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March 10, 2006

ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女

CinemaX第75回。

ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女
監督:アンドリュー・アダムソン
製作総指揮:アンドリュー・アダムソン、ペリー・ムーアほか
原作:C・S・ルイス
脚本:アンドリュー・アダムソン、クリストファー・マルクスほか
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演:ウィリアム・モーズリー、アナ・ポップルウェル、スキャンダー・ケインズほか
上映時間:140分
(公式サイトはこちら

「失敗した!」

かなり前から予告編が放映されていたナルニア国物語です。ディズニーがありったけの金を注ぎ込んだ大作との噂もありますし「ディズニーならではのファンタジー」と手放しで賞賛する人もいます。ちなみに、一年も前から予告編を流すのは、宇宙戦争を彷彿とさせます。あの時はすっかり騙されてしまいましたが。その点、ナルニア国はどうよ?

ナルニア国物語は、原作モノの映画化です。CinemaXでは、原作モノの場合は「原作を読んでいない人がいかに楽しんで観ることが出来るか」という点を重視しますので、僕が原作を読んでいる場合は、与太話の部分以外は読んでいない人のつもりで評価し、読んでいない場合はそのまま、素直に評価するようにしています。ご了承下さい。

ちなみに、「ナルニア国物語を楽しめないのは、原作を読んでいないからだ」という意見もありますが、観客に原作を読むことを強いるのは、海外旅行に行くのにジェットエンジンの整備が出来るよう準備をしておけというようなもの。本末転倒です。本来は、映画を観て「原作も読んでみようか」というのが筋。それだけ面白かったというバロメーターにもなりますし。

ナルニア国は、スタートからたるい感じでした。特に、ナルニア国に入り込むまでが長すぎる。第何次かの世界大戦の頃に疎開した兄妹を追っているのですが、ナルニア国以外の時代背景の説明をたらたらとする必要があるのかと思いました。こういう場合は、スクリーンから眠ってもいいよ光線を感じてしまうわけで…。

テンポの悪さもさることながら、4兄妹の人物設定の甘さも目立ちました。特に一番下の妹。子供の言葉じゃありません。子供だって背伸びしますが、これは大人のセリフを小さな子供に無理矢理喋らせているだけのこと。ハジメちゃんのように、ずば抜けた天才という設定なら別ですが「おませさんねえ」と目を細めるには度が過ぎています。

4人が揃うと事態はさらにひどくなります。一番下の妹は、悪い悪いといいながらも特長があるのですが、あとの3人は順繰りにセリフを喋らせているとしか思えないひどさ。
長男「これは白だよね」
次男「ああ、白だよ」
長女「違うよ、黒よ」
次女「黒に見えるわ」
長男「黒だろう」
次男「黒、黒」
長女「白だって言っているでしょ」
次女「どう見たって白よ」
彼らの言っていることはちぐはぐで、人格もズタズタです。戦争なんか嫌いだから帰りたいといっておきながら、都合よく現れたサンタから武器をもらうとニンマリ。戦争に反対しているかと思ったら、騎士の格好をして喜ぶ兄弟。他にも都合よく黙りこくったりベラベラ喋ったりする次男もひどいですが、長女の二重人格ぶりがとくにひどい。結局はニュートラルな長男が一番マシなのですが、ニュートラル過ぎて面白くもなんともありません。最後に椅子が4個あるから、4人を出しているというだけなのでしょう。原作に忠実にする必要がないのなら、4人兄妹である必要はないのかもしれません。

琴欧州みたいなカモシカ男と次女のやり取りも最低。ハンカチでちょっとしたエピソードを作って、最後のシーンにひっかけるのですが、これも下心アリアリで興ざめ。伏線とは赤外線バリアみたいなもので、観客に見えてしまっては意味がないのです。ところが、行き当たりばったりのナルニア国は、荒縄のように伏線が張られている…これで話にのめり込むのは至難の業かもしれません。

ターン1までの評価「E」

ナルニア国は、世界を股に掛けて撮影が行われましたが、その割に活かせていないような気がします。最後の「ゆかいな動物怪物大戦争(?)」のシーンはそれなりに見応えはありますが、雪に囲まれた大地ははるばる遠くに撮影に行かなくても書き割りでもいいのかな?なんて思います。

ナルニア国で気になるのは、やはりご都合主義の展開です。長女が驚きながら「ビーバーが喋っているわ」と現実的な面を見せたかと思えば「鳥が呼んでいるわ」と突然歩き始めて都合のいいポイントに行ってしまったりという都合の良さ。人だけでなく犬(オオカミ?)も、嗅覚の鋭さを発揮したかと思えば、そういう能力が出てしまうと不味いシーンでは、すぐ隣にいる人間すら嗅ぎつけられないという都合の良さ。サンタクロースも、これまた都合良く現れて、未来を予期したように兄妹たちに的確な武器をプレゼントします。見た目が同じでもシーンによって人格が全く異なる不思議な映画。まさに「別人過ぎるよ!(Byガスパッチョ)」です。

このほかにも「滝つぼの氷が溶ける!」といって、予告通り氷が溶けはじめたり、まるで超能力者のようです。いや、仮に超能力者になるのは別にいいのですが、その過程がないと観ている側がさっぱり話しにのめりこめません。他にも、次女が滝つぼに飲み込まれたかと思えば、すぐに現れたりとか、付け焼刃のハラハラもたっぷり。

第1章として、続編が期待(実はしていませんが)される展開ですが、無果汁のオレンジジュースを何倍にも薄めたような薄っぺらい展開が気になります。特に前半のまどろっこしさを考えると、少ないエピソードを掻き集め、無理矢理2時間に伸ばしたのではないかと。疑いたくなるほど。どうせなら、第一章を半分ぐらいの長さにして次の章のエピソードを足すぐらいの優しさが必要だったのではないでしょうか。

周囲のキャラクターも凄いんです。都合よく敵陣にやってくる女王と、どれぐらい偉いのかがさっぱり分からない救世主のライオンが、兄弟の処遇を巡って「密談」をするのですが、テントに入って、小一時間経って出てくるだけ。交渉の過程を端折ってしまっています。これでは面白い映画にするための挑戦を自ら放棄しているようなもの。3分クッキングどころではない端折り方です。

ターン2までの評価「E」

後半の流れを説明しますと、都合よく眠れなかった姉妹が、ライオンが殺されにいく現場に出くわし、一部始終を何もすることなく目撃する。兄弟は、「ゆかいな動物怪物大戦争」に参加し、彼らにライオンが死んだことを伝えるため、突拍子もなく木にお願いする。中学の同級生に「みんな、静かにして…木が喋ってる」と言ったり「教室の壁にキリストがいる!」と泣き出す不思議ちゃんがいましたが、同じようなレベルです。展開としてはまさしく木に竹をつなぐようなもの。めちゃくちゃ。

最後の「ゆかいな動物怪物大戦争(くどい?)」は、見応えがありましたが、氷の女王に殺された(はずの)仲間が、暖めると次々と生き返るのには呆れ帰りました。自ら「何でもアリの無茶苦茶な映画ですよ」と言っているようなもの。大きなトーナメントが終わると、帳尻が合うように超人が生き返るキン肉マンのようです。そういうわけで大団円で終わった第一章。ライオンの地位や凄さがさっぱり分かりませんでしたが、果たしてナルニア国に次はあるのかないのか…第二章も絶対に観ようと思います。はぁ、失敗した!

最終評価「E」

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成18年3月4日
劇場:ワーナーマイカルシネマズ板橋
観客数:120/296席
感涙観客度数:10%

ライオンが死んだくらいで泣くな!アホか!

ついでに紹介!

「ドラえもん のび太の宇宙開拓史」主人公(もちろん、ドラえもんやのび太)がタンスならぬ床下から異空間に旅立つ物語。「のび太の恐竜」に続く劇場公開第2弾として影は薄いものの、泣けます。僕のイチオシ。劇場版ドラえもんも25周年を迎え、映画ドラえもん25周年オフィシャルサイトなんちゅうのも開設されています。ちなみに今ではすっかり独り立ちし、東宝アニメのドル箱になっているドラえもんですが、第1弾の「のび太の恐竜」は信頼性に乏しかったからか「モスラ対ゴジラ」と同時上映でした。

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