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June 20, 2005

電車男

CinemaXの更新が行われなかった先週、前田有一の超映画批評のリンクランキングで5位になりました。10位前後をうろうろしていることが多かったんですが、ご期待にこたえるためにおくればせながら更新、CinemaX第41回目。

電車男

監督:村上正典
原作:中野独人
脚本:金子ありさ
音楽:服部隆之
出演:山田隆之、中谷美紀ほか
上映時間101分
(公式サイトはこちら?

「これもひとつのモニュメント」

2ちゃんねるの書き込みから一冊の本にまとめられ、ブレイクした「電車男」の映画化です。もとより出版化の際も多くの無茶苦茶な発言が削られ(あれだけスカスカにするなら、詰められたはずですが)個人的には、アキバ系キモヲタ君という、これまでマイナーだった存在の面白い部分だけ抽出して、毒気をなくし、大人の勝手な事情で「おいしいとこどり」した感もある映画のイメージがありますが、果たして感想やいかに。

冒頭は、ブラウザの「ような」画面からスタート、そこに実写の画面がかぶさります。面白いんですが、劇中に登場するものも含めてあんなブラウザもビューアもなかったりします。映像効果を引き立てるために仕方がない部分もあるのでしょうが、パソコンの操作方法といい、これも「大人の事情」で改ざんされるのはどこか引っかかるような気もします。あと、ITは万能ではありません。ケータイやPDAも万能ではありません。少なくともスタッフの中に2ちゃんねるのヘビーユーザーが一人でもいれば、一般的な利用者である僕でも見破ることができるそのあたりのボロを未然に防ぐことが出来るのかもしれません。

さて、前半はほぼ原作通りの展開で進行します。電車男の服のマジ具合や、チャットのように進む掲示板の書き込みのタイムリーな緊張感は、上手いこと表現されているような気がします。実際にご覧になれば分かりますが、掲示板の人間の一体感も見事に表現されています。チャットを扱う映画やドラマも多いですが、チャットは展開が速すぎて、ネット時間(何だそりゃ)を過ごした経験のない一般の人には追いつけない部分もあります。チャットを扱った映画に「(ハル)」がありますが、実際にはパソコン通信のフォーラムの話であり、今のチャットとはリヤカーとF1ぐらいの差があります。

ターン1までの評価「A」

さて、映画は予想以上のスピードで進行します。そして、あっという間に原作の設定を飛び越えてしまいます。原作は確か、エルメスと付き合うまで。自分がヲタであることを告白するのは、事後報告としてさらっと電車男が書き込む程度のはずです。原作通りに作れば無難に終わったものを、多くの時間を残して想像の領域に入ってしまうということはある種の冒険ともいえます。

原作を飛び出した話で特に面白いのは、掲示板の住人たちのエピソードです。2ちゃんねるの、しかも電車男のスレッドは、ヲタだけではなく、いろんな人が出入りしていることは、書き込みの内容からも明らかですが、それを上手くあらわしている。それでいて匿名性が高いことも上手いこと表現されています。これ以上書くとネタばれしてしまうので避けますが。

ターン2までの評価「A」

原作を離れた電車男は、いつの間にか普通の恋愛映画に変貌してしまいます。さえない男と、セレブで奥手な女の恋の物語。これをどう考えるかで、映画の評価は変わってきます。単なる恋愛ドラマを是とすれば、見応えはあります。特に掲示板の「中谷美紀風」という表現で本当に採用された中谷美紀の演技と、セリフ。脚本は金子ありさ。第8回(1995年)フジテレビヤングシナリオ大賞受賞者。佳作ながら前年の浅野妙子、前々年の橋部敦子とともに今のテレビドラマ(特にCXの)を支える女性脚本家を輩出した黄金時代の脚本家の一人なので、セリフは彼女の底力ともいえるでしょう。ただ、設定の上では何でもかんでも秋葉原というのはいささか安直で、パソコンは都内や郊外の量販店でも買えますし、百式Tシャツで爆走する電車男とエルメスが秋葉原で偶然、出会えるというのは、偶然にもほどがあるという感じもします。偶然でもそこに至る必然が必要。偶然の偶然は、シナリオを書く上で飛び道具にすぎませんから。

逆に、この恋愛ドラマの部分を非とするならば、前半に随所で見られた2ちゃんねるの長所が、全く活かされていないことが分かります。早い話が、ストーリーが変質しているのです。電車男が世の中に受けたのは、携帯電話もなく、好きな女の子の相手の実家に電話をして、親父が出てしまったらどうしようとか、そういうピュアな恋愛が今時味わえるという新鮮さと、掲示板の住人が一体となって電車男を励まし、叱り、盛り上げていくという緊張感にあると思います。ということは、一番の盛り上がる部分は、電車男はエルメスとの恋愛を成就させ、やがてその掲示板から卒業していくという部分になります。その後、戦いが終わって、主役が去って寂しくなった時の「あーあ」感でしんみり感動するという構図です。「ドラえもん のび太の宇宙開拓史」や「バック・トゥ・ザ・フューチャーⅢ」のラストシーンで感じる感動にも似た。

ターン3までの評価「A」

掲示板の緊張感みたいなものは薄れてしまいましたが、原作の面白さ、中谷美紀の演技、セリフに支えられました。その後、電車男のようなスタイルの出版も相次いでいますが、2番煎じは著しくパワーダウンしてしまうのは何事も同じ。内容的にいくら勝っていようと、元祖を超えられないものです。たとえばワンアイデアであそこまでブレイクした「リング」も続編やその他大勢のホラー映画も元祖の足元に及びませんし(作者・鈴木光司自信にも当てはまりますが…)。

願わくば、後にも先にも「電車男」のようなスタイルの映画は作ってもらいたいものです。そうすることで、前述の「(ハル)」のような時代の一つのモニュメント的映画として存在価値が増すような気がします。とはいえ、まだまだおいしい樹液がつまっているお金のなる木ですから、下手に続編を作って荒されてしまうことは充分、予測できますが。世の中は恐ろしいスピードで流れていて、電車男の連載(?)が始まった1年前(2年前?)も既に一昔という感もあります。その間にはブログが急激に普及し、2ちゃんねるなどの掲示板で電車男と同じような現象は発生することはないといわれています。この映画も「こういう映画もあったなー」と思える時代が早晩、来るでしょう。

最終評価は、2段階あります。まずは、ラストシーンで定期を拾うところ。このシーンは2度目の登場。「偶然」のイメージを植えつけたいのでしょうが、一体何を説明したいのかが分かりません。ということで、ここまでで評価すると一段階下がって「B」

その次、よせばいいのにテレビドラマ版の出演者が登場します。おいしい樹液をちゅうちゅうと吸おうとする大人たちが群がるようないやらしさを感じます。幻滅。テレビドラマ版はエルメスが主人公のようですが、一体何をどう扱おうとするのか。オリジナルのテレビドラマで視聴率がとれなくなったテレビ局は、漫画原作を物色してさんざん荒らした挙げ句、最近は原作モノでもまず映画化させ、ヒットしたところで2番煎じのようにドラマを作ります。まるで、ビデオゲームを次々と移植して暴利をむさぼった後期のファミコン業界のよう。最も恐ろしいのは、東映が忘れた頃にブームを先取りしたように自信満々に映画を作ってしまうこと。純愛ブームに遅れること数ヶ月で登場した「四日間の奇蹟」はその最たるもの。警戒が必要です。ということで最終評価は「C」です。

どこまでを本編とするかは、観客の個々の判断によりますが、僕の場合は「終わり悪ければ全て悪し」と評価しました。あまりにも印象が悪い。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年6月18日
劇場:ワーナーマイカルシネマズ板橋
観客数:約200/262席
感涙観客数:かなり多い
※感涙観客数は観客の鼻すすり音で推定

ついでに紹介!

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