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April 27, 2009

消されたヘッドライン

監督:ケヴィン・マクドナルド
製作総指揮:ポール・アボット、ライザ・チェイシンほか
音楽:アレックス・ヘッフェス
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン、トニー・ギルロイ、ビリー・レイ
出演;ラッセル・クロウ、ベン・アフレック、レイチェル・マクアダムス、ヘレン・ミレンほか

「GOEMON」

「消されたヘッドライン」を観て来ました。原題は「STATE OF PLAY」ヤホーで翻訳すると「遊びのありさま」と出るのですが、「報道のありよう」という感じなのでしょうか。「STATE OF PLAY」をそのまま邦題にする方法もあったのでしょうが「消されたヘッドライン」のほうが意味が通るのかもしれません。

ヘッドラインとは、大見出し、つまり新聞のトップ記事やニュース番組のトップニュースです。トップを飾る情報は、マスメディアが無作為に選んでいる訳ではなく、その日その時点で入手しているニュースのうち、最も話題性のあるものをトップに並べます。同業他社を出し抜いた情報だと特ダネやスクープ、スッパ抜きなどと言いますが、例えば全国紙の場合は大手企業のリークが多いといわれる経済紙を除いて、横並び報道が中心なので一年のうち目にするのは数回といったところでしょうか。逆に同業他社から一社だけ情報が抜け落ちてしまうことを特オチと言います。

この映画では「巨大権力vs.新聞社」をうたっていますが、実際にはそんなに単純ではなく事件の背景がゴチャゴチャしすぎていて理解出来ませんでした。前半20分のアメリカンジョークを並べたような退屈な時間を乗り越えると、やっと本編に突入します。主人公、カル・マカフィーの相棒になったデラ・フライが鋭い視点でセリフをはき始めるとやっと見応えが出て来るのですが、それでも本格的に感情移入をするまでに至らないのは、事件の背景を知っているのが作り手だけということにあるのかもしれません。

例えば、刑事コロンボでは、視聴者に先に事件を見せておいて、刑事と一緒に謎解きを楽しむ方法をとっています。ここまでやれとは言わないのですが、少なくとも序盤で殺されてしまう女性の行動を含めた周囲の人物の行動を整理すべきだと思います。記者が主人公の映画ですが、謎を解く主体が刑事でも探偵でも同じです。作り手だけが分かったような設定になっているので、記者が「ああ、もしかして」と行動をしても、観客は「何で?」と理解出来ないまま次のシーンに強制的に移動させられてしまうのです。映画そのもののテイストを壊してしまうのかもしれませんが、記者と観客が一緒に謎解きをするような設定にしなければ、この映画の言いたいことを観客は一生理解することは出来ないでしょう。

中盤は緊迫するシーンもありますが、基本は鬼ごっこなので緊迫するのが当たり前。後半はさらにひどく、事件が二転三転してしまい、観客はポツンと取り残されたまま、エンドロールが流れるような感じです。

「消されたヘッドライン」は、2003年に英国でテレビドラマとして放映されていたものが元ネタとなっています。テレビドラマと映画の差異は分からないのですが、どちらも同じ事件を扱っているとすると6年も経てばニュース性もドラマの制作手法色あせます。この映画の難点は展開が二転三転して観客が置いてけぼりをくらうところにあるのですが、もしかするとテレビドラマのもともとの設定(二転三転する設定)をそのまま映画に持ち込んでしまったのではないかと勘繰ってしまうほどでした。例えば「24」をそのままの設定で2時間の映画にしたらこんな感じになってしまうのでしょう。

作り手の独りよがりのような展開は「GOEMON」に共通します。キャストにも魅力があり、マスメディアの習性とかを扱えば面白くなったであろう映画のはずなのに、無茶な展開が全てを台無しにしてしまいました。

ちなみに、マスメディアの習性をよくあらわしている映画に「クライマーズ・ハイ」があります(実は映画よりもNHKが制作したテレビドラマの方が緊迫感に溢れているようです)。「クライマーズ・ハイ」の舞台は地方紙の新聞社ですが、締め切り時間や取材、記事の伝達方法、編集を巡る社内での攻防など緊迫する雰囲気がよく描けています。映画に登場するワシントン・グローブにも締め切りという概念はあるのですが、実際には誰も何時だとか説明しないので、登場人物がいくら「あと6時間待つ」とか「4時間も待ったのに」とカリカリしても観客には緊迫感は伝わってきません。

時間が命の新聞社を扱いながら、時間の概念が全くないので、全体で3日経った話なのか、1週間経った話なのか、最後の日は今何時で、締め切りは何時なのかがさっぱり分からないのが残念でした。最後の原稿を送ったのは、感覚的に朝方かな?と思いきや、画面の中にちょっとだけ写った時計は1時40分頃でした(多分)。この差が作り手と観客の差なのかもしれません。

余談ですが、新聞には締め切り時間があります。日本では全国紙朝刊の場合は確か午前2時前(1時50分?)で同じ日付の新聞でも離島などに配達するために早めに作っておかなければならない1版から、都内の一部しか届かない13版ぐらいまであり、特ダネで同業他社を出し抜く場合や、ぎりぎりまで粘らなければ分からないニュース(WBCの結果など)は遅い版に掲載されることがよくあります。

Web上でも特ダネは午前2時に更新される場合が多いようなので、午前2時に新聞社などのホームページにアクセスしてチェックしてみると楽しいかもしれません。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・2点
事件の謎を解こうとする新聞記者の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・1点
ペンの力で権力に立ち向かうというのは、今の日本社会では葬られた理想的なマスメディアの姿ではあるが、この映画は二転三転し過ぎて意味不明になってしまった。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・0点
どういうシステムで新聞が発行されるのかとか、ディティールを説明すれば観光要素になったのかもしれない。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・4点
真実を伝えようとする姿勢に貫通行動はあるが、伝えるニュースの内容が二転三転し過ぎてぶち壊しになってしまった。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・4点
主人公の助手、デラ・フライは本編に絡む登場人物の中で人格がブレなかった唯一とも言うべき存在。時に鋭いセリフを吐くので、主人公に取り立てられる能力があることが充分、伝わる。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・2点
公聴会で議員が軍事企業の疑惑を指摘するシーン。この時は面白くなりそうな雰囲気もあったのだが。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・3点
主人公は親友の妻を抱いたという過去があるので、周りからそのことをつつかれるシーンは笑えるが、そればっかりなのでだんだん飽きてくる。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・1点
軍事企業の存在は怒りの対象だが、本編では活かしきれていないので効果は薄い。

【減点項目】

減点ゼロ。ハリウッドお得意の恋愛の要素がこの映画には全くないという、ある意味挑戦的な映画。題材は映画を面白くさせる可能性はあったのに、料理人がまずかった。「スラムドッグ$ミリオネア」とは対極にある映画といえるのかもしれない。


基礎点(15)+技術点(7)+芸術点(10)×1.5-減点=CinemaX指数(37)

「F」評価(59点以下)

ちなみにケヴィン・マクドナルド監督は「ラストキング・オブ・スコットランド」の監督でもあります。ドキュメンタリーに造詣の深い監督のようで、ラストキング・オブ・スコットランドもドキュメンタリー風のタッチが魅力でもありました。それなのに「消されたヘッドライン」は、あってもおかしくないような事件を題材にしたにもかかわらずウソっぽい印象を受けます。最後の二転三転の展開をみると、策に溺れたのかと勘繰ってしまいます。

見所をあえてあげるならば、油断したように太り「LOST」のハーリーのような容姿のラッセル・クロウが、ドタドタ走ったりするあたりでしょうか。太ったり痩せたりが激しい俳優なので「グラディエーター」「シンデレラマン」あたりを観て劇場に向かうと楽しいかもしれません。

5月22日ロードショー!

2009年4月26日/スペースFS汐留
State

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Comments

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