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January 17, 2006

ある子供

CinemaX66回目。
ネタばれも含むため、希望する方は映画を観終わるまでこのブログは読まないほうがいいでしょう。

ある子供
製作総指揮:オリヴィエ・ブロンカール
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演:ジェレミー・レニエ、デボラ・フランソワほか
上映時間:95分
(公式サイトはこちら
PG-12(規制する理由が見当たらないのですが)

「問題作」

「ある子供」は、いわゆる単館系の映画です。恵比寿ガーデンシネマは、「17歳のカルテ」以来5年ぶりぐらいでしょうか。当時は交替制の仕事場で働いていたり、無職だったりしたので、当時通っていたシナリオ・センターに行く前に映画を観たり、上野動物園でボーッとパンダを見ていたりしたものでした。17歳のカルテで主演をしていたウィノナ・ライダーはすっかり存在感が薄れてしまいましたが、和風高見知佳のような印象だったアンジェリーナ・ジョリーはその後、ブレイクして今や有名女優として日本でも名が知られるようになっています。

冒頭から暗い雰囲気の映画ですが、晴れた日もどこか暗いムーミン谷のような暗い映像は最後まで続きます。冒頭からブリュノという主人公のあぱずれな行動が目を惹きます。とにかく金のために盗みを働き、その場限りの嘘をつき続ける。金といってもヒルズ族がこだわる大金ではなく、その日が暮らせる程度の小銭です。
小悪党のブリュノを愛し続けるのが、ソニアという女です。この男のどこがいいのか分からないのですが、先日も清純派というイメージを捨ててまでも男とハワイに蜜月旅行に出かけた女優がいるように、好みは人それぞれなのでしょう。それにしてもブリュノの行動が凄い。

ターン1までの評価「A」

そんな2人に子供が産まれますが、ブリュノが子供に関心がないことは、いろんな行動にあらわれます。「興味がない」とセリフで言ってしまえば手っ取り早いのですが、間接的なセリフや小さな行動で積み上げられていきます。その一方でソニアはブリュノにぞっこんなわけですから、こういう関係で女に連れ子がいたら、その子が男に虐待されても女は何もいえなくなるんだろうな、と変に納得してしまいました。不謹慎な表現ですが、それだけリアリティのある設定だということにもなります。
シナリオの作法に、リトマス試験紙という考え方があります。一つのイベントを通じて、登場人物の反応に差が出てきます。例えば、冗談を言っても起こる人と笑う人がいるように。子供というリトマス紙を通じて、ソニアとブリュノの行動に差が出てくるわけです。
ブリュノは、相変わらず小銭を稼ぐために小悪党となり、その行為がばれそうになると嘘で塗り固め、嘘がばれそうになると、さらに嘘をついていきます。さらにブリュノは、金欲しさと子供への無関心な気持ちが重なって、子供を売り飛ばしてしまいます。そんなとんでもない行動に出ても、これまでの積み重ねがありますから、「こいつならやるな」と納得できます。
平然とソニアのもとに帰ったブリュノはぬけぬけと「また出来るさ」というセリフを吐きますが、彼の愚かさを象徴する物凄いセリフです。この行動も大きなイベント…つまりリトマス紙となり、後半の登場人物たちの行動を大きく左右します。

ターン2までの評価「A」

さらにネタばれをしますが、ブリュノは子供を買い戻します。それは、ショックで入院したソニアを気遣うのではなく、うっかり彼女に子供を売ったと話してしまったことで警察にバレるのを恐れたからでした。肝の小さな小悪党ぶりが見事に描かれています。その時の言い訳もその場しのぎの連続で、やがてソニアの行動にも反映されていきます。ここも見事です。
糸の切れた凧のように右往左往するブリュノの行動もみどころですが、後半はソニアの行動にも注目です。セリフなしの無言の演技も見所。デボラ・フランソワという女優は若いながら魅力のある演技をします。その一方で犯罪や嘘で自分を塗り固めながら自らの傷口を広げるブリュノ。ところが、そんなにたいしたことではないことで気が変わります…おいおい、雲行きが怪しくなってきたぞ。
気が変わったブリュノは、自ら警察に出向き、捕まります。これまでの行動がリアリティがあっただけに、この行動はあまり難得できませんでした。そしてそのまま問題のラストシーンに繋がるわけです。

「ええっ?」

思わず乗り出してしまうようなエンディング。音楽のないままエンドロールが流れ、映画は終わります。これはいろんな意味で問題作です。産地からいろんな高級食材を集めておいて、何も作らずシェフが逃げてしまうような物凄い映画です。

最終評価「C」

一転して「C」評価ですが、それでも必見の映画といえます。特にシナリオや小説を勉強している人は、人物の描き方が大いに参考になることでしょう。映画やテレビドラマの主人公は、完璧な人間よりどこか出っ張っている人間のほうが魅力が出てきます。主人公とはいえ善人である必要はありません。ところが簡単なようでアマチュア脚本家(?)にとってこういう人物を描くのは至難の業だったりします。
ブリュノの行動は観客に嫌悪感を抱かせますが、完璧な極悪人ではなく、どこか気の弱い小悪党であるところがポイントです。この辺りのバランスは絶妙で、それに対するソニアの心理や行動もリアリティがあるのですが、やはりクライマックスが雑すぎました。このもやもやは言葉ではなかなか説明できませんので、とにかく実際にご覧いただくことをおすすめします。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年1月10日
劇場:恵比寿ガーデンシネマ
観客数:40/116席?
感涙観客度数:不明

ついでに紹介!

本当についでに、17歳のカルテ。当時問題だった17歳の少年らによる犯罪に迎合したような邦題は納得できませんが、現在のように原題をカタカナで表記するばかりになってしまったひねりのない映画のタイトルよりは100倍マシです。例えば「スタンドアップ」「フライトプラン」「オリバー・ツイスト」「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」どんな映画かイメージ出来ますか?

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Comments

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