« やるじゃん、日テレ | Main | 押し合い »

December 21, 2005

男たちの大和/YAMATO

CinemaX62回目。

男たちの大和/YAMATO
監督:佐藤純彌
製作総指揮:高岩淡、広瀬道貞
原作:辺見じゅん
脚本:佐藤純彌
音楽:久石譲
出演:反町隆史、中村獅童、鈴木京香ほか
上映時間:145分
(公式サイトはこちら

「中途半端」

世の中に何を仕掛けたいのかいまいち分からない映画を連発する東映が、威信をかけて製作した映画です。早くから前売券が出回っていた映画ですが、新橋の金券ショップの相場は500円を底値に超低空飛行を続け、封切り前に700~800円。公開後は900円程度に上昇しました。僕は750円で購入したのですが、果たして内容は僕にとって利益となるか、損切りとなるか。

冒頭から鈴木京香が登場します。「え?戦国自衛隊?」と思ってしまいますが、この映画はこの時点で負け。和製ホラーの「呪怨」やユル系お涙頂戴路線の「四日間の奇蹟」など、ここ数年の東映の映画は東宝など他社の後追い感が強いのですが、「男たちの大和」も「ローレライ」など東宝の一連のシリーズが終わって時間がかなり経過して、しかも戦後60年も終わりを告げようとしているタイミングで何故?と問いたくもなります。
男たち~は、巨大セットが話題になったり、何故か長渕剛の主題歌が一人歩きしたり、時折、馬の糞のように情報が出てきましたが、そんなに早く話題を出して意味があるのかなという感じもしました。前売券も値崩れしちゃいますし。こちらは東宝ですが実写の忍者ハットリくんの展開にも似ています。2年ぐらい前に「作りますよー」というニュースが出たかと思いきや、いつまで経っても完成せず、キャシャーンやキューティーハニーなどアニメ原作の実写版に思い切り畑を荒らされた後に封切られ、酷評されました。
ちなみに今回、予告で放映された特攻隊を題材としたものと思しき映画(石原慎太郎原作らしい)は、「2007年陽春公開」です。気が遠くなるっつーの!

さて、男たち~は、スタートからまどろっこしさ一杯で展開します。この鈴木京香と仲代達矢、少年が大和の沈没現場に向かう途中の場面と、60年前がカットバックされていく展開なのですが、このスイッチの切り替え地点が多すぎて観ている側はくたびれてしまいます。こういうのは夢を観ながら寝ている人間を叩き起こすのと同じですから、慎重にならなくてはいけないのに、起こし放題!
同じ人物を出して現在と過去を繋ぐのは、タイタニックで使用されたパターンなのですが、あちらは大きな切り替えは最初と最後ぐらいで、見ている側はテンションを維持できる頻度でした。
60年前の日本は、けつバットや鉄拳制裁たっぷりの異常な全体責任が渦巻く世界が繰り広げられます。とはいっても威圧的に集団を統率する考えは、一昔前の日本にもありました。例えば僕が子供の頃にもそういう風潮はありましたし。日本が個人主義に突っ走り出したのは、考えてみれば本当にここ数年のことなんですよね。それがいいのか悪いのか。

少年兵を多数載せた戦艦大和は、レイテ湾に出撃します。後半のシーンは凄いのに、ここは大したことがありませんでした。確かに大和の一斉砲撃は鉄器を寄せ付けない凄まじさがあったといわれていますが、もう少しこの凄さを大きなスクリーンで観てみたかった。ちなみに同型艦の武蔵はこの戦いで不運にも小さな爆弾でちょっとした計器が狂ってしまい一斉砲撃が出来ず敵機の集中砲火を浴びてシヤブン海に沈んでいます。
ここらでもう一つの難点が出てきます。登場人物があまりにも多すぎるということです。絶対的な人数が多いのは当たり前なのですが、話に絡む人が多すぎです。アルマゲドン方式。

ターン1までの評価「C」

ここからは、趣向を変えて少しだけメモ書き通りに書いてみます。キャシャーンみたい。

大和に乗っていて助かったという人はあちこちにいるが、ほとんどが作り話。
実際の乗組員はきっと喋らない。
喋るのは作り話をする小童。
ただし小童といえども日本のために戦った人々。
角川春樹は上映館を増やしたいというが、だったら教育映画のように作ればいい。
人、シチュエーションに主体がない。糸の切れた凧。
シーンの切り替わりのテンポが悪い。
この先に迫っている不幸という枷があるのに悲しさが滲み出ない。
ロン毛、デブが特攻隊員を演じるあり得ない映画よりはまし。君を忘れない。
何で多くの一般人が大和が沖縄に行くって知ってるの?よくわからん。
逃げ場が多すぎ、シーンが変わりすぎ。
感動を呼ぼうとするシーンでもセリフが陳腐。どっかで聞いたことのあるようなセリフ。
博打のシーンも意味分からん。題材は悪くないのに。詰め込みすぎ。

ターン2までの評価「C」

後半に入ると、男たち~は、前半では影も形もなかったようなキャラクターが次々と登場してきます。「お前誰だ?」と思うキャラクターばかりですが、こいつらが変にストーリーに絡んでくるので困ったもの。
フレンチのフルコースを頼んだはずなのに、後から寿司とかしるこが出てくるようなものです。セリフ、カットのテンポが悪いのは相変わらず。

ターン3までの評価「C」

このままではクズ映画一直線なのですが、終盤に評価が一転します。大和の沖縄特攻シーンは、力を入れているだけあって迫力があります。あえて残酷なシーンを満載したようですが、その目論見通り激しいものとなっています。護衛の戦闘機なし、僅かな駆逐艦とともに沖縄に特攻し、砲台となって米軍を蹴散らすという無茶苦茶な作戦は、成功率はほぼゼロ。それなのに軍部は作戦を開始します。防空壕に篭ったまま、兵士たちに戦いを強いる将校をみていると、どこか役人が税金を浪費するのに似ているような気がします。まだ兵隊がいるから、日本はまだ降伏していないから、軍隊が人命を軽視して「消費」する構図。恐ろしいものです。そう考えると、男たち~は面白い映画としての要素が多いような気がしますが、素材が悪いのか調理人が悪いのか、いまいち乗り切れません。
ちなみに「提督の決断」(KOEI)でこの沖縄特攻のシナリオを選んでもまず、成功しません。それほど凄まじい作戦なわけです。
滅多撃ちされる大和が痛々しくて、悔しくて、涙が出てきそうになります。悔しいのは「アメ公、この野郎!」というものもありますが、これほどの技術が戦争ではなく他のものに向けることが出来たらという残念な気持ちもあります。ここからのシーンは、文字通り血だらけです。ただ、残念ながらプライベートライアンをイメージしてしまい、斬新な感じはしませんが、最近の邦画としては、かなり思い切ったことをやるなと思いました。

ターン4までの評価「A」

この残酷なシーンは、大いに意味があると思います。戦後60年、家庭においても社会においても戦争の悲惨さを口伝する人々が亡くなった今、太平洋戦争を美化しようとする若者が多いようですが、この映画を観て「戦争はかっこいい」などと微塵にも思わなくなるでしょう。設定の不備なのか、あえてそれを狙ったのか、男たち~で大和に乗って戦う人々は不自然にかっこいい別れもなければ美しい死に方もしません。戦争を美化する現代の風潮に鉄槌を下す映画ともいえます。太平洋戦争はやむを得ず開戦した部分も多いのですが、やはり戦争は悲惨だということを訴える映画としては、存在価値があるかもしれません。
ただし、教育映画としては灰汁が強く、戦争映画とするにはパンチがありません。金を使った割にどこか中途半端に終わったのは残念でなりません。

最終評価「C」

その後がさらにダメダメでした。特に仲代達矢と鈴木京香の寸劇が興ざめします。心臓発作?ハァ?このほかにもまどろっこしい遺骨の散布など映画の流れのテンポを悪くするようなイベント満載でした。無理に現在に繋げる必要があるのかとも思えるほど。心の変化という意味では、仲代達矢扮する船長と少年が主人公となるべきなのでしょうが、その割に存在感が薄いような気がします。ここも中途半端。60年前の人物たちも同じです。誰かを中心に描こうとするほど各々のキャラクターが濃いわけでなく、群像劇とするにはあちこちのキャラクターが出っ張りすぎている。これまた中途半端。
あらゆる部分に中途半端な印象が強い映画でした。エンディングテーマの長渕剛もファンにはたまらないでしょうが、無理に作り込んでいる感がしてどうも好きになれません。彼自身がこういうものに迎合するキャラクターじゃないはずなのに、何をいまさらという感じもします。矢沢永吉とか、松山千春を含め(ファンの方々、ごめんなさい)

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年12月20日
劇場:丸の内TOEI
観客数:200/510席
感涙観客度数:多数

特筆すべきは年齢層の高さ!当然、誰かが死ぬシーンとかで泣いている観客が多かったのですが、どういうわけか長島一茂の演説で鼻をすする人が多かったのが不思議でした。彼ら彼女らに訴える何かがあったのでしょうか。
ちなみに後ろの席に予告のみならず本編が始まってからもペチャクチャ喋っている若い男女がいたのですが、それを「うるせーぞ」と一喝したおっさん、彼が一番の漢でした。映画以上に。

kuroyamato
行列!

ついでに紹介!

原作本。最新刊はどうやら上下刊に分割されたようです。

その昔、映画通の知り合いが「新幹線大爆破」と一緒に死ぬまでに一度は観ろといっていた映画「戦艦大和」当方未見。ちなみに「新幹線大爆破」の監督は佐藤純弥(彌)そういえばこの映画もパスタの後におしるこが出てくるような映画なわけで…納得。

|

« やるじゃん、日テレ | Main | 押し合い »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49725/7682287

Listed below are links to weblogs that reference 男たちの大和/YAMATO:

« やるじゃん、日テレ | Main | 押し合い »