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March 30, 2005

太平洋奇跡の作戦 キスカ/潜水艦イ-57降伏せず

CinemaX第34回目は2本立て。

ららぽーと志木の閉鎖にともない、ららぽーとシネマも3月末をもって閉館することになりました。東宝作品しか選べませんが、シネコンの走りのような映画館は、志木周辺の庶民の娯楽の一つでした。映画館といえば、もう少し下って川越のシアターホームランに行くか、東松山シネマに行くか、ずっと上って池袋の映画館に行くしかなかったのですから。
それが今では、2ヵ所にワーナーマイカルシネマズが出来ました。東宝直営の映画館として、どんなに閑散としていようともここはつぶれないなと思ったのですが、丸井の勢いは予想以上に凄かったのか、オープン当初だけ志木駅南口に人の流れを戻したカミヤプラザの主要テナントを一掃し、同じ北口にある、ららぽーと志木も閉鎖に追い込みました。人の流れを意図的に変えるようなコンコースも影響が大きかったようです。あれだけ露骨な構造は何か利権が絡んでいるんでしょう。そういう問題の多いといわれる新座市のことですから。

ららぽーとシネマは、かなりの頻度利用していた時期もありました。特に交替勤務だった工場労働者時代は、朝起きて映画を見て出勤するようなことも出来ましたし、6時以降の上映が1000円になるレイトショー?割引もありましたので、夕方から観ることもありました。新旧のCinemaXで紹介している映画のうち、この映画館で観た作品はスパイダーマンだけなんですが、さらに遡り「映画の感想」というかたちで日記に何本かアップしていました。残念ながらデータは残っていませんが。
そのららぽーとシネマで最後に映画を観ようと思っていたんですが、今さらハウルを見る気にはなれませんし、ローレライをもう一度観るのは…しかもホームシアターのような小画面でと悩んだんですが、奇しくも企画をやっていました。戦後60周年記念特集とクレイジーキャッツ特集です。週替わりで3週間、最終日まで放映を続けます。2本立てで1000円。これで2つのスクリーンを占有されてしまうわけですから、残る一つのスクリーンはサイドウェイという、何とも奇妙なラインナップになっていました。
それに気付いたのは3週目、クレイジーキャッツは「日本一のホラ吹き男/日本一のゴマすり男」、戦後60周年特集は「太平洋奇跡の作戦 キスカ/潜水艦イ-57降伏せず」でした。ナヌ?というわけで、これも何かの縁なのか、戦後60周年特集を観ることにしました。

太平洋奇跡の作戦 キスカ
(1965年、東宝)
製作:田中友幸、田実泰良
監督:丸山誠治
特技監督:円谷英二
脚本:須崎勝弥
原作:千早正隆 「太平洋海戦最大の奇跡」
音楽:團伊玖磨
出演:三船敏郎、山村聡、中丸忠雄ほか
(詳しいデータはこちら
(計測時間105分)

怪獣映画ではありません。キスカ島救出作戦を扱った映画です。アッツ島の玉砕はかなり知られていますが、僕の記憶だと太平洋戦争を振り返るドキュメントなどでもアッツ島玉砕の補足的な史実として報じられることが多かったように思います。それにしても、旧日本軍はここまで侵攻していたんですね。映画の中でも述べられていますが、米国の領土を占領するという以外の意味はなかったようです。
序盤から派手な爆発シーンの嵐です。モノクロなので、それなりに迫力はあります。旧日本海軍の艦船もおおよそ実物だとは思えませんが、始終立ち込める霧とモノクロ映像でかなりリアリティはありました。映画ではなくドキュメントのようですが、三船敏郎演じる大村少将の動揺と主役級の人間が次々に吐く、観客の意表を突いた発言は面白いかもしれません。あまりに多いので飽きてしまいそうですが。

最終評価「A」

終始力が入る映画。こちらはメインではなかったので意外な収穫でした。「團サウンド」が特徴的な團伊玖磨のキスカ・マーチも軽快です。どこかで聞いたようなメロディのような気もしますが。

~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年3月27日
劇場:ららぽーと志木シネマ
観客数:9人/76席
感涙観客数:若干
※感涙観客数は観客の鼻すすり音で推定

涙をこぼすおじさんもいましたし、「わし、キスカいったんや」という老人も。太平洋戦争のなかで過酷な戦闘を強いられた割に生存者が多いという珍しいケースなので、それだけこの島への思い入れがある人が多いのかもしれません。

潜水艦イ-57降伏せず
(1959年、東宝)
製作:堀江史朗
監督:松林宗恵
脚本:須崎勝弥、木村武
考証:藤田和彦
原作:川村六良
音楽:團伊玖磨
出演:池部良、三橋達也、平田昭彦ほか
(詳しいデータはこちら
(計測時間104分?)

プロヂューサーは堀江史朗氏。NHK大阪、東京、東宝、博報堂と渡り歩いた人です。テレビというよりはラジオ、プロデューサーというよりは、脚本を書いたりと実際には書く側の立場が多かったようです。人望が厚かったせいか、芸能界に嫌気がさして資産家として鎌倉に篭ってしまった伝説の超有名女優とコンタクトがとれる数少ない人物とされています。堀江氏著「ぼくの女優交遊録」(主婦の友社)に女優たちの華やかなエピソードが数多く収録されています。
堀江氏は僕のシナリオの先生でもあります。ただ、実際に活躍していた頃のラジオもテレビドラマも観ることが出来ずにいましたが、奇しくもららぽーとの最後に遭遇することになりました。過去DiaryXXXで触れた、円谷英二氏に依頼した特撮技術のエピソードもこの映画を製作する時のものだと記憶しています。

まず、驚くのは映像の質の悪さ。音声、フィルムとも傷みまくっています。シーン飛び、音飛びあたりまえの映画に感情移入するのはまず、不可能なような気がしました。個人的に主張する「潜水艦映画に外れなし」のジンクスが崩れるか。
潜水艦を冠した映画ですが、意外に艦内でのシーンが少なかったりします。加えて緊張感のない雰囲気。ローレライと同じ時期の設定ですが、緩い雰囲気と俳優がセリフを噛んでもそのまま流すという凄いシチュエーション。そのセリフがまたひどく、まどろっこしいセリフが続いたと思うと、いきなり冗談を言う人物が現れたり。これではマイケルです。

潜水艦映画の醍醐味は、限られた空間の中で人間と人間の感情がぶつかるところにありますが、この映画は潜水艦の外のシーンが多いこと、人物と人物がろくに対立しないことが問題のようです。この潜水艦の任務はヨーロッパに外交官とその娘を運ぶというものなので、この任務を認めるか否かでぶつかり合うように描くのも手ですが、上下関係の厳しい旧日本軍では、ハリウッド映画のように艦長と副長が殴りあうというシーンは考えられません。心が変わるのは外交官の娘だけ。多くの潜水艦映画にみられる一番愛嬌がある乗組員が逃げ遅れて死んでしまうシーンもありますが、それも引き立っていないように思いました。

外交官を運んでどうなるのかも描かれない。太平洋戦争という設定を借りているわけですから、史実とどう組み合わせるかが大きなポイントになります。ローレライでは、広島に原爆を落とされた旧日本軍が必死に抵抗する姿が描かれています。観客は長崎の悲劇、そして終戦を知っているわけですから、その抵抗があまりにも空しく涙を誘うという構造になっています。ところがこの映画は、任務の途中にポツダム宣言が受諾され、観ている側の熱が急に冷めてしまいます。任務を遂行しても何の意味がない、と。

外交官を引き渡した後が、この映画のタイトルに繋がるわけですが、外交官が乗っているはずの敵駆逐艦に銃口を向けたりと設定が段々と無茶苦茶になってきます。その無茶苦茶に気付いたのか、戦略を変更して体当たり…ある意味クライマックスですが、無茶苦茶です。それでデーンと「終」のテロップ。昔の日本映画の多くはエンドロールがないので、やっつけ!という印象が一層増しました。キスカでは特技監督に昇進している円谷英二による特撮技術も6年の差を大きく感じさせるぐらいバレバレ、どこかで聞いたことのあるような曲が多い團伊玖磨の映画音楽も怒りすら感じてしまうほど凄い映画でした。何だか観てはいけないものを観てしまったような。

最終評価「C」

この保存状態では、恐らく二度と観ることはないであろう映画だと思いますので、そういう意味では貴重な経験かもしれません。本編は104分の映画なんですが、時計を観ると90分を回ったところでした。シーン飛びによる蓄積は貯まりに貯まって10分程度に及ぶことが分かります。逆にこういう保存状態の劣悪な映画を放映する東宝を賞賛したいような気分にもなります。最後のお礼にららぽーとシネマで金を落とそうと紙コップのコーヒー(200円!)を買いましたが、誰も買っていないせいか雑巾のような味がしました。気のせいかと買いなおしたココア(200円!)も同じく。まずい飲み物とまずい映画、ホームシアターのような小さなスクリーンをみていると、もうここの役目は終わったんだなと変に納得してしまいました。ありがとう、ららぽーとシネマ。

企画上映は3月31日まで、お早めに。


~鑑賞メモ~
鑑賞日:平成17年3月27日
劇場:ららぽーと志木シネマ
観客数:18/76席
感涙観客数:ゼロ
※感涙観客数は観客の鼻すすり音で推定

raraport
これまで上映された映画のチラシがずらりと並びます。


theater
ホームシアター風スクリーン。
シートは新しく張り替えたものですが早速、閉館の憂き目に。
綺麗に整備した直後にロッテに逃げられた川崎球場のようです。

ついでに紹介!

潜水艦内の緊迫感と人物同士の対立を見事に描いた決定版!

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Comments

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