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May 29, 2006

明日の記憶

CinemaX弟91回。

明日の記憶
監督:堤幸彦
出演:渡辺謙、樋口可南子、坂口憲二、吹石一恵ほか。
上映時間:122分
(公式サイトはここ

「長嶋巨人」

予告編を観た時、「東映がまた、しでかした」と思った「明日の記憶」です。セカチュー以降乱発された不思議系感動モノの映画の最後塵を拝した「四日間の奇蹟」、アカデミー賞にノミネートされ箔のついた渡辺謙と吉永小百合を担ぎ出して、セカチューの監督を起用してどうにかなるだろうと思ったものの、どうにもならなかった「北の零年」など、最近の東映は周りに迎合して映画を作り、後追いである故に時期外れに公開する傾向にありました。それでも大失敗と批判されないのは、空前の映画ブームだからといえるでしょう。分母が大きければ、ダマされて観る人も増えるわけですから。

明日の記憶も同じです。不治の病に侵されて、周囲の人間とのやり取りを通じて観客を感動させる…韓流映画を含めて最近の流行の一つといえるでしょう。それを今?何故?という疑問ばかりが残ります。おまけに渡辺謙を起用し、監督は職人、堤幸彦です。キャストと監督をそれなりの人にすれば、どうにかなるだろうという安易さが見え隠れするのでさらに腹が立ちます。とはいえ、使い難い株主優待券を使い切るには、この映画を観なければなりません。

映画の内容は予告編そのまま、若年性アルツハイマーに襲われた中年サラリーマンと、妻を中心とした周囲の人間との関わりを描くものです。それ以上は何もありません。ただ、このシンプルさが、意外な効果を発揮してしまいます…キャストの演技力です。特に、渡辺謙の鬼気迫る演技はあまりにも強烈です。どうして安易に告知してしまうのかという点は少し疑問ですが、それを知った時の渡辺謙の壊れようには驚かされます。生死の境をさ迷った人だからこそ、こういう演技が出来るのかなと思いました。叫ぶだけなら誰だって出来ますが、それにずっしりと重みが加わる…とにかく凄すぎます。

渡辺謙までとはいかないまでも、香川照之、大滝秀治など周囲の俳優の演技力も目立ちます。特に妻を演じる樋口可南子は、こんな良い女優だったかなあと悩んでしまうほど。観る前からボロカスにこき下ろしていた自分に反省です。少しだけ。

ターン1までの評価「B」

広告代理店でバリバリ働いていた主人公は、若年性アルツハイマーを煩ったばかりに最前線から少しづつ後退していきます。自分の責任ではないのに、病気になったばっかりに仕事の失敗を繰り返し、閑職に飛ばされ、退職を余儀なくさせられます。この凋落があまりにも痛いです。何故、すぐに辞めなかったのか、娘の結婚式で訪れる難題をどう克服するのか、決して派手な展開ではありませんが、見応えはあります。渡辺謙の演技はもちろん、クライアントの社長(?)を演じる香川照之の演技もかなり渋いです。

この映画は、堤監督独特の職人的な映像が出てきます。CGを使いすぎるという批判もあるようですが、精神世界を表現する必要のある映画ですので、全く問題ないといえるでしょう。ナレーションに頼ることも出来ますが、あえて使わなかったのも評価できるでしょう。主人公のナレーションはナンセンスですし、妻のモノローグを入れてしまっては単なる介護日記になってしまいますから。

ターン2までの評価「B」

終盤の見所は、大滝秀治が2度目に登場するシーンです。「あれは何だったんだ」ということをしつこく考える人もいますが、あえてどちらでもいいやと放っておいてもいいのかもしれません。その後、エンディングなのですが、この映画はあちこちにバラまいた問題がちっとも解決していません。泣きながら夫の後を歩く妻の行動が、これからの終わりの始まりを意味しています。

このような道徳の教育放送のような終わり方で同じ悩みを抱える当事者や家族が救われるかは分かりませんが、若年性アルツハイマーを多くに人に認知してもらうという意味では、存在価値のある映画といえるでしょう。「明日への記憶」は、キャストの演技力に大いに支えられた映画です。何故今の時期にこういう映画を?という疑問は残りますが、一度観たら印象に強く残る映画の一つになることは間違いありません。

最終評価「A」

流行りモノを手当たり次第集めたのは、金と巨人というブランドにモノを言わせて選手を掻き集めた長嶋巨人のようです。ただ、強い選手が集っても、結局は首位独走とはいかないのが不思議なところ。明日の記憶も話題性を追い、強い俳優やスタッフを集めたものの、伝説の邦画になるとは限らないのに似ています。東映は大奥も映画化するようです。恐らく視聴率だけを観て、時代劇ならうちだと飛びついたのでしょう。懲りませんね。

ただ、明日の記憶は、この手の映画としては時期外れで内容も地味であるために「絶対に観よう」という気にはなれない人が多いかもしれませんが、観ると意外に収穫のある映画です。例えば、吸引力はないけれど、迷い込んだゴキブリはイチコロで殺す捕獲器のような感じ。親子や夫婦などで観るといいでしょう。きっと、家族に優しくしたくなるはずです。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成18年5月26日
劇場:丸の内TOEI
観客数:240人/262席
感涙観客度数:不明
※各ターンは個人的に設定、感涙観客度数は場内の鼻すすり音で推定。

ついでに紹介!

原作本など。

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