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November 19, 2008

252 生存者あり

CinemaX新評価基準スタート!容赦なくネタばれしているので、ご注意ください。

「252 生存者あり」

監督:水田伸生
製作総指揮:島田洋一
原作:小森陽一
音楽:岩代太郎
脚本:小森陽一、斉藤ひろし、水田伸生
出演:伊藤英明、内野聖陽、山田孝之、香椎由宇、木村祐一ほか

「バロック音楽」

252生存者ありです。主人公は元東京消防庁ハイパーレスキュー。ハイパーレスキューといえば、新潟県中越沖地震のトンネル崩落事故で、まさしく命懸けで子供を救出した人々を思い出します。252とは、生存者ありという意味らしいです。暗号としても使いながら、遭難者が何かで2・5・2と叩けば、生存していますよという信号にもなります。

252の由来はよく分からないのですが、確かSOSのモールス信号が、単音3回、長音3回、単音3回です。これはモールス信号以外では光などで表示出来るのですが、例えば何かを叩いて単音と長音の区別をつけるのは難しい。この辺りにも関連性があるのかもしれません。

さて、本編はダラダラしたスタートから始まります。途中のシーンを冒頭に持ってきたり、登場人物の軽い説明を行ったりしているのですが、どうしてこのシーンが必要なのか、意味が分かりません。最初の10分ぐらいは寝ていてもいいぐらいです(実際に退屈で眠くなります)。

目が覚めるのは、地震により海底から噴出したメタンハイドレートに起因する上昇気流で巨大台風が発生したという設定。今夏のゲリラ豪雨を考えるとリアリティがあるのですが、メタンハイドレートを引っ張ってくるとは。ピンと来ないものなので、題材としては扱いやすかったのかもしれません。

メタンハイドレートとは、シャーベット上になったメタンガスのことで、日本近海で埋蔵量は日本のエネルギーの100年分以上という見方もあります。ただし海底に埋もれているので利用するには高度な技術が必要で、おまけに慎重に掘削しないとメタンガスが噴出して地球温暖化に影響を及ぼすという短所もあります。

メタンハイドレートが実用化されれば、GTL(ガス・トゥー・リキッド)などに加工されて自動車や家庭用燃料への利用も期待されています。最近、このメタンハイドレートが話題になり、政府も再び開発に力を入れ始めたのは、原油価格の高騰による新エネルギー重視の流れが影響しているかもしれませんが、経済産業大臣の選挙区の沖にもメタンハイドレートが眠っているから…それだけです。「再び」というのは、この大臣は前にも経産大臣に就任したことがあるから…それだけです。

さて、本編では見慣れた街が洪水や高波に呑まれてメチャメチャになっていきます。中でもひどいのが台場と新橋で、フジテレビの本社ビルは壊滅し、球体展望室がプカプカと海に浮かぶという破壊ぶり。ちなみに252は、日テレ製作の映画です。日テレタワーはというと、ザーッと水が流れてくるシーンだけ。

一方、新橋は東京メトロ新橋駅を中心に洪水に呑まれていきます。地下鉄のホームが逆とか、普段使っているだけに細かいことが気になるのですが、日本映画にはあまり感じられなかった迫力はあります。そして、現存する幻の新橋駅も登場します。幻の新橋駅は、知られていないようで実はかなり有名になっているのですが、なかなか面白いところに目を付けたと思います。

主人公と行動を共にするのは、娘と研修医、韓国人ホステスと大阪の中小企業の社長です。この研修医が序盤からかなりヒール役に徹していて、見ている側はかなり感情を揺さぶられます。この研修医は、恐らく登場人物の中で最も心が変わり、それにつれて笑いが加わり、成長とともに医者が抱える重く泣けるエピソードを披露するのですが、いかんせん脇役。それに、主人公がこの男が研修医であることを知るというシーンが抜け落ちているという致命的な欠陥があります。これは、上映までに修正されるかもしれません。

他にも、大阪の社長、韓国人ホステスもいい味を出しています。ストーリーに絡む登場人物が多いとアルマゲドンのようにぐだぐだになりがちなのですが、252の場合はきちんと描き分けているので煩雑な感じはしません。アルマゲドンのロシア人飛行士なんかは、最後に機械をぶったたくだけのためにずっと主人公の周りをウロウロしていただけですから、あの状況と比べると天と地ほどの差です。


なんやかんやあって、映画は終わりに近づきます。ここで、エンディングが2重にも3重にも折り重なっていることが分かります。まずは、主人公を救出するシーン、二次災害に遭うシーン、兄だけが助けられるシーン、主人公が地面の中から出てくるシーン。恐らくどのシーンもシナリオをまとめる段階でエンディングとして考えられたシーンなのでしょう。結局、もったいないから全部入れちゃえということになったために、こんなだらだらとした終わり方になったのかもしれません。

252のエンディングは、終わりそうで終わらない、バロック音楽のような感じです。バロック時代の音楽は、「ザザザザッ、ドッ、ドッ、デッ、ドドー、ドドー、ドー、ドー、ドー」などのように、ぐだぐだと引っ張ることで、我慢し切れなくなった観客の拍手が次第に増えていき、最後は拍手喝采を集めるという、独特の終わり方をする曲が多かったりします(もちろんそれだけの目的ではないと思いますが)。ただし、ビシッと終わらないので、ずっと聴いていると飽きてしまいます。

252は、だらだらとした終わり方であるうえに、誰もが予想出来る大団円で終わります。その場では気持ち良いかもしれませんが、これでは平凡な映画として歴史の中に埋もれてしまいます。数ある潜水艦映画の中でどうしてUボートが上位に上がってくるのか、伝説巨神イデオンがどうして機動戦士ガンダムとは全く異質なインパクトのあるロボットアニメとして語り継がれているのか、それは全てエンディングによるものと言って過言ではないでしょう。殺すだけが全てではありませんが、ひねった終わり方をすることで、後世に語り継がれる名画となる可能性は充分にあります。

252は、主人公を殺す、殺さないは別として、もう少しひねるのあるエンディングにして欲しかったように思います。普通の味付けだと、食べたことすら忘れてしまいそうです。

【基礎点】

一般の邦画(20点)
・20点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・7点
巨大台風の中でも家族を思いながら生き抜こうとする人々の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・7点
温暖化、都市災害という点では、考える部分があるかもしれない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・8点
252という言葉。
幻の新橋駅(東京高速鉄道新橋駅)は意外と知られているので観光要素としては不充分。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・8点
細かいディテールにも使われていた。我々も万が一のときに役に立つかもしれない。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
何が何でも生き残る。極めてはっきりしている。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・7点
研修医と主人公の子供。登場人物の多い映画だが、それぞれがきちんと描き分けられていた。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・4点
あらぶるハイパーレスキューの男たちのシーン。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・5点
身内びいきと分かっていても、命懸けで弟を助けようとする兄の行動はそれなりに胸を打つ。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・3点
研修医が輸血を通じて少しづつ心を開くシーンは笑えるが、このキャラクターは脇役。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・7点
研修医は序盤かなりのヒールぶりで、観客の心をグラグラ揺さぶりまくる。ただし脇役なのが残念。

【減点項目】

無意味なシーンが多すぎる(-10点)
・-8点
エンディングがとりとめもなくダラダラとし過ぎた。

【総合判定】

基礎点20+技術点40+芸術点26×1.5=99点、減点は-8点。
CinemaX指数91、「C」評価(81~99)。

2008年11月4日/東京国際フォーラム

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Comments

かなり良い点をつけられましたね。
私はエンディングで、それまで良かったところも含めて、がんがん減点してしまいました。
あんなのありえない。精鋭部隊が人を抱えて出てきた主人公を黙って見ているなんて。 
隊長も主人公から抱えた負傷者(しかも隊員)を引き取るように指示を出せよ。
それまで篠原隊長はいい味出してると思っていましたが、好感度ダウン。
演出のせいで、俳優には責任ありませんが(笑)

Posted by: tsukasa | November 19, 2008 at 09:40 AM

きっと、作り手はスローモーションを駆使したりとか、感動のエンディングになると思ったんでしょう。
映画と同様、地盤のユルい演出でしたね。

Posted by: yu-worldmaster | November 19, 2008 at 12:26 PM

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