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April 21, 2006

子ぎつねヘレン

CinemaX第81回。

子ぎつねヘレン

監督 河野圭太
製作総指揮:迫本淳一
原作:竹田津実
脚本:今井雅子
音楽:西村由紀江
出演:大沢たかお、松雪泰子、深澤嵐ほか
上映時間:108分
(公式サイトはこちら

「出来杉」

テレビ番組などでも動物と子供にハズれなしといわれるように、観客動員数稼ぎの黄金比で構成されている映画です。奇しくもディズニー映画を諸手を挙げて賞賛する日本の映画ファンが多い中で、ほぼ同時に封切られた南極物語は、同じ動物モノでも日本人の好みに合わなかったのか、数等の犬を犠牲にして撮影したというダーティーなイメージを払拭できなかったのか、あっという間に轟沈してしまいましたが、子ぎつねヘレンは、ナルニア国物語とともに興行成績ランキング上位を突っ走っています。その理由は、映画そのものの実力にあるのか、ナルニア国物語と同様に根拠のない(個人的観点)ものなのか。
子ぎつねヘレンは、「深く考えて観る」か「何も考えずに眺める」かで評価が大きく変わります。つまり、アラを探すか、北海道の大自然やヘレンやその他の動物の可愛さを観るか。この映画を高く評価する人はきっと、後者なのだと思います(ただ、映像で大自然を見続けるのも疲れます、ほんとに)。CinemaXは、もちろん前者で評価していきます。

子ぎつねヘレンは、冒頭から違和感アリアリです。まず学校。北の国からを髣髴とさせる自然に囲まれた学校は、趣のある木造校舎ですが、モデルばりにスタイルが良くて綺麗な先生(本当にモデル出身ですが)が教壇に立ち、妙に垢抜けた生徒が学んでいます。都会のお洒落な私立高校がド田舎に突然、ドカンとテレポートしてきたような違和感です。漂流教室。他にも後になって関係がやっと分かる獣医と助手の関係、動物病院への道で登場する肌ツルツルの魔女(?)など水と油をくっつけたような設定が目立ちます。
特に不味いのが、主人公で猪瀬直樹のようなガキのセリフ。ナルニア国物語の末娘のセリフも最悪でしたが、この子もベラベラ大人びたことをしゃべりすぎ。そして、セリフの内容がクソすぎ。例えば「(早口で)それでもあなたはお医者さんですか?動物を助けるのがお医者さんの仕事じゃないんですか?ミルク飲めないからといって、生きる資格はないんですか?」と橋田壽賀子のような長セリフを言わせるのではなく「助けてよ!お医者さんでしょ!」だけですみます。消防署に電話して「火事だ!」と叫びながらも冷静に郵便番号から伝えようとするようなもの。場違い。だいたい「地軸」という単語を使ってあっさりと比喩をする小学生が、そこらじゅうにゴロゴロしているか??

ターン1までの評価「C」

違和感の最たるものが、一眼レフを初心者ながら全くブレなく撮影するガキ。デジカメでもなく、オートフォーカスでもありません。何一ついじらずシャッターを切るだけで、プロ並みの写真が撮れるとは!親は確かにカメラマンなのですが、それだけでは説得力がありません。設定の問題というより、スタッフが全くその問題に気付かなかったのでしょう。それとも観客は気付きっこない、とでも思ったのでしょうか。確かに、大半の人がそうかもしれませんが、いい加減な設定に気付いた人々の小さな違和感は感情移入を妨げます。ド田舎に降って湧いたような学校といい、子供らしくないせりふといい、作りが雑すぎるような気がします。
子ぎつねヘレンは、欠点ばかりではありません。特に、きつねと、ガキと、獣医の娘という、似たような境遇の2人と1匹の存在。無茶ばかりするガキに少しづつ心を開いていく獣医の娘。ガキのおかげで変わりかけていた父娘など見所は、映画に重要な登場人物の心の変化には欠かせない要素だといえます。ただ、回復しそうだったダメ映画への傷は、陳腐などんでん返しでガキの母親が現れたことで、せっかくの傷が化膿していってしまいます。この母親は、疑惑の何点セットかをフイにしてしまった、偽メールのような存在です。

ターン2までの評価「C」

子ぎつねヘレンは、ガキとキツネにやがて訪れる別れを予感させながら、物語を盛り上げるという美味しい設定が生かされるチャンスがありながら、自らそれを放棄しているような気がします。特に後半の「ヘレンに夏を見せたい」というガキの思いや行動は、大きな感涙ポイントになるチャンスがありました。そのシーン自体は悲しいものでしたが、遅きに失した感が否めません。
この映画は、終わり方を考える必要があるでしょう。キツネが死んだところで終わるのが一番あっさりしていると思うのですが、その後も涙を拾おうとする下心アリアリの中途半端なミニドラマが乱発されていきます。これは、主人公であり、タイトルにさえ扱われているキツネが死ぬと言うのが、どれぐらい重要であるかということを、監督が製作しているうちに忘れてしまったのでしょう。例えば、水戸黄門で光圀が刺し殺されたのに、翌週も平然と残りのメンバーが旅を続けているようなものです。黄門様が死んだのなら、世直しの旅は意味を失くす訳ですから「格さん嫁探しの旅」や「八兵衛うっかり食いしん坊万歳」とか照準を変えなければストーリーが成り立ちません。
子ぎつねヘレンも、キツネが死んだ後にダラダラと話を進めるのなら、その死に際して、登場人物がどういう行動をするか、どういうセリフを言うかに気を使う必要がありますが、それだけの期待や責任を背負っておきながら、登場人物たちは、特段目を引くセリフを吐くこともなく、獣医と母親が「くっついちゃう?」というハリウッド映画のような軽ーい人間関係が構築され、大団円に終わってしまいます。ガキほったらかし。
後日、ガキがヘレンのオリに他の動物を入れることを認めるというのは、ガキがヘレンと決別をし少しだけ大人になることをあらわしていて、ちょっと小洒落ているシーンだなと思いました。このように主人公のガキは、結構味のある行動をするのですが、セリフでベラベラ片付けてしまうという欠点に余りあるため、長所が活かされていません。もったいない。MOTTAINAI.

最終評価「C」

くだらんエピソード多すぎ、ガキのセリフ堅すぎ、多すぎ、長すぎ、映画そのものが長すぎの映画です。例えば、落語家やゴラムのようにベラベラしゃべりまくるガキのセリフを少なくしたり、ガキの母親を映画の後半に登場させないことで、かなりすっきりしたシンプルな映画になるでしょう。
何度も言ってきましたが今、劇場に足を運ぶ人が増え、最近の邦画は元気です。ハリウッド映画と国内の観客動員数を争う邦画も珍しくはありませんが、一方で安易に作ったような映画も目立ちます。ワンアイデアで勢いで作ったような映画、テレビでも出来るのにわざわざ劇場公開する映画、テレビドラマの延長の映画、キャストの人気頼みの映画、自分の感性だけを信じているワガママ監督が撮影した理解不能な映画など、再び映画人気を凋落させるような映画も溢れています。
勝って兜の緒を締めよ…好調な時こそ、気を引き締めて映像、音声の総合芸術である映画でしか出来ないものを作り、僕たち観客を楽しませてもらいたいものです。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成18年4月15日
劇場:シネプレックス新座
観客数:20/135席
感涙観客度数:20%
可愛い動物が死んだら悲しいのは当たり前。ただ、過去のシーンからの積み上げがあれば、もっと悲しいはず。

エンドロールが流れても席を立つことなくキツネの可愛い写真をお楽しみください。ひょっとしたら、人によっては上映中、最も楽しいと感じる時間かもしれません。ちなみに、子ぎつねヘレンの封切時期に西川ヘレンのイベントのチケットみたいなのが出回っていたような気がするのですが、あれは何だったのでしょうか。ついでに、原作者は竹田津実氏、大分県出身。大分の竹田津さんといえば、港のあるあの辺りの出身なのでしょうか。

ついでに紹介!

原作本と西川ヘレン…チケットが出回っていたのはこの関係かな?

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Comments

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