リンガー! 替え玉★選手権
CinemaX久々の更新、第136回。
監督:バリー・W・ブラウスタイン
製作総指揮:ティム・シュライヴァー
音楽:マーク・マザースボウ
出演:ジョニー・ノックスヴィル、ブライアン・コックス、キャサリン・ハイグルほか
上映時間:95分
(公式サイトはここ)
「ヘタレ」
今回はリンガー!です。知的障害者を扱ったコメディなので、不謹慎だという声も聞かれましたが、米国の興行収入ランキングでは、僅かの間ですが他のメジャー映画を掻き分けて上位に食い込んでいた実績や実力のある映画です。日本ではDVDすら発売されないだろうなと思いましたが、数館の映画館が立ち上がり、公開に踏み切りました。そもそも批判的な意見は見てもいない人が発しているようなので、実際にご覧になって判断してもらいたいものです。ということで観ました。
リンガー!のストーリーは、金策尽き果てた主人公が賭けに乗せられて知的障害者を装い「スペシャル・オリンピックス」というスポーツの祭典に出場するというものです。最初にこの映画を知った時に、知的障害者を扱うのはどうかと思えたのですが、ハリウッドでは既にフォレスト・ガンプやレインマンなどの映画が存在しており、高い評価を得ています。ただ、コメディというのはなかったと思うのですが。
ストーリーから判断すると、主人公が仲間と結託してバレないようにスペシャルゲームに出場して優勝する話なのだなと思いがちですが、大違いでした。ここから先はネタばれになりかねませんが、主人公が障害者でないことは、あっさりとバレてしまいます。しかも、それを知ったのは周囲の障害者、しかも彼らが主人公を勝たせようとする過程でさまざまな友情が芽生えます。
ターン1までの評価「A」
リンガー!は、タッチーな題材を扱った割に、決して偽善的ではなく、差別的な表現をしていません。差別的な発言を繰り返すキャラクターもいるのですが、それはストーリーの中での話。作り手からは、映像や登場人物のセリフを通して優しさすら感じられる映画です。実際に知的障害者の方を家族に持つ方々がどう判断するかは分からないのですが、単館映画としておくには本当にもったいないと思います。
良い映画の要素というのは、①出来るだけ早い段階で観客の感情を引き込むこと②観客を楽しませ「この先どうなるんだろうな」とワクワクさせる③観客に「最後はああなるんだろうな」と予測させる余地がある④その観客の予測を無理のない範囲(あるいは鮮やかに)裏切る―などが挙げられます。映画ではありませんが、ドラえもんの単行本⑥~⑦巻に収録されている「さようならドラえもん」「帰ってきたドラえもん」が典型的なストーリーの一つだといえます。個人的には「エニイ・ギブン・サンデー」も挙げたいのですが。
ターン2までの評価「A」
リンガー!は、良い映画の要素に加えて、主人公がヒロインに恋をしてしまうという王道の展開や、「あべこべ」の利いたコメディもふんだんに盛り込まれています。あべこべとは、普段とは逆の設定で物事を展開させるということで、「男はつらいよ」に代表されるものです。例えば寅さんが、大学教授や警察官など、一般的なステイタスとしては上に位置する人々に平気で説教を垂れるシーンなんかは、この典型だといえます。リンガー!でも主人公が周囲の仲間に不意に励まされたり、説教されたりします。
最終評価「A」
そして、最後は、良い映画の要素に挙げた、観客の期待を鮮やかで裏切ってくれます(ちょっともどかしい部分もありましたが)。主人公はスペシャル・オリンピックスで勝つのか、負けるのか、それは実際に劇場やDVD(発売されるのか不安ですが)でご覧下さい。恐らく今年前半で最高の映画だと思います。ヒロインのキャサリン・ハイグルも魅力的でした。必見!
~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成18年5月16日
劇場:シアターN渋谷
観客数:30/102席
感涙観客度数:多数
シアターN渋谷といえば、映画ファンの要望に応えて、「ホテル・ルワンダ」の公開に踏み切った劇場の一つです。大手の配給会社は批判をおそれているのか、この手の難しい映画をほとんど扱うことはありません。ただ、最近はホテル・ルワンダや「太陽」などのように単館で爆発的にヒットをして、さほど批判も集まらなかったのを確認して、シネコンなどで後追いで公開するという、ヘタレともとれる事例も見受けられます。
こうした映画の殆どは、実際に観てみると「どこに問題あるの?」と思えるものがほとんどなので、大手、中堅の配給会社の人々は、「ちゃんと映画を観て判断しているの?」聞いてみたくもなります。
ついでに紹介!
ちなみに「シュリ」も単館映画からスタートしました。その後口コミでブレイクし全国に拡大。映画ファンの全てが面白くない映画も面白いと見せかけるような、映画会社や広告代理店などによるスクラム偽装に流されるわけではないことを実証した好例といえるでしょう。シュリは、実際に起こっている南北対立を扱うということで異常な緊迫感があったことがヒットに繋がったといえます。007は敵視していたソ連が崩壊してすっかり緊迫感がなくなりましたから。


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