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December 25, 2008

トロピック・サンダー/史上最低の作戦

監督:ベン・スティラー
音楽:セオドア・シャピロ
脚本:ベン・スティラー、ジャスティン・セロー、イータン・コーエン
出演:ベン・スティラー、ジャック・ブラック、ロバート・ダウニー・Jr.ほか

「ノーベル文学賞」

トロピック・サンダーです。全米で3週連続興行収入トップ。邦題に付けられた「史上最悪の作戦」という副題は、「史上最大の作戦」と名付けた故・水野晴郎氏へのオマージュか冒涜か。前にも言いましたが、全米で何週かトップに位置する映画は、必ず何らかの理由があります。日本のようにパイが小さく、例えば、クソ映画であろうともジブリと言うだけでトップに君臨し続けるような状態とは異なります。話題性があるとか、面白いとか。俺たちフィギュアスケーターのようなゲリラ的な面白い映画もあります。

トロピック・サンダーには、どのような要素が隠れているのか。面白いような感じもしますが、1つ気になる点がありました。「らんぷ亭のタイアップ」です。らんぷ亭がタイアップする映画は、面白くない映画ばかりです。確か、史上最悪の続編、マスク2もらんぷ亭がタイアップしていたはずです。無論、面白い映画なら他の企業がタイアップに踏み切っているはずなので、業界でも微妙なシェアのこうした会社がタイアップしている場合は、要注意といえますが、こうした映画が十把一絡げに面白くないと言えないのも曲者だったりします。

ちなみに、札幌から東京に向かう北斗星の車内では、マスク2と阿修羅城の瞳がひたすら流れていて、発狂しそうになって以来、マスク2に恐怖感すら覚えるようになりました。

本編は映画界に対する批判とブラック・ジョーク満載で、米国の映画関係者が見れば「あるある」という感じの内容のようですが、日本の観客に少なくとも米国の映画関係者はいません。したがって内容は大半は意味不明。猛獣のような大物俳優たちをなだめる一方、プロデューサー?にせかされながらヒット作を作ることを求められる監督の悲哀はよく伝わってきます。

この映画は、字幕ではなく英語を理解している人、もっと言うなら米国で暮らしたことのある人、一番望ましいのは米国人で、さらに映画関係者なら大笑い出来る内容なのかもしれませんが、前述の通り我々はそんなこととは縁も縁もない日本人。これで映画を楽しめというほうが間違いなのかもしれません。全米で3週連続トップを記録したほどの面白みがこちらには伝わらなかったことが残念でなりません。

ちなみに、トム・クルーズが禿げ親父に扮装して登場しています。彼はこれまで、いくつかの三枚目役に挑戦しています。オースティン・パワーズ・ゴールドメンバーの冒頭でオースティン・パワーズ役で登場したりとか。ただ、どれもが照れを隠せず中途半端にかっこいいものとなっています。トロピック・サンダーでの禿げ親父の役は、これまで照れで60%ぐらいしか自分を捨て切れなかったトム・クルーズが、65%ぐらい自分を捨てて演技をしています。たった5%ですが、彼にとっては大きな進歩といえるのかもしれません。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
  ・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
  ・2点
  よりリアルな映像を追い求めて大物俳優たちが本当の戦場に送り込まれる話…と書けば面白そうだが、主人公たちはそこにいって特に何かを思うわけでもない。そこにカタルシスはない。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
  ・2点
  ハリウッド俳優はプライドとステイタスに溺れて腐っている様子を描いているようだが、一般人の我々にはピンと来なかった。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
  ・0点
  ない。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
  ・0点
  ない。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
  ・2点
  生きて帰ること。だが執念というほどまでは感じられなかった。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
  ・2点
  トム・クルーズ演じるプロデューサー。ぐだぐだなダンスは目に焼きつく。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
  ・2点
  トム・クルーズ演じるプロデューサーのぐだぐだなダンス。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
  ・0点
  泣けない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
  ・0点
  冒頭のいくつかのニセ映画の予告編は面白い。むしろこれだけで充分。主人公のスピードマン(ベン・スティラー)は際どい映画にも出演していて、これが密林の中で身を助けることになる。際どい映画とはいわゆるガンプもの(この映画は米国のその筋の団体に訴えられた)。脇役のラザラス(ロバート・ダウニー・Jr.)が「フォレスト・ガンプ、レインマンなど数あるガンプものに登場する人物は、何か抜きん出ている部分があるから救いがあり評価され、オスカーを受賞出来た」と説明するシーンがあるが、この点はなるほどと思った。ちなみにスピードマンがガンプもので演じたキャラクターはその理論から外れたキャラクターで、ラザラスも役作りのために白人から黒人に整形したという設定。ラザラスは黒人のキャストと絡むシーンがあるが、これも際どい。米国では映画界を皮肉って、さまざまなタブーに挑戦したという点で評価された映画なのだと思われるが、笑うに笑えない設定でもあるのが難しい。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
  ・0点
  ない。

【減点項目】

筋違いのPRが行われている(-10点)
  ・-2点
  「史上最低の作戦」という水野晴郎に失礼な副題をつけた。この副題はCMで世界のナベアツっぽい読み方をして「楽しい映画ですよー」ということをアピールしているかのよう。ただし、正面切って大々的に上映すると、各所からクレームの来る映画、あるいは配給側がそれを恐れて萎縮する内容の映画かもしれない。リンガー!★替え玉選手権の時も日本での上映に当たり後ろに妙な副題をくっつけてお茶を濁していたし、太陽の上映の時も右翼の抗議を恐れて上映を中止するなど過敏ともとれる反応がみられた。太陽の時は、上映に踏み切った銀座シネパトスには恐らく開闢以来の観客が押し寄せ、そのフィーバーぶりと意外と何も怒らないのを確認するようにシネコンなどが後追いで上映を開始するというヘタレぶり。必要以上に過敏になったり、そのくせ広告代理店が絡むなど都合が悪くなれば鈍感になったり、ろくに作品を観ていない人々が掻き乱しているように感じられてならない。

基礎点15+技術点6+芸術点4×1.5=27点、減点-2。
CinemaX指数23、F評価(59点以下)

全米No.1といわれてもこればかりは当事者でないと楽しめない映画だといえます。それはまさに、ノーベル文学賞のよう。論文や研究成果は言語を超えて理解しあえても、文学は別。受賞者の作品を本当に楽しめるのは、ネイティブだけでしょうから。

2008年11月22日/ワーナーマイカルシネマズ板橋
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