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January 23, 2007

それでもボクはやってない

CinemaX第119回目。ウ~ウ~。

監督・脚本:周防正行
音楽:周防義和
出演:加瀬亮、瀬戸朝香、山本耕史、もたいまさこ、役所広司ほか
上映時間:143分
(公式サイトはここ

「資料集」

「Shall We ダンス?」以来11年ぶりの監督作品です。思い起こせば7、8年前、周防監督がラジオで「僕の次のアイデアは、ハリウッドの某映画会社が買ってくれるんです」と自慢げに言っていたのが思い浮かびます。当時は「この人調子に乗りすぎているんじゃない?」と思いましたが、結局アイデアが思いつかなかったのか、思いついてもショボかったのかは分かりませんが、2004年に「Shall We ダンス?」そのものがハリウッドに輸出されました。最近のテレビ局主導の映画は「テレビでやってもいいんじゃない?」というものが多いのですが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

映画のストーリーや内容は、他の映画サイトに紹介されていると思いますので割愛しますが、簡単に言えば痴漢による冤罪裁判を扱ったものです。この映画には、日本における裁判制度の問題点を事細かに紹介しています。さすがに周防監督が何度も裁判所で膨張するなど足で稼いだ取材しただけあって、リアリティはあります。ただ、その紹介に終始したような気がします。

ターン1までの評価「B」

主役級の役所広司もそうですが、竹中直人など映画の随所で周防ファミリーが登場しています。ただ、11年も経てば、何となく映画のノリが似ている三谷幸喜が作品を乱発していますから、例えば役所広司やなんかは三谷ファミリーといってもいいほどです。日本のアカデミー賞ごっこ…もとい、日本アカデミー賞を総なめにした監督なので尊敬に値する人物だとは思いますが、所詮はこの映画を含め5本程度しか監督をしていないという、寡作監督であることには間違いありません。その割にエースが帰ってきたかのような評価…どうにも首を傾げてしまいます。

ターン2までの評価「B」

こんな書き方をすると「それでもボクはやってない」がつまらない映画のように思えるかもしれませんが、そんなことはありません。143分という長丁場もあっという間です。特に周防監督は映画作りには長けていると思うので、シーンの並べ替えや展開は極めてスムーズです。観客が知っていて登場人物が知らないという情報量の差による緊迫感を巧みに扱っていますし、長回しのシーンも多いのですが、省略するところはきっちりとしていて、無駄なシーンは見当たりませんでした。例えば、目撃者がビラを受け取るシーンとか。その場で「私です」とは名乗らないので展開が極めてスムースです。

最終評価「B」

劇中、いろんな人が裁判について語るので説明臭くなります。恐らく、周防監督は、集めた情報をもれなく吐き出そうとしたのでしょう。ただ、意外と喋らせ方に無理がありません。裁判オタクの発言もさらりとしていますし、司法修習生が裁判官に質問するシーンなどは、あらかじめ彼らが司法修習生であることをさりげなく説明するシーンが組み込まれているので違和感はありませんでした。これがないとお前誰だよ?となってしまいますから。

「それでもボクはやっていない」は、裁判制度の問題点を訴える上で、映画としては貴重な存在だといえます。これだけ警察や検察、裁判所をもを敵に回した映画はそうは見当たらないでしょうから。ただ、人の心が動かないので映画として物足りないのは確かです。話の内容が全く違うのですが「これでいいのか!」と強烈に観客を揺さ振った「ホテル・ルワンダ」のような強烈なインパクトもありませんでした。それは、登場人物の心が動くシーンがほとんどないからでしょう。特に主人公の金子徹平は、終始無実を訴えるも大きな心の動揺は仕草としてみてとれません。痴漢裁判は嫌だといっていた女性弁護士も、いつの間にか裁判に積極的になっています。この間の心の動きがはっきりとみられませんでした。

「それでもボクはやっていない」は、「踊る大捜査線」が官僚のキャリア、ノンキャリの壁を世に知らしめたように、裁判制度の問題点を指摘し、誰しもがこういうことに巻き込まれる可能性があることを紹介するという上では存在意義のある映画だといえるでしょう。内容の堅さからテレビではなかなか馴染まない映画だといえるでしょう。ただ、映画としてのインパクトにはかけます。資料集のような、ドキュメントのような性格の映画として、CinemaXではB評価になりました。エンターテインメント性は全くありませんが、決して退屈な映画ではないので、一度ご覧になることをお勧めします。観客動員が伸びるのも納得です。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成19年1月22日
劇場:シャンテ・シネ
観客数:100/224席
感涙観客度数:皆無

厳密に言えば映画ではないのと思うので、泣けません。前述の通り、周防監督は技術力が高い監督といえますが、何と言っても寡作であるのが惜しいところです。自分の経歴やアイデアに酔いしれるのはある意味では必要かもしれませんが、オリジナルにこだわらず、もう少し誰かの原作を監督してみると面白いかもしれません。

ちなみに、映画関係者の中では、彼のことを、谷口千吉監督に例える見方もあるようです。「谷口は、八千草薫と結婚して魂を吸い取られた」という人もいました。実際に結婚を機に映画界からは姿を消していますから。周防監督は、もともと作品が少ない人なのですが、谷口氏と同じようにバレリーナの草刈民代との結婚を境にダメになったといわれないよう、これからも精進したほうがいいのでは?と思います。今後に期待しましょう。

ついでに紹介!

洋物と和物。これだけで一生食えそうなのがうらやましい。

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