July 09, 2009

コネクテッド

監督;ベニー・チャン
製作総指揮:アルバート・リー
音楽:ニコラ・エレラ
脚本:アラン・ユエン、ベニー・チャン
出演;ルイス・クー(アボン)、バービー・スー(グレイス・チャン)、ニック・チョン(ファイ刑事)、リウ・イエ(誘拐犯)

「プロの綱渡り」

ハリウッド映画「セルラー」を香港でリメイクした作品です。「セルラー」を観たことはありませんし、香港映画に強い思い入れもありません。頭がからっぽのまま観た久々の香港映画、しかも香港映画初の「ハリウッド映画のリメイク」というおまけまでついて、果たしてCinemaXの評価やいかに。

「コネクテッド」は、本家の「セルラー」からも連想出来る通り、電話を「繋ぐ」ことを意味しているようです。ある事件に巻き込まれて密室に閉じ込められたヒロイン、グレイスが、ぶっ壊されてしまった電話を修理して通じたのが主人公、アボンの携帯電話だったというところから物語は始まります。ストーリーそのものは他のブログなどで詳しく書く人もいるでしょうからそちらを見ていただくとして、とにかくアクションが見応えがあり、小さい頃観た香港映画のスピード感を髣髴とさせる、まさにジェットコースタームービーでした。

物語は3本の筋で展開します。携帯電話を介したアボンとグレイスのストーリーにアボンと家族のエピソード、左遷されて冷や飯食いになっているファン刑事のエピソード。ところがこの3つのストーリーは、鼎立ではありません。携帯電話を介した本筋があって、その他のエピソードはエッセンス程度。その結果、1本のストーリーで綱渡りをしながらアクションシーンを重ねるという、不安定な状態が最後まで続きます。この設定は誰かに追いかけられるという類のPVにありがちなもので、映画に導入するとご都合主義ばかりが目立って観客の感情移入を阻害することが少なくありません。

ところが、「コネクテッド」は、絶妙なバランスで次から次へとアクションが繰り返されます。そして、その多くが実写。ハリウッドなら簡単にCGに頼ってしまいそうな映像も、とにかく実写にこだわっているようです。この爽快感は、北朝鮮の怪獣映画「プルガサリ」を観た時に似たものがあります。ハリウッド映画はもちろん日本ではウルトラマンでさえCGに頼るような状況の中で「プルガサリ」はセット。紫禁城の模型がプルガサリに襲われて土煙を上げながらぶっ壊れていく映像は圧巻でした。

「コネクテッド」のストーリーは、二転三転していきます。登場人物の1人が「この世の中で、正義を見つけるのは難しい」と言ったように、勧善懲悪ではないストーリーになっています。「セルラー」のストーリーや設定がどれだけ反映されているのかは分かりませんが(いずれ本家も観てみようと思います)、最後まで観客を飽きさせないストーリー展開とアクションは見物です。日本では韓流映画やドラマが根付いてしまいましたが、香港映画はまだまだ捨てたものじゃないなと思いました。

ただ1つ、気になったのは、主人公のアボンの家族の設定です。最後は救出されてヒロイン、グレイスと良い雰囲気になる(ハリウッド映画なら恋愛関係に発展しているはず)のですが、そこにアボンの妻子が現れてエンディングを迎えます。お色気シーンに全く頼らない硬派な設定は評価出来るのですが、この2つの設定が重なってしまうことで感動の上塗りのようになってしまいました。もう少し工夫すれば観客の涙を誘うことが出来る印象的なエンディングになっていたのかもしれません。

評価に移ります。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・9点
見知らぬ2人が切ると二度と繋がらない電話を介して危機を脱する話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・7点
IT社会で映像が溢れるようになった今、音声だけで伝えられること、伝えられないことの「壁」を上手くストーリーに絡めたことは意味があるかもしれない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・1点
舞台は香港。設定などもこれと言って興味を惹くものは少なく観光要素には乏しい。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点
目新しさはない。面白く観ると絶対に後悔しない映画だが、劇場に足を運んでもらうまでが問題。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・8点
普通の生活をしていた人間が事件の深みにはまっていく王道の設定だが、主人公のアボンの性格をエピソードを通じて丁寧に描いているので、観客も一緒に巻き込まれていくことが出来る。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・5点
主人公のアボン。周囲の登場人物をよくよく考えてみると、かなり無理のある設定が目立つことに気付くが、立ち止まらず突っ走る映画なので、観ている間は気付かないのかもしれない。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・6点
主人公の運転する車が缶詰満載のトラックに突っ込んでしまうシーン。片付けるの大変だろうなあと思ったと同時に、このシーンの前後を含め香港映画のテイストが凝縮された部分でもあると感じた。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・3点
相手を見失ったのに追いかけ続ける主人公にヒロインが電話の向こうで「ありがとう」と言うシーン。それでも強がる主人公に少々じんわり来る。お涙頂戴風のエンディングは逆に泣けない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
アクションシーンは随所に笑いが散りばめられているが、ストーリーの流れとは関係ないので評価外。ただし、おまけのように笑いを付け足してくれるのは、作り手は苦労するだろうが、観ている側は嬉しい。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
一連の事件の焦点(ビデオカメラの映像)が抽象的なので、どうしてそれを追いかけるのかは頭では理解出来ても感情移入の材料にはなりにくかった。人は何人か殺されているが、実は観客が憎しみを抱くような悪人はいなかったように思う。

【減点項目】
・減点なし。

基礎点(25)+技術点(25)+芸術点(14)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(71)

「D」評価(70~79点)

評価は思ったより低くなりましたが、フラッと劇場に立ち寄ったり、DVDをふと借りて観ても絶対に後悔はしない映画です。キャストでも設定でもストーリーでも何でもいいのですが、劇場に足を運ばせる「何か」がないのが「コネクテッド」の最大の弱点といえるでしょう。興行収入はそんなに伸びないと思いますが、じんわりと口コミで育っていくような作品になることだと思います。

2009年7月8日/ブロードメディア・スタジオ試写室
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July 07, 2009

いけちゃんとぼく

監督:大岡俊彦
原作:西原理恵子
音楽:川嶋可能
脚本:大岡俊彦
出演または声の出演:蒼井優、深澤嵐、ともさかりえ、萩原聖人、モト冬樹、蓮佛美沙子ほか

「裏ドラ」

西原理恵子原作「いけちゃんとぼく」です。原作は読んだことがないのですが、週刊SPA!にたまに掲載される彼女の漫画などからストレートな話ではないのは雰囲気で感じていました。前の座席には2人の小さな子供とその母親が座っていました。西原理恵子ファンの母親なのか、いけちゃんのほのぼのさに惹かれて子供もろとも面白いかもと飛びついただけなのか、面白くないと子供がぐずりはじめた訳は?果たしてCinemaXの評価やいかに。

「いけちゃんとぼく」は、最後に強烈なネタバレがある映画です。このネタバレが実に切なくて、この映画に対する評価そのものになっています。ただし「千の風になって」に便乗したように「象の背中」を世に送り出したり、「着信アリ」を何度もしつこく作ってジャパニーズホラーブームの甘い汁を残り一滴まで吸い尽くした秋元康とは全く異なり、西原理恵子さんは大人の恋愛と子供の視点とを組み合わせることで、これまでにないタッチのストーリーを生み出しました。「いけちゃんとぼく」は、大人向けの話なのです。

「いけちゃん」の正体は最後に分かるのですが、主人公の小学生の話し相手になってもピンチの時には助けてくれません。のび太にとってのドラえもんではないのです。ドラえもんは、ピンチになるとすぐに手助けしてしまうのでのび太が成長しないと揶揄されます。これは故・藤本弘(藤子・F・不二雄)氏には本意ではないでしょう。本来は空想的なひみつ道具を通じて、子供たちに夢を与えるという設定が、当人が亡くなりストーリーがシステム化されたこと、あるいはひみつ道具の先進性に世の中が追いついてきてしまったことなどが挙げられるでしょう。

周りの評価で歪曲されたのは最近、生誕100周年でやたら盛り上がっている太宰治も同じです。作品はともかく生き方まで神格化されていることに大きな疑問を感じます。自殺未遂を繰り返して最後は自殺未遂をしそこなって死んだともとれるからです。この過程で何人も道連れに殺していることを踏まえると、決して生き方まで賞賛する訳にはいかないことが分かります…話が逸れました。

ちなみに、ドラえもんが未来の世界に帰ってしまった単行本6巻~7巻には、のび太が成長したと強く印象付けられるシーンがあります。ドラえもんがいなくてもジャイアンに勝たなければならないと、ボロボロになりながらジャイアンを倒す(というより逃げられる)シーンです。「さようならドラえもん」「かえってきたドラえもん」の2話は、心に残る秀逸な作品と評価されることが多いのですが、この話があるからこそ、ドラえもんの存在がのび太の成長を阻害するという、作者の本意ではない論点を生み出す結果になってしまったのではないのでしょうか。

評価に移ります。

【基礎点】

一般の邦画(20点)
・20点
いけちゃんはCGだが、れっきとした実写の邦画。

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
いけちゃんが、最愛の人の過去を探りに来る話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・10点
ストーリーの根底には恋愛に年齢は関係ないという要素があるので、奥が深い。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
風景や題材としての観光要素は少ない。懐かしい田舎の風景程度。西原理恵子作品の映画化というのは一種の観光要素か。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
見た目での観光要素は少ないが、誰しもが少年時代に抱いた気持ちは描かれている。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・8点
泣かない。暴力に屈しない。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
いけちゃん。蒼井優の声がびっくりするぐらいハマっている。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
いけちゃんが正体をばらすシーン。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・10点
決して唐突ではなく、これまでいろんなシーンでタネを撒いてあるだけに、ストーリーとして泣ける。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・10点
登場人物の性格に裏付けられた行動、人物の表と裏など、割と脇役に近い人物まできちんと描かれている。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
悪の要素がない。主人公が喧嘩をしていた仲間と最後は大団円になってしまうところはやや鼻にかかるが、流れは自然で違和感はない。

【減点項目】
・原点なし。

基礎点(20)+技術点(32)+芸術点(40)×1.5-減点=CinemaX指数(112)

「B」評価(100~119点)
間違いなく泣ける映画なのですが、劇場に足を運ぶまでの魅力に乏しいのが残念です。口コミで評判になる映画にはなるでしょう。

恐らく、クラスメートをいじめまくっていた相当なガキ大将でもない限り、この主人公の子供に感情移入出来ることでしょう。ちなみに私は幼い頃、ベッドの下に人々?がいて、夜な夜なからかいに出てくるのが嫌でたまらなかったという経験があります。何度も洗濯機や浴槽に落ちて死に掛けたという主人公の子供と似たような経験があったので、最初から感情移入が出来ました。この主人公が見ていた光景は、プールの底や台風の大波が押し寄せる海水浴場の砂底から見たものと同じです。

そういう親近感のようなものを抜きにしても、泣ける映画です。出来れば劇場で、近くで上映されていなければDVD化されるのを待ってもご覧になることをお勧めします。

2009年7月5日/シネプレックス新座
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July 06, 2009

トランスフォーマー/リベンジ

監督:マイケル・ベイ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、マイケル・ベイ、ブライアン・ゴールドナー、マーク・ヴァーラディアン
音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー
脚本:アーレン・クルーガー、ロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン
出演:シャイア・ラブーフ、ミーガン・フォックス、ジョシュ・デュアメル、タイリース・ギブソンほか

「カップラーメン1年分」

一昨年に上映された「トランスフォーマー」の続編です。前作、CinemaXはハチャメチャナ映像を評して「トマト投げ祭り」としていますが、実は人類との関わりなど嘘を絶妙に織り交ぜてそれなりに説得力のある映画でした。

ところが続編は、そんなストーリーなどどうでも良く、ただひたすらアクションの連発でした。前作は動きは迫力があるものの、動き回るのは街の中だけという箱庭の中でロボットがドタバタと走り回るような内容でしたが、続編は前作の舞台の裏側、エジプトに舞台を移したものの結局、ピラミッドの周りでドタバタ走り回っているだけのような映画でした。

CGのアクションは物凄く、たった2年でこれだけ進歩するのかを思い知らされる映画ではあります。ちなみにスターシップ・トゥルーパーズ(1997年)は、当時の最先端のCG技術を導入した映画なのですが、これと「トランスフォーマー/リベンジ」と見比べると隔世の感があることが分かるでしょう。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
主人公がロボットをもう一度生き返らせようとする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・1点
地球を救おうとする若者がいるのは立派だと思うが、動機がいまいち伝わらない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・5点
ロボットたちのトランスフォーム(変身)は見所満載。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
オプティマス・プライム(コンボイ司令官)などのオートボット(サイバトロン)あるいはディセプティコン(デストロン)のトランスフォームに熟練していたどんな子供も追いつけないような早さで変身するのは圧巻。まず、無理。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・3点
オプティマス・プライムを生き返らせようと物凄い冒険をしてそうだが、何故か箱庭の中で走り回っている感じがするのが不思議。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・5点
主人公を誘惑する美女。性に乱れるB級映画のようなキャンパスライフのテイストは笑えた。アメリカの大学はどこもこんな感じと錯覚してしまいそう。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・2点
ひたすらロボットがドタバタするだけなので、主人公の母親がドラッグでハイになるあたりは逆に印象に残る。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
前作、唯一泣けそうな要素だったバンブルビー(主人公が所有?するオートボット)は続編でもいい味を出している。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
バンブルビーが主人公と離れ離れになるのが嫌だとロボットのくせに泣きまじゃくるシーン。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
よく考えると意外と悪の要素が少ない映画だったりする。

【減点項目】
・減点なし。
人間とロボットがエジプトの箱庭の中で戦うシーンは、主人公がオプティマス・プライムになかなか近づかず、かつ飽き飽きするほどアクションの連続で1年間ずっとカップラーメンを食べさせられるような感じだったが、CGはそれなりに見応えがあるのでここでは減点を行わなかった。

基礎点(15)+技術点(19)+芸術点(9)×1.5-減点=CinemaX指数(48)

「F」評価(59点以下)

ストーリーが直線的に展開する映画はCinemaXでは必然的に評価が下がってしまうので「トランスフォーマー/リベンジ」は割を食ってしまいます。前作のストーリーから引っ張った部分もあるのですが、よく考えたら前作はどんな話だったかも記憶にありません。何も考えず、単にアクションを楽しめばいいのですが、それにしては時間が長すぎます。途中、トイレで席に立つ観客の方も多いところに、時間の長さやストーリーのどうでもよさが現れているのかもしれません。

エンディングは、当たれば次もあるかもみたいな感じなのですが、その時点の最先端のCGを楽しむという感じなら、そう悪くはない映画なのかもしれません。製作総指揮はスティーブン・スピルバーグですが、もうさすがにスピルバーグの映画なら何でもかんでも面白いという幻想を抱いている人も少なくなっていることでしょう。

2009年7月4日/ワーナーマイカルシネマズ板橋
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July 05, 2009

幼獣マメシバ

監督:亀井亨
音楽:野中“まさ”雄一
脚本:永森裕二
出演:佐藤二朗、安達祐実、渡辺哲、高橋洋、志賀廣太郎ほか

「ネコマタギ」

動物と子供を扱った映画は必ず当たるいわれるほど鉄板の要素なのですが、この「幼獣マメシバ」は少し様相が異なるようです。果たしてCinemaXの評価やいかに。

「幼獣マメシバ」は「ネコナデ」のスタッフや脚本で製作されたようです。「幼獣マメシバ」も「ネコナデ」もメジャーの系列に属さないローカル局が集って雑草根性で頑張って、まるで田舎の高校球児が甲子園で準々決勝ぐらいまで勝ち上がったような映画です。ちなみに「ネコナデ」は、テレビ版は堅物サラリーマンや周辺の人々がたった1匹の子猫に振り回されるという見応えのあるものだったのですが、映画版になるとストーリーを変にいじりすぎて駄作になってしまった感があります。

早速、評価に移りましょう。

【基礎点】

動物や子供を扱った映画(10点)
・10点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
35歳の親離れ、子離れ。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・8点
親離れ出来ない子、子離れ出来ない親が増えているといわれる中で1つのヒントにはなる。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
諏訪湖周辺、富士山などの雰囲気は味わえた。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・1点
そうでもない。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・7点
母親を探し続ける。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
メチャクチャな行動をする登場人物が多い中で、安達祐実演じる女性は、それなりの過去を背負っていて行動にも説得力があった。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・1点
強いて言えばうまい棒だらけの主人公の部屋。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
行き当たりばったりのストーリーでは泣けない。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・4点
主人公の35歳のニートの行動やセリフは笑えるが、主人公の設定に微妙な部分を含むためテレビで放映されることは絶対にないと思う。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
悪い人が1人も出ない子供用はみがきのような設定。

【減点項目】

寝てしまった(-30点)
・-30点
前半から中盤にかけてかなりテンポが落ちる。冒頭と終盤だけを見れば事足りてしまう映画。

基礎点(26)+技術点+芸術点(8)×1.5-減点(30)=CinemaX指数(8)

「F」評価(59点以下)

35歳の親離れ、子離れという視点は面白く、行き当たりばったりのストーリーはくたびれるもののそれなりに魅力はあり、子犬にかき回される登場人物たちの行動も別に面白くないわけではないのですが、主人公の設定が先天的なものなのか、親が子供を抑圧するが故に陥ったことなのかがよく分かりませんでした。ここの設定の中途半端さがこの映画の致命的欠陥のような気がします。前者ならタッチーであり、投げかけた問題を拾って観客に考えさせるような要素が必要で、後者なら、両親の性格をもっと描き込むとか、あるいはニートという設定だけが必要だったのなら他の描き方もあったはずです。

いずれにしてもメジャー系の映画では絶対に扱わない設定なので、勇気は評価出来るのですが、例えば周りの人々が自分のことを軽蔑していると思い込んでしまうという、向こう側から見たこちら側の世界は良く描けていたのに、ここを中途半端に扱ったために、重要な設定が単なる道具のようになくなってしまった感がありました。これでは恋愛ドラマのカリスマと称されるあの女性脚本家のいくつかのテレビドラマと同じです。残念。

2009年6月27日/ワーナーマイカルシネマズ大宮
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June 12, 2009

ディア・ドクター

監督:西川美和
原作:西川美和
音楽:モアリズム
脚本:西川美和
出演;笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、井川遥、香川照之、八千草薫ほか

「カルピス」

西川美和監督作品です。この映画を知ったのは「鶴瓶噺2009」で鶴瓶さん本人がこの映画の話をしたからでした。余貴美子さんなど共演者のエピソードも面白くて、興味のある映画でもありました。不景気の中でハリウッド映画の製作スピードも鈍っているようで、日本ではテレビ局が小遣い稼ぎのように映画を作るようになってしまった今日この頃。、果たしてCinemaXの評価やいかに。

「ディア・ドクター」は、会場の音響が悪いのか、セリフが聞きづらく冒頭から置いてけぼりをくらってしまいました。主人公の医者が行方不明になったのは分かるのですが、どうしてここまでシーンを引っ張る必要があるのかと疑問に感じました。

したがって前半はとにかく睡魔との闘いです。シーンごとの小ネタは面白いのですが、ストーリーをひねったものではなく撮影現場で生まれたアドリブのようなもの。無医村に赴任して3年半の医師のもとに研修医がやってくるという話なのですが、この2人の対立はほとんどありません。研修医は外車を乗り回すボンボンなので「こんなド田舎来たくなかった」と反発すれば面白みもあるはずなのに、演ずる瑛太さんのイメージをそのままにしたように無味無臭。これではせっかくいい演技をしてもキャラクター自体に魅力がないのですから、飼い殺しです。

「ディア・ドクター」は、いい役者を揃えています。この人がいなければ「おくりびと」の魅力が半減したともいわれる余貴美子さん。そして、八千草薫さん、香川照之さん。監督が原作者なのですが、この映画、物凄く不利な点があるのです。

まるで「Dr.コトー診療所」ということです。

診療所には医師と勝気な看護師がいて、MR(たぶん)が時に医師の補助をしながら、設備が乏しい中で処置をする。もちろんそれぞれのキャラクターの職業や年齢設定が違いますが、観客に「Dr.コトー診療所」を連想させた時点で、この映画は負けです。

麦畑?が風に揺れたり、アイスキャンディーがどろっと溶けたり、つなぎのように流れるシーンは確かに面白いのですが、無駄なシーンが多く、シーンの中身も無駄ばかりで、まるで時間稼ぎをしているようでした。ところが、睡魔と闘いながら中盤にたどり着いて、井川遥さん演じる女医があわられると、いきなり面白くなります。

主人公の医者が、患者と結託して医者である娘をあざむこうとする話、医者が隠しきれなくなって、患者に白衣(つまり白旗)を振るシーン。娘が母(患者)の病気を知るシーン。そして、検査を受けて欲しいと遠回りに言うシーン。母が娘の気持ちを察知して受け入れるシーン。この一連のストーリーだけ、やたらと見応えがあります。キムタクと初共演したテレビドラマではわがまま邦題でキムタクが本気で怒っていた井川遥さんですが、この映画ではこれまでのイメージを一新するようなインパクトがありました。

これだけストーリーの密度が偏っているのことを考えると、もしかすると西川監督はこのエピソードだけを書きたくて、後は話を薄めたのかもしれません。まるでカルピスのような映画です。

評価に移ります。一部ネタバレなのでご注意ください。

【基礎点】

一般の邦画(20点)

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
ニセ医者が無医村で医者のふりをする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・4点
無医村、都市に集中する医師、医師が希望する科目が偏るなど現在の医療問題を切り取っているように見えて、実はストーリーがスカスカ。もったいない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・3点
診療所の医師の給料は2000万円。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・3点
意外な話ではあったが、ストーリー全体には関係ない。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・0点
主人公の医師はタコのようにフラフラしている。つい最近赴任したならともかく、就任して3年半が経過しているとは考えにくい。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・4点
余貴美子さん演じる看護師は存在感があったが、後半はスクリーンからほとんど消えてしまう。井川遥さん演じる女医も魅力はあったが、結局は脇役。全て中途半端な感じがした。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・8点
主人公の医師が白衣を振るシーン。これは白旗だったと受け止めて評価。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・8点
娘が母に自分の病院での検診を勧めるシーン。それぞれが真実を察知しながら、遠まわしに心を通じ合わせるところは見所がある。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
小ネタは多いが、ストーリーの展開の中で笑わせるシーンは少ない。最後のオチとそのオチで映画が終わってしまうところは賛否両論か。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
この映画は悪人が出ない。目立った対立もない。そのことが中途半端な映画という印象を招いているのかもしれないが、全体のテイストとしては悪くないと思う。

【減点項目】

寝てしまった(-30点)
・-10点
寝ていてさらに減点するのはひどい評価方法と思うが、前半は0回以上はウトウトしてしまった。

基礎点(20)+技術点(20)+芸術点(22)×1.5-減点(10)=CinemaX指数(63)

「E」評価(60~69点)

終わってみれば、前半の退屈さは何だったんだろうと思える映画です。例えば、研修医は反発しつつも主人公の医師の行動を見て、再びこの診療所に舞い戻ることを決意すればいいのに、決意するきっかけを示すようなシーンもないまま「俺、戻ってきます」と突然言ってみたり。無医村の問題、延命治療など興味深く膨らませられそうなタネが多い作品だけに「離島じゃないコトーの話」みたいな映画になってしまったのは極めて残念な気がします。ストーリーそのものは何も解決していないように、食い散らかしっぱなしの映画という印象です。

ちなみに、この映画の核心である、主人公の医師はニセ医者という設定は「鶴瓶話2009」で既に聞いていたのですが、知らないままに観た人はどのような印象を抱くのか興味があるところです。ストーリーでニセ医者と分かるのは中盤です。それまでは怪しいなと思える部分が散りばめられているのですが、テンポが悪くて見逃されがちのような感じがしました。もしかすると最初から観客にニセ医者であることをバラしておいて、医師と観客が葛藤を共有する設定の方が、もっと見応えのある映画になっていたのかもしれません。

2009年6月10日/一ツ橋ホール
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June 08, 2009

ハゲタカ

監督:大友啓史
原作:真山仁
音楽:佐藤直紀
脚本:林宏司
出演:大森南朋、玉山鉄二、栗山千明、高良健吾、遠藤憲一ほか

「機動戦士Zガンダム」

ハゲタカです。NHKが絡んでいるからか、ROOKIESのように露骨な宣伝もないのですが、もとは同名のNHKのテレビドラマがベースになっています。とすると「ハゲタカ」のライバルは封切られてもなおダメ押しのように宣伝が続く青春映画でもトム・ハンクスがローマを駆けずり回るあの映画でも、乳がん健診のPRには大きく貢献したものの、ドキュメンタリーの足元にも及ばなかった感のあるあの映画でもなく、テレビドラマ版「ハゲタカ」なのではないかと思う今日この頃、果たしてCinemaXの評価やいかに。

テレビドラマ版「ハゲタカ」との出会いは衝撃的でした。その日は友人が集っての鍋パーティ。ふとチャンネルを回して目に入った青色がかった映像。一同はあっという間に話しに引き込まれ、胃がキリキリするような緊張感でドラマが終わった時には鍋が煮詰まっていたのでした。同じようなテレビドラマ版が先行して映画化された作品の中には「クライマーズ・ハイ」があるのですが、映画化に当たり身構えてしまうのか、制作費にも差があるはずなのにテレビドラマの足元にも及ばない出来になっていることが少なくありません。

このほか「リング」もNHK版が秀逸で、映画版はオカルトなテイストが話題となり鈴木光司氏をホラー作家で飯を食わせる結果にはなったものの、主人公の性別を変えるなど工夫した割にはテレビドラマ版を超えることが出来なかったのが皮肉です。後の民放のテレビドラマ版は論外ですが。

このほか、離島の高校が甲子園でベスト8に進出するぐらいのインパクトはあった「ネコナデ」は、テレビドラマ版のチープな作りが帰って視聴者が親近感を抱く結果となり、隠れたヒットとなっています。一方でテレビドラマが話題となり映画化に踏み切ったらしい映画版「ネコナデ」は、キャストが豪華になった割には「堅物サラリーマンが野良猫をかくまいながら丸くなる」というポイントがボケてしまい、最悪の作品になりました。

話を映画版「ハゲタカ」に戻します。

映画版「ハゲタカ」は、出来る限りテレビドラマを観ていないと、分からない部分が多いかもしれません。そのことを説明するようなお人良しな映画ではないので。それでもこの作品の不思議なところは、分かったような感じになってしまうことです。それは、トヨタの規模とホンダの野心と日産のデザイン性を足したようなアカマ自動車が題材になっているからかもしれません。日本の基幹産業の1つである自動車産業は、日本そのものなのですから、その企業を狙う赤いハゲタカから守る…リーマンショック前、つまり去年の今ごろならよりリアリティのある映画として話題になっていたかもしれません。

折りしも、株価や原油価格が上がり始めました。投機資金の再び流入しはじめたことによるものという見方もありますが、「ハゲタカ」でも触れられていたように、国家が民間企業の顔をして参入すれば、潤沢な資金で市場をどうにでも動かせるという出来レースが可能になります。例えば原油価格の上昇による現金収入を狙うため、産油国が第三国や民間企業を迂回して投機資金を流入させても尻尾を掴むことは極めて困難といえます。

昨年7月以降、原油価格が急落したのは、米国商品先物取引委員会というところが「原油先物取引で変なことをしていないか監視するぞ」と睨みを利かせたからでした。こりゃヤバいと投資家が手を引いたため、プレイヤーが減り、原油価格は急落するのですが、それはヤバい国や人をバックに暗躍していた投資家が多かったということにもなります。国内でも経済紙の社員や記者、銀行員などがインサイダー取引をするぐらいですから、100%クリーンな市場は夢のまた夢ということになります。

また話が脱線してしまいました。

テレビドラマ版では、元銀行員の芝野とハゲタカこと鷲津の対立が大きなポイントでした。ところが対立したままでエンディングを迎えるわけにはいかず、多くのテレビドラマと同様にそれなりに融和してシリーズは終了しました。映画を作りにあたり、ポイントは対立軸です。例えば、踊る大捜査線はもともと青島と室井の対立軸がありましたが、最後は融和します。映画で再び対立させるのは馴染まないので、青島と室井の対立軸として新城を登場させ、2作目では同じような対立軸として女性キャリア、沖田を登場させます。

これはストーリー展開で隠されてしまいがちですが、段々と対立軸が薄まっていることが分かります。

例えば、「機動戦士ガンダム」は、ロボットアニメで初めてと言っていいほどやたら登場人物の心情を描き続けられたのは何故か、視聴者が複雑な心情にのめりこむことが出来たのは何故か…それは、連邦軍対ジオン軍という、わかりやすい対立軸があったからです。ただし、アムロとシャアがどこかで心を通じ合わせるように、いわゆるファーストガンダムも打ち切り同然なのですが、それなりの融和でエンディングを迎えます。

その後、機動戦士Zガンダム、機動戦士ガンダムZZでは敵味方が入り乱れて対立軸が段々と増えていき、視聴者は登場人物の心情を追いかける余裕がなくなります。ガンダムシリーズは近年も高い人気を誇りますが、ファーストガンダムだけ突出しているのは、対立軸がシンプルであったことの一言に尽きるでしょう。

前置きが長くなりましたが、映画版「ハゲタカ」は対立軸がブレてしまっています。芝山と鷲津の対立はなく、鷲津と赤いハゲタカ、劉の対立軸もはっきりとはしない。TOB価格の引き上げ合戦が見応えがあるようで緊迫感がないのは、対立軸がはっきりとしていないからといえるでしょう。加えて原作にあるのかは分かりませんが、派遣切りのエピソードを無理に入れたことでストーリーが崩れてしまいました。

テレビドラマ版の導入部は、貸しはがしでした。身近にあるであろう出来事から壮大な企業買収にまで話が発展していくため、ややこしい話でも視聴者はついていくことが出来るわけです。ところが映画版では売上高5兆円の雲の上の大企業からスタート。これではなかなか感情移入をすることが出来ません。劉が派遣社員とタバコを吸いながら身分の差を語るところ、脇役になってしまった東洋テレビ記者、三島の過去など一般人に身近に感じることが出来るエピソードのほうがカタルシスがあるのでしょう。

映画版では、この身近な視点を丁寧に引き出すと見応えのある映画になっていたのかもしれません。例えば、劉の素性と貧しい生活を経験した故に、高給取りになってもつい出てしまう行動などは興味があります。せっかく面白いタネがあるのですから、ここを丁寧に伸ばせばもっと面白い映画になったはずです。例えば赤い車の落書きなどは、途中で見せる意味は全くない。最後にパッと見せることで、劉はハゲタカになりきっていなかったのだなと分かるわけです。ところがこれをセリフで説明してしまう。本当にもったいない映画です。

【基礎点】

一般の邦画(20点)
・20点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・7点
中国が日本そのものともいえる大企業を買収しようとする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・3点
1年前なら8点ぐらい。例えば「デイトレーダーで2億円の資産を蓄えた主婦がいる」と言われても嘘臭く聞こえるような現在では、封切りのタイミングは良くない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
企業買収合戦は目新しくなく、むしろ国家が絡む、あるいは国家そのものが企業に投資する流れが本当にあることを描くと面白いのかもしれない。中国の話は噂、中東の話は実話。でもこれも観光要素としては乏しい。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・2点
雲の上の話は観光要素にならないことを知った。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・4点
鷲津、劉ともに企業買収に走るが…鷲津は主人公としては存在が薄く、劉は軽過ぎる。芝山は脇役。結局全部中途半端。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・5点
劉。中国から日本に来るエピソードがもっと欲しかった。赤いハゲタカになりきれなかったことがわかる断片がもっと早い段階で欲しかった。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
冒頭のシーン。貧富の差を一発で描く冒頭のシーンは、戦艦ポチョムキンを髣髴とさせるインパクトがあった。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
赤い車の壁画は、途中で見せる必要はなかった。、劉が赤いハゲタカになりきっていないことが、視聴者が後になって「ああ」と分かるようなシーンを散りばめていれば、エンディングに一発この絵を見せると感動出来たはず。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
笑ったような記憶があるようで…ない。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
鷲津が「この国は何も変わらない。バカな国民が政治家の行動をヘラヘラ笑ってみているだけ」というようなセリフは全くその通りで腹立たしさを感じた。確かにこの10年間だけでもみても規制緩和、自由化といっても何も変わっていない現実。小泉改革の中身も知らず自民党に投票した連中が増税で生活が苦しくなったと不満を言う現実。ただしストーリーの流れでの怒りではないので、CinemaXの評価外。

【減点項目】
・減点なし。

基礎点(20)+技術点(18)+芸術点(13)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(61)

「E」評価(60~69点)

テレビドラマ版に引き続き演技派の役者揃いですが、玉山鉄二も埋没することなく頑張っていました。大森南朋はこれから先ずっと楽しみな俳優です。

2009年6月7日/シネプレックス新座
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May 24, 2009

天使と悪魔

監督:ロン・ハワード
製作総指揮:トッド・ハロウェル、ダン・ブラウン
原作:ダン・ブラウン
音楽:ハンス・ジマー
脚本:デヴィッド・コープ、アキヴァ・ゴールズマン
出演:トム・ハンクス、アイェレット・ゾラー、ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルドほか

「エヴァンゲリヲン」

ダ・ヴィンチ・コードの」続編です。「ダ・ヴィンチ・コード」の時は、憑き物のようにみんな原作本を買って読み、「?」のまま劇場に足を運び、さらに「??」になった今を思い返しても「???」の印象しか残らない状態なのですが、原作本の時点でも圧倒的に「天使と悪魔」のほうが面白いという評価のようですが、果たしてCinemaXの評価やいかに。

「天使と悪魔」は、「ダ・ヴィンチ・コード」よりは遥かに判りやすい内容となっています。「ダ・ヴィンチ・コード」の時はこぞって解説本や解説番組のようなものが乱発され、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品の解釈などあれこれ説明された割に映画の意味が理解出来ず、まるで死海文書だなんだのと解釈が乱発された割にヤケクソのような終わり方になってしまった「エヴァンゲリヲン」のような空振り感があったのですが、「天使と悪魔」ではややこしい設定も割と丁寧に観客に説明しています…というより、キャラクターが一方的に喋りまくるだけなのですが。

「天使と悪魔」の舞台は、現在のローマとその一角にあるバチカン市国が舞台です。数年前にも実施された次期ローマ教皇を選出するコンクラーベに絡んだ殺人事件を主人公、ラングドン教授が解明していくというものです。バチカン市国内では未だ腐れ縁のようにスイスの衛兵が、レトロでユーモラスな制服で警備を続けていることをエッセンスとして扱っていたり、密室で行われるコンクラーベの内部を映像化していることは、それだけで観客を惹きつける観光要素になり得ます。

また、「ダ・ヴィンチ・コード」ではややこしくて重すぎた設定が、「天使と悪魔」では一言で説明出来るように簡素になっていることが分かります。前作ではあまり伝わってこなかったラングドン教授の象形学者という設定が、やっと分かったような気もします。何故、研究者は中性子を作ろうとしていたのかとか、ストーリーを二転三転させるための都合のいい設定など気になる部分もあるのですが、前作のようにルーブル美術館の中をちまちま走っていた展開と違って、ローマ市内を縦横無尽に走り回る設定は、動きがあって飽きさせませんし、一種の観光要素にもなっているように思えます。

さて、評価に移ります。

【基礎点】

一般の洋画(15点)
・15点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
コンクラーベに絡む殺人事件を解決する象形学者の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・9点
政権闘争はいつの世にもあるもの。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・10点
密室のコンクラーベを描いたこと。現在のローマ市内に残る遺跡を紹介していること。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・10点
題材としては見応えがあった。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・9点
ラングドン教授は、事件を解決しようと終始奔走した。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・5点
カメルレンゴ、警備隊長、枢機卿など。観客は見事に騙される。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・4点
強いてあげるならば、ラングドン教授が枢機卿を救出しようとするいくつかのシーン。時間との戦いという設定は見応えがあった。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
泣けるシーンはなかった。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
ラングドン教授演じるトム・ハンクスの喋りは、賛否両論あれど面白いが、CinemaXでは評価外。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・3点
悪に立ち向かうという要素に欠けるように思えた。「真犯人」にそれだけの行動をさせるだけの動機が足りないのかもしれない。

【減点項目】

・減点なし。

基礎点(15)+技術点(45)+芸術点(12)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(81)

C評価(80~99点)

ややこしい話も、ラングドン教授と研究者など周囲の人々が勝手に喋りまくるので原作本を読んでいない人、サスペンスが苦手な方にも安心です。ただし、一緒に謎解きしている雰囲気は全くないので、推理が好きな方には物足りなさを感じる映画なのかもしれません。

「ダ・ヴィンチ・コード」や「天使と悪魔」を観ていると、ラングドンを主人公にして、歴史的な象形に対して謎解きをするという設定なら、場所は問わないようなので、例えば、東西南北に四神を配した京都を舞台にしたりとか、天海が江戸城を中心に渦を巻くように街づくりをした東京を舞台にしても面白いかもしれません。

2009年5月16日/ワーナーマイカルシネマズ板橋
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May 18, 2009

チェイサー

監督:ナ・ホンジン
音楽:キム・ジュンソク、チェ・ヨンラク
脚本:ナ・ホンジン
出演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ、チョン・インギ、パク・ヒョジュ、キム・ユジョンほか

「箸休めなし」

韓国のテレビドラマはもとより、韓国のコメディ、ラブストーリーなどの映画は全く見る気はしないのですが、サスペンスは別です。韓国には北朝鮮に対する社会の緊迫感と日本の高度経済成長期を思わせるような得体の知れない猟奇的な事件が発生するという土壌があるため、サスペンス映画は恐ろしくシリアスな雰囲気になるという特徴があります。

猟奇的な事件は日本でも起こるのですが、どういうわけか近年は安易に社会の闇として解決しがちな傾向にあり、映画や小説などの題材としては扱いがたいものも少なくないようです。もちろん日韓の映画に対するファンの趣向の違いと、ハリウッド映画に飲み込まれてしまったか否かという、両国の国内映画業界の温度差というものもあるのかもしれませんが、それらの要素を鑑みても緊迫感に差がありすぎるような気がします。

恐らく、日本映画だと愛だの恋だの箸休めを入れてしまうので、スピード感がなくなってしまうのかもしれません。これはハリウッド映画にも共通するかもしれませんが。

チェイサーは、10ヶ月間に21人を殺害した「殺人機械」ユ・ヨンチョル事件をベースにした作品です。同じく実話をベースにした「殺人の追憶」と並べて評価するむきもありますが、方や未解決の事件に挑戦した「殺人の追憶」と方や犯人がわかっている「チェイサー」とでは、多少なりとも趣向が異なるといってもいいでしょう。果たしてCinemaXの評価やいかに。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・9点
デリヘル経営者の男、ジュンホが、従業員の女性、ミジンを凶悪殺人犯から助け出そうとする話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・2点

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・3点
犯人が人を殺す時の方法。邦画ではここまでストレートに描くのは難しいはず。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・0点

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・10点
主人公、ジュンホが何故、下心なしに命がけで従業員の女を助けようとするのか、しっかりと動機付けと説明がなされている。元刑事のジュンホは①風邪を引いて休んでいる従業員のミジンに出勤を頼んだばかりに囚われの身になってしまった②ミジンの娘と行動をともにするはめになってしまったことなどで、引くに引けず犯人探しに突っ走るようになる設定は絶妙。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
ミジンの娘。252に出てくる女の子に激似で同じ俳優かと思ったほど。252の女の子は耳が不自由な設定でセリフがないため「ああ、韓国の子役だったんだ」と勝手に思い込んだが、別人のよう。日本と韓国は近いのだなと妙に納得してしまった。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・10点
ミジンの娘が車の中で泣いているシーン。この映画は実話をどこまで扱ったかはわからないが、事件周辺のシーン作りの丁寧さが目立つ。特にミジンの娘が真実を知るまでの流れと、音声もなく豪雨に霞むフロントガラス越しに泣いているシーンは秀逸。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・8点
ミジンが殺されるところ。映画の重要な要素である「あーあ」感が漂う。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・2点
最近は流れが変わってしまったが、韓国は主役級の男優にチョイぶ男を選ぶ傾向にある。それだけに仕草などで笑える部分も多いのだが、ここでは評価外。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・5点
上部からの理不尽な命令で凶悪犯を釈放したばかりに新たな被害者を生んでしまうところ。最近、日本では親子殺傷事件で犯人を取り逃がしたり、人為的なミスで問題が発生するのはどこの国でも同じ。

【減点項目】

・減点ゼロ。

基礎点(25)+技術点(24)+芸術点(35)×1.5(0)-減点=CinemaX指数(102)

「B」評価(100~119点)

チェイサーは、殺人の追憶に比べて作りの粗さは目立ちますが、見ごたえのある映画と言えます。どこまでが実話かはわからないのですが、主人公が架空の人物設定で良ければ、刑事役のほうが設定上は楽だったはず。これをあえて元刑事の民間人としたのなら、評価されるべき挑戦であり、実話負けしない映画たりうる大きな要因と
言っても過言ではないでしょう。愛だの恋だの箸休めもない硬派な映画を観たい方は、おすすめです。

2009年5月1日/ユナイテッド・シネマ豊洲
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May 17, 2009

サスペリア・テルザ 最後の魔女

監督:ダリオ・アルジェント
製作総指揮:クラウディオ・アルジェント、カーク・ダミコほか
音楽:クラウディオ・シモネッティ
脚本:ダリオ・アルジェント、ジェイス・アンダーソンほか
出演:アーシア・アルジェント、クリスチャン・ソリメノ、アダム・ジェームズほか

「若気の至り」

点数制の新基準を導入して約20作品を評価してきましたが、もう一度観たいような映画が最低の評価になったり、二度と観たくないような映画がそこそこの評価だったり、ジャンルによって向き不向きがあるようなのですが、「ホラーでも通用するかどうか」ということを確認するため、今回は「サスペリア・テルザ 最後の魔女」を評価してみました。

映画ファンが劇場に回帰してきたおかげで、東京都内にも単館系の映画館が増加しました。単館映画でも面白いかどうかはともかく、綺麗系の映画を扱ってきた恵比寿ガーデンシネマ、そこまでお高くはない映画を扱うシネスイッチ銀座、アングラ臭が漂う銀座シネパトスなど特色がある映画館があるのも楽しみの1つです。人口が多いからこそこういう映画館が生き残れる訳なのですが、やはり最も激戦区といわれるのは渋谷です。

渋谷には、メジャー系の映画館のほか、単館系の映画館が点在しています。道玄坂には単館系の映画館を集めたシネコンのようなところもあります。単館系の映画館は、マイナーな邦画などが劇場公開の実績作りのために利用されているような部分もあるのですが、やはり上映作品で勝負しなければ潰れてしまいます。

シアターN渋谷も同じく競争に晒されており、若者向けのB級映画を中心に上映することで生き残りを図っています。サスペリア・テルザもそうですが、これから上映予定の作品を見ると、さらにこの流れは加速しているようです。

さて、この映画は、1977年の『サスペリア』、80年の『インフェルノ』に続く魔女3部作の完結編という位置づけのようです。前2作を観ていないのですが、さっそく評価してみましょう。

【基礎点】

日本・アメリカ以外の映画(25点)
・25点

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・8点
復活した最後の魔女「涙の母」を再び闇に葬ろうとする女の話。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・2点
いつの時代も変わらないという視点なら、マッチする部分もあるのかもしれない。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・2点
ローマ観光みたいな気分になる部分はある。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・1点
観光要素といっても、残虐なシーン(電車のドアで魔女の手下の女の頭をガンガンつぶすとか)込みです。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・1点
主人公の若い女性は周りに言われるがままに行動しているので、真に貫通行動としての要素は薄い。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・3点
腸を首に巻かれて死んでしまう主人公の女友達と電車のドアに頭を挟まれて脳みそが飛び出してしまう日本人?の若い女。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・3点
棺おけから箱を見つけ出すシーン。掘る方も彫る方だが、家に持って代える神父?もどうにかしている。「そんなことやっちゃって、いいの?」と思わせるシーンから悪の連鎖が始まるのはホラー映画の常套手段か。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・0点
バタバタ人が死ぬ映画だが、プロレスの流血を観ているのと同じような印象。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・0点
残虐な死に方をするキャラクターが何人かいるが、どれも観客を喜ばせようという作り手の意図が感じられ笑えた。ただしストーリーの流れで笑えたわけではないので、評価外。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・0点
主人公の家系と涙の母との因縁みたいなのはストーリーに込められていたが、前2作を観ていないのでわからなかった。

【減点項目】
・0点

基礎点(25)+技術点(14)+芸術点(6)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(48)

「F」評価(59点以下)

開場の際に楽しみにしていた!と言わんばかりに嬉々として座席に座る観客も多く、人気のある監督なのだなと伝わってきました。残念なのは、前半の執拗で笑える残虐シーンから一転して後半は魔女たち?によるシリアスなシーンばかりになってしまうので、特にホラー好きでもない私にも物足りなさが感じられました。言い方をかえれば失速したような。この映画の監督は御年68歳のようですが、この失速はもしかすると年齢から来ている部分もあるのかもしれません。みんな大好きジブリ作品の宮崎駿監督でも同じ傾向がみられるわけですから。

ただし、主要なキャラクターが観客の期待を裏切らず脱いだり、最後には主人公を肥溜めに落として糞尿まみれにしてしまうところなどは、観客の要望に応えた、趣味の世界とも言えるでしょう。これはこれでアリ、の映画だと思います。

4月30日/シアターN渋谷
The_mother_of_tears

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April 29, 2009

グラン・トリノ

監督:クリント・イーストウッド
製作総指揮:ジェネット・カーン、ティム・ムーア、ブルース・バーマン
音楽:カイル・イーストウッド、マイケル・スティーヴンス
脚本:ニック・シェンク
出演:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリーほか

「優等生」

クリント・イーストウッド監督がここ数年産み出す作品は鬼気迫るものがあります。歳を重ねたからこそ描ける世界もあるのでしょうが、逆に考えるとあと20年若ければと思います。ただ、少なくとも10年前に観た「トゥルー・クライム」は面白くなかったので、やはり年齢と経験によって生み出されたものなのでしょう。80歳を目前にして最も脂の乗った監督による「グラン・トリノ」、CinemaXの評価やいかに。

グラン・トリノは観れば観るほど緻密に仕上がった作品です。まずは、主人公、コワルスキーの偏屈ぶり。人物の性格を周囲の人に言わせる手法は、記憶違いでなければ「欲望という名の電車」へのオマージュでしょうか。脚本で悪い人や偏屈な人を主人公にするのはかなり難しいのですが、セリフや行動でこれだけひねくれた性格を見せられると、どこか愛嬌すら感じてしまいます。「恋愛小説家」の主人公もそうでしたね。ひねくれ者。

グラン・トリノは隣人に越してきたモン族とのふれあいを通じた物語です。1970年代までの映画なら、白人の世帯が暮らす静かな街が、移民によって変化する状況を上手く描いています。時代を切り取ったような映画なのですが、それをひけらかすようなあざとさは感じられません。

「ドラマは変化である」(新井一氏)とあるように、良い映画の多くが主人公の心の変化を巧みに描いています。グラン・トリノもそうです。差別用語を連発していたコワルスキーもモン族と触れ合うことで心が変化し、下心みえみえの息子やその家族よりも身近な存在として受け入れるようになります。脚本のセオリーの中には登場人物の性格をあらわすために喧嘩をさせる手法があるのですが、偏屈なコワルスキーもしっかりと喧嘩させています。

グラン・トリノの秀逸なところは、ストーリーの本筋に絡む登場人物が少ないというところにあります。主人公のコワルスキーとモン族の姉弟、スーとタオです。本編では弟のタオの心の変化をしっかり描くことでストーリーの重厚感が増しているのですが、実は姉のスーの存在が、トロい弟との対比とコワルスキーの心の変化を生むタネになっていることに注目すべきでしょう。

グラン・トリノが優等生たる所以はまだまだあります。モン族のチンピラという、分かりやすい悪役を使っていることです。ストーリーが秀逸でも悪役が出ないために大団円の二流作品になった映画も少なくないのですが、グラン・トリノではこれでもかというぐらい悪い奴が設定されています。シンプルな悪役なので、観客が揃ってこの連中への憎しみを共有することが出来ますし、コワルスキーが長く心の中に抑えていた朝鮮戦争時代の心の傷を引き出す要素ともなります。

また、このチンピラはタオを巻き込もうとすることでトロいが真面目な性格と、スーの勝気で頭の回転が早い特徴を上手く引き出すエッセンスにもなっています。

グラン・トリノの秀逸な点はまだまだあります。例えばイタ公の床屋のシーン。コワルスキーと床屋の店主がタオに妙な修行させるシーンは笑えるのですが、ストーリーも後半に入りいきなりこの床屋が出てきたのではご都合主義と受け取られかねません。ところが、この床屋は前半にさらっと紹介されています。しかもコワルスキーの偏屈ぶりを補強する意味のあるシーンとして、さりげなく伏線を仕掛けているわけです。

この床屋のシーンでは、コワルスキーが「俺が大人のやりとりを教えてやる」とタオを連れて行くわけですが、コワルスキーがこの床屋に行けば店主と悪口の言い合いになることを観客は学習しているので、しっかりとした笑いを拾えるわけです。おまけに、このシーンに限ったことではないのですが、良い意味で期待を裏切られます。床屋のシーンでは「コワルスキーと店主が言い合いになってタオには参考にならない」という予想を裏切るシーンになっていました。

ベターよりもベストのシーンを繋いでいくことが良い映画作りの絶対条件ともいわれますが、恐らく私や多くの観客の方が予想していたシーンはベター、でも実際にはクリント・イーストウッド監督は苦労しながらベストの選択を見出したのでしょう。グラン・トリノは、あちこちに観客の喜怒哀楽の感情を発揚させてくれますが、そういった感情の繰り返すうちに我々は映画のストーリーに惹き込まれ、コワルスキーやモン族の姉弟などに親しみを感じるようになるのです。これはストーリー作りの王道ともいえます。

観客が映画に感情移入できるからこそ、最後のシーンにもコワルスキーと一緒にその場に行くことが出来るわけです。ただし衝撃のラストという説明もありますが、個人的にはそんなに衝撃的でもありませんでした。裏を返せば、コワルスキーが生身の人間として実在するならば、自然な行動であったということかもしれません。登場人物の心の変化を描くとは綱渡りのようなものです。怖いからといって綱を進まなければ映画としての魅力も薄れ、逆に人格が変化するほどの心の変化を遂げてしまえば、別人ということで観客の心は離れ、綱から落ちてしまいます。

きちんと着地したからこそ、衝撃のラストと感じられなかったのかもしれません。

【基礎点】

一般の洋画(15点)

【技術点】

テーマははっきりしているか(10点)
(一言で説明出来るか/魅力的だったか)
・10点
偏屈な白人至上主義のじいさんが、隣人の少数民族の子供を守る話。見事な対位法。

そのテーマは時代にマッチしているか(10点)
(今の時代に当てはまるような要素があるか)
・8点
多民族国家、人種の坩堝といわれる米国だが、融和はまだまだ。人口が減少に転じた日本でも例外ではない問題。

観光要素はあったか(10点)
(何か目新しく感じられる要素はあったか)
・8点
モン族という存在。これを期にベトナム戦争のモン族の立場を調べてみるとあまりにも悲しかった。

観光要素は魅力的だったか(10点)
(その観光要素は魅力的なものだったか)
・8点
モン族は華やかな民族衣装が特徴のよう。本編にもきちんと出てくる。

主人公に貫通行動があるか(10点)
(主人公の目的=欲望がはっきりしているか)
・8点
コワルスキーが隣人を守ろうとするのはストーリーでの必然的な流れ。貫通行動は朝鮮戦争での心の傷を清算するほうにウェイトが置かれているのかもしれない。

【芸術点】

印象に残る人物はいたか(10点)
(多くても1、2名に限る。それ以上いたら逆効果なので減点)
・10点
スーの勝気で頭の回転の早さは魅力的。コワルスキーが心を開くのは理解出来る。

印象に残るシーンはあったか(10点)
(多くても1、2シーンに限る。それ以上だと逆効果なので減点)
・9点
コワルスキーが医師に診断してもらい、家族に電話をするシーン。セリフで診断結果を言うこともなく、カルテも遠巻きに移すので結果は分からない。だが、シーンを観ていれば観客にも通じる。

泣けたか(10点)
(ストーリーの流れで泣けた部分はあったか=単に人が死んだとか、物理的な悲しさは評価外)
・8点
個人的には衝撃のラストとは思わなかったが、このシーンは心が泣いた感じ。むしろ葬式に参列するスーの派手な民族衣装が対比されているようで泣けた。グラン・トリノは誰にあげるかは分かっていたし、そういう意味ではニュー・シネマ・パラダイスは衝撃だった。

笑ったか(10点)
(ストーリーの流れで笑った部分はあったか=主人公の仕草とかで笑いを誘った場合は評価外)
・9点
偏屈なコワルスキーの行動はかなり笑える。もはや絶滅してしまった感のある身内や町内に必ず1人はいた近所の頑固なおじさんを見ているよう。

怒りを覚えたか(10点)
(ストーリーの流れで怒りを覚えた部分はあったか)
・8点
モン族のチンピラは分かりやすい悪なので、シンプルに怒りを抱くことが出来る。

【減点項目】

・減点なし。
ただし、神父の存在は微妙だった。個人的な立場だったら復讐(チンピラをぶっ殺す)も辞さないという神父は斬新だったが、そこまでストーリーに絡む設定は必要ではなかったのではないかとも感じた。

基礎点(15)+技術点(42)+芸術点(44)×1.5-減点(0)=CinemaX指数(123)

「A」評価(120点以上)

シナリオを勉強している方々にとっては、お手本のような映画と言えるでしょう。クリント・イーストウッドの渋い演技と声も魅力です。

ちなみに、スーがコワルスキーにモン族の特徴を説明するシーンで「相手と視線を合わさない、叱られるとニヤニヤする」と言っていますが、これは日本人のアルカイックスマイルにも共通するものです。欧米では今にも死ぬという緊迫した場面でもニヤニヤする日本人を理解出来ないので、アジア人共通の行動パターンなのかもしれません。

2009年4月29日/シネプレックス新座
Torino

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