チェイサー
監督:ナ・ホンジン
音楽:キム・ジュンソク、チェ・ヨンラク
脚本:ナ・ホンジン
出演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ、チョン・インギ、パク・ヒョジュ、キム・ユジョンほか
「箸休めなし」
韓国のテレビドラマはもとより、韓国のコメディ、ラブストーリーなどの映画は全く見る気はしないのですが、サスペンスは別です。韓国には北朝鮮に対する社会の緊迫感と日本の高度経済成長期を思わせるような得体の知れない猟奇的な事件が発生するという土壌があるため、サスペンス映画は恐ろしくシリアスな雰囲気になるという特徴があります。
猟奇的な事件は日本でも起こるのですが、どういうわけか近年は安易に社会の闇として解決しがちな傾向にあり、映画や小説などの題材としては扱いがたいものも少なくないようです。もちろん日韓の映画に対するファンの趣向の違いと、ハリウッド映画に飲み込まれてしまったか否かという、両国の国内映画業界の温度差というものもあるのかもしれませんが、それらの要素を鑑みても緊迫感に差がありすぎるような気がします。
恐らく、日本映画だと愛だの恋だの箸休めを入れてしまうので、スピード感がなくなってしまうのかもしれません。これはハリウッド映画にも共通するかもしれませんが。
チェイサーは、10ヶ月間に21人を殺害した「殺人機械」ユ・ヨンチョル事件をベースにした作品です。同じく実話をベースにした「殺人の追憶」と並べて評価するむきもありますが、方や未解決の事件に挑戦した「殺人の追憶」と方や犯人がわかっている「チェイサー」とでは、多少なりとも趣向が異なるといってもいいでしょう。果たしてCinemaXの評価やいかに。
【基礎点】
日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点
【技術点】
テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・9点
デリヘル経営者の男、ジュンホが、従業員の女性、ミジンを凶悪殺人犯から助け出そうとする話。
そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・2点
観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・3点
犯人が人を殺す時の方法。邦画ではここまでストレートに描くのは難しいはず。
観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点
主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
主人公、ジュンホが何故、下心なしに命がけで従業員の女を助けようとするのか、しっかりと動機付けと説明がなされている。元刑事のジュンホは①風邪を引いて休んでいる従業員のミジンに出勤を頼んだばかりに囚われの身になってしまった②ミジンの娘と行動をともにするはめになってしまったことなどで、引くに引けず犯人探しに突っ走るようになる設定は絶妙。
【芸術点】
印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
ミジンの娘。252に出てくる女の子に激似で同じ俳優かと思ったほど。252の女の子は耳が不自由な設定でセリフがないため「ああ、韓国の子役だったんだ」と勝手に思い込んだが、別人のよう。日本と韓国は近いのだなと妙に納得してしまった。
印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
ミジンの娘が車の中で泣いているシーン。この映画は実話をどこまで扱ったかはわからないが、事件周辺のシーン作りの丁寧さが目立つ。特にミジンの娘が真実を知るまでの流れと、音声もなく豪雨に霞むフロントガラス越しに泣いているシーンは秀逸。
泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・8点
ミジンが殺されるところ。映画の重要な要素である「あーあ」感が漂う。
笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
最近は流れが変わってしまったが、韓国は主役級の男優にチョイぶ男を選ぶ傾向にある。それだけに仕草などで笑える部分も多いのだが、ここでは評価外。
怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・5点
上部からの理不尽な命令で凶悪犯を釈放したばかりに新たな被害者を生んでしまうところ。最近、日本では親子殺傷事件で犯人を取り逃がしたり、人為的なミスで問題が発生するのはどこの国でも同じ。
【減点項目】
・減点ゼロ。
基礎点(25)+技術点(24)+芸術点(35)×1.5(0)-減点=CinemaX指数(102)
「B」評価(100~119点)
チェイサーは、殺人の追憶に比べて作りの粗さは目立ちますが、見ごたえのある映画と言えます。どこまでが実話かはわからないのですが、主人公が架空の人物設定で良ければ、刑事役のほうが設定上は楽だったはず。これをあえて元刑事の民間人としたのなら、評価されるべき挑戦であり、実話負けしない映画たりうる大きな要因と
言っても過言ではないでしょう。愛だの恋だの箸休めもない硬派な映画を観たい方は、おすすめです。



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