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March 07, 2006

シリアナ

CinemaX第73回目。

シリアナ
監督:スティーヴン・ギャガン
製作総指揮:ジョージ・クルーニー、スティーヴン・ソダーバーグほか
原作:ロバート・ベア
脚本:スティーヴン・ギャガン
音楽:アレクサンドル・デプラ
出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ジェフリー・ライトほか
上映時間128分
(公式サイトはここ

「オリンピック」

「シリアナ」は、ゲイ、テロ、人種差別など変化球が多いといわれる今年のオスカーノミネート作品の1つです(シリアナは助演男優賞=ジョージ・クルーニーが受賞)。シリアナは、米国のシンクタンクの造語でシリア、イラン、イラクを指すのだそうです。日本でも社会科で習いますが、かつて欧米列強などが、アフリカや中東、アジアなどで自分達の都合のいいように国境を引き、時に新しい国を作ってきました。シリアナは、その頃の発想と似ています。
実際に米国の思惑通りシリアナを建国した場合、イラン、イラクの油田からシリア国内を通じて地中海側にパイプラインを引き、スエズ運河を介さず欧米(スエズ以西)に容易に石油を輸出することで莫大な利益を得るという、米国にとって極めて有利な国になります。映画そのものは、シリアナの実現に向けた行動を直接的に描いているわけではありませんが、、米国の都合のいいように中東某国を操ろうとする姿勢は随所にみられます。

「シリアナ」は、元CIA工作員の原作をヒントに描かれていますが、どこまでが事実なのかは、分かりません。ただ、原作(まだ途中までしか読んでいませんが)よりも時代は新しく、中国資本のシーノック(中国海洋石油)が、米国の石油会社ユノカルを買収しようとしていたあたりを描いていると推測されます。この時は米国が露骨に介入し、中国資本の参入を阻止し、米国は石油が絡むと目の色が変わるということを、皮肉にも世に知らしめたことになりました。
映画では、コノックス、シリーンという石油会社が登場しますが、これがシーノック、ユノカルにあたるものと推測されます。王子2人が後継を争う中東の某国とは、世界一の石油生産国、サウジアラビアを指すのでしょう。ただ、水や安全と同じように、エネルギーも欲しい時に得られると思う人が多い日本では、これらの問題はピンとこないかもしれません。

ターン1までの評価「B」

この映画は、題材もテーマも重く、ここ数年ハリウッドを席巻していたファンタジーやアメコミ原作とは全く異なるもので、見応えこそありますが、終始、複雑で難解な人物関係に悩まされました。調べてみると、CIA、、中東某国、米司法省、米石油会社の4つの勢力がストーリーに絡んでいるようです。おんどりゃZZか。そういうわけで、話のおおまかな筋は分かっても本当に映画を味わうには、最低3回は観なければならないような気がしました。もしかしたら、ジョージ・クルーニー扮するCIA工作員の行動よりもむしろ、エネルギーアナリストと中東某国の王子との関係にスポットを当てると、分かりやすくなったのかもしれません。
「シリアナ」は、並行していろいろなエピソードが進行しますが、それぞれのエピソードが直接的に絡むことはないという不思議な構成で成り立っています。そのことがこの映画を余計ややこしくしているのかもしれませんが、エピソードそのものは重く、見応えはあります。特に貧困にあえぐ若者と、王族の想像もつかない富との対比を表現したような後半のモンタージュは、見所です。

ターン2までの評価「B」

この映画がどこまで事実であるかは分かりませんが、単に「米国けしからん」と憤るだけなら、全く意味がありません。石油利権に目がくらみ、大義名分をでっちあげてイラクを攻撃をしたのも米国ですが、シリアナのような際どい映画を製作・公開し、アカデミー賞にノミネートして評価しようとしているのも米国です。米国の行動を批判するよりもむしろ、人為的に国境の線引きをすることがこれまでどれだけの悲劇を招いてきたか、人間はその歴史を何故、繰り返そうとするのか、あらためて考えることが必要なのであり、そういう行動を喚起するという意味では、この映画の存在価値は充分にあるといえるでしょう。
「シリアナ」を観て感じたのは、「無知」の恐ろしさです。例えば、米国は、中東産油国の主権を尊重しているようにみせかけて、実際は自分の思い通りコントロールするために、王族など国を牛耳る一握りの人々にそれなりの利権を与え贅沢をさせることで、しっかりと国を治めようとするような「知」を奪う。「知」と「富」が必ずしも一致していないことに注目せねばなりません。
それでも、映画に登場するナシール王子のように、米国に偏る構造を疑問に思う人間が現れると、容赦なく暗殺し、それが国家全体に広がると「テロリスト国家」として非難を始め、エスカレートすると難癖つけて攻撃も辞さない。一方、貧富の差が激しい中東の国内では、教育の場が少なく「知」を奪われている貧困層の若者をテロリストらがコントロールして、彼らの欲する「知」を歪曲して、自爆テロなどの行動に狩り立てます。これも一種の「知」のコントロールということになります。
「知」と「無知」の差を利用して相手を支配し、支配下の人間たちの教育の機会を奪い、反乱する手段すら思いつかないように骨抜きにするというのは、時代・地域を問わずあちこちで行われてきました。かつて多くの植民地を抱え、支配してきた欧米列強の手法にも通じるものがありますし、ネイティブアメリカンから僅かなガラクタと引き換えにマンハッタンを奪った白人移民のようなケースも、似たようなものかもしれません。

最終評価「B」

存在価値のある映画ですが、一度観ただけでは分かりづらいので、勝手ながら評価「B」としました。ややこしい映画ですが、チャレンジしただけでも充分に意義のある映画といえるでしょう。参加することに意義がある。つまり、オリンピック。「シリアナ」は、アカデミー賞にノミネートされたので、日本では無条件に人気が出る可能性があるのですが、平和ボケの日本人にとって、やはりとっつきづらい内容であることに変わりはないでしょう。ただ、この映画を通じて中東情勢に興味を持つのは意味のあることだと思います。石油輸入の9割を中東に依存する日本にとって、決して他人事ではありませんから。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成18年3月6日
劇場:丸の内TOEI②
観客数:40/360席
感涙観客度数:10%
(場内の鼻すすり音で推定)

ついでに紹介!

原作本「CIAは何をしていた?」

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Comments

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