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May 24, 2009

天使と悪魔

監督:ロン・ハワード
製作総指揮:トッド・ハロウェル、ダン・ブラウン
原作:ダン・ブラウン
音楽:ハンス・ジマー
脚本:デヴィッド・コープ、アキヴァ・ゴールズマン
出演:トム・ハンクス、アイェレット・ゾラー、ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルドほか

「エヴァンゲリヲン」

ダ・ヴィンチ・コードの」続編です。「ダ・ヴィンチ・コード」の時は、憑き物のようにみんな原作本を買って読み、「?」のまま劇場に足を運び、さらに「??」になった今を思い返しても「???」の印象しか残らない状態なのですが、原作本の時点でも圧倒的に「天使と悪魔」のほうが面白いという評価のようですが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

「天使と悪魔」は、「ダ・ヴィンチ・コード」よりは遥かに判りやすい内容となっています。「ダ・ヴィンチ・コード」の時はこぞって解説本や解説番組のようなものが乱発され、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品の解釈などあれこれ説明された割に映画の意味が理解出来ず、まるで死海文書だなんだのと解釈が乱発された割にヤケクソのような終わり方になってしまった「エヴァンゲリヲン」のような空振り感があったのですが、「天使と悪魔」ではややこしい設定も割と丁寧に観客に説明しています…というより、キャラクターが一方的に喋りまくるだけなのですが。

「天使と悪魔」の舞台は、現在のローマとその一角にあるバチカン市国が舞台です。数年前にも実施された次期ローマ教皇を選出するコンクラーベに絡んだ殺人事件を主人公、ラングドン教授が解明していくというものです。バチカン市国内では未だ腐れ縁のようにスイスの衛兵が、レトロでユーモラスな制服で警備を続けていることをエッセンスとして扱っていたり、密室で行われるコンクラーベの内部を映像化していることは、それだけで観客を惹きつける観光要素になり得ます。

また、「ダ・ヴィンチ・コード」ではややこしくて重すぎた設定が、「天使と悪魔」では一言で説明出来るように簡素になっていることが分かります。前作ではあまり伝わってこなかったラングドン教授の象形学者という設定が、やっと分かったような気もします。何故、研究者は中性子を作ろうとしていたのかとか、ストーリーを二転三転させるための都合のいい設定など気になる部分もあるのですが、前作のようにルーブル美術館の中をちまちま走っていた展開と違って、ローマ市内を縦横無尽に走り回る設定は、動きがあって飽きさせませんし、一種の観光要素にもなっているように思えます。

さて、評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
コンクラーベに絡む殺人事件を解決する象形学者の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・9点
政権闘争はいつの世にもあるもの。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・10点
密室のコンクラーベを描いたこと。現在のローマ市内に残る遺跡を紹介していること。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・10点
題材としては見応えがあった。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・9点
ラングドン教授は、事件を解決しようと終始奔走した。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・5点
カメルレンゴ、警備隊長、枢機卿など。観客は見事に騙される。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・4点
強いてあげるならば、ラングドン教授が枢機卿を救出しようとするいくつかのシーン。時間との戦いという設定は見応えがあった。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
泣けるシーンはなかった。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
ラングドン教授演じるトム・ハンクスの喋りは、賛否両論あれど面白いが、CinemaXでは評価外。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・3点
悪に立ち向かうという要素に欠けるように思えた。「真犯人」にそれだけの行動をさせるだけの動機が足りないのかもしれない。

【減点項目】

・減点なし。

基礎点(15)+技術点(45)+芸術点(12)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(81)

C評価(80~99点)

ややこしい話も、ラングドン教授と研究者など周囲の人々が勝手に喋りまくるので原作本を読んでいない人、サスペンスが苦手な方にも安心です。ただし、一緒に謎解きしている雰囲気は全くないので、推理が好きな方には物足りなさを感じる映画なのかもしれません。

「ダ・ヴィンチ・コード」や「天使と悪魔」を観ていると、ラングドンを主人公にして、歴史的な象形に対して謎解きをするという設定なら、場所は問わないようなので、例えば、東西南北に四神を配した京都を舞台にしたりとか、天海が江戸城を中心に渦を巻くように街づくりをした東京を舞台にしても面白いかもしれません。

2009年5月16日/ワーナーマイカルシネマズ板橋
Swissguard2

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May 18, 2009

チェイサー

監督:ナ・ホンジン
音楽:キム・ジュンソク、チェ・ヨンラク
脚本:ナ・ホンジン
出演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ、チョン・インギ、パク・ヒョジュ、キム・ユジョンほか

「箸休めなし」

韓国のテレビドラマはもとより、韓国のコメディ、ラブストーリーなどの映画は全く見る気はしないのですが、サスペンスは別です。韓国には北朝鮮に対する社会の緊迫感と日本の高度経済成長期を思わせるような得体の知れない猟奇的な事件が発生するという土壌があるため、サスペンス映画は恐ろしくシリアスな雰囲気になるという特徴があります。

猟奇的な事件は日本でも起こるのですが、どういうわけか近年は安易に社会の闇として解決しがちな傾向にあり、映画や小説などの題材としては扱いがたいものも少なくないようです。もちろん日韓の映画に対するファンの趣向の違いと、ハリウッド映画に飲み込まれてしまったか否かという、両国の国内映画業界の温度差というものもあるのかもしれませんが、それらの要素を鑑みても緊迫感に差がありすぎるような気がします。

恐らく、日本映画だと愛だの恋だの箸休めを入れてしまうので、スピード感がなくなってしまうのかもしれません。これはハリウッド映画にも共通するかもしれませんが。

チェイサーは、10ヶ月間に21人を殺害した「殺人機械」ユ・ヨンチョル事件をベースにした作品です。同じく実話をベースにした「殺人の追憶」と並べて評価するむきもありますが、方や未解決の事件に挑戦した「殺人の追憶」と方や犯人がわかっている「チェイサー」とでは、多少なりとも趣向が異なるといってもいいでしょう。果たしてCinemaXの評価やいかに。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・9点
デリヘル経営者の男、ジュンホが、従業員の女性、ミジンを凶悪殺人犯から助け出そうとする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・2点

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・3点
犯人が人を殺す時の方法。邦画ではここまでストレートに描くのは難しいはず。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
主人公、ジュンホが何故、下心なしに命がけで従業員の女を助けようとするのか、しっかりと動機付けと説明がなされている。元刑事のジュンホは①風邪を引いて休んでいる従業員のミジンに出勤を頼んだばかりに囚われの身になってしまった②ミジンの娘と行動をともにするはめになってしまったことなどで、引くに引けず犯人探しに突っ走るようになる設定は絶妙。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
ミジンの娘。252に出てくる女の子に激似で同じ俳優かと思ったほど。252の女の子は耳が不自由な設定でセリフがないため「ああ、韓国の子役だったんだ」と勝手に思い込んだが、別人のよう。日本と韓国は近いのだなと妙に納得してしまった。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
ミジンの娘が車の中で泣いているシーン。この映画は実話をどこまで扱ったかはわからないが、事件周辺のシーン作りの丁寧さが目立つ。特にミジンの娘が真実を知るまでの流れと、音声もなく豪雨に霞むフロントガラス越しに泣いているシーンは秀逸。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・8点
ミジンが殺されるところ。映画の重要な要素である「あーあ」感が漂う。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
最近は流れが変わってしまったが、韓国は主役級の男優にチョイぶ男を選ぶ傾向にある。それだけに仕草などで笑える部分も多いのだが、ここでは評価外。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・5点
上部からの理不尽な命令で凶悪犯を釈放したばかりに新たな被害者を生んでしまうところ。最近、日本では親子殺傷事件で犯人を取り逃がしたり、人為的なミスで問題が発生するのはどこの国でも同じ。

【減点項目】

・減点ゼロ。

基礎点(25)+技術点(24)+芸術点(35)×1.5(0)-減点=CinemaX指数(102)

「B」評価(100~119点)

チェイサーは、殺人の追憶に比べて作りの粗さは目立ちますが、見ごたえのある映画と言えます。どこまでが実話かはわからないのですが、主人公が架空の人物設定で良ければ、刑事役のほうが設定上は楽だったはず。これをあえて元刑事の民間人としたのなら、評価されるべき挑戦であり、実話負けしない映画たりうる大きな要因と
言っても過言ではないでしょう。愛だの恋だの箸休めもない硬派な映画を観たい方は、おすすめです。

2009年5月1日/ユナイテッド・シネマ豊洲
Kamens1

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May 17, 2009

サスペリア・テルザ 最後の魔女

監督:ダリオ・アルジェント
製作総指揮:クラウディオ・アルジェント、カーク・ダミコほか
音楽:クラウディオ・シモネッティ
脚本:ダリオ・アルジェント、ジェイス・アンダーソンほか
出演:アーシア・アルジェント、クリスチャン・ソリメノ、アダム・ジェームズほか

「若気の至り」

点数制の新基準を導入して約20作品を評価してきましたが、もう一度観たいような映画が最低の評価になったり、二度と観たくないような映画がそこそこの評価だったり、ジャンルによって向き不向きがあるようなのですが、「ホラーでも通用するかどうか」ということを確認するため、今回は「サスペリア・テルザ 最後の魔女」を評価してみました。

映画ファンが劇場に回帰してきたおかげで、東京都内にも単館系の映画館が増加しました。単館映画でも面白いかどうかはともかく、綺麗系の映画を扱ってきた恵比寿ガーデンシネマ、そこまでお高くはない映画を扱うシネスイッチ銀座、アングラ臭が漂う銀座シネパトスなど特色がある映画館があるのも楽しみの1つです。人口が多いからこそこういう映画館が生き残れる訳なのですが、やはり最も激戦区といわれるのは渋谷です。

渋谷には、メジャー系の映画館のほか、単館系の映画館が点在しています。道玄坂には単館系の映画館を集めたシネコンのようなところもあります。単館系の映画館は、マイナーな邦画などが劇場公開の実績作りのために利用されているような部分もあるのですが、やはり上映作品で勝負しなければ潰れてしまいます。

シアターN渋谷も同じく競争に晒されており、若者向けのB級映画を中心に上映することで生き残りを図っています。サスペリア・テルザもそうですが、これから上映予定の作品を見ると、さらにこの流れは加速しているようです。

さて、この映画は、1977年の『サスペリア』、80年の『インフェルノ』に続く魔女3部作の完結編という位置づけのようです。前2作を観ていないのですが、さっそく評価してみましょう。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
復活した最後の魔女「涙の母」を再び闇に葬ろうとする女の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・2点
いつの時代も変わらないという視点なら、マッチする部分もあるのかもしれない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
ローマ観光みたいな気分になる部分はある。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・1点
観光要素といっても、残虐なシーン(電車のドアで魔女の手下の女の頭をガンガンつぶすとか)込みです。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・1点
主人公の若い女性は周りに言われるがままに行動しているので、真に貫通行動としての要素は薄い。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
腸を首に巻かれて死んでしまう主人公の女友達と電車のドアに頭を挟まれて脳みそが飛び出してしまう日本人?の若い女。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・3点
棺おけから箱を見つけ出すシーン。掘る方も彫る方だが、家に持って代える神父?もどうにかしている。「そんなことやっちゃって、いいの?」と思わせるシーンから悪の連鎖が始まるのはホラー映画の常套手段か。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
バタバタ人が死ぬ映画だが、プロレスの流血を観ているのと同じような印象。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
残虐な死に方をするキャラクターが何人かいるが、どれも観客を喜ばせようという作り手の意図が感じられ笑えた。ただしストーリーの流れで笑えたわけではないので、評価外。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
主人公の家系と涙の母との因縁みたいなのはストーリーに込められていたが、前2作を観ていないのでわからなかった。

【減点項目】
・0点

基礎点(25)+技術点(14)+芸術点(6)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(48)

「F」評価(59点以下)

開場の際に楽しみにしていた!と言わんばかりに嬉々として座席に座る観客も多く、人気のある監督なのだなと伝わってきました。残念なのは、前半の執拗で笑える残虐シーンから一転して後半は魔女たち?によるシリアスなシーンばかりになってしまうので、特にホラー好きでもない私にも物足りなさが感じられました。言い方をかえれば失速したような。この映画の監督は御年68歳のようですが、この失速はもしかすると年齢から来ている部分もあるのかもしれません。みんな大好きジブリ作品の宮崎駿監督でも同じ傾向がみられるわけですから。

ただし、主要なキャラクターが観客の期待を裏切らず脱いだり、最後には主人公を肥溜めに落として糞尿まみれにしてしまうところなどは、観客の要望に応えた、趣味の世界とも言えるでしょう。これはこれでアリ、の映画だと思います。

4月30日/シアターN渋谷
The_mother_of_tears

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