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March 17, 2007

えー!

「日立・世界ふしぎ発見!」が放送1000回を超えたそうです。1986年4月に放送開始。当時は円高不況を脱してバブルに向かっていた時代でした。怪物プロデューサー、王東順の「なるほど!ザ・ワールド」が放送開始、長く高視聴率を誇っていましたが、その後は好景気と円高が後押ししてか「クイズ地球まるかじり」など世界を飛び回ってクイズを集める番組が雨後のたけのこのように登場しました。趣向が違いますが「世界まるごとHOWマッチ!!」も1980年代を代表するクイズ番組でした。

この手の番組は、視聴率が落ちてきたりネタ枯れしてくると潤沢な資金が集らないためか、さらに番組の質が落ちて打ち切られるケースが多いのですが、世界ふしぎ発見!は、問題数が変わったり視聴者参加型に変更されたものの、裏番組にさほど脅威となりそうなものが出てこないため、司会者とレギュラー解答者が20年以降も変わらないというお化け番組に成長しました。かつて、シナリオの師が「あの番組は、テレビマンユニオンの番組制作基準が厳しいのでちょっとやそっとじゃ質は落ちないだろう」と言っていましたが、問題の質が落ちていないのはそこにも理由があるでしょう。普通なら近場の国や国内の問題を増やしたり、晩年のなるほど!ザ・わーるどのように、トランプ手品で時間稼ぎをしてもおかしくはないはずなのに。

さて、最近…というわけではないのですが、気がかりなことがあります。テレビ番組で度々聞く「えー!」という声です。笑っていいとも!の明日のお友達紹介での定番ですが、僕の小学校の頃の先生は、児童が「えー!」と言うと、怒っていました。「相手に不快な思いをさせるから、やめろ」と。字幕スーパーとともに「えー!」を定着させた感のある、進め!電波少年の登場以降、この「えー!」という声をテレビや日常生活において聞く機会が増えているような気がするのは気のせいでしょうか。

この「えー!」が使われるシチュエーションは、もともと肯定や感嘆の「えー!」が多かったと思うのですが、近年は相手や周囲の意見を否定することを意志表示する「えー!」が増えているような気がします。「えー!(めんどくさいよー!)」とか、「えー!(やめてよー!)」という感じです。あとはとりあえず「えー!」と言って話の流れに加わってみるとか。ただ、この言葉は意見をともなわず生産性に乏しい言葉なので、多用するのはあまり好きではありません。相手を否定しているみたいですし、会話や思考回路が停止してしまいます。

日本はもともと、馴れ合いの中で社会が構築されてきた経緯があるといえます。身分や性別で上下関係がはっきり分かれていたので、自分の意見をぶつけ合って物事を交渉する必要があまりなかったのでしょう。ですから、日本人は交渉事が苦手といわれていますし、日本人が海外の人とまともに張り合って自己主張が出来るようになったのは最近ではないでしょうか(それでも少数だと思いますが)。それでも日本人や日本社会の欧米化、外国語に「えー!」にあたる言葉が多いことなどを踏まえると、「えー!」を多用するのは時代の流れであり、最近の日本人の自己主張のひとつと考えることが出来ますが、やはり違和感を覚えます。

日本に馴染まないものに、比較広告というものがあります。欧米化にともない、日本でも1990年頃から比較広告が出てくる気配はありましたが、結局、アメリカでのペプシ対コカ・コーラや、商品ではありませんが民主党対共和党のように、直接的な比較広告が日本に根付くことはなかったようです。今、アップルがマックとウィンドウズの比較広告のようなCMを流していますが、これも洒落がきいたものです。こういう類のものでないと、日本人は受け入れることが出来ないのでしょう。それは、技術で仕事(?)をする日本古来のスリと、強引にカバンを切りつけたり脅したりして金を奪い取る窃盗団に対する印象の違いのようなものかもしれません。どちらも犯罪ですが、世間では鮮やかに財布を盗むスリのほうがマシという見方もあるはずですから。

もう一つ日本に馴染まないのが、ブーイングでしょう。これも聞く機会が増えました。日本古来からあるスポーツやゲームには、相手を蹴落とすようなものはないはずです。自分の努力で這い上がれというものが多いはずです。多くの場合が負けても礼、勝っても礼をします。勝者の礼には「自分の技術が相手をたまたま上回った。それには運もあるかもしれない」という気持ちが込められているといえます。例えば、大相撲で勝った力士がガッツポーズをすると、師匠や兄弟子から叱られます。「相手に失礼だ」と。

先日、Jリーグの試合で極めて残念なブーイングを聞いてしまいました。横浜ダービー、横浜FC対横浜F・マリノス戦。相手方の選手紹介の最中にブーイングするのは、一種のセレモニーのようなものなのでいいとは思うのですが、試合開始前の式典の最中もずっとアウェイ側のブーイングが続いていました。これは礼儀もクソもありません。少し前、日本代表が中国・重慶で行った試合で君が代がブーイングでかき消されていたのを思い出せ、と言いたいです。

現在の内閣がぶちあげる「美しい国」は、政策の中身はカラッポですが、こういう言葉が少しでも流行っているのですから、少しは日本人の奥ゆかしさみたいなものをあらためて考えるのもいいのではないでしょうか。個人的には公共広告機構が「江戸しぐさ」のバリエーションをもっと増やしてくれればいいのにと思います。あれは結構楽しいので。
Wleague

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