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January 16, 2006

THE有頂天ホテル

CinemaX65回目。

THE有頂天ホテル
監督・脚本:三谷幸喜
音楽:本間勇輔
出演:役所広司
上映時間:126分
(公式サイトはこちら

「花やしき」

三谷幸喜の出づっぱりで前評判を無理矢理高くしたような「有頂天ホテル」が公開されました。スピルバーグ監督作品、ジブリ作品と同じように「全て良し」という信奉者の多い三谷幸喜作品ですが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

そうそうたるキャストが登場する有頂天ホテルは、その顔ぶれからみても失敗が許されない恐ろしい映画といえます。ということで冒頭から様々な登場人物がドタバタを繰り広げます。見た目の面白さが大好きな人には大爆笑の内容のようで、劇場内のあちこちで大笑いをしている人もいますが、ツボにハマらない人はウンともスンとも言わないのが印象的でした。
この映画は、ワンシーンワンカットという方式を取り入れているので、終始、舞台の様な雰囲気が漂っています。舞台は、取り直しがきかないという緊迫感がありますが、逆に小道具や俳優の表情などをクローズアップできないという欠点があります。そのいいとこどりをしたような映画なのですが、例えばカメラの背後の登場人物の存在、音でしか表現出来ないなど少し混乱する部分もあります。
映画は映像と音声を合わせた総合芸術と表現されます。その一部を放棄しているという感じもなくはない映画ですが、そのせいかややテンポが悪いような気がします。

ターン1までの評価「B」

本編中に「グランドホテル」という映画が紹介されるように、シナリオにはグランドホテル形式という作法(?)があります。同じ時間帯にそれぞれの人間のエピソードを紹介していくという作法(?)ですが、有頂天ホテルそのものがそういう形式で作られています。ストレートにグランドホテルを紹介するあたりが、三谷氏らしいといえます。
三谷作品の特徴は、脇役でもあるレベルなら主役のように存在感があるように描かれているということです。米国からわざわざ呼び戻した漢字に弱い梶原善などもチョイ役のようで実は主役並みに存在感があります。ただ、話の本流ともいえる副支配人や議員のエピソードが霞んでしまうのも残念なような気がします。特に役所広司演じる副支配人の新堂のエピソードは、周りの話に振り回されすぎて彼や元妻がその時点で何を知っていて、何を知らないのかを把握するのが難しいような感じがしました。
観客が全てを知っていて、登場人物が少しづつ真相を知っていくというパターンは、刑事コロンボを源流とする三谷氏の代表作とも言える古畑任三郎シリーズに通じる部分かもしれませんが。僕自身の理解力の問題なのかもしれませんが、主役級の人間のエピソードが埋没してしまったのが残念なような気もします。

ターン2までの評価「B」

映画を評価するブログの殆どは、恐らく諸手を挙げて評価するものと仮定して重箱の隅をつつくようなダメ出しをしていますが、巧みな部分もあります。例えばキャビンアテンダントのエピソード。ああ、なるほどなと思える部分です。その時点まで観客はすっかりダマされてしまいます。それでタネを明かされても前半にヒントを出すエピソードがあるから納得出来る。これがダメな映画だと唐突にキャラクターを出してネタばらしをしてしまいます。
シナリオを書く上でヒントになる部分が多い映画といえますが、中でも観客が思わず笑ってしまうようなセリフやエピソードを登場人物が真顔で演じていると、さらに笑いが増します。例えば寅さんが真顔で明らかにとんちんかんなことを言っていると思わず噴出してしまうのと同じです。これが逆に、笑えないような内容で劇中の観客だけが大笑いしていると観客は「?」となってしまいます。この手法はセリフやエピソードを丁寧に作り上げる必要があるので簡単なようで難しい方法といえます。
不思議と周りを気にすることなく物を食える映画です。家でテレビを観たり、舞台(例えば歌舞伎)を観ているような映画なのかもしれません。眺めているだけでも何となく楽しめる…これでは映画ではないような気もしますが、昭和30~40年代には社長シリーズのように娯楽を中心とした映画は多いわけで、まあ、こういう映画もアリかなという気もします。
「やりたいようにやれ」がテーマの映画なのでしょうか。松たかこ扮する客室係のセリフがテーマに即しており観客の心を最も動かしそうなのですが、それ以前の積み上げがほとんどないためセリフの良さに響いてくるものがありませんでした。こういうテーマをわざわざ作らなくても、何となく終わってしまってもいいのかなと思うのですが。

最終評価「B」

探偵を筆頭にリアリティはこれっぽっちも感じない映画でしたが、浮世感(?)もこの映画の魅力なのかもしれません。典型的なドタバタです。アマチュア脚本家(と名乗ろうと考えています)歴が長い僕は、駆け出しの脚本家志望者が「ドタバタを描きたい」と言うと「ハァ?」と眉間に皺を寄せたくなります。トタバタとは、簡単なようでこれほど難しいものはありません。有頂天ホテルを観て、こんなドタバタを描きたいと思わないほうがいいでしょう。それこそ三谷氏のこれまでのキャリアの積み上げがこの映画を実現し、これだけのキャストや観客を集め、ツボにハマった人を笑わせるわけですから。
遊園地のような楽しい映画ですが、一回観ると暫くはいいかと思わせる内容でもありました。まさに、いつも行きたいとは思わないものの、たまに行くと楽しい花やしきのような映画です。上島竜兵のような凄まじい壊れっぷりの西田敏行の演技が最大の見所ともいえます。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年1月14日
劇場:ワーナーマイカルシネマズ板橋
観客数:400/549席
感涙観客度数:若干

客室係の長セリフあたりが感涙ポイントなのですが…伏線のないその場限りのシーンで泣けない人にはあまり響かないと思います。

ついでに紹介!

文中で紹介のグランドホテルです。

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Comments

梶原善検索で来ました。
「米国からわざわざ呼び戻した」と記事中にありますが、そうなのですか?どこ情報ですか?ちょっと気になったので教えてください。
ついでに、トラックバックもさせていただきますね!

Posted by: しずく | February 05, 2006 at 06:28 PM

元ネタは友人なのですが、検索してみると「人生の後半戦に突入する前に、一度すべてをリセットしたいらしい。帰りはいつになるか分からない」とのこと。三谷幸喜の著書(たぶん「三谷幸喜のありふれた生活」のどれか) のどこかに書いてあると思います。仕事の依頼がある度に帰国しているらしいです。
味のある役者なので好きなのですが、普段は海外にいるだけに露出度が低く、そのことがさらに価値を上げている感じがしますね。ジミー大西のように。
F1レーサーのハインツ-ハラルド・フレンツェンの顔をみると、梶原善を思い出します。

Posted by: yuworldmaster | February 08, 2006 at 05:10 PM

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