく実写にこだわっているようです。この爽快感は、北朝鮮の怪獣映画「プルガサリ」を観た時に似たものがあります。ハリウッド映画はもちろん日本ではウルトラマンでさえCGに頼るような状況の中で「プルガサリ」はセット。紫禁城の模型がプルガサリに襲われて土煙を上げながらぶっ壊れていく映像は圧巻でした。

「コネクテッド」のストーリーは、二転三転していきます。登場人物の1人が「この世の中で、正義を見つけるのは難しい」と言ったように、勧善懲悪ではないストーリーになっています。「セルラー」のストーリーや設定がどれだけ反映されているのかは分かりませんが(いずれ本家も観てみようと思います)、最後まで観客を飽きさせないストーリー展開とアクションは見物です。日本では韓流映画やドラマが根付いてしまいましたが、香港映画はまだまだ捨てたものじゃないなと思いました。

ただ1つ、気になったのは、主人公のアボンの家族の設定です。最後は救出されてヒロイン、グレイスと良い雰囲気になる(ハリウッド映画なら恋愛関係に発展しているはず)のですが、そこにアボンの妻子が現れてエンディングを迎えます。お色気シーンに全く頼らない硬派な設定は評価出来るのですが、この2つの設定が重なってしまうことで感動の上塗りのようになってしまいました。もう少し工夫すれば観客の涙を誘うことが出来る印象的なエンディングになっていたのかもしれません。

評価に移ります。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・9点
見知らぬ2人が切ると二度と繋がらない電話を介して危機を脱する話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・7点
IT社会で映像が溢れるようになった今、音声だけで伝えられること、伝えられないことの「壁」を上手くストーリーに絡めたことは意味があるかもしれない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・1点
舞台は香港。設定などもこれと言って興味を惹くものは少なく観光要素には乏しい。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点
目新しさはない。面白く観ると絶対に後悔しない映画だが、劇場に足を運んでもらうまでが問題。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・8点
普通の生活をしていた人間が事件の深みにはまっていく王道の設定だが、主人公のアボンの性格をエピソードを通じて丁寧に描いているので、観客も一緒に巻き込まれていくことが出来る。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・5点
主人公のアボン。周囲の登場人物をよくよく考えてみると、かなり無理のある設定が目立つことに気付くが、立ち止まらず突っ走る映画なので、観ている間は気付かないのかもしれない。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・6点
主人公の運転する車が缶詰満載のトラックに突っ込んでしまうシーン。片付けるの大変だろうなあと思ったと同時に、このシーンの前後を含め香港映画のテイストが凝縮された部分でもあると感じた。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・3点
相手を見失ったのに追いかけ続ける主人公にヒロインが電話の向こうで「ありがとう」と言うシーン。それでも強がる主人公に少々じんわり来る。お涙頂戴風のエンディングは逆に泣けない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
アクションシーンは随所に笑いが散りばめられているが、ストーリーの流れとは関係ないので評価外。ただし、おまけのように笑いを付け足してくれるのは、作り手は苦労するだろうが、観ている側は嬉しい。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
一連の事件の焦点(ビデオカメラの映像)が抽象的なので、どうしてそれを追いかけるのかは頭では理解出来ても感情移入の材料にはなりにくかった。人は何人か殺されているが、実は観客が憎しみを抱くような悪人はいなかったように思う。

【減点項目】
・減点なし。

基礎点(25)+技術点(25)+芸術点(14)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(71)

「D」評価(70~79点)

評価は思ったより低くなりましたが、フラッと劇場に立ち寄ったり、DVDをふと借りて観ても絶対に後悔はしない映画です。キャストでも設定でもストーリーでも何でもいいのですが、劇場に足を運ばせる「何か」がないのが「コネクテッド」の最大の弱点といえるでしょう。興行収入はそんなに伸びないと思いますが、じんわりと口コミで育っていくような作品になることだと思います。

2009年7月8日/ブロードメディア・スタジオ試写室
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July 07, 2009

いけちゃんとぼく

監督:大岡俊彦
原作:西原理恵子
音楽:川嶋可能
脚本:大岡俊彦
出演または声の出演:蒼井優、深澤嵐、ともさかりえ、萩原聖人、モト冬樹、蓮佛美沙子ほか

「裏ドラ」

西原理恵子原作「いけちゃんとぼく」です。原作は読んだことがないのですが、週刊SPA!にたまに掲載される彼女の漫画などからストレートな話ではないのは雰囲気で感じていました。前の座席には2人の小さな子供とその母親が座っていました。西原理恵子ファンの母親なのか、いけちゃんのほのぼのさに惹かれて子供もろとも面白いかもと飛びついただけなのか、面白くないと子供がぐずりはじめた訳は?果たしてCinemaXの評価やいかに。

「いけちゃんとぼく」は、最後に強烈なネタバレがある映画です。このネタバレが実に切なくて、この映画に対する評価そのものになっています。ただし「千の風になって」に便乗したように「象の背中」を世に送り出したり、「着信アリ」を何度もしつこく作ってジャパニーズホラーブームの甘い汁を残り一滴まで吸い尽くした秋元康とは全く異なり、西原理恵子さんは大人の恋愛と子供の視点とを組み合わせることで、これまでにないタッチのストーリーを生み出しました。「いけちゃんとぼく」は、大人向けの話なのです。

「いけちゃん」の正体は最後に分かるのですが、主人公の小学生の話し相手になってもピンチの時には助けてくれません。のび太にとってのドラえもんではないのです。ドラえもんは、ピンチになるとすぐに手助けしてしまうのでのび太が成長しないと揶揄されます。これは故・藤本弘(藤子・F・不二雄)氏には本意ではないでしょう。本来は空想的なひみつ道具を通じて、子供たちに夢を与えるという設定が、当人が亡くなりストーリーがシステム化されたこと、あるいはひみつ道具の先進性に世の中が追いついてきてしまったことなどが挙げられるでしょう。

周りの評価で歪曲されたのは最近、生誕100周年でやたら盛り上がっている太宰治も同じです。作品はともかく生き方まで神格化されていることに大きな疑問を感じます。自殺未遂を繰り返して最後は自殺未遂をしそこなって死んだともとれるからです。この過程で何人も道連れに殺していることを踏まえると、決して生き方まで賞賛する訳にはいかないことが分かります…話が逸れました。

ちなみに、ドラえもんが未来の世界に帰ってしまった単行本6巻~7巻には、のび太が成長したと強く印象付けられるシーンがあります。ドラえもんがいなくてもジャイアンに勝たなければならないと、ボロボロになりながらジャイアンを倒す(というより逃げられる)シーンです。「さようならドラえもん」「かえってきたドラえもん」の2話は、心に残る秀逸な作品と評価されることが多いのですが、この話があるからこそ、ドラえもんの存在がのび太の成長を阻害するという、作者の本意ではない論点を生み出す結果になってしまったのではないのでしょうか。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の邦画(20点)
・20点
いけちゃんはCGだが、れっきとした実写の邦画。

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
いけちゃんが、最愛の人の過去を探りに来る話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・10点
ストーリーの根底には恋愛に年齢は関係ないという要素があるので、奥が深い。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
風景や題材としての観光要素は少ない。懐かしい田舎の風景程度。西原理恵子作品の映画化というのは一種の観光要素か。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
見た目での観光要素は少ないが、誰しもが少年時代に抱いた気持ちは描かれている。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・8点
泣かない。暴力に屈しない。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
いけちゃん。蒼井優の声がびっくりするぐらいハマっている。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
いけちゃんが正体をばらすシーン。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・10点
決して唐突ではなく、これまでいろんなシーンでタネを撒いてあるだけに、ストーリーとして泣ける。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・10点
登場人物の性格に裏付けられた行動、人物の表と裏など、割と脇役に近い人物まできちんと描かれている。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
悪の要素がない。主人公が喧嘩をしていた仲間と最後は大団円になってしまうところはやや鼻にかかるが、流れは自然で違和感はない。

【減点項目】
・原点なし。

基礎点(20)+技術点(32)+芸術点(40)×1.5-減点=CinemaX指数(112)

「B」評価(100~119点)
間違いなく泣ける映画なのですが、劇場に足を運ぶまでの魅力に乏しいのが残念です。口コミで評判になる映画にはなるでしょう。

恐らく、クラスメートをいじめまくっていた相当なガキ大将でもない限り、この主人公の子供に感情移入出来ることでしょう。ちなみに私は幼い頃、ベッドの下に人々?がいて、夜な夜なからかいに出てくるのが嫌でたまらなかったという経験があります。何度も洗濯機や浴槽に落ちて死に掛けたという主人公の子供と似たような経験があったので、最初から感情移入が出来ました。この主人公が見ていた光景は、プールの底や台風の大波が押し寄せる海水浴場の砂底から見たものと同じです。

そういう親近感のようなものを抜きにしても、泣ける映画です。出来れば劇場で、近くで上映されていなければDVD化されるのを待ってもご覧になることをお勧めします。

2009年7月5日/シネプレックス新座
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July 06, 2009

トランスフォーマー/リベンジ

監督:マイケル・ベイ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、マイケル・ベイ、ブライアン・ゴールドナー、マーク・ヴァーラディアン
音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー
脚本:アーレン・クルーガー、ロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン
出演:シャイア・ラブーフ、ミーガン・フォックス、ジョシュ・デュアメル、タイリース・ギブソンほか

「カップラーメン1年分」

一昨年に上映された「トランスフォーマー」の続編です。前作、CinemaXはハチャメチャナ映像を評して「トマト投げ祭り」としていますが、実は人類との関わりなど嘘を絶妙に織り交ぜてそれなりに説得力のある映画でした。

ところが続編は、そんなストーリーなどどうでも良く、ただひたすらアクションの連発でした。前作は動きは迫力があるものの、動き回るのは街の中だけという箱庭の中でロボットがドタバタと走り回るような内容でしたが、続編は前作の舞台の裏側、エジプトに舞台を移したものの結局、ピラミッドの周りでドタバタ走り回っているだけのような映画でした。

CGのアクションは物凄く、たった2年でこれだけ進歩するのかを思い知らされる映画ではあります。ちなみにスターシップ・トゥルーパーズ(1997年)は、当時の最先端のCG技術を導入した映画なのですが、これと「トランスフォーマー/リベンジ」と見比べると隔世の感があることが分かるでしょう。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
主人公がロボットをもう一度生き返らせようとする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・1点
地球を救おうとする若者がいるのは立派だと思うが、動機がいまいち伝わらない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・5点
ロボットたちのトランスフォーム(変身)は見所満載。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
オプティマス・プライム(コンボイ司令官)などのオートボット(サイバトロン)あるいはディセプティコン(デストロン)のトランスフォームに熟練していたどんな子供も追いつけないような早さで変身するのは圧巻。まず、無理。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・3点
オプティマス・プライムを生き返らせようと物凄い冒険をしてそうだが、何故か箱庭の中で走り回っている感じがするのが不思議。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・5点
主人公を誘惑する美女。性に乱れるB級映画のようなキャンパスライフのテイストは笑えた。アメリカの大学はどこもこんな感じと錯覚してしまいそう。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・2点
ひたすらロボットがドタバタするだけなので、主人公の母親がドラッグでハイになるあたりは逆に印象に残る。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
前作、唯一泣けそうな要素だったバンブルビー(主人公が所有?するオートボット)は続編でもいい味を出している。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
バンブルビーが主人公と離れ離れになるのが嫌だとロボットのくせに泣きまじゃくるシーン。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
よく考えると意外と悪の要素が少ない映画だったりする。

【減点項目】
・減点なし。
人間とロボットがエジプトの箱庭の中で戦うシーンは、主人公がオプティマス・プライムになかなか近づかず、かつ飽き飽きするほどアクションの連続で1年間ずっとカップラーメンを食べさせられるような感じだったが、CGはそれなりに見応えがあるのでここでは減点を行わなかった。

基礎点(15)+技術点(19)+芸術点(9)×1.5-減点=CinemaX指数(48)

「F」評価(59点以下)

ストーリーが直線的に展開する映画はCinemaXでは必然的に評価が下がってしまうので「トランスフォーマー/リベンジ」は割を食ってしまいます。前作のストーリーから引っ張った部分もあるのですが、よく考えたら前作はどんな話だったかも記憶にありません。何も考えず、単にアクションを楽しめばいいのですが、それにしては時間が長すぎます。途中、トイレで席に立つ観客の方も多いところに、時間の長さやストーリーのどうでもよさが現れているのかもしれません。

エンディングは、当たれば次もあるかもみたいな感じなのですが、その時点の最先端のCGを楽しむという感じなら、そう悪くはない映画なのかもしれません。製作総指揮はスティーブン・スピルバーグですが、もうさすがにスピルバーグの映画なら何でもかんでも面白いという幻想を抱いている人も少なくなっていることでしょう。

2009年7月4日/ワーナーマイカルシネマズ板橋
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July 05, 2009

幼獣マメシバ

監督:亀井亨
音楽:野中“まさ”雄一
脚本:永森裕二
出演:佐藤二朗、安達祐実、渡辺哲、高橋洋、志賀廣太郎ほか

「ネコマタギ」

動物と子供を扱った映画は必ず当たるいわれるほど鉄板の要素なのですが、この「幼獣マメシバ」は少し様相が異なるようです。果たしてCinemaXの評価やいかに。

「幼獣マメシバ」は「ネコナデ」のスタッフや脚本で製作されたようです。「幼獣マメシバ」も「ネコナデ」もメジャーの系列に属さないローカル局が集って雑草根性で頑張って、まるで田舎の高校球児が甲子園で準々決勝ぐらいまで勝ち上がったような映画です。ちなみに「ネコナデ」は、テレビ版は堅物サラリーマンや周辺の人々がたった1匹の子猫に振り回されるという見応えのあるものだったのですが、映画版になるとストーリーを変にいじりすぎて駄作になってしまった感があります。

早速、評価に移りましょう。

【基礎点】

動物や子供を扱った映画(10点)
・10点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
35歳の親離れ、子離れ。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・8点
親離れ出来ない子、子離れ出来ない親が増えているといわれる中で1つのヒントにはなる。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
諏訪湖周辺、富士山などの雰囲気は味わえた。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・1点
そうでもない。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・7点
母親を探し続ける。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
メチャクチャな行動をする登場人物が多い中で、安達祐実演じる女性は、それなりの過去を背負っていて行動にも説得力があった。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・1点
強いて言えばうまい棒だらけの主人公の部屋。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
行き当たりばったりのストーリーでは泣けない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・4点
主人公の35歳のニートの行動やセリフは笑えるが、主人公の設定に微妙な部分を含むためテレビで放映されることは絶対にないと思う。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
悪い人が1人も出ない子供用はみがきのような設定。

【減点項目】

寝てしまった(-30点)
・-30点
前半から中盤にかけてかなりテンポが落ちる。冒頭と終盤だけを見れば事足りてしまう映画。

基礎点(26)+技術点+芸術点(8)×1.5-減点(30)=CinemaX指数(8)

「F」評価(59点以下)

35歳の親離れ、子離れという視点は面白く、行き当たりばったりのストーリーはくたびれるもののそれなりに魅力はあり、子犬にかき回される登場人物たちの行動も別に面白くないわけではないのですが、主人公の設定が先天的なものなのか、親が子供を抑圧するが故に陥ったことなのかがよく分かりませんでした。ここの設定の中途半端さがこの映画の致命的欠陥のような気がします。前者ならタッチーであり、投げかけた問題を拾って観客に考えさせるような要素が必要で、後者なら、両親の性格をもっと描き込むとか、あるいはニートという設定だけが必要だったのなら他の描き方もあったはずです。

いずれにしてもメジャー系の映画では絶対に扱わない設定なので、勇気は評価出来るのですが、例えば周りの人々が自分のことを軽蔑していると思い込んでしまうという、向こう側から見たこちら側の世界は良く描けていたのに、ここを中途半端に扱ったために、重要な設定が単なる道具のようになくなってしまった感がありました。これでは恋愛ドラマのカリスマと称されるあの女性脚本家のいくつかのテレビドラマと同じです。残念。

2009年6月27日/ワーナーマイカルシネマズ大宮
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