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November 06, 2005

ブラザーズ・グリム

CinemaX第56回目。

ブラザーズ・グリム
製作総指揮:ジョン・D・スコフィールド、クリス・マクガークほか
監督:テリー・ギリアム
脚本:アーレン・クルーガー
音楽:ダリオ・マリアネッリ
声の出演:マット・デイモン 、ヒース・レジャーほか
上映時間117分
(公式サイトはここ

「あれもいいわね…うーん、これもどうかしら」

18~19世紀に活躍した「赤ずきんちゃん」「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」などの数々の童話の作者、グリム兄弟を主人公にした映画です。といってもモチーフにしているだけであって実話ではありません。この辺の境目の曖昧さが気になる人とそうではない人では評価が二分されてくるような気もしますが…グリム兄弟って3人いるんですね、実は。
やたら楽しそうなCMも気になりますし、思い起こせば初夏、「バットマン」や「スターウォーズ」など怪物の公開初日に挟まれた宇宙戦争がそうであったように、行事が困って軍配を上にあげたような週半ば(ブラザーズ・グリムは11月3日木曜日、宇宙戦争は6月30日水曜日封切でした)の封切りが何を意味するのか…考えてみましょう。
本編は、豆のエピソードからスタートします。ここを上手く利用して「ここから幻想の世界に入りました」という風に説明すれば、多くの観客にも理解出来る名作になり得るような気もするのですが、せっかくの目玉品を手にとってもガサッと買い物籠の底に放り込むだけでした。そこから悪夢の数十分がスタートします。
「???」
「????」
「???????????????」
意味のないセリフ、かえって怒りを買うような小ネタ、不必要にハラハラさせるような演出…冒頭からこの映画を理解しようと感情移入を試みるつもりがない方や、早々にそういう作業を諦めた人、根っからのテリー・ギリアムファン以外の方は、前半は、苦痛に満ち足りた時間を過ごすことになるでしょう。
怒りがこみ上げる映画といえば、「キャシャーン」がおなじみです。映像的にはブラザーズ・グリムのほうがマシなのですが、空気が全く読めていない小ネタは共通するものがあります。吉本新喜劇には比べ物になりません(比べる人もいないでしょうが)
いい加減、この映画を理解しようという気が薄れてくると、僕は睡魔に襲われました。「寝てもいいよセンサー」が働いたためです。寝ている間中、グリム童話の数々のエピソードが登場したようでしたが、本編のストーリーとは殆ど関係は「ないような内容」だったようです(劇中の小ネタもこんな雰囲気です。しょーもない)

前半の評価「D」

そして、意識は後半にワープします。相変わらず現実なのか幻想なのかはっきりしないまま、グリム兄弟はドイツのある村に移動します。11人の行方不明になった子供を捜すために。あいかわらず中世のドイツというと、近代化が遅かったことをこれでもかと印象付られるような映像ばかりですね。
さて、ここからブラザーズ・グリムは少しだけ盛り上がってきます。「His eyes…」なんかセリフで言うな!という感じですが、主人公は事件を解決するという動機を得て、少し血の通った人物に昇格します。それでも無意味な喧嘩とか、恋愛でもめたりしています。余計なエピソードが多すぎです。
塔の謎解きはそれなりに面白いのですが、せっかく更正(?)しかけても横槍が入りすぎて話がぐちゃぐちゃになります。「そういえばこういう伝承がある」など突然飛び出す構成上の飛び道具満載で出来の悪いRPGのようです。こういうのは冒頭からこの手のエピソードが登場するかもしれないという予兆をみせておかないと何でもアリになってしまい多くの観客が混乱します。これまでの得点が無意味になる逆転クイズのようなもの。しかもテンションがまばらで幸楽でラーメン食って店を出たら宇宙だったみたいな突拍子さ。

最終評価「D」

鏡の女王の美しさ、泥人形の滑稽な走りあたりが数少ない見所といえますが、どいつもこいつも映画全体の不可解さを解消するほどのものではありませんでした。ブラザーズ・グリムを自分なりに更正させるならば、現実と幻想をはっきりとさせる必要がありました。あえてグリム兄弟にこだわる必要はないのかもしれません。そういうものもあえて覚悟して作ったのなら、それはテリー・ギリアム作品の分かり難さということにもつながるでしょう。
そういえば昔、キャメロン・ディアス出演作品を制覇しようとした過程でテリー・ギリアム監督作品「ラスベガスをやっつけろ」を観たのですが、鑑賞後の空虚感は全く同じです。誰かブレーキをかける人はいなかったのでしょうか。脚本家1人に対して製作総指揮が6人も名を連ねるというのも異常な感じがします。複数脚本(?)は誰かがリーダーシップをとらないとクソ映画にぶれたり、味気ない内容になってしまう危険性もありますが、成功すると厚みが出ます。黒澤映画の全盛時代を支えたのは、黒澤明自身が菊島隆三、小国英雄、橋本忍などの有能な脚本家をぶつけあっていたからだともいえます。これらの脚本家はそれぞれ個別に活動すると著しくパワーダウンしてしまうことからも黒澤氏の統率力がうかがえます。自身が一人で脚本を作ることが多かった初期や晩年の作品と比べると勢いが違うことが分かります。

無計画に買い物に行くと、いろんなものを買いすぎてしまうことがあります。あれもいい、これもいい、と。この映画はいろんなものを詰め込みすぎました。人間は思ったほど頭が良くありませんから、一時期に詰め込める情報は極めて少ないということを忘れてはなりません。あれもこれもとエピソードを詰め込むというのは、キャシャーンやスターウォーズ・エピソードⅢ(特に後半)も似たようなものですが。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年11月5日
劇場:ワーナーマイカルシネマズ板橋
観客数:80/151席
感涙観客度数:しるか!

最後のシーンで笑う観客が多かったのですが、こんな子供だましの設定で笑いやがって!主人公が何で生きていたのかちっとも説明がついてないのに。自分の腹から大出血しながら平気で笑っているのと同じです。

ついでに紹介!

何をやっつけたいのか分からない映画と常に反面教師として扱われる映画。劇場売りプログラムの販売価格やDVDの定価は映画のつまらなさに比例するような気がするのですが…。

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