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September 26, 2006

時代のうねり

先日のNHKスペシャル「東京カワイイ★ウォーズ」 は、NHKっぽくないタイトルにも驚きましたが、内容も非常に興味深いものでした。一方は東京ガールズコレクションに代表されるリアルクローズというものの台頭、他方、マンネリ化が目立つ従来のファッションショー、東京コレクションの変貌に向けての動きを取材していました。僕はファッションに特に興味があるわけではありませんが、アパレル業界におけるこれだけの大きな動きを全く感じていなかったので、ちょっとショックで、老いすら感じてしまいました。

リアルクローズといっても、若い女性がその辺で着ているもので、それを東京ガールズコレクションなどの会場で人気モデルが着て、歩いて、それを見ながら携帯電話でその服を直接購入出来るという激流のような物流システムです。一方で従来のファッションショーは、業界関係者やマスコミを集め、披露された商品の中から好評だったものを数ヶ月から一年後に商品化されるという流れです。開発技術が後に実用車に反映されるF1みたいなものでしょう。一見、リアルクローズとは対極にあるように思えます。

番組には、アルバローザのオーナーも登場していました。ハイビスカスの柄が特徴で90年代頃から人気が爆発したアルバローザは、2000年以降に下降線を辿り始め、その後ヤマンバギャルが好んで着るようになり、最後はセンターガイと呼ばれるセンター街周辺に出没する若い男が好んで着たことでイメージダウンに拍車がかかったといわれています。ショップも閉鎖されていましたが、リアルクローズのブランドとしてインターネット上で販売を開始しました。

アルバローザのオーナーは「服は、仕立ての良さで選ぶものだが、今の流れは違うようだ」といった旨の発言をして戸惑いを隠せずにいました。仕立て云々より、今着たいものをすぐに着る、そういった女性が、渋谷109周辺に、そしてネットを通して全国に広がっています。一方で旧来のデザイナーはこの流れに苦い顔をする人も多いようですが、それも当然といえるでしょう。過去の歴史からみても、新たな流れに乗って成功した例、そのまま遭難してしまう例もありますから。

それは、アパレル業界のみならず、例えばスピードスケートのスラップスケートとか。1998年の長野五輪で採用されるかされないか注目されましたが、見事にスラップスケートに乗り換えた清水宏保選手が金メダル、一方で堀井学選手は後塵を拝してしまい涙を呑みました。新たな流れに対し、選手やコーチの先見性が問われた例の一つといえるでしょう。

リアルクローズは、同年代の女性がデザインをして商品を売り、それを同年代の女性が着るケースが多いようです。つまり、自分たちが着たいものを作って着ているという状態に近く、売れるのも当然といえるのですが、業界は必ず成長し老齢化します。街に蛯原友里、押切もえなど人気モデルのコピーで溢れかえってしまえば、別のセンスを追い求めるようになるでしょう。また、今後、リアルクローズに関わる人々も適当にリフレッシュされていかなければ、このブームも終わってしまうでしょう。何よりも人間は歳を重ねています。20代の女性はいつまでも20代ではないのですから。

出演者のほうが一方的に増えることも心配です。リアルクローズでは、次々と登場する人気モデルが着た服は即、完売するそうです。一昔前は、街に浜崎あゆみのようなメイクやファッションをした女性で溢れかえっていました。好みのタレントにリスペクトして、その先は自分でアレンジするならまだしも、そっくりそのまま、誰が見てもあの芸能人に似ているというようなファッションに徹するのはあまり意味がないような気がします。例えば舞台は、観客に比べ圧倒的に少ない出演者が舞台に立ち、演技をすることで成立します。観客の大半が舞台に上がってしまえば、成立しません。最近、アイドルがチープになっているのは、この構造に似ています。誰にでもチャンスがあるのは素晴らしいことなのですが、基準が緩すぎると緊張感が欠けてしまいますから。

リアルクローズのこの大きな流れは、同じような服を着た女性で街が飽和状態になる前に、適当にデザインをゆさぶり続けられるかというところがポイントになりそうです。女性たちはセンスで「かわいい」とか「ダサい」と感じながら服を選ぶのですが、このデザインのゆさぶりを産んでいるのは、実は旧来のデザイナーだったりします。デザイナーがファッションショーなどで発表したデザインが後に商品化され流行を産み、その流行に乗るかたちでリアルクローズが開発され、売られる。新旧のファッションの流れは、相反するようで実は切っても切り離せない関係だということが分かります。

一方、旧来のファッションショー、東京コレクションは今年から開催時期を前倒ししました。ここ最近、世界に評価されるような若手のデザイナーが育っていないことに対し、国がバックアップする動きもあるようです。これは、デザイナーが飽和状態になったり、若いデザイナーが生煮えのまま裏原宿なんかに店を出してしまい、それ以上才能を発揮しようとする土壌が少ないということも考えられます。都内に店を出すとそこそこ売れてしまうのも問題なのかもしれません。あるいは、業界全体の老齢化を意味するのかもしれません。今後、業界に必要なのは、リフレッシュ、ゆさぶり、そして、スピードなのかもしれません。

ちなみに先日、デパートにスーツを買いに行きました。ここ数年は同じブランドのスーツを着ているのですが、前回に買った3年前に比べ、販売形態が著しく変化していました。以前は、既製品をアレンジするにはせいぜい胴回り、裾などの長さを変える程度なのですが、今では出来合いの商品を買おうとしても、胴回りからポケットの形態、ズボンの太ももの太さなど微調整が可能です。しかも価格は以前とほぼ変わりなし。

もちろん以前から、既製品をベースに微調整が加えられるイージーオーダーというものが存在しましたが、まだまだ一般的な買い方ではありませんでした。それが数年でイージーオーダーそのものがスタンダードになったということになります。僕は、この変貌振りに少し戸惑ってしまいました。

その背景には、1万円台、あるいはそれを下回る価格水準で勝負してくる紳士服チェーンの台頭があるのでしょう。一方で最近は紳士服チェーン同士の敵対的買収などが話題になりましたが、この先、少子高齢化、そして団塊世代の退職ということでパイは減少してきます。価格だけでなくサービスを含めたデパートの紳士服売場の高級化戦略は、紳士服チェーンに対し差別化を図るという意味があるのでしょう。

新たな流れが発生した時、流れに乗るか乗らないかで運命は変ってきます。前述のスラップスケートのほか、V字ジャンプなども導入時どのタイミングで流れに乗るかで選手の明暗が分かれたのも記憶に新しいところです。一方で流れに乗るばかりが良いわけではありません。偽計疑惑が発覚する前にライブドア株を購入した人が大損したような例もありますから。

いずれにしてもリアルクローズは、興味のある動きだといえます。

NHKスペシャルは、本日深夜にも再放送されるようです。
Marukyu

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Comments

Remarkable! Its actually remarkable paragraph, I have got much clear idea on the topic of from this piece of writing.

Posted by: best dating sites | January 16, 2015 at 08:41 PM

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