« おやじにまじって | Main | スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 »

July 17, 2005

ヒトラー~最期の12日間~

CinemaX第44回目。

ヒトラー~最期の12日間~

監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
原作:ヨアヒム・フェスト 、トラウドゥル・ユンゲ
脚本:ベルント・アイヒンガー
音楽:ステファン・ツァハリアス
出演:ブルーノ・ガンツ 、アレクサンドラ・マリア・ラーラほか
上映時間155分
(公式サイトはこちら

タイトルの通り、ヒトラーを題材に扱った映画です。
この映画は、ヒトラーそのものを題材として扱うことへの賛否両論もさることながら、戦争を美化しているなどと議論が渦巻く作品です。早速観てみましょう。それにしても平日から大混雑。観客の全体の年齢層がミリオンダラーベイビー以上に高く、逆に若年層も少なくはないという不思議な状態です。

話は、第二次世界大戦末期のドイツが舞台です。ヒトラーの晩年に秘書として傍にいたユンゲという女性の視点から描かれています。ヒトラーを扱った殆どの映画が、凶悪な独裁者としてのヒトラーばかりを描く中で、この映画は地下要塞で敗戦への苦悩に満ちていくヒトラーを見事に描いています。

あまり話すとネタばれになってしまうのですが、セリフの言い回しとか、地下要塞のセット、廃墟と化したベルリンのシーンは圧巻です。日本では単館映画=低予算ととられがちですが、ドイツではロード・オブ・ザ・リング/王の帰還やスパイダーマン2を駆逐し、アメリカでもドイツ映画として史上最高の歴史的ヒット。自国の映画まみれのアメリカでのヒットはそんなに当てになりませんが、日本で未だ2館のみ(2005年7月15日現在)というのは寂しいような気がします。まるで来日当初はドラゴンズの2軍でくすぶっていたブライアントのようです。今後、全国に拡大されますが、最初は全く評価されなかったシュリのように息の長いヒットを記録するかもしれません。

ターン1までの評価「A」

敗色濃厚のドイツの現状を前にして、登場する将校や将軍達は、既に勝利という後ろ盾をなくして降伏を考えたり、ヒトラーと祖国の勝利を信じて最期まで戦おうとしたり、態度にバラつきが出てきます。まるで倒産前の会社のようです。いい時は人が集まり、ダメになると人は逃げていきます。

敗戦も倒産も責任をとらされるのは幹部ですから、負けると分かっていながら兵士に戦争を強いるのは問題があるということが分かります。戦争を続け敗戦を先延ばしすることが、彼らの保身になる一方、時間が経てば経つほど犠牲者は増えるわけですし。

作品中、ヒトラーは国民のことをこれっぽっちも考えていません。市街戦に巻き込まれて死のうが、食糧が尽きて餓死しようが関係ないとばかりに。「自分を選んだのは国民なのだから、何をしようが勝手」とばかりに。無茶苦茶な理論ですが、これは100%間違っていないように思います。

今の日本の政治も同じです。やれ重税だ増税だといおうが、既得権益を守ってぬくぬくとしながら、国民に負担を強いる政策を導入した議員を選んだのは、これまた国民です。ガヤガヤ騒いでも後の祭り。こないだの選挙もそうだったじゃないですか。自民党が勝った数日後には年金保険料引き上げ、給付水準引き下げが決まりました。「結局、何も変わらないから」と投票に行かない人間も同じ穴のムジナ。今は全体の投票率がいくら落ちても確実に票を確保できる構造になっているわけですからなおさらです。

やがて映画はクライマックスに。確証のある検死が行われていない以上、ヒトラーの生死は今現在でも不明ですが、一般的な史実通りに話は進んでいきます。そして終戦。なおも抵抗を続けようとするドイツ軍将校と周囲を取り巻くソ連軍との対比が色濃く出ています。多くの戦争映画もそうですが、特に堅いファッションと国民性が醸しだしているからか、ドイツ軍は他国の軍隊に比べ暗い雰囲気が漂います。

ターン2までの評価「A」

多くを語るより、実際にご覧になったほうがいいでしょう。多くの爪あとを残したドイツを題材にした戦争映画なので、この映画の評価の多くが歴史認識を絡めがちですが、ヒトラー=極悪人=題材として不適切という構図はもう改める必要があるのかもしれません。彼一人でなく、周囲の将校や兵士、国民の多くが一時期は彼と同じような思想を持って戦っていた訳ですから。

パンフレットに掲載してあるこの映画の評価に「我々はこの映画を良い映画として迎える時期に来ている」というものがあります。イギリスのマスコミの評価ですが、終戦から60年。第二次世界大戦について、感情にとらわれず向き合う時期が来ているのかもしれません。

これは、太平洋戦争についても同じです。当時の日本は、ヒトラーやムッソリーニなど特定の個人に傾倒することなく独裁的な状況が続いたという奇異な状況にありました。無論、天皇という大きな存在もありましたが、その下で何度も政権交代が行われたにも関わらず、ハイテンションのまま戦争を続けることが出来たのは、情報操作と国民性が影響しているとみることも出来ます。

現在、日本の多くの人々は過去の戦争を振り返り、当時の軍部が悪い、政治が悪いと他人事のように批判しがちですが、一時期は鬼畜米英と叫び戦おうとしていた彼らと我々は別人ではありません。少なくとも当時の多くの人々はこの戦争は過ちだと感じていて戦っていた訳ではありませんから。

腐っても鯛…いや、国家元首の小泉首相に周囲の国から靖国神社に行くなとか言われる筋合いはないように思いますが、この問題までも他人事のようにとらえてしまう日本国民の考え方が一番の問題のように思います。

最終評価「A」

一般的に観客の年齢層が高いと、エンドロールで立ち上がる比率が増しますが、この映画は是非、最後まで観てください。そして、晩年のユンゲ氏の言葉を聞いてください。「目を見開いていれば気付くことが出来た。若さは理由にならない」と彼女は、当時の自分を振り返り評価していますが、恐らく当時の彼女がそう考えることは無理だったでしょう。善悪や倫理をも無意味にさせてしまう、それが戦争の怖さなのですから。

この映画を評価するうえで忘れてならない点は「誰も美化していない」ことです。せいぜい献身的に負傷者の治療を続ける医師ぐらいです。ヒトラーの死も、ゲッペルス一家の死も淡々と映像として流しています。主人公であるユンゲ秘書を中心に、登場人物の心の動きがあまりないので、その点からすれば映画としての評価は難しいのかもしれませんが、後世に残す作品としては、ドイツならずとも世界のために存在価値のある作品だといえます。

ちなみに、戦争の賛否を抜きにして評価すると、ドイツ軍の軍服がカッコいいです。特に僕は、田宮模型のミリタリーフィギュアに没頭していた時期がありましたから、どの国の軍隊よりファッショナブルなドイツ軍の軍服を沢山観ることが出来て最高でした。寒さ対策もありますが、機能性とファッション性も兼ね備えたデザインと必要以上に派手な飾りつけは、恐らく他国の軍隊には考えられない無駄とみえるでしょう。

ユンゲ役のアレクサンドラ・マリア・ラーラも魅力的でした。「Uボート 最後の決断」のように魅力的(見た目という部分だけで)な俳優が出なくても、ストーリーで挽回出来るような「力技」の映画もありますが、やはり魅力ある俳優が出ると映画に思い入れが出来るようになります。いつものようにあまり論じると、「まずキャストありき論」になってしまいますので、やめておきますが。

必見です。是非、劇場で。平日混雑、土日大混雑なので余裕をもってお出かけ下さい。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年7月15日
劇場:シネマライズ
観客数:280/303席(ほぼ満席)
感涙観客数:不明
※感涙観客数は観客の鼻すすり音で推定

ついでに紹介!

あまりにも有名ですが、ヒトラーをパロディとして扱った元祖「独裁者」


文中で紹介した力技の映画。米軍とドイツ軍の雰囲気の差も見所。
CinemaXレビューはこちら

|

« おやじにまじって | Main | スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 »

Comments

Hello there! This blog post could not be written much better! Reading through this article reminds me of my previous roommate! He constantly kept preaching about this. I am going to forward this information to him. Pretty sure he'll have a very good read. Thanks for sharing!

Posted by: Shelby | May 10, 2014 at 12:17 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49725/4987443

Listed below are links to weblogs that reference ヒトラー~最期の12日間~:

» ヒトラー 〜最期の12日間〜 [電脳空間.com BloG]
05/07/09 渋谷シネマライズにて初日鑑賞。 話題作ということもあって、立ち見が出るほどの人でした。入場までの待ち時間まえにいた年配の御仁と談笑。 自分は一人だったので残り数席のところで座ることができました... [Read More]

Tracked on July 18, 2005 at 10:18 PM

« おやじにまじって | Main | スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 »