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September 29, 2006

日本以外全部沈没

CinemaX第104回目。

監督:河崎実
原作:筒井康隆
原典:小松左京
脚本:右田昌万、河崎実
音楽:石井雅子
出演:小橋賢児、柏原収史、藤岡弘、村野武範ほか
上映時間98分
(公式サイトはこちら

「失速」

日本以外全部沈没が映画化されました。先にリメイクされた日本沈没に便乗して堂々と封切られました。映像化は不可能…というより誰も手をつけないだろうといわれていた筒井康隆の名作ですが、CinemaXでの評価やいかに。

筒井康隆の作品は、かなりまともに書いたもの、ふざけているもの、の2つに分かれます。大阪万博を思い切り茶化した「深夜の万国博」やカミュの「ペスト」に対抗して書かれたノーパンの女性がウンコを漏らしてしまう凄い話「コレラ」などふざけた話が大半なのですが、それでいてどれも大真面目に書かれているので読み応えはあります。
たまにみかけるまともな話…「時をかける少女」や「七瀬ふたたび」などのいわゆる七瀬三部作は映像化されています。小説の多くがSFの部類に入るのでしょうが、星新一のような真っ当なSFとも違います。なかなか映像化されにくいのは、一説には筒井氏本人が小説を書き進めていくうちに「この話は映像化されてしまうかもしれない」と思い、エンディングをメチャメチャにしてしまう癖があるとかないとか。いずれにしても短編小説を90分以上もどうやって引き伸ばすことが出来るのか、注目したいところです。

具体的なストーリーは、例によって公式サイトや他の映画批評サイトをご覧頂きたいのですが、日本以外全部沈没は、一言で説明すれば日本以外の殆どが沈没した地球(ヒマラヤなどの一部高山は残り野蛮人が住んでいる)において、アメリカなどから大挙して避難民が押しかけるという話です。欧米に対し劣等感が強い日本人がこの世界ではやたら威張っていて、事あるごとに戦争責任だのと叫んでいる中国、韓国も、映画の中では「ソンナコトハワスレタヨ」と言いペコペコしています。ある意味「太陽」より過激なのかもしれません。それでも笑い飛ばせるのが、筒井マジックなのでしょう。

ターン1までの評価「A」

この映画において、欧米が日本にひれ伏すという普段とはあべこべの設定は、笑いをもたらします。寅さんが家族や近所の人々、はたまたお偉方を説教する構図に似ています。このあべこべを活用して、この映画は序盤はグイグイ飛ばします。セリフなどで仕掛けられた笑いも筒井テイストに近く、アメリカ人妻が風呂に沈めばアメリカが沈んだ、ラーメンが川に落ちれば中国が沈んだ、フランスパンが落ちればヨーロッパが沈んだ、など巧みなモンタージュ(?)が用いられ、大掛かりなCGを使わずに日本以外が沈没していることを説明しています。音楽も打ち込みのようなチープな雰囲気で、安上がりな映画だなと感動すら覚えます。

日本以外全部沈没には藤岡弘、と村野武範が出演しています。藤岡弘、は1973年の日本沈没の主人公、総理大臣の村野武範はテレビ版の主人公という、2人の主人公を脇役で引っ張り出すあたりは、リメイクされた日本沈没よりも正当な流れを汲むのではないかと錯覚してしまいそうです。ちなみに、リメイク版の日本沈没は草なぎ剛と柴咲コウに焦点を当てすぎて沈没してしまった印象が強いですが、オリジナルの日本沈没をいざDVDで観返してみると、実はオリジナルのほうが無茶苦茶で、エンディングに向かってストーリーが破綻していくという物凄い映画でした。

ターンBまでの評価「C」

さて、本編は中盤あたりから失速してきます。センスが感じられた笑いもゴリ押しのようになって、食傷気味になってきます。銀河鉄道999に潜り込んだものの、環境の変化に耐えられず全滅したミュータントの子供達みたいです。物事にはやはり限界があります。特にドラマの部分は極めてチープで、恐らく全編30分ぐらいで充分なところを90分以上も引っ張るのですから、相当に無理があります。それを田所博士を演じる寺田農の怪演や外国人タレントの奇妙な歌で引っ張りまくっているので、かえって痛々しさすら感じられました。

最後は、ロウソクの炎で強引に終わらせます。ウクライナの絵本を引っ張ってきたのは、作り手の努力を感じますが、ネット上の映画批評で「感動した」「泣いている人が多かった」というのは、どうしても信じがたいのですが。日本以外全部沈没は、劇場で観ても特に迫力があるわけではないので、DVD化されてから観ても充分ですが、前半のバカさ加減はかなり面白いので、興味のある方はどこかのタイミングでチェックしてみるといいでしょう。小橋賢児、柏原収史は何だか久々に見るような気がしますが、意外にいい顔になっていますね。特に最近、グラビアアイドルとの熱愛が噂された柏原収史は兄以上にいい味出してます。

最終評価「C」

映画としてまあまあですが、やはり邦画の乱発が気になります。最近の映画人気を反映して、製作委員会方式で映画を作ろうとすると、作る前から資金が容易に集まります。ファンドもしかり。それをモーニングショーやレイトショーで短期間でも上映されれば、劇場公開作品として箔がつき、DVD化されます。それはたとえ個人が買わなくとも、レンタルDVDチェーンなどは無理矢理でも買わざるを得ないので、一定の収入が見込まれます。最近の邦画は、この安易な金儲けに走るケースが多いらしく、供給過剰の状態にあります。

未見ですが「通勤電車で座る技術!」というハウツー本まで映画化され、間もなく封切られようとしています。長く斜陽の時期にあった邦画が元気になり、本当に面白い映画が供給されるのは歓迎ですが、テレビドラマで済むような映画や韓流映画も真っ青の下らない映画を乱発しすぎて、せっかく劇場に足を運ぶお客さんを騙すようなことはしてもらいたくありません。それはマイナーな映画だけでなく、大御所の息子である素人監督が作ったアニメ映画などメジャーな映画も同様です。本当に心配です。

鑑賞日:平成18年9月25日
劇場:シネセゾン渋谷
観客数:30/221席
感涙観客度数:不明
※各ターンは個人的に設定、感涙観客度数は場内の鼻すすり音で推定。
最後は泣けたという声も聞きますが、個人的に泣けるシーンは皆無だと思います。

ついでに紹介!

「日本以外全部沈没」原作とイチオシ「革命のふたつの夜」こちらは入手困難か。

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Comments

好きな作家の映像化作品は、愛するが故にあまり観たくない私。特に筒井康隆はあの文体があってこそだと思うので余計にです(京極夏彦原作の『姑獲鳥の夏』は酷かった)。あと『富豪刑事』が深キョンてのはないよー。そんなわけで『ハイスクール奇面組』アニメ化におもいっきり介入した新沢基栄の心意気には拍手。
「『通勤電車で座る技術!』というハウツー本まで映画化され」るのであれば、私はしりあがり寿の『流星課長』のほうの映画化をつよく望みます。

Posted by: ぷれべる | October 01, 2006 at 02:00 AM

原作モノの映像化は、まさに賛否両論渦巻くので、作り手には覚悟が必要ですよね。少し前のほぼ同じ時期に映画化された、限りなくオリジナルを忠実に再現しようとしたキューティー・ハニーと、原作なんかどこ吹く風のキャシャーンは好対照ですね。結果的にキューティー・ハニーは冒険せずに地味だと評価する批評家もいるわけで…人の評価は分からないものです。

Posted by: yu-world-master | October 01, 2006 at 10:20 PM

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