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February 13, 2007

どろろ

CinemaX第122回。

監督:塩田明彦
原作:手塚治虫
脚本:NAKA雅MURA、塩田明彦
音楽:安川午朗、福岡ユタカ
出演:妻夫木聡、柴咲コウ、瑛太、原田美枝子ほか
上映時間:138分
(公式サイトはここ

「油断してんじゃねーぞコノヤロー!」

という、柴咲コウの活舌の悪いCMが印象的などろろです。漫画の手塚治虫、小説の司馬遼太郎、映画監督の黒澤明。既に鬼籍にある彼らの作品は、どれをとっても名作で決して批判してはいけないという風潮があります。どろろも、封切後から「大ヒット上映中」のCMを垂れ流すという異常事態で興行収入も首位独走中。果たしてその看板に偽りはないのか、CinemaXの評価やいかに。

今でこそ漫画を全くといっていいほど読みませんが、実は、小学校ぐらいまでは7歳年上の兄と競うように漫画を読みまくっていました。ただ、7歳離れると好きな漫画家は異なり、藤子不二雄作品の読破を目指していた僕に対し、兄は手塚治虫や横山光輝などの漫画を買い漁っていました。当時人気のあった松本零士はどちらにも属さず中間。それでも風邪で学校を休んだりすると、兄が揃えている漫画を無性に読みたくなるので、大抵の手塚作品も読んでいます。もちろん、どろろも。

ただ、どろろについて、他の作品に比べ内容を全く憶えていないところをみると、子供心に馴染まない内容であったか、面白くなかったかのいずれかということでしょう。映画の冒頭を観て、ああ、そういえばと思い出したくらいでしたから。むしろ、家にあったレコードの方が印象的です。一休さんの声優で知られる藤田淑子さんがひたすら「ホゲタラホゲタラ」と歌う歌詞は衝撃的でしたから。

冒頭、中井貴一扮する醍醐影光が登場します。まるで、梟の城を彷彿とさせます。そして嫌な予感。CGがバレないようにするためか、何を意図したのか分からない暗めの映像はとにかく見辛い。北野ブルーのように、監督のセンスだけでこんな加工を施したのなら問題があると思います。まるでVTRを無理矢理映画のように加工したような映像…何だかキャシャーン阿修羅城の瞳を思い出します。さらに嫌な予感。

ターン1までの評価「C」

予感は当たりました。まず、百鬼丸の生い立ちが長すぎる。何のために旅しているのか、説明するのが遅すぎる。その一方で、あれだけ親殺しにこだわる、どろろの生い立ちが淡白で、さらにそれを説明するのが遅すぎる。登場人物はシリアスな演技をしようとしているのですが、頭の中で「???」が並んでいるのがみてとれます。演じる側が理解していないのですから、我々観客が感情移入出来ないのは当たり前です。失敗映画の典型的な例といえます。

セリフも説明しすぎです。例えば、百鬼丸が「殺気が」と言いながら戦う必要もありませんし、他にも見た目で分かるはずの感情をセリフで説明しようとしているシーンが多すぎます。結局、行動とセリフの二重の説明になってしまい、映画のテンポが落ちます。妻夫木聡と柴咲コウを揃えたので、漫画やアニメで親しんだどろろのファンよりもむしろ若者…それもかなり若い層をターゲットにしているように思えるので、セリフを平易にする必要があったのかもしれませんが、その割に際どいシーンが多く、PG-12指定。何だか戦略がチグハグです。

ターン2までの評価「C」

既に救いようがなくなってきましたが、終盤は百鬼丸が自分を捨てた父親を殺せるか否か、死ぬだの死なないだの、仇討ちを諦めるだのあきらめないだの、ダラダラとした展開が続きます。時間稼ぎのよう。恋愛に悩む主人公は前に進んだり戻ったりするテレビドラマかよ!と突っ込みたくなります。どろろはTBSが派手に絡んでいるのでリアルな突っ込みになってしまいそうですが。

最終評価「D」

TBSは封切前後に派手なPRを繰り返し、その後も海外での上映が決まったとか宣伝材料に事欠かないどろろですが「全く新しいエンターテインメント」とは一体どういう意味なのでしょうか。僕には全く理解出来ません。日本の映画界は今、シネコンブームに乗って活況です。どんな映画を作ってもある程度の収入は見込めます。ただ、その状況に甘えて雑な邦画が増えているのも確か。特に漫画原作の映画化のように安易な映画も目立ちます。これらの全てが当たったわけでもありませんが、いずれもテレビでは「大ヒット上映中」とCMが打たれました。今後もゲゲゲの鬼太郎が映画化されますが、話題性のあるキャストを集めているのをみると、やっつけの映画になっていないか心配してしまいます。

我々観客はそんなにバカではありませんから、あまりに下らない邦画が連発されれば、邦画ばなれ、ひいては映画ばなれで業界が再び冷え切ってしまうことも考えられます。インターネットの普及でテレビ局が危機感を募らせているのは分かりますが、テレビはテレビ、映画は映画で少なくとも考え方を分ける必要があるのだと強く感じます。どろろに関しては、映画を心から楽しんだ人が大多数なのならともかく、映画を作ったテレビ局自身が影響力が極めて大きいテレビを通じて「大ヒット上映中」と報じ、これだけの人を掻き集めるのは詐欺に近いような気がします。まるで大本営発表のよう。

「映画人気に油断してんじゃねーぞコノヤロー!」

さらに心配なのは、この映画がアカデミー賞ごっこ…もとい、日本アカデミー賞を総ナメにしてしまわないかということです。そして、DVD化の際にはいろんなおまけをつけて、コレクターズエディションと称してカットしたカス映像をくっつけて3倍近くの映像量に水増しして発売されることを危惧しています。どうか心配だけに終わりますように。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成19年2月10日
劇場:ワーナーマイカルシネマズ板橋
観客数:300人/549席
感涙観客度数:20%
※各ターンは個人的に設定、感涙観客度数は場内の鼻すすり音で推定。

映画はコケにしましたが、妻夫木聡はかなりかっこいいです。一方で柴咲コウのキンキン声はちょっと…。どろろは、感涙ポイントは終盤にありますが、これは登場人物が死んだことによるもの。それ以外の積み重ねがありません。何度も言いますが、人が死んで悲しいのは当たり前。それだけで感動したと錯覚しないようにしましょう。映画の本筋を見失いかねませんから。

ついでに紹介!

どろろ原作と怖いもの観たさののあなたに「梟の城」CGがグンバツ。そういえば梟の城は司馬遼太郎の原作ですね。

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Comments

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