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October 07, 2006

地下鉄に乗って

CinemaX第106回。

監督:篠原哲雄
原作:浅田次郎
脚本:石黒尚美/脚本協力:長谷川康夫
音楽:小林武史
出演:堤真一、岡本綾、常盤貴子、大沢たかおほか
上映時間:121分
(公式サイトはここ

「大沢たかおの堤真一食い」

近日公開の地下鉄に乗って、試写会に行ってきました。地下鉄の部分は「メトロ」と読みます。貴男を「あなた」のような感じです。一般的にルビをふったり、地下鉄(メトロ)に乗ってと表記するようです。「ちかてつにのって」だと、都営地下鉄に乗っているような感じになりますから。原作は「鉄道員」の原作でもある浅田次郎です。言うまでもなく鉄道員は「ぽっぽや」と読みます。そう読むことで高倉健の枯れた表情が浮かぶはずです。「てつどういん」と読むと若き日の渥美清が出ちゃいそうになりますから。ちなみに、浅田次郎の原作は読んでいません。ちなみにCinemaXは原作を読んでいても読んでいないと仮定して、シリーズものなら前作を観ていないことを仮定して評価しますから、問題はないでしょう。

堤真一主演の一昔前の日本を回顧する映画といえば、「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画を思い出します。ということは、ここ最近、とりあえず良いとこどりすれば、後追いでもヒットするだろうという安易な考えで映画を作っている東映の映画かなと思ったら、松竹でした。東映のお株を奪う新鮮味のなさに脱力です。とはいえ、大手広告代理店が絡んでいますから、テレビ朝日以外の局でも派手にPRを行い、強引な集客に走ることが目に浮かびます。内容が伴えば問題はないと思うのですが。

さて、序盤は懐古趣味満載の映像が続きます。これは、三丁目の夕日と同じ。試写会独特の安っぽい雰囲気もあいまって、周囲のおばちゃんからは「そう、そうなのよ」「半蔵門線はもっと後よ」などという話し声が飛び交います。主人公の真次は、赤坂見附の出口から外に出ると、何故か新中野駅前に繋がるということに、最初は慌てながらもすぐに納得してしまいます。どうして?怪しい昔の恩師に出会ったから?観客に対して不思議の世界に入ったから、おとなしく観ていろとでも言わんばかりです。

ターン1までの評価「C」

登場人物たちがどういう人間なのかもなかなか掴むことが出来ません。少しづつ説明がなされて、後になると分かるようになるのですが、これは最初のうちに行わないと、いくら人物が行動しても「誰これ?何してるの?」とさっぱり頭の中に入りません。岡本綾演じるみち子も、後にならないと長谷部と不倫関係であるとは分かりませんし。原作を読んでいればのような問題はスルーしてもいいのでしょうが、観客の全てが原作を読んで足を運んでいることはありえませんから、このあたりの説明をしっかりしてもらいたいものです。

セリフも問題です。状況を説明するだけのセリフ、くさいセリフのオンパレードです。特に真次が若き日の父親に逢うシーンも、2人はあっという間に仲良くなってしまいます。親子だから通じるものがあるのだろうと思えなくもないですが、こういう時こそセリフの力が生きてくるはずです。おまけに登場人物のテンションもバラバラ。映画全体のテンションもバラバラです。シリアス、コメディのどちらかにシフトして、時に反対の雰囲気のシーンを盛り込むならいいのですが、どちらも入り組んでいるので、そのシーンで笑っていいものか、感動しなければいけないのか、混乱してしまいます。

ターン2までの評価「C」

この映画の見所は、真次の父、小沼佐吉(アムール)を演じる大沢たかおの演技です。主役2人のタイムスリップの傍らで小沼佐吉物語といってもいいぐらいこの人物の人生が取り上げられます。出陣に燃え、終戦後の混乱を経て誰も信じることが出来なくなった彼の生きざま、あるいは男から父親に変化していく佐吉の心境の変化などを大沢たかおが見事に演じています。堤真一も大物なのでそれなりの演技をしますが、まさに主役食い、大沢たかおの堤真一食いがここに完成しています。

父親の別の顔をクローズアップするという点では、原作はきっと面白いのでしょう。同じ一人の人間が、自分を子供に持つ前、もっともっと前の若き日の姿を追い、直接的に会話をするために地下鉄を利用したのは非常にユニークといえます。たった数分で何十年も経過してしまう恐ろしい歌「グリーングリーン」に通じるものがあります。原作の出版から映像化まで10年以上開いているのは、東京メトロ(東京地下鉄)が帝都高速度交通営団という小役人たちの会社であったため撮影許可が降りるような状況になかったのかもしれませんが、映像化は無理だと考えられていたのではないでようか。作って流行る映画なら、鉄道員の二番煎じとして早々に登場していたはずですから。恐らく、三丁目の夕日のヒットが遠因となっているのでしょう。

最終評価「B」

終盤の衝撃のシーン、ここがが一番の見どころでもあります。これで良いのか?と叫びたくなるぐらいの結末。これがないと、パンチのない映画になっていたことでしょう。それだけ原作が秀逸だったといえますが、母親と同じ恋愛をして、ある行動を起こして消えていったこの登場人物のことを考えると、胃がキリキリと痛くなりました。これから原作を読んでみようと思いますが、映像化の過程でもう少し頑張るともっともっと良い映画になったのかなあと思うと残念でたまりません。

鑑賞日:平成18年10月3日
劇場:草月ホール(試写)
感涙観客度数:多数
※各ターンは個人的に設定、感涙観客度数は場内の鼻すすり音で推定。

ついでに紹介!

テレビ局や広告代理店が「映画っておいしいものだね♪」と再び味をしめてしまった「ALWAYS 三丁目の夕日」加えて本文中で紹介した「鉄道員」「喜劇 急行列車」最近特に勢いを増す邦画の乱発が本当に心配です。

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