ホルテンさんのはじめての冒険
監督:ベント・ハーメル
音楽:コーダ
脚本:ベント・ハーメル
出演;ボード・オーヴェ、ギタ・ナービュ、ビョルン・フローバルグほか
「ハートウォーミングストーリー?」
「ホルテンさんのはじめての冒険」です。「勤続40年のまじめな運転士ホルテンさんが、定年退職日に人生初の遅刻をしたことから巻き起こる騒動を描くハートウォーミング・ストーリー」(Yahoo!Japan)という解説なのですが、とんでもない犯罪ばかりを繰り返すおじさんの映画でした。
この映画は、冒頭から見所です。というより、冒頭しか見所がなかったりします。それは、オープニングのシーン。主人公のホルテンさんが運転する機関車がいくつものトンネルを通り抜けるのですが、トンネルに入るたびにキャストやスタッフのテロップが流れるのはなかなか楽しいです。そのシーンだけで、雪深くて山の多いノルウェーの特性が説明されるわけですから。
本編では退職を明日に控えたホルテンさんの不運が次々と押し寄せる(しかも平面的に)という、面白くないプロモーションビデオのような内容なのですが、クソ真面目さ故の行動なのだなと納得出来るのは、最終日の勤務に遅刻して逃げてしまうところだけ。あとは、故意でないにせよ住居侵入(子供のいる家に侵入する)、保護責任者遺棄致死(運転中突然死した友人をほったらかして逃げる)、住居侵入+窃盗(友人の家に侵入し友人の犬やスキー板を盗む)などの犯罪を繰り返すとんでもない人の映画です。
これのどこがハートウォーミングストーリーなのでしょうか。
ちなみに、ホルテンさんが友人から盗んだ犬が、カンヌ映画祭のパルムドッグ賞(パルムドール賞ではない)を受賞しているのですが、本編にはほとんど関係のない犬です。詳細はよく分からないのですが、監督が巨匠なので悪ふざけで贈った賞なのかもしれません。逆に言えば、脇役以下の犬ぐらいしか褒めるところがない映画ということを暗に示しているのかもしれません。
ちなみに、「ホルテンさんのはじめての冒険」は、「おくりびと」で話題になったアカデミー賞外国語映画賞のノルウェー代表映画なのですが、代表なら何でも凄いと考えるのは危険で、女の子がキャッキャキャッキャ騒ぐだけの「キャラメル」もレバノン代表映画です。おまけに「ハートウォーミング・ストーリー」(Yahoo!Japan)の評価も。レバノンの殺風景な街よりは、ノルウェーの街や電車のデザインのほうが観ていて楽しいのですが、これもストーリーとは何の関係もありません。
思えば、邦画も学ランで喧嘩をするような学園モノの映画か、タイトルだけではピンと来ないハートウォーミング・ストーリーだらけになっています。この手の映画は波風が立たないだけに印象に残らないものが多いような気がします。安心して観ることが出来るジャンルなのかもしれませんが、こんな映画ばかり上映していると、映画業界に再び斜陽の時代が訪れますよ。
【基礎点】
日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点
【技術点】
テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・1点
真面目なおじさんが退職当日にさまざまな不運に巻き込まれる話。
そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・1点
狙いは面白いが、展開が行き当たりばったり過ぎる。ただし団塊世代の退職の最中にある日本に当てはめると面白い設定になるかもしれない。
観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・0点
ない。
観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点
ない。
主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・0点
主人公がフラフラし過ぎ。
【芸術点】
印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・2点
目隠しで運転出来ると言ったホルテンさんの友人。弟の話を自分のプロフィールとして話していた点は印象に残るが、何故そんな嘘をつくのかは全く描かれていないのが残念。思いつきのキャラクターか。
印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・3点
オープニングの運転席からの風景。
泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
泣けない。
笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
ホルテンさんの送別会。鉄ちゃんだらけの鉄道会社職員は笑えるが、ストーリーとは全く関係ない。
怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
ホルテンさんの無計画な行動に怒りのようなものは感じるが、評価外。
【減点項目】
筋違いのPRが行われている(-10点)
・-10点
犬は全く関係ない。
基礎点(25)+技術点(2)+芸術点(7)×1.5-減点(-10)=CinemaX指数(28)
「F」評価(F…59点以下)
「ウオッチメン」と同じF評価ですが、全く次元が違います。「ウォッチメン」は良くも悪くも劇場で必見クラスの映画。「ホルテンさんのはじめての冒険」は、よほどの映画好きの方でない限り、人生で接点がなくても全く問題ない映画です。同じお金をかけるなら「ウォッチメン」を観ましょう。
2009年3月13日/ル・シネマ






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