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November 13, 2005

TAKESHIS'

CinemaX第57回目。

TAKESHIS'
監督・脚本:北野武
音楽:NAGI
出演:北野武、ビートたけし、京野ことみ、岸本加世子ほか
上映時間107分
(公式サイトはここ

「結局は…」

「TAKESHIS'」です。「TAKESHI’S」ではなくて、「TAKESHIS'」です。今回は、賛否両論渦巻くこの「TAKESHIS'」を取り上げます。
ちなみに僕は、テレビで片鱗を伺わせる北野武の知識や教養は尊敬していますが、監督作品を全制覇しているわけでもなく、彼の作品に傾倒している訳でもありません。ここらへんのスタンスが、この映画の評価を大きく左右するのだと思うのですが…。

冒頭は、戦場のメリークリスマスをイメージさせる映像から入ります。坂本龍一に傾倒する相方は「こんなシーンはなかった」との賜っておりますが、もしかしたらそうなのかもしれませんし、こういうのは雰囲気だけでもいいのかもしれない、と思いました。おそらく、いわゆる北野武の原点というべき部分なのかもしれませんし…と最初は真剣に考えていました。
この映画は先に進めば進むほど、難解になります。シーン一つ一つの作りは丁寧だと思うのですが、これほどズタズタに切り刻まれると脈絡がなかなか掴めません。こういうのは映画だから許されるのでしょう。チャンネルをすぐに変えられてしまうテレビなら許されない構成ですし、少なくとも劇場に来ているのは「世界のキタノ」作品に触れようと思っている人たちのはずですから。

ターン1までの評価「C」

このもう一人の北野が、北野武の分身だと言う人もいます。ただ、この男は劇中のどこにもたけしという名前は名乗っていないんじゃないと記憶していますので、この北野という男は、深読みすれば「TAKESHIS'」の一人ではないということにもなります。この映画をまともに考えようとすると、北野武が売れない頃から今まで、周囲から受けてきた恩と仇、それを清算すべく贖罪を加えて映像にしようとしたのではないか、と「こじつける」ことも出来ます。それを強調するために、北野という男を引っ張り出していると「こじつける」ことも出来ます。
そもそも、北野武監督作品でストーリーを引っ張り出すことは難しいはずですし、多くの映画ファンは海外で評価されるまで北野武監督作品は意味が分からないと評価していたはずです。それがプロ野球のにわかファン(来年はマリーンズファンがさらに増殖しそうですね)のように増殖し、座頭市というとっつきやすい映画に触れたことで、普通の監督としてリセットされた訳です。その頭でこの映画を観ると余計混乱するでしょう。分かりやすい映画を観たいのなら、構成がしっかりとして外れがない井筒和幸監督作品を観ればいい。ただ、題材は別として全体的に枠をはみ出さないので大当たりもありませんが。
「TAKESHIS'」は、何も考えずに作っているのではないかという見方もあります。おそらくこういう論争をさせられるということ自体が、監督の術中にハマっているのでしょう。

ターン2までの評価「C」

いい映画というのは、観ていて「あー、そうなんだよなー」とか「え?そうだったの?」など、「考えさせられる映画」だと思います。一方、「考えさせる映画」というのは、僕は映画ではないと思います。言葉は同じようでも別物。長文でも小説と論文ぐらい違うものだといえるでしょう。楽しそうな小説の装丁で中身は延々と論文が収録されていては金返せということになります。「TAKESHIS'」はまさに考えさせる映画です。そのうえ答えがあるのかないのかすら分からないというのですから悪質(?)です。

この映画を、北野武の夢の中だという見方もあります。それも間違いではないのでしょう。夢の中というより、精神世界の中ということでしょう。例えば僕は、幼い頃から車に乗るとガードレールの支柱の間隔で乗っている車がウサギのように跳ねているようなイメージがありました。世の中いろんな人がいますから、同じイメージを持っている人もいるでしょう。インターネットは人間の頭の中のような部分もあるのでそういうマイナーなことを共有することも出来ますが、お金とって劇場で精神世界の中を見せようとするのなら、こんな横暴なことはないでしょう。駆け出しの若手監督の自主制作映画じゃあるまいし。

恐らく、北野武は「TAKESHIS'」で自分の作品に対する評価を崩したかったんだろうと思います。日本では、どんなデザインの悪いバッグでもブランドのロゴが入っていれば売れます。今のように芸人として名が通る以前は「日本一ファッションセンスの悪い芸人」として小馬鹿にされ、さらに恥ずかしい衣装を着させられていましたし、映画も海外で評価されるまでは、一部の映画関係者を除いて「芸人が映画なんか撮るなんて」と海外に飛び出す時の野茂英雄のような冷たい評価を受けていたのも嘘ではないでしょう。それが、評価が高まるにつれて掌を返したように人が付いてくる、慕ってくる。そのなかで無茶苦茶な映画を作って皆がどういう評価をするか楽しんでいるような気がしてなりません。ということで僕はこういう評価をします。

最終評価「評価なし」

だからと言ってキャシャーンのような映画とは同列と考えてはいけません。「TAKESHIS'」には、モンタージュなど巧みな編集技術が盛り込まれています。初期の北野武監督作品を観て、一部の映画関係者が感じたことは「この監督は相当に勉強をしているな」ということでした。多忙であるはずの今でさえ、最新の社会情勢を常に把握しているのをみると、寸暇を惜しんでいろいろなことを学んでいることが分かります。黒澤明が北野武を評価していたのは、恐らくそういう部分なのでしょう。逆にキタノ作品が海外で評価されると慌てて評価を翻した奥山和由はその対極に位置します。

この映画に対する評価で最も危険なのは、この映画をまともに鑑賞できる人だけが北野武に選ばれた人であるというような選民思想(?)のようなものです。この映画を観て「このぐらいも分からないの?」と見下すような感覚です。「TAKESHIS'」に対して、映画評論家は、難解な数式の解を得たかのように勝ち誇った書きっぷりで評論しています。しかも、北野武とこの映画を賞賛しながら。あたかもご機嫌をとりながら時流に乗り遅れまいと壊れそうな筏に必死にしがみついているような感じです。お金が絡んでいるので難しいとは思いますが、分からないなら、分からない、面白くないのなら面白くないって書けばいいのに。
鬼籍にいるので叶いませんが、「その男、凶暴につき」の脚本を徹底的に改ざんされ激怒し、北野武を全く評価していなかった(作品までかどうかは分かりませんが)、野沢尚の評価も聞いてみたかったような気もします。監督を降板した深作欣二や前述の野沢尚がいなければ、脚本から主演もこなす映画監督の北野武はなかったかもしれません。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年11月19日
劇場:ワーナーマイカルシネマズ板橋
観客数:30/151席
感涙観客度数:不明

美輪明宏の「ヨイトマケの唄」はやはり迫力がありました。出来ればこの部分だけでもノーカットでやってほしかったです。ストライプスとどのように掛け合いをやろうとしたのかも気になります。DVD化に際していろんなオマケが付いてくるとおもいますが、ダラダラとシーンをくっつけるぐらいなら、この部分だけでも完全収録してもらいたいものです。

ついでに紹介!

ヨイトマケの唄、タイトルで混同されやすいイヨマンテの夜、ついでに…。

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Comments

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