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February 01, 2009

そして、私たちは愛に帰る

監督:ファティ・アキン
音楽 シャンテル
脚本:ファティ・アキン
出演:バーキ・ダヴラク、トゥンジェル・クルティズ、ヌルギュル・イェシルチャイほか

「丸投げ」

シネコンが登場した1990年以来、息を吹き返している日本の映画業界ですが、特に都内では単館系と呼ばれる映画が上映されています。DVDでの売り上げを前提にしたような興行実績を付けるための邦画のモーニングショー&レイトショーはともかく、恵比寿ガーデンシネマや今回鑑賞したシネスイッチ銀座では、映画通が買い付けたようなマイナーな作品を上映しています。それが時に、台風の目となることも多いわけですが、外れもある。果たして「そして、私たちは愛に帰る」の評価やいかに。

物語の舞台は、トルコとドイツです。この映画を観るにあたり、それぞれの国情を理解する必要があるのかもしれません。EUの中枢の1つであるドイツと、加盟申請中のトルコ。トルコはその位置が物語っている通り、中東とヨーロッパの境目にある国です。イスラム社会とヨーロッパ社会とを繋ぐ架け橋のような役割を期待されています。

トルコは現在、EUへの加盟に向けて国内が揺れています。EUに加盟すれば経済が活性化するとの期待が集る一方、先進国と肩を並べるため、背伸びをしようとしているため、さまざまな問題が起こっています。それは明治維新以後の日本や北京五輪を前にした中国にも似ているようです。つまり国全体が豊かになるのではなく、外見だけを良くしようとしているので、さまざまな歪が生まれているわけです。

登場人物は、トルコ人でドイツに住む男と息子、トルコ出身でドイツで娼婦として働く女とその娘です。息子は異国の地で大学教授という地位に這い上がる一方、娘はトルコに残り反政府勢力に属して活動しています。その後、ドイツ人の母と娘が加わり、偶然が重なりながらこの3組の親子は直接的あるいは間接的に関係を持つのですが、それぞれの嘘、偶然は至って自然に展開していきます。

これだけ人間関係が複雑に絡み合えば、ご都合主義のようになりかねないのですが、恐らく丁寧に構成を行っているのでしょう、ストーリーラインに関しては違和感はほとんど感じられませんでした。これは仮説ですが、伏線を張るには、少なくとも1つの異なるシーンあるいはエピソードを挟んでその前に置くようにすると、自然な流れになりやすいと言われるのかもしれません。

この作品は人々の心あるいは関係の「すれ違い」が大きなテーマになるようなのですが、そのすれ違い方も絶妙です。例えば、本名前を出せば、人探しのポスターに気付けばそのストーリーは解決してしまうのですが、スーッとその要素を取り払う自然なエピソードを織り込まれています。レールは確かに敷かれているはずなのに、誰が敷いているのかは見えません。逆に作り手の意図がみえみえになると、ご都合主義と呼ばれてしまうわけです。

この映画の問題点は、エンディングです。とんでもないところでエンドロールが流れてしまいます。もともとなだらかな上り坂を登るような展開なので、この先、放っておいても話は解決するというのは分かるのですが、ここで観客に丸投げしてしまうのはいかがなものかと。エンドロールの後にシーンがあるのかなと思って待っても何もありません。それ以前に、こんな終わり方なのにエンドロールが流れると何の疑問もなく退席する観客の方々の神経を疑っていしまいます。

評価に移りましょう。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・5点
人間のすれ違い。ありきたりといえばありきたり。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・3点

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・8点
EUに加盟しようとするトルコの背伸びを描いている。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・3点
日本から遠く、身近には感じられない問題のように感じられた。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・7点
人探し。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・4点
際立って印象に残る人物はいないが、無駄な人物もいなかった。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・3点
棺桶が行ったり来たりするシーン。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・2点
泣けるシーンはほとんどない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・4点
伏線の敷き方、引き上げ方の巧さは笑えるといえば笑える。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・6点
登場人物で唯一、男(息子の父親)は救いようがない。男としての身勝手さには怒りを覚える。

【減点項目】

・減点なし。
シーンが足りないという点で減点したいが、項目が設定されていないのでゼロ。

基礎点(25)+技術点(26)+芸術点(19)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(80)

「C」評価(80~99点)

2009年1月28日/シネスイッチ銀座

シネスイッチ銀座は、今は募集を停止している「ほぼ日センサー会員」割引がある映画館です。どちらかというと高尚な作品を買い付けてきて上映するシネスイッチ銀座やB級ホラーなど挑戦的な作品を上映する銀座シネパトスなど銀座周辺の映画館は渋谷と肩を並べる映画天国といえるでしょう。ちょっと歩けばシネカノン有楽町もありますし、東映系、東宝系の総本山とも言うべき映画館も集中しています。

原題はAUF DER ANDEREN SEITE/THE EDGE OF HEAVENです。向こう側とかいう意味のようですが、原題を踏まえると、最後に登場人物を融合させずに終わるのは、意図的なもののように思えてきます。でも、観客に丸投げするにも程があります。評価基準に当てはめると「C」評価ですが、実際に鑑賞すると体感温度はもっと低いという印象があるかもしれません。

今流行り?のちょいレズのテイストも。
2008_the_edge_of_heaven_006_4

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Comments

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