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May 03, 2006

グッドナイト&グッドラック

CinemaX第85回。

グッドナイト&グッドラック

監督:ジョージ・クルーニー
出演:デヴィッド・ストラザーン、ロバート・ダウニー・Jr、パトリシア・クラークソンほか
上映時間:93分
(公式サイトはここ

「アンデルセンの犬」

前評判が良いのか悪いのか分からない「グッドナイト&グッドラック」です。オーシャンズ某で金を稼ぎ、自分が作りたい映画を作って金を食いつぶすシステムを確立しているといわれるジョージ・クルーニー監督作品。平成18年5月1日現在、TOHOシネマズ六本木ヒルズしか放映されていません。単館映画の一種ともいえますが、今までの経験で単館映画とは①意外なところから掘り起こされてきた名作②面白くないから結果的に単館映画になった③配給会社が弱い④映画の内容などを理由に単館上映せざるをえなかったの4つに分類できるようです。

①は、少し古い映画なのが難点ですが「ククーシュカ」など。「シュリ」も当初は「こんな映画当たらない」と大手の配給会社に見向きもされなかったという点から、ここに当てはまるでしょう。②は、そこらへんにゴロゴロしています。③は、邦画系に多いようです。名作はあまり多くないような。④は、「ホテル・ルワンダ」こういう映画を抹殺しようとすた大手の配給会社は猛省すべきでしょう。単館系では、アメリのように面白いか否かはともかく宣伝方法により大化けした映画もありますが。イッセー尾形が昭和天皇を演じた「太陽」がもし、日本で上映されるとするならば、④のような単館上映になるでしょう。

果たして、グッドナイト&グッドラックはどのタイプの単館映画なのか、考えてみましょう。

グッド…は、全編モノクロです。カラーが主流の今、あえてモノクロにするにはそれなりの意味が必要になります。彩色を観客に一任するモノクロは、今の映画においては飛び道具のようなものですから。ラジオは視聴者それぞれが頭の中に映像を再生するため、ドラマにいては究極の表現方法といえますが、モノクロはそれに近いものがあります。黒澤映画もカラーになってかえって迫力を失ったとの見方もありますし。もちろん、自主映画のように「何となく」というのは理由になりません。

映画の舞台は、赤狩りが全盛だった1950年代のアメリカです。共産主義者や彼らと少しでも関わりのあった人間を次々にあぶり出すという恐ろしい時代は、今も様々なところでシコリを残しているようです。ハリウッド関係者の赤狩りもしかり。今でこそ信じられませんが、当時は共産主義というものが恐れられていたことが分かります。僕は冷戦時代の末期しか知りませんが、あの頃の日本でもソ連は何を考えているか分からない怖い国だという印象がありました。

治安警察の取締りにも似たマッカーシー議員の行動に疑問を抱いたテレビマンたちが彼を糾弾するという内容の映画なのですが、周りのテレビ局はタッチーな問題に出来るだけ関わらないように娯楽番組の製作に終始したり、スポンサーの広告収入を気にして及び腰になるという、今の日本にも共通するような問題を提起しています。インターネットの普及で、一般市民は様々な情報を入手できるようになりました。その結果、報道に偏りがあると「おかしいぞ」と疑問を抱く人も増えました。

公平中立な報道を目指すマスコミも多いのですが、良く考えてみると、広告収入に頼る部分がある限り、果たして本当にそんなことが実現するのだろうかと疑問に思います。バラエティで競合するメーカーの製品が映るとボカシが入っていたり、「ラヂヲの時間」で誇張されていましたが、スポンサーの顔色を伺ってドラマの内容を変えるというのは、結構あるようです。例えば、脚本では「家なき子」で車に跳ねられるシーンがあったのが、スポンサーが自動車メーカーということで交通事故は不味いということになって、結果的に「音だけ」ということになったと聞いたことがあります。視聴者はそんなシーンが入ろうと気にする人はごく僅かでしょうから、もはやスポンサーがケチをつける部分を探しているだけとしか思えない状況です。これで報道は公平中立というのは…大丈夫なのですかねえ。

ターン1までの評価「B」

映画は、テレビ局の中、家の中、バーなど常に密室で展開します。それだけに、モノクロというのは慣れないので疲れます。観客にそこまでの苦痛を強いるほどの内容があればいいのですが、どうも展開が薄っぺらいような気がします。議員を批判する放送を「考え直せ」という連中もいるのですが、放送を強行するとどうなるかとかをシーンなりをセリフで説明しておかないと、なんだか締まらないような感じがします。

当時は大統領よりも影響をもっていたともいうべきマッカーシー議員を糾弾するというのは、勇気ある行動だといえるでしょう。日本のマスコミに置き換えると、果たしてそこまでの意気込みがあるかどうか。最近は中央官庁や公益法人などの無駄遣いを糾弾していますが、これは、相手の顔が見えないので簡単なことです。一般会計と特別会計のいびつな構造なんか、以前から分かっていたくせに、今さら鬼の首をとったように取り上げ、庶民の味方の振りをするのは調子が良すぎるような気がします。糾弾するのなら、これからどうすればいいのか、少なくとも問題を提起すればいいのに、そんな面倒くさいことはやりません。

最終評価「B」

扱っている問題は大きいのに、限られた空間で映画が展開するからか、「ちっちぇー!」という感じが否めません。途中自殺する人物がいるのですが、主人公はこのことを最後まで悔やんでいたという割には、なあなあに話が流れてしまいます。映画を面白くする要素である「あーあ」感が観客の側に微塵も感じられないのが残念です。シリアナもそうですが、面白いところに目をつけるのに、掘り下げが足りずに中途半端に終わってしまう…グッドナイト&グッドラックも同じような印象です。欲張りな犬が肉を加えたものの、水溜りに自分の姿を観てしまい、肉を落としてしまう感じに似ています。いろいろなものを追いすぎているのかもしれません。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成18年5月1日
劇場:TOHOシネマズ六本木ヒルズ
観客数:260/265席
感涙観客度数:不明

ほぼ満席!ファーストデー恐るべし!

目の付け所はいいものの、掘り下げが足りないシリアナ。CinemaXレビューはこちら

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