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November 26, 2006

プラダを着た悪魔

CinemaX第115回。

監督:デヴィッド・フランケル
製作総指揮:ジョセフ・M・カラッシオロ・Jr、カーラ・ハッケンほか
原作:ローレン・ワイズバーガー
脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
音楽:セオドア・シャピロ
出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラントほか
上映時間:110分
(公式サイトはここ

「階段オチ」

「プラダを着た悪魔」です。タイトルだけでは全くピンと来ない映画の割に宣伝はあまり行われていないようです。興行収入も出だしは良かったとはいうものの、いまいち観客数が伸びていないという声も。宣伝が行われない映画の場合は「宣伝するに足らない映画」あるいは「宣伝せずとも口コミで興行収入は増加する」という2パターンが考えられるのですが、全米興行収入で粘りをみせたことを踏まえると、後者の可能性が高いと思うのですが…いろいろと勘ぐりを入れたくなる「プラダを着た悪魔」ですが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

「プラダを着た悪魔」は、冒頭から洒落た感じが伝わってきます。ちょっと粗めで赤っぽい映像は、女性が好みそうな雰囲気です。この映画は、音楽が大きな特徴なのですが、U2、マドンナなどの曲がさまざまなところに効果的に使われています。思えば、キャストはメリル・ストリープ以外はお世辞にも一線級とはいえないラインナップなので、金をかける場所が違っているのかもしれません。これは、かえって長所になっているともいえるのですが。

映画、というよりはシナリオの重要な要素の一つに「主人公の登場はかっこよく」というものがあります。良い映画の多くが助演、脇役、チョイ役が脇を固めたうえで、満を持して主人公が登場するという流れになっているはずです。その点では、メリル・ストリープ扮するミランダの登場はあまりにもかっこよく、観客を映画に引き込むという大きな役割を果たしています。最近、地味な時代劇が派手に宣伝されていますが、主役と脇役をきっちり分けているという意味では、プラダを着た悪魔のほうが、より時代劇に近いといえるでしょう。

ターン1までの評価「A」

「プラダを着た悪魔」は、随所に見られる服やカバン、靴などのファッションも見物ですが、何といっても作りこまれたミランダのキャラクターが魅力的です。橋田壽賀子のシナリオを彷彿とさせるような脅威の長セリフ。長さだけでなく機関銃を撃ちまくるような勢いがあります。もう一つ、野暮ったかったアンドレアの垢抜さ加減も見物ですが、これは女性の変身願望を満たすとともに、何となく男心を惹きつける要素ではないかと思うのですが。メガネを取って大変身するクラスメートを見るような感じです。

「プラダを着た悪魔」は、ネタバレにならないよう説明すると、上司に絶対服従してペコペコするのを嘲笑していた会社に飛び込んだ、いわばミイラ取りともいえるアンドレアがミイラになっていく話です。ただ、全体が軽めなので「観やすい・分かりやすい」という長所がある反面、「薄っぺらい・軽い」という印象が残ってしまいます。特にアンドレアの階段の上り下りで感じるギャップとかを深く描くと、もっと見応えのある映画に仕上がったのかもしれません。

ちなみに、ここで説明する階段というのは、そこらへんの階段ではありません。人間はそれぞれステイタスという階段に立っているのですが、人生の何度かは上ったり下ったりしなければならない瞬間が訪れます。映画でもサクセスストーリーに載ったヒーローなりヒロインが、恋人とのギャップが埋められず別れてしまうという話がよくあります。実際にもスポーツ選手や芸能人の多くもステイタスが上がるにつれ、一般人の恋人や妻と別れるというケースをみかけます。理由はよく分かりませんが、階段を上がりすぎたことによるパートナーとのギャップが埋められなかったことも大きいのかもしれません。

そのアンドレアは、映画の中で何段か階段を上らなければならないシーンが出てきます。そのうちの何回かは、冴えない恋人のことを思い、踏みとどまります。初心を忘れないということで、これは立派だと思うのですが、恋人がそんなに魅力がないというのが致命的です。貧しくても向上心があるとか、地味でもとびきり優しいとか、下手をすると人生を大きく左右するイベントに何度も直面している恋人を踏みとどまらせるほどの器量が伝わってこないのが残念でした。「そんなこと説明しなくてもいいだろう」という人もいるかもしれませんが、劇中で漫才がちっとも面白くないのに劇中の観客だけが大笑いしているのと同じ。リアルな観客にも何かを訴えるような工夫が必要なのではないでしょうか。

ターン2までの評価「B」

「プラダを着た悪魔」の長所はほかにもあります。シナリオにおける重要な要素である「省略」です。アンドレアは、名のある記者(編集者?)に書いた原稿を見せてみてと言われ、実際にそのシーンはないのですが、ちゃんと話の中には自然に組み込まれています。彼女は終盤でにっくき上司、ミランダのために心から奔走するのですが、この間でも無理すれば組み込むことができたはずのシーンがいくつかあるようです。こういったシーンは、スムースにストーリーが進むのでしょうが、テンポが落ちるという両刃の剣のようなものなので、注意しなければなりません。つまり、良い映画ほど余計なシーンが少ないといえますが、「プラダを着た悪魔」は、ストーリーはともかく、無駄なシーンはほとんどないといえるでしょう。良い映画の要素の多くが取り入れられています。

さて、終わり方です。原作モノなので、本筋を変えるわけにはいかなかったのかもしれませんが、これが理想の終わり方なのかな?と感じる部分もありました。ここから先は、ネタばれになるかもしれないので、鑑賞後に読んでいただきたいのですが、アンドレアがわざわざ一旦上った階段を下りて元のステイタスに戻るほどの動機やきっかけがあったかどうか疑問です。前述の通り恋人が物凄く魅力があるわけではありませんし。映画を通して感じるキャラクターはその方向に向かいたがっていないのに、原作に合わせて無理矢理着地点に持っていったというような感じです。例えば、ミランダは後任に自主的に編集長のポストを譲り、自分は今度こそ家庭を守ろうとしたという180度転換したような終わり方にしても面白いのかもしれません。

最終評価「A」

中だるみがあるのは否めないですし、アンドレアの最後の行動は無理矢理な感じもしましたが、最後はミランダが彼女を認めていたというエピソードは日本人好みなのかもしれません。アンドレアに出会ったことで、変わっていないようでもどことなく変化のあったミランダと、変わったものの元の場所に戻ってきたアンドレアは、それぞれの心境に変化があったとみることが出来るでしょう。そう考えると、良い映画としての多くの要素を備えた作品と評価出来ます。

「プラダを着た悪魔」は、軽いがゆえに手軽に観ることが出来ますし、いろんなファッションが楽しめるという点で、デートの時に観る映画として最適かもしれません。それほど悪い人も出ないので毒もありませんし、何よりも元サヤに戻るという点で、安心して映画に誘うことが出来ます。また、アンドレアも絶世の美女というわけではないので、より多くの女性が感情移入することが出来るでしょう(宝塚時代の鳳蘭という声も)。欲を言えば「プラダを着た悪魔」というタイトルがどうにかならないものかと。何だかタイトルで損をしているような気がしてなりません。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成18年11月25日
劇場:ワーナーマイカルシネマズ板橋
観客数:30人/296席
感涙観客度数:不明
※各ターンは個人的に設定、感涙観客度数は場内の鼻すすり音で推定。

ついでに紹介!

サントラを買うのは「海の上のピアニスト」以来です。

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Comments

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