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April 23, 2005

心の強さ

ポール牧さんが自殺しました。うつ病、仕事が少ないなど理由がどうであれ、自殺は最も避けなければならないことだと思います。丹波哲郎だかが自殺者は死後、暗い森の木になって何百年も動けないとか…ウロ憶えですが。かつて僧籍にあった方が自殺してしまうということはそれだけ重く悩んでいたのか、判断する力が落ちていたのか。仮にうつ病だとすれば、支える人が必要です。後押しするだけでなく、見守るだけだったり。うつ病になり、リビングのテーブルの下に潜り込んでウンウンうなっていたとも聞く高島忠夫氏は、家族の支えでどうにかこうにかテレビに出てくるまで回復しました。
ポール牧さんの周辺にそういう人がいなかったとすれば、残念でなりません。仕事がなかったことを悩んでいたといわれますが、あれだけの大御所で売り込みはプライドが許さないのかもしれませんが、例えばNHKの教養番組のちょっとした司会なんかはあの顔と語り口はぴったりとハマるかもしれません。お笑いに絞っていたならこのことも適いませんが。バブルのようなお笑いブームでお笑い系の番組が増え、一部でベテランの登場の機会も増えているようですが、それもごく一部に限られます。もう少し我慢すれば、少しでも追い風が吹いてくる可能性があったのに…残念です。
ポール牧さんで印象に残るのは、元祖「たけし」、関武志と組んだラッキーセブンですが、僕は、晩年しか知りません。最も印象に残るのは、何かのクイズ番組で「ポール牧は一分間で何回指パッチンが出来るか」を当てる問題で、回答者はひたすら指パッチンをするポール牧さんをイメージして数百回とかすごい回数を答えたにもかかわらず、彼はいつもの振りつきで指パッチンをするため10回程度しか出来なかったこと。そんなに昔の番組ではありませんが、変な問題だなと思った記憶があります。

さて、その数日前、新任の若い教師が学校で自殺しました。バラエティ番組などではこぞって今の病んでいる教育環境の問題を象徴する事件と色めき立ち、学校やPTA側の圧力など面白おかしく取り上げようとしたものの、いくら掘り下げても原因が不明のままなことに飽きたのか、トーンダウンした感があります。ベテラン教師も陥るGWのヤマを超えられなかったことにこじつける論理もありますが、僕は違うところにあるのではないかと…直感ですが、恋愛とか。
あくまで彼に恋人がいたことを前提にしていますが、例えば僕の周囲には、学生時代に「結婚間違いないな」という付き合いをしていて、卒業後にあっさり別れてしまう人がザラにいます。数年前に大学のクラスやゼミの仲間と再会した時、結婚したほとんどの人の相手は、違う人でした。部活もそうです。結婚や恋愛の行動範囲は500メートルという説もあります。就職や進学を期に付き合ったり別れたりすることが多いのは、行動範囲が大きく変わるからです。ということは、遠距離恋愛は荒行みたいなもので、成就させるには並々ならぬ忍耐力・精神力が必要だといえますが。
この教師も同様のトラブルに遭遇したのではないかと推測すると、別れのダメージが大きければ大きいほど、反動が大きくなります。教師になることが夢だった彼が聖地である学校で自ら命を絶ったとしても、それは全くあり得ないことではないでしょう。亡くなった方のことをこれ以上詮索するつもりはありませんが、自殺であれ失踪であれ何かしら原因があります。周囲の、例えば家族や友人が「思い当たるフシがない」と答えてもそれは周囲の人間からの目線でしかありませんから。
この日記で言いたいのは、「心の強さ」です。亡くなった若い教師が、恋愛沙汰が理由にないにせよ、自殺してしまう弱さを持っていたことは確かです。大学を出て社会経験を積まずにストレートで教員になり、次代の子供を教えるには、あまりにも荷が重過ぎると思います。かつては子供の頃からいろいろな社会経験を積ませる「世間」というものがありましたが、その機能も弱くなっていますし、社会や学校が一丸となって若い教師を育てていこうというコミュニケーションもなくなってきています。その反面、教師になる側も採用する側も頼るのは学力だけ。これは危険です。
僕は社会に出て10年が経過しようとしていますが、たったそれだけの間でもいろいろな経験をしたと思っています。10年前はきっと死ぬほど悩んだことも、今ではどうでもないことだと流すことが出来ることが結構あります。社会は人を育てます。例えば中卒の力士が横綱になる頃に立派になるのは、社会経験が彼らを育てるからです。今、若い教師を取り巻く環境にはそういうシステムがないので、それなりのケアをする機会が必要だといえるでしょう。社会にスレていない、大学卒業後ストレートで教師になる優秀な人材はなおさら。例えば難関私立大学でも本来は入学前にクリアしておかねばならない基礎学力や一般教養を重視しているように、学力と社会経験が年々乖離していっているのですから、社会を何年か経験した人間しか採用しないとか、学力重視に頼らない採用の方法も必要でしょう。
ちなみに昔、働いていた警備会社に極めて勤務態度の悪い、言い訳ばかりする奴がいました。警備先でのドタキャン、トラブル当たり前。いつも自分のことばかりしか考えていない彼は、国立大学の教育学部で成績優秀でした。「こいつが教師になったら終わりだな」と思ったら、見事ストレートで採用されました。地域によっては面接など試験以外を重視する動きもありますが、採用する側も学力重視で採用された人々です。人を見抜く力があるかというとかなり疑問です。

今となっては冥福を祈ることしかできませんが、若くして自ら命を絶った有望な男性教師の周囲の環境にもっともっと「育てる」という機能があったらと悔やまれてなりません。

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