« 概況(17年7月分) | Main | 自発と強制 »

August 02, 2005

HINOKIO

北陸紀行をすっとばし、CinemaX第47回目。

HINOKIO
監督;秋山貴彦
脚本:秋山貴彦、米村正二、末谷真澄
音楽:千住明
出演:中村雅俊、本郷奏多、多部未華子ほか
上映時間111分
(公式サイトはこちら

「変質者」

主人公は自室に引きこもり、代わりにロボットが登校するという設定の映画。やがて周囲の友人の欲望は「本人に遭いたい」に向かうという、この設定だけで既にヤバめ(良い意味で)の印象が強い映画ですが、実際に期待通りの作品かどうか。

ネット上でHINOKIOの評価をあちこちでご覧になると分かるように、上半期最高の映画と評する人もいれば、金返せと酷評する人もいます。実際にご覧になるのが一番いいのですが、最後まで読みすすめればおそらくその理由の片鱗のようなものは見えてくるでしょう。

さて、まずまともにツッコミを入れると、HINOKIOそのものの存在にぶちあたります。時代設定が少し曖昧ですが、現在の設定にするならば、上手い事理由を考えて説明しなければならない部分とあえて説明を避けて曖昧にしなければならない部分が出てきます、列記してみましょう。

①HINOKIOは何故、学校に通うことが出来るのか。
映画の中では、文部科学省が引きこもり児童の対策として実験的にロボットを登校させていると説明していますが、冷静に考えると、こういう後ろ向きかつ発展的なことをやるはずがないことが分かります。例えば副作用が少ないものの少子化を助長するという後ろ向きな観点から長いこと認可が下りなかった低容量ピルみたいなものです。逆に心臓が止まっておっさん達が死んでしまおうが、バイアグラはあっという間に認可されましたが、こちらは少子化対策という一見、前向きともとれる理由によるものです。HINOKIOに関してもロボットを登校させれば、引きこもり児童の学力を維持・向上を図ることは出来ますが、不登校という問題の根本は解決していません。この設定にするなら、ある程度自由殿利く私立学校を舞台にするべきかもしれません。この映画の長所である小学生達の野暮ったさは消えるかもしれませんが。

②製作者を明らかにする必要があるか。
HINOKIOの製作に関わる人々が出てきます。つまり、主人公の父親なんですが。ロボット社会になったとはいえ、アシモがやっとこさ歩いたり、経済成長著しい中国でも、旧世代の日本の電話機のような風貌の「最新鋭」のロボットがぎこちなく歩いている時代です。この部分はある程度曖昧にしないと、観客が感情移入が出来なくなります。子供のやわらか頭では理解できても、おじさんには至難の業ですから。

この映画のあらゆる部分に通じることですが、感情移入を促す何かが足りません。例えば、HINOKIOが誕生するまでの経緯。サスペンスのように後半に説明がなされますが、いたって簡単なものでこれでは説明不足です。父親を恨み、父親のことが大嫌いな主人公が、父親が作ったロボットを何の抵抗もなく操縦するでしょうか。この辺の説明もありません。

一貫性のなさは、他の登場人物にも波及しています。特にHINOKIOの周囲のガキ大将とその子分、そしてメガネをかけた娘。こいつらの性格が一貫していません。ほんと、どいつもこいつも支離滅裂。優しいかと思えば突然、別人のように凶悪になる。あるいはその逆。行き当たりばったりで駒を並べているだけのような感じです。特に変化して欲しいのは、多部未華子という少女が演じるガキ大将。名前から推測できるでしょうが、この役はある秘密を抱えています。この事実を伝える時のガキ大将の葛藤や、事実を知った時の主人公の驚きのようなものがあれば面白いのですが、次のシーンであっけらかんと「俺が女だって知らなかったのか」と説明してしまいます…あ、ネタバレ。オーディションで選ばれたというこの女優(?)は若いのにかなり存在感があります。

HINOKIOは、設定が面白くても登場人物の貫通行動が少なく、説明・哲学セリフまみれでセリフの良さを殆ど感じられなかったバランスの悪い映画でもあります。プロレスで例えれば、豪華で強そうなマスクをかぶっていても、肝心のパンツを履いていない変質者のような映画です。

映画を観ながら感じたのは、この話は脚本家の独りよがりで練り直しが足りないままに突っ走ってしまったか、周りから何本もの横槍が入っていろいろな設定やエピソードを詰め込みすぎたかのどちらかのように思いましたが、脚本家が3名のところをみると、どうも後者のようです。アルマゲドンのように話の中心に中途半端に絡んでくる余計なキャラも多く、何人かの登場人物がハマるゲームの存在はまだしも、そのゲームと現実の世界の境目が曖昧になるという設定は、プリンに醤油を垂らすぐらい浮いています。

おまけにメガネの女の子がネットを検索してHINOKIOのメーカーの実態を暴くエピソードにはうんざり。確かに、ネット上には情報は氾濫していますが、核心を突くような情報は意外に少ないことを忘れてはなりません。ゲームやインターネットという、使い方によっては設定をより面白くする可能性もある飛び道具をあまりにも安易に、稚拙に使ってしまっています。

最終評価「C」

ボーイッシュな女の子を演じる多部美華子は、将来が楽しみな女優といえるでしょう。全体の雰囲気もさることながら声がいい。HINOKIOのデザインも見ているうちに愛着が湧いてきます。周囲のガキの演技もいい。冒頭、この映画の評価が分かれると書きましたが、恐らく絶賛する人は、素材や設定などの部分的な要素を見て判断しているのでしょう。逆に酷評する人は、全くそれを活かしきれなかった映画そのものをこき下ろしているのでしょう。素材は良くても一緒に混ぜれば美味くなるとは限りません。強打者を集めてもただ並べるだけでは勝てず、Bクラスに甘んじてしまう巨人打線のようです。

そんなHINOKIOにも、ホロりとさせられるシーンがありました。最後にHINOKIOが主人公を背負って走るシーンです。終わり良ければ全て良し。ここで終わればもうワンランク評価を上げていました。誰がHINOKIOを操縦しているのかとか、そういう説明はいりません…ところが、ニヤッと笑う中村雅俊。「夜逃げですか?」と文句を言いたくなるぐらい良い雰囲気をぶち壊してくれています。少女に豹変する多部未華子を見られたというオトク感はありますが、無理に感動を誘うような後日談は不要です。かえって後味が悪くなる。

ただ、バレバレの合成は味がありました。HINOKIOについては、あまり違和感を感じなかったのですが、最後の煙突に登るシーンはバレバレ。まるで、輪郭浮きまくりの合成で空から落っこちるという、迫力のある(?)シーンを演じた平幹二朗が印象的だった黛版RAMPOのようでした。ちなみにRAMPOは、この黛版のほうがまだマシだと信じているのですが。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年8月1日
劇場:丸の内プラゼール
観客数:40/540席
感涙観客度数:50%程度か
※感涙観客数は観客の鼻すすり音で推定

ついでに紹介!

ロボット映画三冠王。期待外れの強打者たち。

|

« 概況(17年7月分) | Main | 自発と強制 »

Comments

I do not even know how I ended up here, but I thought this post was great. I do not know who you are but definitely you're going to a famous blogger if you aren't already ;) Cheers!

Posted by: Earlene | April 18, 2014 at 02:02 AM

I'm really enjoying the design and layout of your site. It's a very easy on the eyes which makes it much more enjoyable for me to come here and visit more often. Did you hire out a designer to create your theme? Fantastic work!

Posted by: Renaldo | May 03, 2014 at 01:26 PM

I think this is one of the most important info for me. And i am glad reading your article. But want to remark on few general things, The web site style is wonderful, the articles is really excellent : D. Good job, cheers

Posted by: Reto 90 yo te explico | February 14, 2015 at 12:12 AM

I do not even know how I ended up here, but I thought this post was great. I don't know who you are but definitely you're going to a famous blogger if you are not already ;) Cheers!

Posted by: match.Com | April 06, 2015 at 09:30 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49725/5266031

Listed below are links to weblogs that reference HINOKIO:

» Buy valium pay cod overnight delivery. [Buy valium.]
Valium and morphine buy uk. Buy valium. Buy valium pay cod overnight delivery. [Read More]

Tracked on July 16, 2007 at 10:51 AM

« 概況(17年7月分) | Main | 自発と強制 »