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May 01, 2007

バベル

CinemaX久々の更新。134回目。

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:ギジェルモ・アリアガ
音楽:グスターボ・サンタオラヤ
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司ほか
上映時間143分
(公式サイトはここ

「うまみ調味料」

女優としては無名ともいえる菊地凛子のアカデミー賞助演女優賞ノミネートで何かと話題になった「バベル」です。ただ、あの大御所が翻訳していなかったり、協賛などで関わっている企業などが有名企業でなかったりしていることから、この話題がなければ単館映画として処分されていた可能性が高いような気がするのですが。最近でも真田広之が微妙な宇宙飛行士を演じたように、メジャーリーグと同様にもはや海外の映画に日本人が登場しても珍しくはない世の中になりましたが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

この映画のタイトルは、バベルの塔のエピソードに由来するようです。僕の記憶違いでなければ旧約聖書の創世記、バビロニアの人々が神の存在に近づこうと結託して高い塔を作ろうとしました。これがバベルの塔です。神々は人間たちの愚行に怒り、雷を打ちつけて塔を破壊(聖書には破壊したと記載していないようですが)、人間たちが二度と愚かな行為を繰り返さぬよう、人々の言語を分けてしまったという話です。映画「バベル」でもそれぞれの登場人物が同じような悩みを抱えながらも言語(手話を含む)は全く異なり、時になかなか思いが通じずもどかしく感じるなどなるほどなと思わせる点はあります。

ターンAまでの評価「B」

この映画を観て予想外だったのは、オムニバスではなかったということです。場所や時系列を飛び越える映画は、たいがいがオムニバスでそれぞれのエピソードがブツ切りになっていることが多いのですが、「バベル」は様々なエピソードが実に巧に交差しています。失敗すれば駄作になりかねない挑戦は、評価に値するといえるでしょう。このほか、状況によって観客に先に答えを見せ、もう一つの視点からアプローチするというテクニックも取り入れられています。後述しますが、このテクニックが、良くも悪くも無駄ともいえるぐらいの緊張感を生むエッセンスとなっています。

さて、いよいよ菊地凛子が登場です。彼女は耳の不自由な女子高生、チエコを演じています。もともと演技力はあるといわれていたうえ、表情入りの手話もなかなかリアルです。身体障害者を扱ったドラマを次々にヒットさせたあの大物脚本家のドラマは、例えば手話ですらやたら美化しているので違和感を感じるのですが、手話とは本来、耳の不自由な人々が生きるために使っているものですから、手話表現だけでなく、健聴者から見ると大げさともとれるような表情や仕草を交えることも必要です。綺麗どころの俳優がちょこちょこっと手話を表現するだけでは話になりませんから。

ちなみに「バベル」では手話講座などでは絶対に教えることがない、両手の二本指をバッテンに交差させる表現も出てきます。僕はこの表現を飲み会の席で酔っ払った今は亡き恩師から習いました。日常会話で使う場面は限られていますし、健聴者が耳の不自由な方との手話でこの表現が出ることは、レアケースといえるでしょう。ちなみに「バベル」では字幕で見え難いですがチエコとその友人の会話の頭のほうに出てきますので、どういう意味の手話なのかを確認しながら観ると興味深いかもしれません。

ターン2までの評価「B」

「バベル」は、後半もそれぞれのシーンが絡み合いながら、モロッコと日本とメキシコ、そして時系列をも飛び越えて交錯していきます。どういう風に組み立てると緊張感が増すかとか、映画の構成を勉強するには良い映画かもしれません。ただ、チエコの奇行は最後まで納得出来ませんでした。あまりに感情移入出来ないので、日本のエピソードにこれほどまで時間をかける意味があるのかと思ったほどです。エンディングも日本なのですが、これまたグダグダで…モロッコとメキシコの話だけでも映画としては成立するのかもしれません。

最終評価「B」

「バベル」は大きなテーマを秘めているように感じます。当事者にとっては一大事でも、遠ざかるにつれ当事者の気持ちがダイレクトに伝わることがなくなるということ、震源地で発生した大津波も、遠く離れればさざ波程度になってしまうということです。例えば、「ホテル・ルワンダ」でも殺戮が繰り返されているルワンダの国民の悲しい気持ちは海外には届かず、夕食時にニュースを観て「ああ、可愛そうだ」と思うだけだという旨のセリフが出てきます。ダイレクトに伝わらないのは、距離もあるでしょうが、やはり言葉の壁、言葉の壁による民族や人種の壁による影響も大きいのでしょう。それが、この映画のタイトルに込められた意味なのかもしれません。

ただ「バベル」は、良く出来た映画ですが、感動する映画ではありません。例えば、あってもいいけど、なくてもなんとかなる、うまみ調味料のような映画です。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成19年4月28日
劇場:ワーナーマイカルシネマズ板橋
観客数:90人/154席
感涙観客度数:若干
※各ターンは個人的に設定、感涙観客度数は場内の鼻すすり音で推定。

「バベル」は、映画としては無駄にドキドキさせられるだけで感情を揺さぶられるようなことはありませんが、構成などは極めて挑戦的で高い評価を得られて当然といえる映画です。それだけならまだしも、海外のさまざまな映画賞を受賞し、アカデミー賞にノミネートされたことで、日本では絶賛の嵐が吹きまくっています。個人的には何を観て感動するの?と聞きたいのですが。

日本人は自分なりの杓子定規をもっていないか、持っていても自信がない人が多いのか、他人のふりみて我がふり直す人が多いような気がします。かつて、映画ファンの多くがさっぱり意味の分からないアメリカン・ビューティーやTAKESHIS’を最高傑作であるかのように諸手を挙げて評価したように、今回も流行のように「バベル」を絶賛し、菊地凛子を再評価する傾向にあります。ノーベル賞を受賞したからといって慌てて表彰や勲章を授けたり、だらしないったらありゃしないと思うのは僕だけでしょうか。

ついでに紹介!

文中で紹介した「ホテル・ルワンダ」と仏教徒や神道が中心の日本人が、意味はどうであれバベルの塔に親しみを持つきっかけとなった「バビル2世」犬?や鳥?が好きな人が多い中で僕はポセイドン派。

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Comments

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