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March 29, 2009

ホルテンさんのはじめての冒険

監督:ベント・ハーメル
音楽:コーダ
脚本:ベント・ハーメル
出演;ボード・オーヴェ、ギタ・ナービュ、ビョルン・フローバルグほか

「ハートウォーミングストーリー?」

「ホルテンさんのはじめての冒険」です。「勤続40年のまじめな運転士ホルテンさんが、定年退職日に人生初の遅刻をしたことから巻き起こる騒動を描くハートウォーミング・ストーリー」(Yahoo!Japan)という解説なのですが、とんでもない犯罪ばかりを繰り返すおじさんの映画でした。

この映画は、冒頭から見所です。というより、冒頭しか見所がなかったりします。それは、オープニングのシーン。主人公のホルテンさんが運転する機関車がいくつものトンネルを通り抜けるのですが、トンネルに入るたびにキャストやスタッフのテロップが流れるのはなかなか楽しいです。そのシーンだけで、雪深くて山の多いノルウェーの特性が説明されるわけですから。

本編では退職を明日に控えたホルテンさんの不運が次々と押し寄せる(しかも平面的に)という、面白くないプロモーションビデオのような内容なのですが、クソ真面目さ故の行動なのだなと納得出来るのは、最終日の勤務に遅刻して逃げてしまうところだけ。あとは、故意でないにせよ住居侵入(子供のいる家に侵入する)、保護責任者遺棄致死(運転中突然死した友人をほったらかして逃げる)、住居侵入+窃盗(友人の家に侵入し友人の犬やスキー板を盗む)などの犯罪を繰り返すとんでもない人の映画です。

これのどこがハートウォーミングストーリーなのでしょうか。

ちなみに、ホルテンさんが友人から盗んだ犬が、カンヌ映画祭のパルムドッグ賞(パルムドール賞ではない)を受賞しているのですが、本編にはほとんど関係のない犬です。詳細はよく分からないのですが、監督が巨匠なので悪ふざけで贈った賞なのかもしれません。逆に言えば、脇役以下の犬ぐらいしか褒めるところがない映画ということを暗に示しているのかもしれません。

ちなみに、「ホルテンさんのはじめての冒険」は、「おくりびと」で話題になったアカデミー賞外国語映画賞のノルウェー代表映画なのですが、代表なら何でも凄いと考えるのは危険で、女の子がキャッキャキャッキャ騒ぐだけの「キャラメル」もレバノン代表映画です。おまけに「ハートウォーミング・ストーリー」(Yahoo!Japan)の評価も。レバノンの殺風景な街よりは、ノルウェーの街や電車のデザインのほうが観ていて楽しいのですが、これもストーリーとは何の関係もありません。

思えば、邦画も学ランで喧嘩をするような学園モノの映画か、タイトルだけではピンと来ないハートウォーミング・ストーリーだらけになっています。この手の映画は波風が立たないだけに印象に残らないものが多いような気がします。安心して観ることが出来るジャンルなのかもしれませんが、こんな映画ばかり上映していると、映画業界に再び斜陽の時代が訪れますよ。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・1点
真面目なおじさんが退職当日にさまざまな不運に巻き込まれる話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・1点
狙いは面白いが、展開が行き当たりばったり過ぎる。ただし団塊世代の退職の最中にある日本に当てはめると面白い設定になるかもしれない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・0点
ない。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点
ない。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・0点
主人公がフラフラし過ぎ。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・2点
目隠しで運転出来ると言ったホルテンさんの友人。弟の話を自分のプロフィールとして話していた点は印象に残るが、何故そんな嘘をつくのかは全く描かれていないのが残念。思いつきのキャラクターか。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・3点
オープニングの運転席からの風景。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
泣けない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
ホルテンさんの送別会。鉄ちゃんだらけの鉄道会社職員は笑えるが、ストーリーとは全く関係ない。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
ホルテンさんの無計画な行動に怒りのようなものは感じるが、評価外。

【減点項目】

筋違いのPRが行われている(-10点)
・-10点
犬は全く関係ない。

基礎点(25)+技術点(2)+芸術点(7)×1.5-減点(-10)=CinemaX指数(28)
「F」評価(F…59点以下)

ウオッチメン」と同じF評価ですが、全く次元が違います。「ウォッチメン」は良くも悪くも劇場で必見クラスの映画。「ホルテンさんのはじめての冒険」は、よほどの映画好きの方でない限り、人生で接点がなくても全く問題ない映画です。同じお金をかけるなら「ウォッチメン」を観ましょう。

2009年3月13日/ル・シネマ
Holten

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March 28, 2009

ウオッチメン

監督:ザック・スナイダー
製作総指揮:ハーバート・W・ゲインズ、トーマス・タル
原作:デイヴ・ギボンズ
音楽:タイラー・ベイツ
脚本:デヴィッド・ヘイター、アレックス・ツェー
出演:マリン・アッカーマン、ビリー・クラダップ、マシュー・グード、カーラ・グギーノほか

「水の味」

「ウォッチメン」です。アメコミの映画化が長らく続いていますが、日本人に縁遠いものも多くなりました。ウォッチメンはその最たるもので、実際に作品を観るまではスーパーマンやバッドマン、ハルクが出てくる、手塚治虫のスターシステムのような内容なのかと思いましたが、ウォッチメンという独立したアメコミが元ネタでした。

ところが、これまでのアメコミとは違い、何故ウオッチメンが誕生したか、何故今のように社会から追われる立場となっているか、詳細に実社会と絡んでいるのが興味深いです。ダークナイトがヒットしたように、社会と関わっているようで実際にいるとは思えない完全無欠のヒーローより、人間臭いヒーローがウケるようになっているのかもしれません。

ストーリーは「ウォッチメン」というタイトルの通り、終末時計がモチーフになっています。ソ連など東欧社会が健在だった冷戦時代は、度々終末時計が話題になっていました。東西が核ミサイルを構えて睨み合いをしていた1980年代の終末時計は、最も緊張が高まった1984年に23時57分、世界の終わりの深夜0時の3分前でした。ウォッチメンはその数年後に描かれたようです。

終末時計はその後、ソ連が崩壊した1991年には23時43分まで遡りましたが、現在は地球温暖化やイランや北朝鮮など第三国の核の対等で23時55分まで針が進んでいます。

「ウオッチメン」は、ストーリーを理解しようとすればするほど頭が混乱するのですが、不思議なことに何も考えないとすんなり浸透してきます。まるで水のようです。例えば、終盤は新たな敵の登場で米国とソ連は結束し、東西冷戦は解消に向かうのですが、第3の敵を相手にすると、これまで反目していた者同士が団結するということは多くの場面で見られるように、これは争いの歴史ばかりの人間の本質を突いているといえます。

「ウォッチメン」は他にも人間の死生観、正義に対する本音と建前など、テーマはどれも難解ながら本質を突いています。ただし、それを具体的に言葉で説明するのは難しく「水の味を説明しろ」というようなものです。厄介な映画に遭遇してしまいました。

「ウォッチメン」は、多くのアメコミの映画化で弱められている性描写のシーンがかなり含まれています。他にもグロいシーンが多く、それ故にR-15指定になったようなのですが、細かくて面白いカットが多く、シーン作りも丁寧なため、映像を勉強している人には参考になる部分が多いと思います。冒頭の長い長いオープニングや、後半の刑務所のトイレでのロールシャッハの報復シーンなどは、地味ですが注目すべきポイントです。

他にも、歴史上の人物にそっくりな人を登場させることで実社会と接点をもたせたり、音楽もいかにもアメリカというような選曲で、映像化不可能といわれた「ウォッチメン」の映画化に強いこだわりのあるスタッフが集って、よってたかって作品を作り上げたのだなという意気込みは伝わってきます。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・0点
元ヒーローが水面下であれこれ騒ぎながら、当面の世界平和に貢献するっぽい話。

これだけでは全く魅力はないものの、本質を突くテーマのようなものをピックアップすると…
・立ち向かう敵が現れることで人間は団結する。
・正義を貫くことだけで平和は生まれない。
・大きな犠牲を避けるには、小さな犠牲が必要なことがある。
・人間はどう生まれたかが問題ではない。生まれたこと自体が一大事なのだ。
…などなど一言で説明不能だが、どれも本質を突いている。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・2点
小ネタで突いている人間の本質は、いつの時代にも当てはまる。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・0点
ない。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点
ない。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・8点
それぞれの人間に貫通行動はあるが、その行動の理由がちゃんと説明されているのはロールシャッハだけ。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・8点
最後まで正義を貫いたロールシャッハ。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・0点
意外とない。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
泣けない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
笑えない。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
それもない。

【減点項目】

寝てしまった(-30点)
・-30点
中盤の前半、ひどく退屈なシーンがある。不覚にも少し寝てしまった。

基礎点(15)+技術点(10)+芸術点(8)×1.5-減点(-30)=CinemaX指数(7)
「F」評価(59点以下)

CinemaXの評価基準では極端に低い指数となるのですが、クソ映画ではありません。
・序盤にヒーローたちが活躍している姿を映像できちんと描く。
・ヒーローたちの誰が主人公なのかはっきりさせる。
この部分がきちんと補われていればもっともっと面白い映画になったはずです。

アクションシーンとCG、効果音や音楽など五感で楽しむ映画なので、DVDでちまちま観るのではなく、劇場で楽しむことをお勧めします。

2009年3月19日/一ツ橋ホール
Silk5

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March 08, 2009

チェンジリング

アカデミー賞ノミネート作品「チェンジリング」です。実話を扱った作品は、実話負けしてしまうことが多いだけに、作品の完成度が注目されます。果たしてCinemaXの評価やいかに。

「日本人にちょうどいい」

冒頭にも述べたとおり、実話を取り上げた作品は数多くあります。「アポロ13」「エリン・ブロコビッチ」「クイズ・ショウ」「パッチ・アダムス」など挙げればきりがないのですが、割と知られたエピソードを取り上げているという共通点があります。最近の邦画では「旭山動物園物語 ペンギンが空を飛ぶ」や少し脚色を加えていますが「クライマーズ・ハイ」などが挙げられますが、これも知られたエピソードを取り扱っています。

実話をもとにした映画は、実話負けしてしまうことが多いように思います。実話が面白いから映画も面白いと短絡的に考えるのは、周りから作品を批判されると「これは実話だから面白いんです」と言うシナリオ教室の生徒と同じです。

事実は小説より奇なりと言うように、人間の想像力は限られています。その想像を超えた実話を題材にするわけですから、あとは人間の想像力でしっかり構成を考えなければなりません。ところがこの部分をサボってひたすら実話だけを垂れ流し続けたり、明らかに作り話だろうと分かるエピソードを加えた、木に竹を継ぐような脚色をするケースも見られます。

あとは、時代にマッチしているかどうか。例えば、旭山動物園ネタは既にテレビドラマやドキュメンタリーで何度も目にしているので何を今さらということにもなりますし、クライマーズ・ハイは、数年前にNHKが製作したドラマが秀逸なので、あのドラマを観た人間にとっては、何を今さらという感じになってしまう訳です。

チェンジリングのエピソードは、米国内のどこかの役所に眠っていた資料から発掘したらしく、誰にも知られていないエピソードということになります。どこまでが実話でどこからが脚色かは分かりませんが、子供のすり替え事件と当時のロサンゼルス市長と警察幹部の癒着と腐敗ぶりを絡めてしっかりと人物を描いています。

事実というのは、リアルな話ですから何よりも説得力があり、実話の周囲に嘘を塗り固めていくとしっかりとしたリアリティが生まれます。チェンジリングは、このリアリティという部分で高い完成度を誇っていると言えます。決して実話負けしていない作品です。

監督は、クリント・イーストウッドです。晩年の黒澤明監督を前にして、直立不動で顔を真っ赤にして少年のように話を聞いていた彼は、俳優と監督を兼ねる形で数多くの作品を生み出してきましたが、ここ数年は鬼気迫るものが感じられます。クリント・グレーとも呼ぶべき暗いトーンの映像は、彼の作品のトレードマークとも言えるでしょう。

4月に公開予定のグラン・トリノのように、クリント・イーストウッドは自分に合った配役があれば主演も兼ねるようですが、たとえ出演が叶わぬようになっても、監督として1作でも多く作品を残して欲しいように思います。人生において現在進行中(つまり生存しなおかつ活躍している)の偉人を目にすることはなかなかないと思うのですが、クリント・イーストウッドはその1人となり得る人物と言えるでしょう。

チェンジリングは、すりかえられてしまった子供の行方を捜す主人公の行動がもとで凶悪事件が発覚し、腐敗していたロサンゼルス市役所と市警の浄化が進んでいきます。主人公は、女性のくせにでしゃばるなという偏見に耐えながら、官憲に対して、自分たちに歯向かう人間を安易に精神病院に放り込むなど人権無視の捜査方法の改善などを勝ち取ります。その要請が子供を捜索する中での間接的ともいえる裁判であること、社会が近代化に向かう中で必要不可欠…つまり人間生活の身の丈に合った権利を勝ち取ったということで、多くの人の共感を呼ぶはずです。

女性が訴訟を起こしたエピソードを取り扱った映画には「エリン・ブロコビッチ」があるのですが、主人公はもともと相手に責任がある交通事故の訴訟で金を取れずやけくそになって以降、必死に訴訟のタネを探し、訴訟をスタイルのようにしていたという点で日本人にはなかなか受け入れられない内容になっていたような気がします。

この女性の行動は、後に史上最大の賠償を勝ち取り、企業の公害に対する危機意識を生み出すきっかけになった歴史上重要な人物といえるにせよ、控えめな日本人の心理には「そこまでやらなくても」というひっかかりが残ることでしょう。チェンジリングは、良くも悪くも日本人にちょうどいい設定であったといえるでしょう。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・9点
官憲に息子をすりかえられた母親が真相を追及する話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・9点
家族が北朝鮮にいるのが分かっていながら国益と天秤にかけて動かない政府と当てはまる部分はある。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・7点
訴訟国家と呼ばれ、警察機能が発達しているアメリカでさえ、つい80年前までは汚職まみれだったという事実。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・7点
主人公の行動に影響されて、社会が浄化された。その変化にカタルシスがある。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
主人公は周囲の忠告や圧力に屈服することなく我が子を探し続けている。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・8点
主人公。周囲のキャラクターは引き立て役なのか、特に主人公の周囲のキャラクターは驚くほど味気ない設定になっている。上司に逆らって捜査を行う刑事は、脇役中の脇役だが、世の中捨てたもんじゃないという光を差す存在として印象に残った。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・7点
弁護士が法廷で激怒するシーン。これも脇役中の脇役だが、同じように警察の怠慢で娘を失っていて、そのエピソードを事前にサッとまいているので「あなた方(警察)が(ろくに捜査もせず)時間を無駄にしたから、こんなことになった」というようなセリフを吐いて激怒するのは説得力があり、印象に残った。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・8点
ネタばれになるが、後に発見されたほかの子供の証言で、主人公の息子が優しさを見せたばかりに命を落としたのかもしれないと分かるシーン。巧みな「あーあ」感は、観客を作品の中に引き込む重要なエッセンスになる。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・3点
笑えるシーンはほとんどなく、逆に緊張感で常に身体に力が入る。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・8点
地位にしがみつき自分に不必要なことはしない、トップは自分に責任が降りかからないように常に誰かのせいにして問題を有耶無耶にしようとする。それらの問題が発生する原因も自分たちの怠慢が原因だというのに。

【減点項目】

筋違いのPRが行われている(-10点)
・0点
結末を話すと面白さが半減する映画といえるので、それを覆い隠すPRをしなければならない。予告編しか観ていない方は、その部分は単に序章だと把握する必要があると思う。減点ゼロ。

基礎点(15)+技術点(42)+芸術点(34)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(123)

「A」評価(120点以上)

補足ですが、主人公は電話会社で電話交換士のマネージャーのような仕事をやっているのですが、交換台にずらりと並ぶ交換士の抱えたトラブルを次々に解決していく仕事に不可欠なアイテムは、何とローラースケートでした。移動距離しやすいという利点があるのでしょうが、オンとオフがごっちゃになったようなアイテムを使っていたというエピソードは、直接ストーリーとは関係ないにせよ観光要素として大きな魅力があります。

当時のハイカラ?な衣装とともに、アンジェリーナ・ジョリーがローラースケートで颯爽と交換台の後ろを滑るシーンは、アメリカらしさを一瞬にして示すまさに「つかみ」のシーンと言えるでしょう。

2009年2月28日/ワーナーマイカルシネマズ板橋
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March 01, 2009

キャラメル

監督:ナディーン・ラバキ
音楽:ハレド・ムザンナル
脚本:ナディーン・ラバキー
出演;ナディーン・ラバキー、ヤスミン・アル=マスリー、ジョアンナ・ムカルゼル、ジゼル・アウワードほか

「人大杉」

レバノン映画「キャラメル」が日本で公開されています。しかも自国内6ヵ月ロングラン、しかもアカデミー賞レバノン代表という、まるで「おくりびと」のような映画です。女の子がキャッキャキャッキャする映画は、若い女性ウケするせいか、ネット上の評価は高いようですが、CinemaXの評価やいかに。

「キャラメル」は、東京、名古屋、大阪の3館しか公開されていない典型的な単館映画です。

単館映画の特徴を考えてみると…
①面白くないが、多少話題性がある。
②配給会社が小さい。
③面白いが、内容に問題がある。
④知名度が低い。
あたりに集約されそうです。

①は、「アメリ」「オール・アバウト・マイ・マザー」など。本筋から離れたPRをすることで大化けしますが、内容は面白くないので、タイトルの知名度の割にははっきりとストーリーが思い出せないのが特徴です。
見分け方は、パンフレットがやたら高いこと。ただしバイヤーの目利きが良いのか、恵比寿ガーデンシネマとシネスイッチ銀座の単館系映画は、思いがけず面白い映画に出会うこともあります。

②は、スタッフが持ち出しで作ったような映画も含みます。最近の邦画製作における大多数を占める製作委員会方式では、ショボい映画を作っても大損害をこうむることはないのですが、劇場公開ということが大前提となるため、ほんの一週間の間だけでも上映する必要があります。ただ、公開される劇場の少なさと面白さが比例するとも限らず「おくりびと」のような大化けする映画もあります。見分け方は、単館系の劇場でモーニングショーあるいはレイトショーでのみ公開されていること。

③の代表は、「シュリ」です。韓流映画という言葉が生まれるはるか前、しかも南北朝鮮の対立が題材なので、最初は多くの劇場が敬遠していた映画なのですが、口コミで話題が広がり、今の「おくりびと」ブームのように上映劇場が増加しました。他には、あまり面白くなかったのですが「太陽」も各方面からの抗議を警戒して上映に踏み切ったのは銀座シネパトスなど国内で僅かな劇場だけ。ただし内容が過激なものではないためか、シネコンなどが後追いで上映に踏み切りました。

④は、「ククーシュカ/ラップランドの妖精」が挙げられるでしょう。他にも単館系とはいえませんが、上映される劇場が少なく、人知れず終了した「エニイ・ギブン・サンデー」や「マッチ・ポイント」という名作も亜種として含めてもいいかもしれません。

さて、キャラメルですが、人が多すぎます。
・不倫にケリをつけたい主人公の女。
・いつまでも女でありたいと思うオーディション熟女。
・処女に戻りたいと思う結婚間近の女。
・ちょいレズに走りそうなボーイッシュ女。
・母親を見捨てることが出来ない仕立て屋の未婚老女。

これらのエピソードがブツギ切りになって挿入されているのですが、テンポも悪く、特に前半は誰に目を向けていいのか分からなくなります。何で「キャラメル」なのかと分かるのが後半という致命的な問題もあります。

ただし、ストーリーが後半に進み少しづつ話が見えてくるにつれて、ちょっと面白そうな芽が見え始めるのですが、余計なエピソードがいちいち芽の出た畑を踏み荒らすので、感情移入がほとんどなされないまま話が終わってしまいます。

主人公の女のエピソードは残すとして、結婚間近の女のエピソードはそっくりそのまま削除してもいいと思いますし、オーディション熟女のエピソードはなかなか面白いのですが、敢えて削除して全く別の映画として再生するといいでしょう。ということでボーイッシュ女のエピソードを少し伸ばせばストーリーはぐっと面白くなるはずです。

何より、最も深いドラマを秘めているエピソードが、脇役の未婚老女というあたりが構成上の問題といえるのかもしれません。

映像があまり綺麗ではないせいか、せっかくヨーロッパと中近東が混在するベイルートの街のエキゾチックな雰囲気も生かせないのが残念でした。絵的に魅力的だったボーイッシュ女に髪を洗ってもらおうと通いつめる女性も素材として台無しです。ショートカットにして照れながら街を走るシーンなんかはこの映画の一番の見せ所ともなり得たかもしれないのに。

「キャラメル」は全体では面白くはありませんが、種も撒かずにきちんと芽が出ているような、ある意味で奇跡的な映画と言えるのかもしれません。

評価に移ります。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・3点
女にこだわる女たち。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・5点
構成はまずいが、この作品の言いたいことは一理も二理もある。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
ベイルートの街がもっと見たかった。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・4点
主人公の行動が一方的すぎて伝わってこなかった。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・8点
仕立て屋の老女。脇役だが主役人級の美容サロンのキャラクターを食いかねない存在。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・8点
仕立て屋の老女が化粧を落とすシーン。この作品には数少ない伏線を張っているので印象的なシーンとなった。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・8点
印象に残るシーンと同じ。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
登場人物たちはキャッキャキャッキャ笑うが、観客には何で笑っているのか通じなかった。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
感情を揺さぶるシーンはほとんどない。

【減点項目】

原題も同じ「キャラメル」は、筋違いのPRにも繋がりかねないかなり減点スレスレのタイトル。

基礎点(25)+技術点(16)+芸術点(24)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(77)

「D」評価(70~79点)

2009年2月24日:ユーロスペース
Caramel

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