« どうしようもない | Main | 職務と思想 »

April 18, 2006

寝ずの番

CinemaX第80回目。

監督:マキノ雅彦
原作:中島らも
脚本:大森寿美男
音楽:大谷幸
出演:中井貴一、木村佳乃、堺正章ほか。
上映時間:110分
(公式サイトはこちら

「失速ロケット」

腰痛が改善して、映画館で座ったままの2時間も耐えられるようになりました。早速、前売券を買ったままの「寝ずの番」と「子ぎつねヘレン(次回更新)」のダブルヘッダー。ちょっと腰が痛かったですが。寝ずの番は、津川雅彦がマキノ姓を継いたマキノ雅彦としての第1回監督作品です。マキノ家は、映画関係者を多数輩出した名門といわれていますが、ちょっと世襲っぽい側面もあるので、一族全員の実力を手放しで評価すべきではないという声もあります。ただ、津川雅彦氏の頭の回転の早さや多芸ぶりは、芸能界の中でも突出しているような気がしますが。

この映画を観ようと思ったのは、隠語を連発しまくる予告編を観てからでした。本編はエミリー・ローズ。映画の内容上、若い男女中心の観客がブーブー噴き出していたことから「これは、ただものではない」と帰りにそのまま前売券を買ったのでした。実際、期待を裏切らず、本編のあちこちで隠語を連発しまくっていました。文化庁支援・映画スタッフ育成事業による支援を受けながら、テレビでは絶対に放映できないほど隠語まみれの映画を作るなんか凄すぎです。ただ、実際にブツを見せるわけではないので、主役たちが安易に肉体関係に陥るハリウッド映画なんかよりはよほど上品なような気もしました。実に不思議なことですが。

この映画はアバンタイトル、第一夜、第二夜、第三夜の4つに分割できますが、やたら長いアバンタイトルが最も見応えがあるような気がします。特に見物なのは木村佳乃の壊れっぷり。木村佳乃は、最初に何かの連ドラで観た時の真っ白な印象に「綺麗な人だなあ」と思ったものでした。後にCDなんかを出したような気がしますが、結局、歌(音痴?)でも、肉体派女優(スレンダーですから)としてもなかなか実力を発揮しにくいタイプであるからか、芸能界になかなか居所を見出せないような印象がありました。ただ、この寝ずの番で、綺麗な割に壊れ役を演じるという、新たな境地を見出したような気がします。どっちかというと舞台向きなのかもしれない、と思うのですが。新橋演舞場なんかをホームグラウンドにして。

ターン1までの評価「B」

寝ずの番は、長門裕之、中井貴一のほか、味のある俳優が多数登場しています。特に、落語家の弟子達。高座に上がるシーンはほとんどないのですが、何故か、何人かは「本物の落語家?」と思わせるような存在感もありました。加えて、特徴的なのは変化球を連発する撮影方法。最近は「下妻物語」に触発されたのか、若手の監督を中心にアニメのような演出を加える傾向にありますが、そういう安易なものとは少し異なり、どこかアナログ的な雰囲気のする変化球といった感じです。

ターン2までの評価「B」

第一夜が終わり、第二夜、そして第三夜に入りますが、段々と失速してテンポが悪くなっていきます。思いがけずセクシーな高岡早紀に出くわす第二夜は、おいおい、そこまで手を突っ込むの?とドキドキしましたし、堺正章と中井貴一の下ネタ連発の相調(というのでしょうか?)は、東京時代の欽どこ(つまり、見栄晴以外の子供が人形の頃)で、引越しのたびに邪魔をしに来る近江敏郎などを交えた楽しいドタバタを思い起こしましたが、全体的な失速感は否めませんでした。第一夜で終わってもいいのでは?と思うほど。もしかすると、映画向きではない題材なのかもしれません。かといってテレビで流せるような内容でもありませんが。

ターン3までの評価「C」

かくして寝ずの番は、失速したまま墜落していきます。人が何人も死ぬので、人が死ぬことだけで感涙スイッチが入ってしまうタイプの観客の方々の涙を誘っているようでしたが、多くの観客は、それぞれのキャラクターに感情移入する暇がなかったというのが、正直なところでしょう。「ドラマは変化」といわれるように、結局はどんちゃん騒ぎに終始して、心理的には誰も何も変わらないので、そういう観点から評価すると、これは映画ではないと評価することも出来ます。トタン屋根の歌はなかなか見事ですが。

最終評価「C」

辛口の映画評論家(例えばおすぎ)が、何故か評価しているのは、顔見知りの監督に対するご祝儀相場のようなものでしょうか。それでも前半は結構面白いので、下ネタ連発の変わった映画を観たければ是非、劇場に足を運んでみてください。監督の人脈でチョイ役でもいろんな人が登場していますし。心配なのは、次回の日本アカデミー賞で有頂天ホテルと並んで、寝ずの番の何らかの賞を受賞して、テレビ業界の同窓会みたいなことになってしまわないかということです。
邦画は、いぜんとして元気です。それはいいことなのですが、今さらながら記憶モノを製作した相変わらず風が読めない東映の「明日の記憶」や、バットマンビギンズ、スターウォーズ(エピソードⅠ~Ⅲ)などのようにハリウッドで流行の事の始まりモノに便乗したかったのか、タブーであった(はずの)カメであることを自ら認めてしまった「小さき勇者たち~ガメラ~」など、安易とはいわないまでも無駄撃ちも辞さないかのようにポンポン映画を量産することを懸念してしまいます。
「リング」がこの世になければ存在しなかったであろう「着信アリ」も「着信アリファイナル」が登場します。後発だ、いいとこどりだと言われながら、ジャパニーズホラーの残り汁を未だに吸い続けている秋元康氏の貪欲さにも驚きですが、よってたかって瓶の底までストローを垂らして残らず吸い尽くそうとする姿は、頼もしさすら感じます。映画ブームに水を差さないことを祈るばかりですが。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成18年4月15日
劇場:シネプレックス新座
観客数:30/125席
感涙観客度数:不明

先遣隊の「ジジババばかりです」の情報通り、年配の男女が目立ちました。だからこそ、劇場で大笑い出来るのでしょう。何故か単独オヤジも多かったです。チケット売り場でも「おい、何見に来たんだ?」「寝ずの番だ」「お前もか、イヒヒヒ」とあちこちでブルータス。ただ、付き合いの浅いカップルにこの映画はお勧めできません。ドン引き必死ですから。例えばあなたの彼女が「楽しそうな映画、観たーい」とか「木村佳乃、好きなの」と言いはじめたら、引き摺ってでも他の映画を観せることをお勧めします。背に腹が変えられなければこの際、ナルニア国物語でもいいでしょう。

ついでに紹介!

原作本、特にひねりなし。

|

« どうしようもない | Main | 職務と思想 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49725/9625559

Listed below are links to weblogs that reference 寝ずの番:

« どうしようもない | Main | 職務と思想 »